エルフィンド女王エレンミア・アグラレスが、ディアネン市に居る。北にある王都ティリアンを離れ、残存する軍主力を親率すべく、ネニング平原の首府たる都市まで下向したという。
その知らせは、エレントリドの朝野を駆け巡り、また外電を通じてオルクセン軍にも知られた。知らせを聞いたオルクセン軍の幹部たちは、驚きつつも戦意を高めた。彼らはエルフィンド軍がディアネンを捨て石にして退却し、王都ティリアンに籠って持久することを恐れていたのだ。
だが、わざわざ女王を引き出すからには、エルフィンド軍はネニング平原で戦うつもりに違いない。広大な平原ならばオルクセン軍は数の優位を生かせる。
作戦を立案する総軍司令部参謀たちは特に意気上がり、この際、一気に戦争の決を求めんと、気宇壮大な包囲作戦を計画した。成功すれば、敵主力軍の撃滅、あわよくば女王をディアネン市で虜にすることさえ目指し得る。
他方で、戦意を高めたのは白エルフも同じである。ディアネンの軍民の士気は一挙にあがった。開戦以来の相次ぐ敗報と、オルクセン軍によって広く明らかにされた闇エルフ虐殺の詳報で、誰も彼もが意気消沈していたところだったが、暗い空気は瞬く間に一掃された。
白エルフの統治と信仰の核心は、神から授かった教義、神の世界に通じると言われる黄金樹、それから生まれる女王の三つである。三つを合わせて「御聖樹」と呼ぶ。その一つたる女王が聖なる姿をあらわして軍兵を閲し、手さえ振ったというのだから、士気の回復せぬわけがなかった。
かつてない事態に袖を濡らし、いまこそ女王陛下のためにと奮起した市民は、自ら進んで財物や金属製品、食料までも軍へ寄付し始めた。官営工場からは昼夜の区別が失せ、工員たちは寝不足で倒れるまで自主的に働いた。
募兵所に駆け込む者が激増したのはいうまでもない。彼女らはろくな訓練を受ける時間もない素人集団だったが、数十年前の古式銃を配られて「これで女王陛下のために戦える」「いまこそ国恩に報いるときだ」息巻いた。
そのような急増の義勇兵部隊を、軍は戦力としてあてにしてはいない。だが、ディアネン市を始めとする後方の警備を義勇兵に任せることで、まともな軍部隊を全て前線に投じられるようになり、投入可能兵力が一挙に増えた。
エルフィンド軍幹部たちは「これで何とか戦える」と胸を撫で下ろし、女王親征の劇的な効果に感動した。そして、前例なき親征を提唱、実現させたクーランディアの英断を「さすがは元帥」と賛嘆し、畏敬を新たにしたのだった。
両軍がともに戦いを望み、我こそ先を制さんとしていた、四月七日。
軍民ともに異様な活力に包まれて、忙しく鳴動するディアネン市に、エドウェン・リンデル中佐の姿はあった。
兵たちにとともにエイセル峠を離れてから、まだ二日目である。文字通りに昼夜兼行で進んだ結果だった。山岳猟兵大隊の精兵たちも、連戦に続く不眠の行軍で消耗し、ディアネン市内にあてがわれた兵舎の寝台に倒れこむようにして眠った。
だがリンデルのみは、短い仮眠をとっただけで起床し、一部の隙もなく身支度を整えると、その長身をネニング方面軍司令部庁舎にあらわした。
事前の予約もなしに現れて「クーランディア元帥に面会したい」と言った赤毛の中佐に、司令部の参謀やら従卒やらは無礼一歩手前の応対をした。いまの戦況、そして事実上はエルフィンド全軍を率いている元帥の多忙が分からぬか、と思った。
だが、リンデルの名と要望が伝えられると、元帥の主席副官が飛ぶような勢いで現れて、ただちにリンデルを元帥執務室に拉し去った。元帥自身、作戦会議を中座して自室に向かったと聞いて、従卒たちは「あの中佐、誰?」「どんな将軍より偉そうだ」と驚き呆れた。
「エドウェン・リンデル中佐、参りました」
直立不動で申告したリンデルを、元帥は椅子から立ち上がって迎えた。
「やあ、久しいな。無事で何よりだ」
「閣下もお変わりなく……」
と、言葉の末尾を濁したのは、リンデルの正直なところだった。
リンデルは内心で思った。
(ロザリンドの前も、こうだったのだろうか。この方は)
百二十年前、クーランディアは、国運を賭した会戦でオルクセン軍に大勝を博した。
しかも、クーランディアは、功績の全てを副将マルリアンのものにして「自分の功はマルリアンを登用した一事に尽きる」という態度を貫いた。事実は、クーランディアが描いた戦略のもとでマルリアンが作戦家として活躍したのだが、クーランディアは自身に功なしと言い張って、元帥号の授与を二度までも固辞して、当時の女王を困らせた逸話がある。
軍幹部といえば、他者の功、部下の手柄を横取りして出世に明け暮れるのが通り相場であったから、クーランディアの無慾恬淡は際立っている。心ある将士は等しく感動して「軍務の楽しみは、いつかクーランディア閣下にお仕えすることだ」と言った。
そのクーランディアが百二十年ぶりに大兵を率い、再び国家の運命を背負っている。
(きっと、昔は違っていただろう。今の元帥は、まるで)
そこまで考えて、リンデルは自らの思念を慎んだ。
クーランディアは、短い褐色の髪こそ変わらないが、白エルフらしい秀麗な顔には、隠しようもない疲労が浮いている。ただ目だけがギラギラと、飢えた巨狼のように輝いている。
忠良有徳の名将というよりも、身代を質にいれて覚悟を決めた博徒のように見えた。
そんな己の見た目を自覚してか、クーランディアは口元に微笑を絶やさない。
「待っていたぞ。今こそ祖国は、君を必要としている」
「恐縮です、閣下」
「なに、本当のことだ。リンデル大佐」
リンデルは沈黙した。
「大佐なんだよ、君は。遅すぎたくらいだ」
「閣下のご厚情、感謝の言葉もありません」
リンデルは平板な口調で言った。クーランディアは小さく吹き出した。
「やれやれ。特進の前渡しだと思っているな?」
「いいえ。ただ、経済の原則について考えておりました」
「というと?」
「位階と勲章が安売りされるのは、亡国の兆しかと」
クーランディアは苦笑した。
「卓見というべきだが、この場合は間違いだ。死なせるつもりはない。貴官も。無論、我が国も」
苦笑を収めると、クーランディアは切り付けるように言った。
「まだ間に合う。馬鹿げた暗殺計画から手を引け」
「閣下も承認されたものと」
「やむを得なかったのだ! あれは取引だ。取引だった。政府に御親征を認めさせるためだ。もう事は成った。我が国の全軍が、事実上、私の指揮下にある」
実質は諸氏族のゆるやかな連合体であるエルフィンド王国にとって、軍事の集権化は長年の課題だった。女王の神聖さを強調することで進められてきた軍改革が、敗戦間際の今になって、やっと実現したともいえた。
「あとは貴官が拒否すれば、連中の企みは終わりだ。暗殺で戦争に勝とうなどという、下衆下根に付き合わなくていい。まして戦死前提の任務など、統帥の外道だ。案ずるな。貴官と部下の身柄は、私が責任を持って守る。二度と秘密警察などに渡しはしない」
「その後、我らはどうすればよいのです」
「決まっている。軍に戻り、武人の本分を尽くすのだ。貴官には義勇兵連隊を指揮してもらう。新編に次ぐ新編で、正規の将校はいくらいても足りんのだ」
「新編部隊ですか。まもなく会戦という空気でしたが」
「事実、陸軍は反攻作戦を計画している。ネヴラス市を落とし、敵の兵站に打撃を与えるのだ。大喰らいのオークどもは、一度はネニング平原から撤退せざるを得まい。敵に長期戦を強いる」
「勝てますか。そうすれば」
「講和に持っていくのだ。相当に不利な条件になるだろうが。シルヴァン川流域の租借か、割譲か。建国以来の不祥だが、この際は仕方があるまい。早期講和こそ、たった一つの希望なのだ」
「それでエルフィンドは。白エルフはどうなります」
「王国は残る。どんなに無念でも、耐え難きを耐える時だ」
リンデルの表情が微妙な印影を帯びた。
「閣下、それでは白エルフは。このままですか」
「何を言っている」
クーランディアは困惑を隠さぬ声で言った。生還を期さない任務、それも成功するとは思えない無謀な計画を強いられているリンデルが、差し出された救いの手を取ろうとしないとは、思ってもいなかったのだ。
「閣下、私はかつて、ロザリンド会戦のあと、ドワルシュタインの征服に参加しました」
「知っている。私の指揮下でな。あの頃は貴官と面識はなかったが」
「昨年は、闇エルフと戦いました。彼女らが反乱を起こしたと聞いて。しかし実際には、闇エルフ虐殺を始めたのは我が国の方で、彼女らは必死に抵抗して、生きようとしていただけでした」
平素、深沈重厚で知られたクーランディアの口元に、やや力が籠ったように見えた。
「陸軍大臣が、内務省と結託して動いたのだ。教義を盾にして」
答えたクーランディアの声は平静そのもので、悔恨も憤りも無かった。その不自然さが、リンデルの内心に確信を与えた。
「……閣下は関わっておられないのですね」
「当たり前だ。私もロザリンドでは、闇エルフに助けられた身だぞ」
「ですが、あの虐殺は、私たちがドワーフ達にやったことの、延長線の上にあるように思えます。神聖な国土から異物を追い払うという。神に選ばれた白エルフは、違う生き物を排除してもよいという」
「秘密警察に何か含められたか。とにかく拒否するんだ。もともと不可能な任務なのだ。貴官の恥にはならない。リンデル大佐、やっと君に表舞台で活躍して貰える。急造の連隊でも、君ならうまく扱えよう。力を貸してくれ。共に祖国の窮を救うのだ」
熱いものがリンデルの内心から湧き上がる。高級将校なら誰もが心得ているべき人身掌握の手管だと分かっていても、かの英雄クーランディア元帥にこうも言われれば、軍人なら「命も要らぬ」感動するのが当たり前だ。
廉潔。豪胆。冷静。そして大度。リンデルを見つめるクーランディアは、軍人の美徳を一身に体現したようであった。
<クーランディアは、まともであり過ぎるのだ>
そのことが、あらゆる美徳からは程遠い秘密警察長官の言葉を、リンデルの脳裏に響かせる。
<あの将軍が国を乗っ取っていれば、こうはならなかった。あくまで武人でいたいのだ。だから必要なことができない>
リンデルは、自分の舌が勝手に動くように錯覚した。己の声は、こう言っていた。
「昔、マルリアン大将から伺いました。ロザリンド会戦の後に、元帥は仰ったそうですね。『戦争の勝利は悲惨だが、戦争の敗北はさらに悲惨なものだ』と」
「ああ、確か、そのようなことを言ったかもしれん」
「今も同じお考えですか?」
「当然だ。いかに苦しい戦いでも、我々は勝つために存在する。せめて負けないことだ」
「一撃を与えて、敵を不利にすれば講和できますか? 敵は、有利になるまで戦えばよいだけではないですか」
「粘りに粘り、敵が諦めるまで戦い続けるのだ。他に手はない」
「国力で遥かにまさる敵国を相手に」
「そんなことは分かっている! だが、勝利が……望みえぬとすれば、軍にどうしろというのだ。敗北を認めて、祖国と同胞をオークどもの食卓に投げ出せというのか」
リンデルはクーランディアから視線を外し、壁に掛かる大時計を見た。振り子が淡々と揺れている。
勝利の望みがなくなったとき。
守るべき国家の敗北が避けられぬと、そう認めてしまったとき。
国家の盾たる軍は、軍人は、いったいどうすればいいのか。
<最後まで戦う。他に死に方を知らないのだ>と、カランウェンは言った。
<お前ら兵隊が負けるから、みんな死んだんだ。お前らが戦争なんかするから!>と、少女は血を吐くように言った。
それら全てが戦争と軍の真実であり、リンデルが対峙すべき現実だった。目を逸らし、耳を塞ぎ、忠誠にして有能な一軍人に戻りたいと思った。
<それが無責任だというのだ!>と、ブレンウェルは言っていた。
この国で最も信用ならない女に貰った腕時計が、リンデルの手首で独自の時を刻んでいる。大時計が示す時刻とは、いくらか違っているに違いない。そのどちらが正しいのか、リンデルに知るすべはない。
<狂った時計でも、一日に二回は正しい時刻を指すのさ。持ち主さえ、それを信じてくれないとしても>
最後に背中を押したのは、軍人の規律ではなく、白エルフの教義や誇りでもなく、戦士の直感ですらなかった。社会や組織、生まれの種族から与えられたものではなく、それでもなお自分を自分たらしめる、内から湧き上がる何かだった。
「閣下、ご厚情に応えられぬことをお許しください。小官は、あくまで任務を果たします」
クーランディアは、かつての英雄らしい威厳を綻ばせ、明らかな動揺を見せた。
「何を言っている。敵の占領地を抜けてネヴラスに辿り着くなど、いくら山岳猟兵でも無茶だ」
「我らに選択肢はありません」
「私が守ってやる! 内務大臣が何を言おうと。貴官を逮捕などさせん」
「そうではないのです——閣下。我らとは、白エルフ種族のことです」
「何だと?」
「私が捕らえられたのは、殺されかけた闇エルフの娘を助けたからです。それで死刑囚に」
「それは……」
「我らは坂道を転がり落ちているのだと思います。自ら選んだ、誤った道を、ずっと」
「馬鹿なことを。グスタフ王の暗殺などできるわけがない。貴様は命を捨てて、講和の望みを無にしようとしているんだぞ」
「死を覚悟した命、必要だと信じることに使うのが、私の望みです」
「敗北を避ける以上に必要なとがあるか。国を道連れに死にたいとでも」
「いいえ。私が望むのは、いうなれば、敗北を」
「敗北を?」
「抱き締めること。私たち種族の全てで」
クーランディアは明らかに戸惑っていた。
「貴様が分からない」
「申し訳ありません。これはお返しいたします」
リンデルが机上に差し出した大佐の階級章を、クーランディアの長い指がつまみ、投げて寄越した。リンデルは反射的に受け止めた。
「貴様の部下達も全員一階級、上げてある。それも返すとは言うまい」
「申し訳ありません」
真新しい階級章を握るリンデルの手は、ごく僅かに震えている。
「憲兵を呼んででも、貴様を止めるべきなのだろうが」
「そうなさっても構いません」
「やめておこう。あいにく、本気の貴様を捕まえられる憲兵に心当たりがない。それに……貴様を見込んだマルリアンのためだ」
クーランディアは椅子に座り、さっぱりとした顔で微笑した。
「だが忘れるな。貴様は失敗する。作戦準備は間もなく完了する。軍主力は、貴様より早くネヴラス市に辿り着くのだからな」
「いいえ、閣下。ネヴラスには我らが先に」
「それは無理だ。エイセル峠の坑道は使えなかったのだろう」
それが、もともとブレンウェルが提示した侵入路の入り口であった。
「はい、オルクセン軍の爆破戦術で、落盤が生じました。それでディアネンまで引き返してきたのです」
「だから諦めたのだと思った。いったい、どうするというのだ」
「この非才の身、閣下におすがりするほか、為す術を知りません」
ぬけぬけと言ったリンデルに、クーランディアは苦笑した。
「言ってみろ」
「すぐに侍従武官長に会えるよう、お取り計らいください」
クーランディアは小首を傾げた。宮中の役職で、女王の筆頭軍事顧問役だが、実質的には、高位を極めた軍人の名誉職である。いまその地位にあるのは、前海軍最高司令官だ。
「ファラサール大将に? 今の海軍を頼むというのか」
「はい、武官長殿に、何卒」
「まあ、いいだろう。ああ、我ながら、馬鹿なことをしているな」
クーランディアにとっては、自ら死に向かう者への餞別か、あるいは詫びのつもりなのかもしれなかった。
◇
ファラサール武官長と面会し、所要を済ませたリンデル大佐は、一度兵舎に戻った。
メレス伍長を叩き起こして供を命じると、伍長と村で助けた少女を連れて郊外に向かい、ディアネン市国民義勇兵連隊の宿営地を訪れた。
職場ぐるみで志願したディアネンの市民から成る部隊で、正規の将兵はほとんどいない。宿営の天幕の並びは雑然としている。
さすがに連隊長は正規軍出身の予備役将校で、リンデルには旧知の大佐である。金髪碧眼、典型的白エルフの風貌だが、ややふっくらと肥えている。
「やあ、エド。生きていたか!」と、大佐は突然の訪問者に喜色満面となって、しきりとリンデルの肩を叩いた。
「今のところは。ところで、頼みがある」
そう言うと、リンデルは連れてきた少女を示した。
「この娘の預かり先を見つけてくれ」
戦災孤児だ、とは言うまでもない。そのような身の上の者がディアネンに多数流入して、治安悪化の原因の一つになっているのだ。
大佐は途端に困り顔になった。
「あのな、見ての通り、もう予備役じゃないんだ」
「ああ。氏族長のつてで、何とかならんかと思ってな」
大佐はディアネン市出身で、市内に住まう一氏族の長でもあるのだった。
「善行は結構だが、きりがないぞ。市内の様子は知ってるだろう」
「分かるが、曲げて頼む。貴様しか頼りがないんだ」
「お前、そう言われると弱いと思って……」
「頼む」
「仕方ないな。一つ貸しだぞ。それで、この娘の名前は」
リンデルは首を左右に振った。
「本人に聞いてくれ。ろくに話してくれんのだ」
そう聞くと、大佐は目を丸くした。
濃い髪色が特徴的な少女は、ふたりの大佐から注目されて、居心地悪げにしていたが、やがて意を決したように言った。
「……何をすればいいの」
そうリンデルに尋ねた。待たせた答えを聞かせろということだった。
リンデルは膝を屈め、少女と視線の高さを合わせた。
「何も。君がやがて望むことを」
「みんなのかたきを」
「それは駄目だ」
「どうして」
リンデルの両手が、少女の小さな肩に乗った。
「恨むな、とは言わない。だが、恨みに縛られて生きるな。白エルフとして、誇り高く生きろ。誇りを持つ者は、他者を見下げたり、憎んだりする必要がない。君の命は」
と、語りかけるリンデルの顔つきが、メレスを驚かせた。部下の前では見せたことのない、柔らかい表情だった。
「氏族の姉たちが残してくれた命だ。無駄にはするな。正しく使え。いつかきっと幸せになれ。それがいちばんのかたき討ちで、死んだ者への弔いだ。そして……」
少女は、きつく唇を結び、しかし拒絶することはなく、ぴんと耳を立てている。その瞳には、怒りだけではない懸命さがあった。
「まだ戦いを続ける、とてつもなく愚かな私たちの、たった一つの希望なのだ」
時に、星暦八七七年四月七日夕刻。
エルフィンド軍による一大反攻作戦、いわゆるクーランディア攻勢が発動される、二日前のことである。
(次話「決死の船」に続く)