「リーリヤ、今月のお小遣い残りいくら?」
清夏ちゃんの声で我に返った。
「はえ? な、なんで?」
スマホを机に置きながら振り返る。ベッドに座っている清夏ちゃんが、まるで私がなにか悪いかのように見つめていた。
私、何かしたかな? あとまた服散らかしてる……。
「だって、この前全然お金なかったでしょ?」
「こ、この前はこの前だよ」
ちょっと前を思い出す。あれは仕方なかったこと。そう、全部つむじちゃんグッズがあんなに魅力的なのが悪いの。
「で、今月いくら残ってるの?」
「た、たくさんあるよ?」
「本当に? 後ろのグッズたちを見ても?」
背後の、私の机に飾ってある宝物たちに清夏ちゃんが目を向ける。つられて私も後ろに注意が向いた。
つむじちゃんちびぬいに、シルヴェスタアクリルスタンド、他にもいろいろとあるがどれも私の大切なものだ。
「うん!」
「うん! じゃないでしょ! 先月なかったよ!? 特にロボットのアクスタとか!」
「清夏ちゃんもしかしてついにシルヴェスタの魅力に!?」
ずっと推していた甲斐があった。今度一緒に一気見しようね。
「なんでそうなるの!?」
「え? 違うの?」
「ぜんっぜん違うよリーリヤ。そのお金はどっから出てきたの?」
ものすごく大きなため息とともに見つめてくる。
「で、でもね清夏ちゃん。今月グッズはそんなに買ってないよ‼」
「グッズは?」
あ。
「……グッズも?」
「言い直さない」
「……はい」
立ち上がって歩み寄ってくる。
清夏ちゃんのお説教が始まっちゃう……。
「……今月もたくさん買っちゃったの?」
「……はい」
「そんなに量あるの?」
「……それなりに?」
「把握できるだけでいいから言える?」
「もちろん全部言えるよ!」
「ふーん、じゃあ全部お願いしてもらおうかなぁ?」
「…………やっぱり覚えてないかも」
「こらー! 買いすぎだー!」
清夏ちゃんに頭をわしゃわしゃと触られる。
「だってぇ~」
「だってじゃありませーん!」
まだまだわしゃわしゃされる。
「どーするのー? まだ今月それなりにあるよー?」
「我慢しますぅ~」
ようやく解放される。見なくてもわかるぐらいぐしゃぐしゃになっているだろう。
軽く手で整えながら恐る恐る清夏ちゃんを見る。呆れながら目を細めていた。
「本当に大丈夫なの?」
「うん。まだなんとかね」
さすがに私も同じ轍は踏まない。なによりまた清夏ちゃんに心配されたくないから。
「それならいいけど」
「偉い人も言ってたし、課金は家賃までって」
「それ絶対よくない言葉だよね!?」
「ふふ、冗談だよ」
「リーリヤが言うと冗談にならないよ……」
「そうかな?」
あれ? 私、よほど散財していると思われてる?
「この前なんかたくさんのガチャガチャ持って帰ってきたし」
「だってあれは……」
せっかくならコンプリートしたいよ。
「そんなに欲しいのが出なかったの?」
「うん……でも偉い人も言ってたよ。当たるまで回せば100%って」
「だからそれ絶対よくない言葉だよね!?」
「ふふ、冗談だよ」
「絶対嘘でしょ!? てかそれまた何かのアニメのセリフでしょ!?」
「………………そう、だよ?」
本当は違うけど。
「ほらやっぱりー」
ふぅと胸をなでおろす清夏ちゃんを見て私も安堵する。
「そんなまるでダメな大人の見本的なアニメ見るのやめなよ、リーリヤ」
「うん、そう、だね……」
思わず目をそらす。
「それで、結局いくら残ってるの?」
うぐ……清夏ちゃんが話を戻してきた。
しぶしぶと財布をあさる。
「……二千円?」
「ないじゃん!? 思った以上にないじゃん!?」
「この前より千円も多いんだよ!?」
ガチャが2回、ものによっては3回回せるんだよ?
「リーリヤぁ~?」
清夏ちゃんのトーンが下がる。
あ、ダメだ。これ本当のやつだ。
「……ごめんなさい」
「はぁ……次、やったらリーリヤママに言いつけるからね」
「えぇ!? それは……」
うぅ……。
肩を落としながら財布をしまった。
「でも、本当にダメな時は遠慮なく頼ってね」
優しく頭を撫でられながら声をかけられる。
「うん……」
結局、また心配をかけてしまった。
「まぁ、私も人のこと言えないんだけどさ」
「……ふえ?」
思わず顔を上げる。清夏ちゃんはバツが悪そうな表情をしていた。
ふと、奥のベッドに目が行く。散らかった服の中には知らない柄がチラホラと見当たる。
「……また買ったの?」
「いやー、好きなブランドが新作出してさー、つい?」
「つい? じゃないよ!」
清夏ちゃんだって人のこと言えないじゃん‼
「ごめんごめんって」
笑いながら後ずさりしてる。
「す~み~か~ちゃ~ん?」
「じゃ、そろそろレッスン行ってくるねー」
そのままその場を後にする清夏ちゃん。
「逃げる気でしょー!」
そう言って私はぼさぼさの頭のまま部屋を飛び出した。