転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話   作:微糖コーヒー

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第六十九話:その先へ続く流れ

 

 終わりに近づけば近づくほど、音は段々と小さくなる。

 

 大きな衝突はない。

 大きな変化もない。

 

 だが──

 

 確実に、遠くへ伸びていく。

 

 朝。

 

 詰所に、新しい報告が届いた。

 

 外部からだ。

 

 今までとは違う経路。

 

 イオリが読み上げる。

 

「北西外縁部にて、類似構造の発生を確認」

 

 全員が数瞬止まる。

 

 程なくしてレゴシが言う。

 

 

「……ここと同じ?」

 

 

 イオリが答える。

 

 

「完全一致ではありません」

 

 

「ですが、類似しています」

 

 黒狼が笑う。

 

 

「広がったな」

 

 カナンが小さく言う。

 

 

「誰がやったんですか」

 

 誰も答えない。

 

 ライカが言う。

 

 

「誰でもないと思います」

 

 その通りだ。

 

 誰かが作ったわけじゃない。

 

 

 見て。

 

 感じて。

 

 真似て。

 

 

 それで生まれた。

 

 昼。

 

 その場所の詳細が届く。

 

 小規模。

 

 

 まだ不安定。

 

 

 だが──

 

 

 機能している。

 

 

 流れがある。

 

 

 灯りがある。

 

 

 選択がある。

 

 

 レゴシが静かに言う

 

「……ちゃんと回ってる」

 

 

 黒狼が言う。

 

「行くか?」

 

 

 少しの沈黙。

 

 ルイが言う。

 

「どうする」

 

 

 全員が見る。

 

 だが──

 

 

 答えるべき者はいない。

 

 だから。

 

 

 レゴシが言う。

 

「行かない」

 

 

 黒狼が眉を上げる。

 

「理由は」

 

 

「自分でやってるから」

 

 短い答え。

 

 カナンが頷く。

 

 

「……俺もそう思います」

 

 ライカも言う。

 

 

「干渉しない方がいいです」

 

 イオリが補足する。

 

 

「観測のみで十分です」

 

 それで決まる。

 

 干渉しない。

 

 

 助けない。

 

 

 奪わない。

 

 それが、この構造の前提だ。

 

 夕方。

 

 外の途中。

 

 流れは変わらず続いている。

 

 

 だが──

 

 

 少しずつ確実に広がっている。

 

 一体の個体が、境界の向こう側へ出る。

 

 

 戻らない。

 

 

 新しい場所へ行く。

 

 それを、誰も止めない。

 

 レゴシが見ている。

 

 

 だが、何も言わない。

 

 黒狼が言う。

 

「任せたってことだな」

 

 

 そうだ。

 

 任せる。

 

 

 それが、それこそが最後の選択だ。

 

 夜。

 

 詰所。

 

 報告は安定している。

 

 

 だが、その中に新しいものが混ざる。

 

 外部構造の増加。

 

 

 類似導線の確認。

 

 イオリが言う。

 

「拡張が始まっています」

 

 

 ルイが頷く。

 

「止めるか?」

 

 

 誰も答えない。

 

 止める理由がない。

 

 これは、広がるものだ。

 

 夜。

 

 屋上。

 

 風が強い。

 

 灯りが揺れる。

 

 その先。

 

 

 見えない場所。

 

 

 そこにも、同じような灯りがあるかもしれない。

 

 同じじゃない。

 

 

 少し違う。

 

 

 歪んだ形。

 

 それでいい。

 

 完全に同じものは、いらない。

 

 確実に広がること。

 

 

 確実に続くこと。

 

 

 それが重要だ。

 

 境界はもう、ここだけじゃない。

 

 あちこちに存在する。

 

 

 重なりながら。

 

 

 広がりながら。

 

 それでいい。

 

 流れは、止まらない。

 

 ──メインクーンの俺が、“その先へ続く流れ”ごと、この世界の外へ押し出してやる。

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