転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話 作:微糖コーヒー
終わりに近づけば近づくほど、音は段々と小さくなる。
大きな衝突はない。
大きな変化もない。
だが──
確実に、遠くへ伸びていく。
朝。
詰所に、新しい報告が届いた。
外部からだ。
今までとは違う経路。
イオリが読み上げる。
「北西外縁部にて、類似構造の発生を確認」
全員が数瞬止まる。
程なくしてレゴシが言う。
「……ここと同じ?」
イオリが答える。
「完全一致ではありません」
「ですが、類似しています」
黒狼が笑う。
「広がったな」
カナンが小さく言う。
「誰がやったんですか」
誰も答えない。
ライカが言う。
「誰でもないと思います」
その通りだ。
誰かが作ったわけじゃない。
見て。
感じて。
真似て。
それで生まれた。
昼。
その場所の詳細が届く。
小規模。
まだ不安定。
だが──
機能している。
流れがある。
灯りがある。
選択がある。
レゴシが静かに言う
「……ちゃんと回ってる」
黒狼が言う。
「行くか?」
少しの沈黙。
ルイが言う。
「どうする」
全員が見る。
だが──
答えるべき者はいない。
だから。
レゴシが言う。
「行かない」
黒狼が眉を上げる。
「理由は」
「自分でやってるから」
短い答え。
カナンが頷く。
「……俺もそう思います」
ライカも言う。
「干渉しない方がいいです」
イオリが補足する。
「観測のみで十分です」
それで決まる。
干渉しない。
助けない。
奪わない。
それが、この構造の前提だ。
夕方。
外の途中。
流れは変わらず続いている。
だが──
少しずつ確実に広がっている。
一体の個体が、境界の向こう側へ出る。
戻らない。
新しい場所へ行く。
それを、誰も止めない。
レゴシが見ている。
だが、何も言わない。
黒狼が言う。
「任せたってことだな」
そうだ。
任せる。
それが、それこそが最後の選択だ。
夜。
詰所。
報告は安定している。
だが、その中に新しいものが混ざる。
外部構造の増加。
類似導線の確認。
イオリが言う。
「拡張が始まっています」
ルイが頷く。
「止めるか?」
誰も答えない。
止める理由がない。
これは、広がるものだ。
夜。
屋上。
風が強い。
灯りが揺れる。
その先。
見えない場所。
そこにも、同じような灯りがあるかもしれない。
同じじゃない。
少し違う。
歪んだ形。
それでいい。
完全に同じものは、いらない。
確実に広がること。
確実に続くこと。
それが重要だ。
境界はもう、ここだけじゃない。
あちこちに存在する。
重なりながら。
広がりながら。
それでいい。
流れは、止まらない。
──メインクーンの俺が、“その先へ続く流れ”ごと、この世界の外へ押し出してやる。