転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話   作:微糖コーヒー

68 / 68
第六十九話:その先へ続く流れ

 

 終わりに近づけば近づくほど、音は段々と小さくなる。

 

 大きな衝突はない。

 大きな変化もない。

 

 だが──

 

 確実に、遠くへ伸びていく。

 

 朝。

 

 詰所に、新しい報告が届いた。

 

 外部からだ。

 

 今までとは違う経路。

 

 イオリが読み上げる。

 

「北西外縁部にて、類似構造の発生を確認」

 

 全員が数瞬止まる。

 

 程なくしてレゴシが言う。

 

 

「……ここと同じ?」

 

 

 イオリが答える。

 

 

「完全一致ではありません」

 

 

「ですが、類似しています」

 

 黒狼が笑う。

 

 

「広がったな」

 

 カナンが小さく言う。

 

 

「誰がやったんですか」

 

 誰も答えない。

 

 ライカが言う。

 

 

「誰でもないと思います」

 

 その通りだ。

 

 誰かが作ったわけじゃない。

 

 

 見て。

 

 感じて。

 

 真似て。

 

 

 それで生まれた。

 

 昼。

 

 その場所の詳細が届く。

 

 小規模。

 

 

 まだ不安定。

 

 

 だが──

 

 

 機能している。

 

 

 流れがある。

 

 

 灯りがある。

 

 

 選択がある。

 

 

 レゴシが静かに言う

 

「……ちゃんと回ってる」

 

 

 黒狼が言う。

 

「行くか?」

 

 

 少しの沈黙。

 

 ルイが言う。

 

「どうする」

 

 

 全員が見る。

 

 だが──

 

 

 答えるべき者はいない。

 

 だから。

 

 

 レゴシが言う。

 

「行かない」

 

 

 黒狼が眉を上げる。

 

「理由は」

 

 

「自分でやってるから」

 

 短い答え。

 

 カナンが頷く。

 

 

「……俺もそう思います」

 

 ライカも言う。

 

 

「干渉しない方がいいです」

 

 イオリが補足する。

 

 

「観測のみで十分です」

 

 それで決まる。

 

 干渉しない。

 

 

 助けない。

 

 

 奪わない。

 

 それが、この構造の前提だ。

 

 夕方。

 

 外の途中。

 

 流れは変わらず続いている。

 

 

 だが──

 

 

 少しずつ確実に広がっている。

 

 一体の個体が、境界の向こう側へ出る。

 

 

 戻らない。

 

 

 新しい場所へ行く。

 

 それを、誰も止めない。

 

 レゴシが見ている。

 

 

 だが、何も言わない。

 

 黒狼が言う。

 

「任せたってことだな」

 

 

 そうだ。

 

 任せる。

 

 

 それが、それこそが最後の選択だ。

 

 夜。

 

 詰所。

 

 報告は安定している。

 

 

 だが、その中に新しいものが混ざる。

 

 外部構造の増加。

 

 

 類似導線の確認。

 

 イオリが言う。

 

「拡張が始まっています」

 

 

 ルイが頷く。

 

「止めるか?」

 

 

 誰も答えない。

 

 止める理由がない。

 

 これは、広がるものだ。

 

 夜。

 

 屋上。

 

 風が強い。

 

 灯りが揺れる。

 

 その先。

 

 

 見えない場所。

 

 

 そこにも、同じような灯りがあるかもしれない。

 

 同じじゃない。

 

 

 少し違う。

 

 

 歪んだ形。

 

 それでいい。

 

 完全に同じものは、いらない。

 

 確実に広がること。

 

 

 確実に続くこと。

 

 

 それが重要だ。

 

 境界はもう、ここだけじゃない。

 

 あちこちに存在する。

 

 

 重なりながら。

 

 

 広がりながら。

 

 それでいい。

 

 流れは、止まらない。

 

 ──メインクーンの俺が、“その先へ続く流れ”ごと、この世界の外へ押し出してやる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

その美食屋、転生者につき(作者:苦笑いの妖精)(原作:トリコ)

トリコの世界を便利な3つのチートと共に生きていく。▼息抜きに書いた習作です。


総合評価:7424/評価:6.78/短編:14話/更新日時:2026年06月04日(木) 22:26 小説情報

「誰が座敷わらしか、俺はただの人間だよ!」全員「んなわけあるかッ!!」(作者:ティファールは邪道)(原作:ワールドトリガー)

『第一次大規模侵攻』と呼ばれることになる事件。▼東三門が壊滅し、異世界からの侵略者『近界民(ネイバー)』の存在が公になったことで、界境防衛機関『ボーダー』が表舞台へと立つきっかけとなった未曾有の災厄。▼その激闘の裏で、生還した市民たちの間で、まことしやかに囁かれている奇妙な都市伝説(噂)があった。


総合評価:367/評価:6.5/連載:7話/更新日時:2026年09月16日(水) 15:06 小説情報

反転術式で行く薬屋世界ハピエン計画(作者:蜂鳥)(原作:薬屋のひとりごと)

気づけば、古代中国・茘国に生まれていたオリ主。▼金なし・親なし・職もなし。▼だけどこの身に呪術あり。▼「決して呪力で何ものも傷つけることができない」▼そんな天与呪縛を与えられた代わりに、▼ありとあらゆるものを癒やしなおす特級の反転術式をその身に宿す。▼羅漢×鳳仙ガチ推し勢のオリ主がいく、鬱展開ぶち転がし物語。▼「とりあえず羅漢と鳳仙の結婚式見るまでは死ねんッ…


総合評価:1706/評価:7.47/連載:9話/更新日時:2026年07月27日(月) 23:56 小説情報

四番隊の一般隊士、実は卍解持ちの激強死神でした(作者:獅子論)(原作:BLEACH)

ほんの思い付きでとりあえず書いてみたものです。▼皆さんの目に少しでも面白いと思ってくれたら幸いです。


総合評価:820/評価:4.96/短編:53話/更新日時:2026年08月29日(土) 20:11 小説情報

【完結】明らかにボロアパートで暮らす獣人彼女はキメているのに「これはタバコ!これはビタミン剤!」とか言い訳しているのだが?(作者:SUN'S)(原作:ヤニねこ)

ヤクねこには、好青年の彼ピがいるらしい。


総合評価:1876/評価:8.53/完結:23話/更新日時:2026年08月16日(日) 14:50 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>