転生老婆の怪しい店 作:ああああああああ
「どーも。やってます?」
「見ての通りだよ」
「じゃあ閉店?」
あれから数週間後。あの出来事はまるで夢だったかの様に、件の少女が姿を見せることは無かった。その代わり、客はちらほらと来ている。と言ってもその殆どが冷やかしの為売上は帳簿に付けるまでもない。今来た奴もその中に入る。
「営業してるよ」
「あ、そうなんすか?まぁどうでも良いですけど。それより知ってます?」
「何を」
「最近、モンスターが偉い勢いで減っていってるらしいんですよ」
それは良い事じゃないかと返す。だってそれは世界が平和になるって事だろう?基本的にモンスターは魔王が産み出した悪意の塊なんだから。と言うか、ウチの店が暇な事はどうでも良くは無い。こちらからしたら死活問題なのだから。
「モンスターどもがバグって共食いでも始めたのかい?」
「チッチッチッ、気になるっすか。気になるっすよね」
少し、いやかなりウザいと思いながらも頷くと待ってましたとばかりに笑う。そして手を金のマークに変える。
「ここから先は有料になるっす。こっちも生きる為に大変ですからね」
世知辛い世の中だ。何処かもかしこも生きる為に金、金、カネ。どの世界でもそれは変わらない。そして──。
「アタシだってねぇ、生きる為に大変なんだよ。自分一人が大変だと思わない事だね」
俺に金が無いことも変わらない。それが世の常である。
「はぁ、分かったっすよ。なら交換といきましょう」
「交換する物なんか無いよ」
もしかして服を脱がせてその服を質屋にでも売り払う気か?羅生門みたいに。羅生門みたいに!
「あるっすよ。人には何かしらの情報を持ってるんすよ、その人だけが知ってるその人にとってはなんともない情報もで他の人にとっては喉から手が出る様な情報かもしれない。情報は、宝物と一緒なんすよ」
いつもはクールな情報屋も、こう言う時だけは鼻息荒くして煩い。
「で?何を聞きたいんだい?悪いけどスリーサイズは遠慮させて貰うよ」
「それは大丈夫っす。それより、さっきの話にも戻るんすけど、実は俺的にはおばあちゃんと関わりがある人物がやったんじゃないかと思うんすよね」
「どうしてそう思う?」
まるでミステリードラマの探偵が謎解きをする様に。情報屋は店内を彷徨い、やがてとある物を手に取った。
「これ。本当はトップシークレットなんすけど、実はさっき言った人物が戦う時に使う武器はこの店にあるこの刀に似ているんすよ」
「そんな物良くある物さ」
面倒臭そうな予感がする。関わったら嫌な事に巻き込まれると言う直感を感じ、必死に誤魔化す。
「少なくとも俺はこの町では見た事ないっすよ?」
「アンタが世間知らずなだけさ」
「そうっすか。ムカつくっすけど今は置いときましょう。武器は、この店の物じゃないかもしれない。そう言う事にしときましょう」
でも、と情報屋は続ける。まだまだ話は終わらなそうで、俺は心の底から溜息をつく。
「でも近くで路上暮らしをしてるおじさんが、この木刀を持った人間が店を出たところを見てるんすよ。それに関してはどう言い訳します?」
ああ、見られてたのか。じゃあ知らぬ存ぜぬは無理そうだ。と言うか何でここまで追求されてるんだ?もしかしてアイツ腹減り過ぎて飲食店襲ったのか?もしかしてこれは事情聴取で牢屋に入らなきゃいけないのか?
「悪いけど、アタシが最後に入るのは棺桶って決まってるから牢屋に行く訳にはいかないよ」
「棺桶?牢屋??……ああ、別に捕まえて死刑とかじゃないっすよ?ただ、あの子友達とかなんすよね?」
「友達ではない」
「え?いやいやそれは流石に通らないっすよ」
「店に侵入して、物品を要求。そして急かす様に首を絞めて来る友情なんてあたしゃ知らないよ」
名前も知らないし、何も知らないからアレは友達じゃない。アレから一回もここに来ないし。
「それは友達じゃないっすね。うーん、参ったなぁ」
「そもそも、何の用だい?話が見えない」
「端的に言えば、そうっすね、あの子このままじゃ死ぬんすよ」
情報屋はまるで、明日の天気は雨の如く簡単に人の死を宣言した。