兄のなり代わり人生を歩んでいたが、渋谷事変を以降の悲劇を発生させないため、
最終的に夏油につき高専を裏切った。
夏油の死体と共に焼身自殺をして生涯を終え、北に向かった彼女。
新しい自分はどんな自分だろうか
if 転生者、百鬼夜行に参加する https://syosetu.org/novel/408095/47.html からの分岐。
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)だった転生者、七海建人の双子の妹で、まさかの2周目
・オリキャラでます
・ネタまみれです
・これまでで最も、激しい捏造、妄想含みます!!(ここ最近ずっと言ってる)
死滅回游④
天元会談〜葦を啣む
過去一のトンデモ設定、とんでも話です。
ガバガバ設定に更にガバガバ設定を加えてますが許してください。
薨星宮本殿を出て、長い石畳の通路を夏油とともに歩く。
足音が、やけに大きく響いていた。
周囲は相変わらず静かで、空気はひんやり。12年経っても全然変わらない重い空気だ。
ついさっきまで天元と向かい合っていたせいか、すごく肩が凝った気がする。
「結局どっちもダメだったね」
「まぁ、仕方ないです。欠点も分かりましたしね」
手の中にある獄門疆を、ポン、ポン、と軽く投げながらぼやく。
結構無理して作ったんだけどなー宝石も使っちゃったし。
それなのに、使うことができなかったのは残念だ。
そう。
天元に提案した、人の心がない二つの案。
『夏油の呪霊操術に囚われてもらう』
『獄門疆(複製)に囚われてもらう』
これらは、どちらも天元の協力を得られなかった。
いや、正確には違う。
天元は一応、検討はしてくれた。
してくれた上で、どちらにも致命的な問題があると判断された。
その時の会話を思い出す。
まずは、『夏油の呪霊操術に囚われてもらう』案。
これは一度囚われてしまうと、天元の自我が戻らない可能性が高いとのことだった。
たしかに、原作で羂索に囚われた天元は、解放後も意識が戻らなかった。
宿儺の残骸の中に残置され、その状態のまま結界を維持しているような描写があったのを思い出す。
……うん。
確かにリスクが高い。
というわけで、この案はNG。
そしてもう一つ。
『獄門疆――複製のほう――に囚われてもらう』案。
こっちに関しては、獄門疆の内部では、おそらく呪力や術式が完全無効化されることが問題だった。
天元いわく、獄門疆の元となった源信の結界術と同じなら、獄門疆の中は呪力がゼロになり、術式が発動しない空間となる。
つまり、オートで発動している不死の術式が、強制的に解除されるだろうとのことだった。
星漿体との同化の失敗で進化し、天地そのものが自我となった天元。
組成としては呪霊に近い状態のため、獄門疆の中で完全消失してしまう可能性があるらしい。
さらに、本来は消えるはずの個としての自我を、己の結界術で保っている。
その結界術も、上記の理由で獄門疆の中では解除されるだろうとのことだった。
そうなれば、自我が消滅。
そんなわけで、どちらにしてもダメ。
天元ならワンチャン上手いことできないかと思ったけどねぇ。
正直、結界の効果が残るなら天元がどうなっても……というわけにはいかない。
私はそこまで人の心は捨てていない。
獄門疆の中はさすがにチェックできなかったから、原作描写からの想定で動いていたけど、天元の証言で効果が確定した。
中に囚われた人間や呪具は、呪力がゼロになり、術式も完全に使えない。
てっきり、呪力が抑えられる程度かと思っていたけど、厄介極まりない。
そういえば、獄門疆に囚われる前の五条に、脱出用の[[emphasismark:呪具 > ﹅]]は渡してある。
けれど、五条は獄門疆から出てこなかった。
それも、この推測を裏付けている。
あ。
これ、私が渡した格納呪霊、たぶん消滅したんじゃね?
それに思い当たって、思わず天を見上げ、ため息をついた。
レア物だったのに!
提案が通らなかったことで、私が落ち込んでいると思われたらしい。
「いい案だと思ったよ。仕方ない。こういう時はトライ&エラーさ」
九十九はそう言って、軽く私の肩を叩いた。
「加茂憲倫の目を盗んでこれを作ったとはさすが
反対側の肩を叩きながら、うんうんと頷いている脹相。
何度も言うが母さんじゃないからな?
「君が羂索の賛同者でなくて——高専側の、五条悟側の人間で、よかったと心底思うよ」
さすがに、失敗すると分かっていることはできない。
結局、こちらの案もNGになった。ちくしょう。
というのが、先程までの流れだ。
「まぁ、天元様と話せて色々情報を仕入れられたのは良かった。私達のことがほとんど情報としてバレてないのは意外だったよ」
そう。
私達『前回の記憶がある組』の行動に関して、ほぼ把握されていなかった。
本来なら天元は、日本中に張り巡らせた結界越しに、それを把握できるはずなのに。
話の齟齬に気づいた夏油が、ストレートに「見てたんでしょう?」と、天元に尋ねたのには驚いた。
天元いわく、私達――つまり記憶がある組――が話をしている時、唐突に私達の周りにノイズが発生したようになり、会話や状況を正確に見られないことが多々あったらしい。
「電波が悪く、ノイズだらけのテレビを見ているようだった。
……君たちは因果と呪いで雁字搦めだ。輪廻のなかでなにをやったんだい?」
いや、私達もそう思うけどさ。天元にまで言われると思わなかった。
そのタイミングを聞いてみると、どうやら前回の出来事について話している時だと確信し、夏油と視線を合わせて頷き合った。
これ、もしかして世界の強制力じゃね?
前回死んだ瞬間より長生きした人間は、強制力の枷から解放される。
与は前回の記憶はないけど、我々と前回のことに関して話ができるのはそのせいだろう。
七海と伊地知に関しては、私と双子という立場だったことにより、羂索が私の魂を探し、記憶を取り戻させる術が誤作動を起こしたとしか考えられない。
伊地知は前回の双子の兄。
七海は今回の双子の兄。
二卵性とは言え、双子の魂ってやっぱり近いんだなと痛感する。
現に巻き込まれてるし。
私のせいで変な業を背負わせた気がして、ちょっとだけ申し訳なくなる。
七海の発案で「前世知識を直接的に渡すと害があるかもしれない」という理由から、渋谷の前に夏油や五条に前回の記憶周りを盗み聞きさせる——もとい、共有しなかった。
結果として正解だったかも。
何か世界の反発とかありそうで怖いし。
ちなみに白菊については、天元は普通に把握していた。
白菊として生きていた人生全てを、天元はリアルタイムで見ていたから、制限もクソもないんだろうな。
そもそも天元、あの時代から地続きで生きてるからね。
「これで仮に天元様が羂索に囚われても、我々の真の目的は伝わらない。これは本当にラッキーです」
「どちらかというと、君のほうがまずいよね。宿儺が復活したら」
夏油の指摘はもっともだ。
他にも問題はあるけど、最低限の準備ができている。
原作の知識がある私は、原作で発生していた、あるいは発生しそうな問題に関しては、この11年の間コツコツと備えてきたからだ。
ただ、宿儺に逆らえないという私自身の縛りに関しては、完全に想定外だった。
この差がとてもデカい。
渋谷でその縛りを知ったせいで、何の準備も対応もできないまま走り続けた結果、獄門疆を持ち去られた。
だからこそちゃんと対応を取らなければならない。
「んー、宿儺は私をおもちゃにして遊ぶのが好きなので、自分で縛りを入れますかね」
「たとえば?」
夏油が合いの手を入れながら、ちらりと横目で私を見下ろした。
「過去の記憶に関して宿儺の命令に従って話したら死ぬ、とか。
あ、もちろん即死じゃないですよ?
話そうとしたあたりから、身体に負荷がかかる感じがいいかも。宿儺の命令と比例する感じで。
いきなり血反吐を吐いたら、宿儺は面白がるけど死ぬと分かったらやめるでしょう。いちおう、私を殺したくはないみたいですし……」
「潔乃さ、ここでチュー太郎出されたいの?」
元々悪い目つきがさらに鋭くなり、今にも人を殺せそうなほど不機嫌で、イヤそうな表情をしている。
いや、今回は比較的真面目なんだよね。ため息をついて私は話を続けた。
「冗談抜きでそれくらいしないと私ゲロります。
平安で八割殺して反転術式で治す、再度八割殺して反転術式で治す……っていう無限ループを、私が従うまで繰り返されたことあります」
「……平安時代に生まれなくてよかったと心底思うよ」
ホントそれな。私もそう思うよ。
「そういうわけなんで、情報は吐かないようにします。でも宿儺には逆らえないでしょう。
つまり、私は敵になります……その時どう立ち回れるか分かりません」
真っ直ぐに夏油を見上げ、視線を合わせる。
「もちろん努力はします。でも、私の行動が致命的でどうしようもない時は——私を殺してください」
「断る。
……けど、心に留めておくよ」
秒で断られた。
夏油は視線を逸らし、歩くスピードを上げて私を置いて行く。
断りつつも、私の本気を汲み取ってくれた。
最悪の時は私を止めてくれるだろう……夏油は優しいから。
「ほら行くよ。
私を振り返り、空気を変えるかのように軽口を叩く夏油。
「その呼び方やめてくださいよ。前回の夏油さん思い出してイヤなんですけど」
「ハハッ、
「ほんと、夏油さんって意地悪な人ですね」
「君よりマシだよ」
彼を追いかけながら、その意図に乗っかりこちらも軽口を返す。
そして、心の中でお礼を言った。
「刀身を折り、間合いを縮めたと判断し、深く踏み込んだな。だからオマエは駄目なのだ」
自らの娘の首根っこを掴み、無造作に引きずる禪院扇。
「私は剣士ではない。術師だ。出来損ないの物差しで私を測ろうなど、笑止千万」
そんな扇に荷物のように無様に引きずられながら、真依は内心舌打ちした。
自らの父親に斬られた傷は深く、まともに身体も動かない。
真希は父親にもろに斬られて意識を失っている。いや、もしかしたら、もう死んでいるかもしれない。
それにしても、べらべらと能書きをたれてみっともない。
傷口の痛みを堪えながら真依は話を聞き流す。
「何度でも言うぞ。私が前当主に選ばれなかったのは、オマエ達のせいだ」
アンタが当主になれなかったのは、ただの実力不足でしょ。
直毘人に比べたらアンタはカスよ。
甚壱のほうが顔はブサイクだけど、まだマシだわ。
これだから他責思考の人間は。
みっともないったらありゃしない。
内心そう思うが、喋るのも億劫で黙っている。
「子が親の足を引くことなどあってはならない」
ここまで言われたら、真依の中の
「知らないの? この国では足の引っ張り合いが美徳なのよ」
薄ら笑いを浮かべて煽ったが、あっさりと階段に真希とともに投げられ最下段まで落下する。
うめき声をこらえながら、身を起こす。
この衝撃でも真希が目覚めないことに、真依は眉をひそめる。
「ここは訓練と懲罰に使われる部屋だ。2級以下の呪霊を無数に飼っている。
今は私に怯えているが、じきオマエ達を喰いに這い出てくる」
四方を囲む呪霊の気配。
真依の実力では太刀打ちできず、頼りの真希は意識を失ったままで、生死不明。
「……天与呪縛……フィジカルギフテッド。それが何だ。我々術師は日々鍛錬した肉体を更に呪力で強化して戦う」
そんな二人を心底忌々しいものを見る目で見下ろす扇。
「真希。オマエの力など、皆手抜かり無く持っているのだ」
扇にとって、真希と真依の双子は人生における失敗作。不良品。
自分の人生の邪魔になるもの。その程度でしかない。
痛む身体をかばいながら、真依は倒れた真希の側に膝をつく。
顔色は悪く、傷口から流れた血が床にじわりと広がっている。
「さらば。我が人生の汚点」
我が人生の汚点。
それは、こっちのセリフよ。クソが。
真依は思わず笑いそうになった。
けど、声には出さない。そんなことを言う体力すら惜しい。
真依の睨みつける視線に何の感慨も抱かず、扇は背を向ける。
そして、もうここに用は無いとばかりに、懲罰部屋から出ていった。
すぐさま、真依は真希の胸に手を押し当てる。
トクッ、トクッ……
と定期的に触れる脈に真依はほっと息を吐いた。
さすがは天与呪縛のフィジカルギフテッド。
深い傷で出血量も多いのに生きている。
いつものようにイヤミを混ぜた軽口を——
「誰!?」
明らかに人の気配がした。
大量の呪霊の気配に紛れて、そこにいる。
冷たい汗が頬を伝う。
「へー俺に気付くとは、イイ勘してるじゃねぇか」
「狙撃手は居場所がバレてしまったら狙われて終わりだからね。違和感を察知する能力が高いのは素晴らしいことだよ」
「あー一応味方だから警戒しないでくれる? まだ近くにいるだろうから声小さくね」
場にそぐわないほどの軽い口調で話しながら、呪霊の影から姿を現す。
「甚爾に、夏油先生……あんたは七海潔乃……?」
総監部からの指名手配3人組に、真依は目を見開いた。
「そ、七海潔乃で当たってるよ」
ひらひらーっと軽く手を振ってニコリと笑うと、胡散臭いものを見る目で見られた。
思いっきり警戒されてるな—。
そりゃそうだろうね。
禪院家の呪霊だらけの懲罰部屋に、渋谷事変の主犯格二人に、共犯疑い一人、裏切りトリオがなぜか隠れていたんだから。
まぁ、彼女も呪術界を知り尽くした人間だから、私達が素直に裏切り者とは思ってないだろうけど。
「敵じゃねーよ。こりゃひでぇな……おい、早くしろ」
一番の顔見知りで身内の甚爾が何の警戒もせず真依と真希に歩み寄る。
慌てる真依を無視して真希の傷を確認し、私を呼んだ。
え? え? と若干混乱しつつ警戒する真依を無視して、近寄り、まず宝石を取り出す。
真希の傷は深い。
こちらは私が直接見たほうが良いだろう。
宝石を握ったまま患部にかざし、すぐに治療を開始する。
ぼんやりと淡く輝く回復の光。
それを見て真依の目が大きく見開かれた。
「嘘でしょ、回復効果の呪具!」
さすがに驚いている様子の真依に、もう一つの回復の呪力宝石を取り出して、ぽいっと投げ渡す。
「ちょっと呪力流して患部に当てて」
驚いた表情で目を見開き私を見つめたが、表情がサッといつもの余裕を装った笑みに変わる。
「遠慮なく使わせてもらうわ」
自分の腹部に当てて回復をし始める。
警戒心は強いけど、思考の切り替えが柔軟なんだ。
当人は術師をやりたくはないし、嫌ってるけど性格の悪さも含めて術師向きだと思うよ。
前回も含めてこの子とは殆ど交流がなかったけど、原作通りの強気な性格でちょっと嬉しい。
たくましい子は好きだ。
「それにしても、呪霊だらけで落ち着かないわね」
周りの呪霊を睨みつつ早速憎まれ口を叩く真依。
それを見て、夏油が元気そうだと笑い、口を開いた。
「あまり悪く言わないでほしいな。ここの呪霊たちは、私が全部取り込んだからね。
だから襲ってこないよ。安心して」
「は?」
そう、この懲罰部屋の2級呪霊達は、既に夏油が全部取り込み済みだ。
そもそも、私達がどうしてここにいるか、その説明からしたほうがいいだろう。
まず、天元との会談のあと、私は甚爾と合流した。
甚爾は当初の予定では真希の後をこっそり尾けて京都に行くはずだったが、三人で話し合い予定を変更。
この後の流れは私の未来視通り(原作知識)になるだろうということで、
仕込みをするため、私と夏油ともに真希より早く京都へ。
移動手段はバイク。
私は高専1年の時に免許を取ってたし、夏油もそれを見て自分で乗りたくなり、取ったらしい。
甚爾は無免許だけど、問題なく乗りこなせるので無問題とする。
ほら術師はこういうの許されるから。
この前話した術師の越権ね。だからOKOK。
とにかく、三人仲良く京都の禪院家まで来た。
そしてやったことは、禪院家の防犯の結界の細工だ。
甚爾の勝手知ったる禪院家。
やったことは以下だ。
一、呪術的な結界に引っかからない、甚爾がこっそり忍び込む。
二、夏油が使役している1級呪霊でどこにも登録してないものを一体、禪院家の結界に派手にぶつける
三、大騒ぎになったその瞬間、禪院家の結界を一瞬だけ瞬断させる。
四、その隙に、私と夏油が禪院家に潜り込む。
五、そのまま騒ぎに紛れて懲罰部屋へ駆け込み、夏油が中の呪霊をサクッと全調伏。
六、呪霊に紛れて、クソ親父と真希真依の到着を待つ。
屋敷の外に、夏油の残穢が残ってるって?
あぁ、それなら大丈夫。
呪霊を離れた場所で出して、先に禪院家付近に潜伏させていた。だから夏油の残穢はない。
呪霊の残穢はあるけど、今の京都は死滅回游が始まってから、普段より呪霊が多い状況。
さすが、呪術の聖地。
古からの日本の戦乱の中心地。
呪霊が湧きまくる要素しかないもんね。
そして夏油が呪霊に呪力を抑えるように指示したから、そこまで悪目立ちはしなかった。
これから私が術式を使うのと、夏油の呪霊操術の残穢は——まぁ、どうせこれから呪力宝石で上書きしまくるから問題なし。
呪力宝石って使えば使うだけ、多種多様な呪力の残穢がばらまかれるからホント便利。
まだ子供だったとはいえ、あの五条悟の六眼ですら欺くレベルだ。
隠蔽としても最高。
軽くだけどどうやって忍び込んだかを話すと、真依が呆れた顔をした。
「気持ち悪いんですけど。私達があの人に殺されかけてここに来るのが、分かってるみたいじゃない」
いや実際そのとおりなんだよね。
ここの三人はこうなることを知ってたから対策を取ったわけで。
まぁ、その言い訳も用意してある。
「俺はもともと禪院家の人間だぞ。アイツらがやりそうなことくらい分かる」
甚爾がそんなことも分からないのか? と言ったふうに真依を見下ろす。
真依の額に青筋が浮かび、私はゴングの音を幻聴した。
「禪院って顔立ちが似てると思ってたけど、煽りスキルも似通ってるね」
京都の人間らしく痛烈な嫌味の応酬をしている甚爾と真依を尻目に、夏油が困ったようにぼやく。
お前も大概だよと内心で突っ込みながら、真希の治療を続けていると真希が小さく呻いてまぶたを開いた。
ぼんやりとした視線が鋭いものにすぐさま変わる。
「私は、アイツらほど酷くねーよ……」
私の手をそっとどけながら身を起こした。
訝しげな視線を私に向けていたが、何かを思い出したのか意味深な視線を向けてくる。
「七海さんに似てるな……ってことは、アンタが失踪した修復術式の七海潔乃か」
やっぱ修復術式って貴重だからか、未だに私の名前有名なのか。
新田新も私のことを知ってたしなぁ。
表向きの修復術式すら、隠しておいたほうが良かったかな?
「あと、悟が初恋で今も大好き大好きって、うぜーほど言ってるぞ」
アイツ何言ってんだ。
思わず半眼になる。
そんな私を見て楽しそうにニヤつく真希。
その嫌なニヤつき顔は、真依や甚爾とそっくりだよ。
さすが、平安から続く禪院家。
魑魅魍魎が闊歩する呪術界で生き抜いてきた煽り顔は、遺伝子にまで刻まれてるってか?
この禪院遺伝子、嫌すぎるだろ?
「見つけたらぶち犯して既成事実作って、結婚するって公言してるぞ」
「なに犯罪予告を堂々と公言してんですか……」
「御三家の当主だぞ。揉み消し余裕だろ」
余裕じゃねーんだよなぁ。
思わず舌打ちしてしまった。それを見て、真希が楽しそうに声を抑えて笑う。
そして、すっと夏油に視線を投げた。
「んで、傑は潜伏用のイメチェンか? 胡散臭いバンドマンみたいで似合ってねーな」
いきなり夏油に飛び火した。
「最初見た時、俺もそう思ったぜ。変装するにしても、もう少し選べよ。十字架とかって歳かよ」
「アタシもそう思ったわ。夏油先生って厨二病拗らせてるのね。フフッ」
すかさずカットインしてくる甚爾と真依。
こういう時に息ぴったりなの、何なんだよ。
というか、甚爾はもうこのネタで何回も夏油を擦り倒してるのに容赦ないな。
禪院家って高火力だなぁ。
夏油から、ハイライトの消えた視線を向けられた。
「……潔乃。髪の毛無理やり切って、この服を用意して、この格好を無理やりさせたの、君だよね?」
「そうですね。もとの夏油さんから遠ざける必要ありましたから」
視線を逸らしつつ、ボソボソと言い訳をする。
いや、最初はそうだけど。
渋谷直後でライブハウスのロッカーから手に入れられた服は、それだけだったからね。
厨二病感をマシマシにしてる十字架ぶらぶらイヤーカフとかは、私が元々用意してたものだけど……
追加で用意した服は、甚爾がイメチェン後の夏油を見て、合わせて用意してきたからな?
全部が全部私のせいじゃないから。
「うさんくせーの変わってねーけどな」
真希の追い打ちに禪院トリオが堪えきれずに笑い出す。
夏油の額に青筋が浮かぶ。
不本意な断髪。
不本意な服。
不本意なカフデザインのピアス。
その全てを押し付けたのは、おおむね私。
なのに今、趣味の悪さを笑われているのは夏油のみ。
理不尽だねぇ。
世の中って。
チュー太郎が出されるまで、あと五秒。
真希と真依がチュー太郎からのお仕置き——「まだ
自分の服や袖でヨダレを必死で拭いながら、恨みがましい視線を私と甚爾に向けてくる二人。
逃げ損ねたほうが悪いんだよ。
術師なんだからね。
え? 私?
お金で解決、ありが甚爾。
視線を向けただけでサッと抱えて逃げてくれたよね。
「さて、ここから本題に入るけど」
表情を切り替える。
さっきまでのふざけた空気は、ここでおしまい。
ここからは、冗談抜きで真面目な話をしないといけない。
真希と真依の運命を大きく変える話になるから。
二人を正面から見て、口を開いた。
「一卵性双生児は呪術では同一人物とみなされること、知ってるよね?」
私の発言に、真希と真依の表情が変わる。
真希は小さく「あ?」とつぶやき、真依は嫌そうに目を細めた。
呪術を学ぶ者なら誰でも知っている話。
「真希さんは真依さんで、真依さんは真希さん」
真希と真依を順に指差し、指先を二人の間で交互に動かす。
「真依さんには術式がある。真希さんにはない」
双子だから駄目だと、生まれてきた時から何度も言われてきただろう。
事実だとしても、気分の良いものではないはずだ。
「お互いに同一人物の扱いだから、互いに中途半端な状態になっている」
私の言葉にチッと舌打ちする真希。
傷口に塩を塗り込むような言葉だけど、きちんと話さないといけない。
「真依さんは呪力が少なく、ただでさえ燃費が悪い構築術式を使いこなせないし、
真希さんは中途半端な呪力を持った天与呪縛のフィジカルギフテッド」
言葉にすると、本当に理不尽だ。
真希が努力しても、真依が望まなくても、二人はずっと、二人で一つだった。
そして、その結果生じた都合の悪い部分だけ、個人の責任のように背負わされていた。
呪術って本当にクソ。
「そんな分かりきったことを……何が言いたいの?」
真依の言葉には棘があった。
そりゃそうだろう。
原作では真依はこのことに前から気づいていた。
そして、いつかこうなると思っていたとも言っていた。
いつか、自分が全てを持って
そんな彼女たちに向かって、私は提案する。
「私なら双子の因果を切ることができるけど、どうします?」
よまなくてもいい、あとがきてきなもの
主人公
せっかくたくさんの宝石使って獄門疆作ったのに駄目だった。ちくしょう。
なら次。と完全に思考は切り替えている。
両面宿儺に原作知識やら今後の作戦を渡すわけには行かないので、万が一の縛りを考えはじめた。
相変わらず作戦に関しては人の心がない。
禪院トリオの煽り力の高さに軽く引いてる。
チュー太郎からは甚爾にすかさず助けを求めて、逃げ切った。
ヒモとの連携はバッチリだ!
そして、当初の予定通り双子の因果を切る話を提案し……
夏油傑
作戦が駄目だったけど、何となくそうなるだろうなぁとは予測していた人。
主人公の人の心がない提案に、怒りつつもある程度は汲み取るつもりで居る。
でも絶対に殺す気はない。悟に私が殺されてしまうよ。
禪院家の懲罰部屋では、大量の呪霊を取り込んだ。
主人公が元々置いていったオブラートで包み、持ってきた味変の飴やらチョコやらと一緒に流し込んだので苦じゃなかった。
そして、どこまでも今のファッションスタイルを擦られてブチギレてる。
だから、私の趣味じゃない!!
チュー太郎を出したが、主人公と甚爾には逃げられてよりムカついた。
真希と真依の決断を見守り、そっと目を伏せた。
伏黒甚爾
今回も大活躍だった人。主人公の便利カード化してる。
イメチェン後の夏油を見て、ニヤつきながら孔経由で服を揃えた。
このヒモ本当に仕事ができる。
夏油がキレてチュー太郎を出した瞬間、主人公とアイコンタクトを決めて回避した。
勿論回避させた分のボーナスはもらうつもり。
真希と真依の決断を見守った後……
禪院真希
父親に斬られて瀕死の重体。
意識を失っていたが、目を覚ましたら七海1級術師とよく似た美人に手当されてた。
一瞬警戒仕掛けたが、渋谷の顛末は聞いているので敵ではないと判断した。
それにしてもマジでスタイル抜群の美人。そりゃー悟が惚れるわ。と納得。
そして、夏油の厨二病スタイルを笑ったら、チュー太郎に絡め取られて熱烈なキスを受けた。
クソが!!!
そして、主人公からの斜め上の提案を受け……
禪院真依
死ぬ運命をひっくり返された人。
父親に斬られて、真希が瀕死で覚悟を決めてた時に、
いきなり上層部から指名手配がひょっこりはんしてきて、内心ビビってた。
七海潔乃とわかったのは、やはり七海1級術師によく似ていたから。
最初は全く知らない主人公を警戒していたけど、貴重な回復の呪具をポンポン使うわ、甚爾や夏油が全く警戒してないので、敵ではないと即効で判断した。
煽りストの性格を抑えられず夏油をからかって、チュー太郎からキスを受けた。
気持ち悪いのよ。この呪霊!
そして、主人公からの斜め上の提案を受け………
「真依ちゃん!! 真希ちゃんもいたのね! 良かった本当に良かった!」
真希と真依が禪院家を出たところで、西宮桃の声が響いた。
真依を心配して、禪院の屋敷までやってきたところだったらしい。
箒から飛び降りるようにして駆け寄ってきた西宮の顔は、引き攣っていた。
「真依ちゃんも、真希ちゃんも血だらけじゃない!」
慌てる様子の西宮に、小さく笑う真依。
「もう治療済みよ。二人ともね」
真依の言葉に合わせるように、真希が腹部を叩いて、なんともないと示す。
それでも二人の服は血まみれだ。まだ乾いてすらいない。
それを見た西宮の顔がくしゃりと歪む。
「だから、私は……行くなって……!!」
とうとう涙をこぼしはじめた西宮の涙を、真依が優しく手で拭う。
「何、泣いてるのよ」
西宮は泣き笑いの顔で、だから行くなと言ったのに、でも良かったと真依の胸を叩いた。
「血で汚れるわよ」
いつもの皮肉めいた口調だけど、その声色は普段より柔らかい。
と、そこでふと気づいたように西宮が顔を上げる。
「ところで、真依ちゃんなんか呪力増えてない? あと、真希ちゃんもなんか雰囲気変わったというか……?」
涙を拭きながら二人を交互に見て首を傾げる西宮に、真希と真依は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「色々あってね」
「色々あったのよ」
二人のハモリに、西宮は「ん?」と首を傾げたあと、笑みをこぼした。
細かい事情は後で聞けばいい。
今は、真依と真希が笑って立っている。
西宮にとってはそれで十分だった。
その様子を見た真希が、軽く手を振って歩き出す。
「じゃ、後、頼む」
真依が、真希の背中に声をかける。
「全部壊して。お姉ちゃん」
よまなくてもいい、あとがきてきなもの2
禪院真希
主人公の提案を受けて、双子の因果を切ってもらって覚醒。
原作通りに禪院家を殲滅した。
このあと、禪院家の残りのメンツを原作通り殺しに行く。
禪院真依
主人公の提案を受けて、双子の因果を切ってもらった。
それにより呪力が大幅に増えている。
原作通り、姉に全てを壊すことを頼んだ後、西宮とともに大好きな京都校のメンバーの元へ。
主人公たちから保護の提案を受けたが、本人がそれを望んだ。
伏黒甚爾
真希と真依の決断を見守った後、真希の禪院家殲滅を手伝った。
前に俺がやっときゃよかったんだよと。
真希、真依、西宮の再会の間は、別の場所に移された禪院家の呪具やらを漁ってる。
恵の許可貰ってんだから当然だろ。
西宮桃
原作通り真依を心配してやってきた。
真依が生きててよかった。真希も生きててよかった。
主人公&夏油傑
禪院家抹殺に関しては黙認。
宿儺が復活した場合、どうせ滅ぶ家だしと冷酷な判断。
二人とも五条派で禪院嫌いだしね。
真希、真依、西宮の再会は隠れた位置から見ていてよかったと。
特に主人公は原作を知ってるので、ニコニコしてる。