Re:TS白黒ストライプバニー老害によるナツキ・スバルの悲喜劇観賞会 作:F・M・T (フランチェスカ、マジ年増)
エミリアによってロズワール邸に連れて行かれたスバルが目を覚ますと、彼は病み上がりにも拘わらず自身の雇用をロズワールに求め、執事として働き出した。
とは言え、料理も庭師としての仕事も全てが初心者のため、スバルが上手くできてなくても仕方がなかった。
精々、評価がされたのは熱心なその姿勢ぐらい。
しかし、スバルはその四日間の努力を気に入っていた。
どれだけ、手を怪我しても一歩一歩できるようになっていく感覚が好きだったからだ。
これからも、自分はこの屋敷でやっていける。
そう思っていたのに──
「姉様、姉様、どうやら少し混乱されているようですわ、お客様」
「レム、レム、なにやら頭がおかしくなってるみたいね、お客様」
ベッドから目覚めた俺を見詰める視線が冷めていた──まるで、こうして出会うことが初対面かのように。
手を見るが料理で失敗した傷一つ無い綺麗な手だ。
その事実こそがスバルを絶望と混乱へと陥らせる。
「どうして……どうして戻ったんだ……ッ!?」
積み上げた絆が容易くリセットされたスバルは、ベッドの中で一人涙を流して絶望した。
それが始まりだった。
「『死に戻り』をしたのが屋敷に来て四日目の夜。そして、リセット地点は屋敷で二度目に目を覚ました瞬間……つまり、この屋敷の中で俺は死んだってことだ」
理由は分からないが、ナツキ・スバルは就寝した五日後に死んだ。
「だから、一週目のように過ごしてみたんだが……なんか色々と流れが変わってるってのはどういうことなんだ?」
何故か起こるバタフライエフェクトが多すぎて、スバルは混乱していた。
「どうなってやがる……やってることは変わらない筈なのに何でこうも変わっていくんだ?単純にできることが増えて初級編から無自覚に脱却できた……?だとすれば、ロズっちやラムの対応力すごくね?俺の力量を見抜いて的確にできる仕事振ってるのかよ」
見事な采配に驚愕するが、有力な理由としてはそれが一番そうだろう。
まあ、その審美眼のせいで難易度が上がっているようだが。
「フランチェスカに頼りたいところだけど、連絡の取り方は分からねぇし、そもそも数日でやって来られるもんじゃねぇ……」
強力な力がある存在で抜け出せないループの出口を作ってくれた恩人。
彼女の力があればと思わずにはいられない。
「あー、ダメだダメだ。後ろ向きになるな。つーか、女の子に泣き付くなんて一度だけで充分だっての。そこまで男を捨てちゃいねぇし、捨てる時は男らしく優しくリードしてみせるってのが俺の夢なんだからよ」
両手でバチンッ!と頬を叩き、気分をリセットする。
「うし!俺一人でできるってところを見せてやらなくちゃな」
そして、仕事をしながら何が原因で死んだのかを探す。
アーラム村に行き、レムの買い物を邪魔しないようにしながら、群がってくる子供達の面倒を見る。
その帰りにレムと彼女の姉であるラムの話になった。
そこでレムからラムにされるヨイショ加減にとうとうスバルは言った。
「何その『さすおに』加減?お兄様じゃなくてお姉様でも有効なの?」
生まれて初めて誰かを全肯定をする人間を見て、思わず口にした。
「姉を崇拝する気持ちが並大抵じゃねぇぞ。マジ鬼がかってんな」
「鬼、
スバルの口から出た聞き馴染みの無い言葉に首を傾げるレム。
「神がかるの鬼バージョンだよ。鬼懸かる、なんかよくね?」
「鬼、好きなんですか?」
「神より好きかも。だって神様って基本的に何もしてくんねぇけど、鬼って未来の展望話すと一緒に笑ってくれるらしいぜ?」
スバルが持つ鬼の知識。
どうやらそれが良かったのか、レムがその表情に笑みが浮かんでいた。
スバルは指を鳴らす。
「その笑顔、百万ボルトの夜景に匹敵するね」
「エミリア様に言いつけますよ」
「口説いたのと違うよ!?」
その後はこの世界の言語であるイ文字を覚えるお勉強だ。
監督役がレムからエミリアに変わったりしたものの、何か問題がある訳でもなくそのまま夜がやってくる。
「俺をループさせた要因を確かめさせて貰うぜ」
暗殺者なんかが現れて殺されたってこともあるだろうとスバルは考える。
ここにはこの領地を治めるロズワールという有名な人物が居るし、エミリアは王選候補者だ。
暗殺者を送り込まれる理由なんて幾らでも存在している。
「まあ、それに巻き込まれたんだとしても何で眠ったままでやられてんだって話だけど、そこまで警戒心とかなかったし本職の暗殺者相手ならどうしようもなかったろ」
良くも悪くも『腸狩り』と相対したせいで、この世界での殺しの軽さを身を持って理解していた上に、強者が本気を出せば自分ではどうしようもないという事実も、嫌になるほどに身に染みていた。
それを覆せるのも力を持った強者でなければならない。
そして、残念なことにスバルにはそれがない。
「あと四時間を寝ずにいればいいんだけど、ちょっと色々と頑張り過ぎたか?徹夜ぐらい前の世界じゃ幾らでもしてたってのに」
眠気に襲われながらも死の要因を見付けるため、必死に目を開けているとその時が来た。
「な……んだ……ッ!?体が……!?」
襲い来る虚脱感と寒気。
血の気が引く感覚を味わう。
風のようでもありながらも、明確な死の予感が頭をよぎる。
力が上手く入らず、ほとんど這いつくばりながらもスバルは部屋から出た。
この身体の異常がどんなものかは分からないスバルだが、エミリアに危険を知らせねばならないと、その思いだけでスバルは階段を力が入らない身体で上がる。
「エミ、リア……」
壁で身体を支えながら必死に足を前に進ませる。
そして、金属が独特の音を鳴らしたような気がした。
「鎖の音……?」
しかし、突然身体の制御が利かなくなりそのまま地面に倒れ込む。
──左半身が吹き飛んでいた。
「ぐああぁあぁああぁああああ!?!?!?」
内蔵が外に溢れ落ちるところを見ながら、床の上で絶叫する。
突然の襲撃。
突然の痛み。
突然の死。
理解のできぬまま、再び鎖の音を聞いてロズワール邸で二度目の死を迎えた。
スバルは前回のループをなぞるのはやめた。
「それじゃあ、ロズっち。食客としてこの屋敷で泊めてくれ!二、三日したらそのあとは別の場所に行くから、ちょっぴり路銀を融通してくれると助かる」
そして、食客として扱われながら一人で考える。
「やっぱり居たのかよ襲撃者……」
エルザに散々殺された経験則で予想した襲撃者の存在。
それが実在していることがこれで確定した。
「だけど、問題はその前。あれは襲撃者の攻撃じゃなくて衰弱死かなんかだ。少なくても前回はそれで殺された」
部屋を出る前の生命が尽きていくあの虚脱感。
あのせいで一回目は死んで、二回目は襲撃者によって別の死を与えられた。
「それがわかったところで、説明に足る証拠も、未然に防ぐ手段も俺の手の中にねぇ……それどころか、相手の面どころか獲物も見てない。まさに犬死にだ」
「死ぬほど鬱陶しいから、とっととやめるか殺されるか選ぶといいのよ」
部屋の中央で椅子に腰掛けるベアトリスは、周囲をうろちょろと動き回るスバルを見て心底不機嫌にそう言った。
「そういや、お前って見た目そんなでも魔法使いなんだろ?」
「魔法が使えるという意味ならそうなのよ。でも、そんじょそこらの二流どころと一緒にされたら困るかしら」
その後も、スバルはベアトリスの神経を逆撫でることを言い続けると、ようやく本題に入る。
「なあ、対象を衰弱させて眠ったように殺す魔法、とかってあるか?」
真剣な顔をするスバルにチラリと視線を寄越す。
「あるかないかで言えば、あるのよ。」
「あるのか」
「魔法というより、呪いの方に近いかしら。魔術師より呪術師の方が得意とする術法にそんなものが多いのよ。陰険な呪い師らしいやり方かしら」
それから、呪術師の愚痴をスバルは聞かされ、その後に自らの
そのことに、散々否定の言葉を重ねるとついにキレられ、スバルは扉まで吹っ飛ばされた。
「そろそろ出ていってもらうかしら。手の震えも止まってるし恐いのも誤魔化せるようになった頃合いなのよ」
「……バレてた?」
「隠そうとしてたのかしら?そうそう都合よく扱われるのも心外なのよ」
そう言い、退出を促すベアトリスにさらに食ってかかったスバルに対し、とうとうベアトリスの堪忍袋の緒が切れ、スバルを扉の外に向かって吹き飛ばす。
その後は、エミリアとパックと一緒に戯れ、文字の勉強をしながら日本の『泣いた赤鬼』な話や、この世界の『親竜王国ルグニカ』の童話の話をラムとする。
「それにしても、『嫉妬の魔女』か……フランチェスカの言う通りこの世界のタブーみたいだな」
童話にも出てくる話だが、その話でも凶悪なことをしていた。
それほどまでに、『嫉妬の魔女』が残した恐怖は凄まじいのだろう。
「『悲嘆の魔女』の名前はどこにも無いのか?まあ、世界の半分を呑み込んだ魔女と比べるとそりゃ見劣りもするか」
フランチェスカがどんなことをしてきた魔女なのかは知らないが、世界を滅ぼす勢いで暴れたらしい『嫉妬の魔女』よりも、大それたことはまずしていないとスバルは確信する。
もし、そんなことをしていれば今頃『嫉妬の魔女』と同じような扱いをされている筈なのだから。
「その『嫉妬の魔女』を信奉するテロ組織が魔女教だったよな?なら、フランチェスカも自分が魔女だって言い出さない訳だ。世界規模の災厄と勘違いされるなんてゾッとしねぇ。『嫉妬の魔女』と同じ銀髪のハーフエルフであるエミリアたんも、それでやっかみを受けて色々と大変みたいだしな」
それを考えれば、黙っているように忠告されるのも分かるというものだ。
「明日だ……明日から屋敷の外で襲撃してきた奴を見付けてやる」
そして、翌日。
俺はロズワールの屋敷から出ていった。
森の中で1人身を隠して潜み続ける。
既にスバルは今回の周回は襲撃者を見付けることだけを目的にしていた。
──つまり、あの屋敷で起こる惨劇は見過ごすということ。
「……全部、俺のせいだ。俺が弱くて馬鹿だからみんなを見捨てる。でも、みんなが俺を忘れても俺は忘れない。絶対に救ってみせる」
ロズワール邸から離れて6時間が経過した頃、空に昇っていた太陽は既には落ちて、茜色の夕焼けで周囲が見えにくくなってくる時間帯。
集中力がそろそろ途切れそうになっていたスバルの耳が、何かを察知する。
「──ッッ!!」
反射的な全力の回避。
とはいえ、スバルにそんな超人的な反射神経があるわけではない。
あらかじめ決めていた回避方法を取っただけ。
そらこそ、前兆もなく攻撃が飛んできていれば反応1つ取れずに死んでいただろう。
「来た……ッ!来た、来た来た来たぞ!」
背後で樹木が破壊され倒されるのを見る暇もなく、全力だ逃げる。
この殺意しかない敵に少しでも止まれば、次の瞬間に殺されるという確信がある。
「でも、見た!あの形はモーニングスター!」
刺が付いた鉄球を鎖で振り回すロマン武器。
それを獲物にした存在……前回のいつの間にか殺されてやり直しになった事と比べれば雲泥の差だ。
「こっちに来やがったか……!エミリアやみんなじゃなくて俺狙いってことか!」
崖下に追い込まれて歯噛みをするが、それでも負けん気を振り絞る。
「(絶対に来る……!)」
その予測通りにモーニングスターがスバル目掛けて飛来する。
それを上着を巻き付け無力化すると威勢のままに言葉をぶつけた。
「さあ、姿を見せろクソ野郎ッ!その面を見るのに、一週間かけたぞコラァ!」
その声に応じたのか、木々の隙間から人影が少しずつ近付いてくる。
そして、夕焼けに照らされて現れたその人物を見ると、スバルの体から力が抜けた。
「──仕方ありませんね。何も気付かれないまま、終わっていただけるのが一番でしたのに」
青い髪を揺らしながら見慣れた無表情で小首を傾げるエプロンドレスの少女。
その少女もまたスバルが救いたいと思っていた存在だった。
「嘘だろ……レム」
思わず、呆然とした声を出してしまう。
「抵抗されなければ楽に終わりにして差し上げますけど」
その冷たい視線を見て理解する。
「ああ、そういうことか……そんなに、俺が信用できなかったのか」
「はい」
躊躇なく言われたその言葉に、スバルは胸の奥に鋭い痛みが走る。
その答えはスバルにとって、嫌な想像を抱かせた。
肯定され、これまで過ごした日々のあらゆる場面がその彩りを変える。
滑稽な自分の間抜けさを自嘲するように口の端を歪める。
「ざまぁねぇよなぁ……上手くやってたなんて、勘違いしやがって……」
「…………姉様は」
「聞きたくねぇよ!──食らえッ!」
叫び、レムがわずかに逡巡を見せた瞬間、スバルは腰の裏に仕込んでいた携帯を前に突き出す――直後、白光が闇に沈んだ森を切り裂き、刹那の間だけレムの動きに停滞を生み出した。
「らぁッッ!」
「ッ!」
レムの体を押し出して吹き飛ばす。
その間に獣道を駆け抜けた。
「(今回の凶行がレムの独断ならロズワールに直談判をすれば……アイツも俺を殺しておきたいって思ってるんじゃ……?でも、エミリアなら……エミリアなら大丈夫。エミリアなら信じられ──)」
そこでふと思い至る。
『王選候補者にとって自分という不確定な存在は、目障りでしかないんじゃないのか?』という発想に。
そんな馬鹿げた想像をしてしまう。
あの時、何の得も無いにも拘わらず、王選候補者の資格である
そんな子が俺をわざわざ殺そうとするわけがない──それなのに、疑ってしまった。
それがスバルの心を
立場が変われば考えも変わるのは当たり前の事。
レムがそうであるように、あの屋敷の他の人間がスバルの命を狙わないとどうして言い切れる。
二回目の死亡時に内部犯の可能性を疑わなかったのが間違いだ。
屋敷の外からやって来る人間よりも、屋内に既に居る人間の方が楽に襲えるのは決まっている。
上辺だけの関係性に目を曇らされて見過ごしてきた結果がこれだ。
「俺は……いったい、何のために……っ」
泣き言が口から
そして──風が吹き抜けた。
「──……あ?」
風の刃がスバルの右足の膝から下を吹き飛ばしていた。
勢いのままに大きく跳ね回る右足の先端を見ながら、スバルの体は大きく体勢を崩していた。
「があああああッッ!あ、足があああッッ!!」
右足から伝わる焼けるような意識を白く染め上げる痛みに悶える。
その痛みは尋常ではなく、眼球の奥からも痛み訴えるかのような刺激が突き抜けた。
「ああ、やっと追いつけました」
メイド服のスカートを揺らし、レムが凶器を引きずりながら現れた。
彼女は地べたを転がり回るスバルを見て、頷く。
「痛いでしょう。苦しいでしょう。少し待っていてください」
屈み、レムはその白い掌をスバルの傷口へと向ける。
既に喉は
スバルは濁った視界を動かしてレムの動きを黙って見届ける、と、
「──水のマナよ、この者に癒しを」
柔らかな淡い光がレムの掌から放たれる。
光はスバルの右足、その切断面をゆるやかに覆うと、その淡い光でもって痛みと喪失感を補い始めた。
「せっかく生き延びたのにあっさり死なれては、聞き出すことも聞き出せませんから」
それが今から拷問をするということなのは明らかだった。
「お聞きします。あなたは、エミリア様に敵対する候補者の陣営の方ですか?」
「……俺の心はいつでもエミリアたんの味方だ──ぐあああああああッッ!?!?!?」
言った瞬間、たわんだ鎖がスバルの上半身を激しく打ちつける。
スバルの絶叫が森に響き渡った。
「誰に、いくらで、雇われているんですか?」
「エミリアたんの笑顔に、プライスレスで」
手首の返しで同様の仕打ちを受ける。
その後も、似たような質問に似たような返事の応酬が始まる。
鎖の音が響くと続いて苦鳴と悲鳴が静かな森の中で響き渡った。
意識が吹き飛ばされそうになる度に、回復魔法で治療される無間地獄を繰り返し味わうことになる。
精神はズタズタに摩耗し切るが、それでもレムの仕打ちに心だけは屈しない。
「そろそろ戻らないと。夕食の支度が遅れてしまいますので」
「……晩飯か。今日の、メニューは、なんなのかな……」
その軽口を聞いてレムは一つ溜め息を吐くと、スッと視線が冷たくなる。
「……あなたは、
その単語に目を見開く。
聞いたことがある。
それが誰からか?
決まっている……フランチェスカからだ。
「(どういう事だ……?俺は『悲嘆の魔女』の名前も『魔女教』の事も口に出していないのに!?)」
俯いた表情からスバルの驚愕が読み取れなかったせいか、レムは続けて言う。
「あなたは『魔女に魅入られた者』ですね?」
「誰が、だよ……ウチは代々……無宗教……「
いきなりの怒声に気圧される。
そんなスバルに続けて言い放った。
「そんなに魔女の臭いを漂わせて、無関係だなんて白々しいにも程がありますよ……ッ!」
「っ!?」
レムは歯ぎしりしそうなほどに唇を噛みしめる。
「姉様とあなたが会話しているのを覗いているとき、レムは不安と怒りでどうにかなってしまいそうでした。姉様が世話をするのを装って、あなたと親しげに振舞っているだけと知っていても……ッッ!!」
溜め込んでいた憎悪を吐き出すように、レムは感情はその溢れる激情をスバルに叩きつけた。
肩を溢れる憤怒から揺らしながらスバルを睨む。
その瞳に宿る苛烈な感情がスバルを
「分か、ってたよ……想像ついてたさ」
込み上げてくる熱いものが次々と目尻を伝って頬に落ちる。
次々と流れる涙を止めることもせず、スバルは途切れ途切れになる涙声で空を見上げる。
「こんな目にあってんだ……優しくされたのにだって、裏があんのはわかってた…………でも……聞きたか、なかったよ……」
スバルは続ける。
「野菜の皮、剥くときに手ぇ切らなくなったよ。洗濯もんだって素材で洗い方が違うってわかった……掃除はまだ教わってる最中だけど……読み書き……簡単なやつだけど、できるようになったんだ……童話、読めたんだぜ。お前たちのおかげで……」
「何を……言っているんですか?」
スバルは声を絞り出すかのように言う。
「お前たちが、俺にくれたものの話だよ……」
「そんなこと、記憶にありません」
「ッッ──なんで、覚えてねぇんだよッ!!」
その爆発的な怒声にレムの足が思わず一歩後ろへ下がった。
寝ていた体を腕で無理やり起こして、歯を剥き出すようにスバルは吠える。
「どうして、みんなでよってたかって俺を置いていくんだよ……ッ!俺がなにしたっつーんだよッ!俺になにをしろって言うんだよッ!?なにがいけねぇんだよ……なにが悪かったんだよ……お前ら、どうしてそんなに俺が憎いんだよ……?」
その泣き声に対してレムの視線は冷たくなっていく。
「レムは」
「俺は……お前らのこと、だい──」
ドシュッ!!
明確な致命傷。
首を風の魔法で斬られて大量の血が流れ、地面に染み込んでいく。
それを見てスバルは悟った。
俺は死ぬ、と。
そのスバルの命脈が尽きる少し前に聞こえた気がした。
「姉様は優しすぎます」
大罪司教
・対極の性質
怠惰……勤勉で計画的
強欲……花嫁以外は所有しない
憤怒……感情の爆発ではなく周囲に求める共感
暴食……食欲を満たさない記憶の簒奪
色欲……性欲嫌いのシンデレラシンドローム
傲慢……自己犠牲の死に戻り
嫉妬……献身的な愛
憂鬱……目的のために精力的に動き回る積極性
虚飾……真実に変える力
悲嘆……愉悦主義の無限残機と現実を誤魔化す幻術