地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい   作:抹茶好きの紅茶

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タビダチ──出会い

 

 エイジ720。二十歳になったキドニィは、ホオズキと戦うべく王宮内を探し歩く。

 宇宙に出ると決めてから10年間、彼女は急成長し、5年前には既にティーパや憲兵特戦隊に常勝するほど強くなっていた。しかし、それでも尚ホオズキとの差は広がる一方。

 その力量差を理解して尚、キドニィは勝利のために、暇を見つけては勝負を挑み続けていた。

 

「よぉティーパ。ホオズキを見なかったか?」

 

「おや、キドニィ嬢。ホオズキさんですか? それなら今朝──」

 

 ティーパが言葉を紡ぐ最中、突如として王宮の外から途轍もない爆発音が響き渡り、大きな地震が王宮内を襲う。 

 

「──外のようですね」

 

「相変わらずスッゲーな。ったく、あの破壊力で何が不満なのか……ま、場所は分かった。んじゃ行ってくる!」

 

 彼女はそう言うと同時に素早く現地に向け飛び立つ。

 そんな去り際。彼女が抑えきれず、ワクワクとした不適な笑みを浮かべたのを見て、ティーパは微笑んだ。

 

「今日こそは、ホオズキさんに一発与えてしまうかもしれないな」

 

 一発。たった一発の攻撃を、受け流されずに直撃させるだけ。それがキドニィが定めた惑星プラントへ行く条件だった。ティーパは、彼女に出ていって欲しくない。だが、それと同時に、外の世界を見てきて欲しい。そんな相反する感情をもって、彼女を盛大に応援する──

 

 

 

 

 

「…………なにをやっているんですか、アナタ達は」

 

「──おおデゲス様! 見て下さい! この洗練されたスペシャルダンスを! キドニィ嬢が出ていってしまわれる時、我ら一同、笑顔でお見送りするため! キドニィ嬢やホオズキさん、そしてキドニィ嬢を想う者達の悲しさを吹き飛ばす! そんなスゥペシャルッダンスッ! をお見せするべく、練習に励んでおります!」

 

「「「励んでおります!」」」

 

 そこは事務室。ホオズキ直属の部下が仕事をしている筈の部屋。喧しい声に耳を塞ぎつつ、デゲスは仕事机に書類の束を置いた。

 

「仕事してください。こちら、憲兵の備品管理情報やマジライト採石などに関する書類です」

 

「ハッ! それでは我ら一同、全力で取り組ませて貰います! やるぞー! お前達ッ! 準備は良いなーッ!?」

 

「「「オーーーーッス!」」」

 

 

 

 

 

『────ーッス!』

 

「元気だねぇ、あのオッサン共」

 

「良いでしょ、明るくて」

 

「ま、嫌いじゃねぇよ」

 

 そこは王宮から少し離れた所の荒野。準備運動をしながら話す戦闘民族サイヤ人。相対するは、育ての親である魔属の血を引いた地球人。種族だけで言えば、間違いなくサイヤ人に利があるだろう。しかし、その魔族(地球人)には長年培った経験があった、技術があった、戦闘力があった。

 

 ゆえに、今の若きサイヤ人に勝ち目は存在しない。

 

 けれど、準備運動を済ませた彼女は、笑って1歩踏み込んだ。

 

「──ッチィ! こんっのォ!」

 

 前進しながら気弾を複数発放ち、弾幕に紛れ込みながら飛び蹴りをかます。しかし、全ての気弾を避けられ、1本の人差し指で蹴りを止められた。

 気も、魔術も使わず、身体の反応だけで全てを往なし、受け止める。常態化させている神の極意の一端。天使とは比べるまでもない未熟な技術だが、それだけで充分とばかりに猛攻を往なし続ける。

 

(チッ、ホントどういう戦闘技術だよ。だが、いつも通り避ける一辺倒で助かる。その技の弱点は、強い攻撃を往なす度に体力を消耗しちまうことだ。ここは攻めて攻めて、攻めまくるしかねぇ!)

 

「ダダダダダダダダ! ッだりゃあ!」

 

 相変わらずの無表情、涼しい顔をしてホオズキは攻撃を往なし続ける。対するキドニィは、縦横無尽に動き回り、隙をつくように攻撃を仕掛け続けていた。拳、蹴り、気弾、砕いた岩、礫。使えるものを最大限使い、ホオズキの消耗を狙う。

 そんなキドニィの狙いを見透かしていたホオズキは、いい加減鬱陶しいとばかりに、力強く振るわれた右足の蹴りを利用し、キドニィを投げ飛ばした。

 

「らしくない。この前も、それで自滅している。忘れた?」

 

「っと──ヘっ、そりゃ前の話だ。今のアタシは、前のアタシより強いッ!」

 

 姿勢を低く。全力で地面を駆け、気弾を纏わせた拳をホオズキへ叩き込む。

 

「……そう甘くはいかないか──ぐぅっ……!?」

 

 全力で叩き込んだ拳は、ホオズキによって軽々と片手で掴まれた。その直後、全身に凄まじい重圧が襲い掛かった。

 

「スピード、パワー、技術。悪くない。けど、全てにおいて、私の方が、もっと強い」

 

「ガ……こんっのォ……!」

 

 地面がひび割れ、足が、全身が、岩体に押し込まれてゆく。

 なんとか体内の気を爆発させようと練り上げ、全身に気を纏わせるが、その最中にかけられている重圧が増加した。纏わせ増大させていた気も、このままでは発散すら出来ずに霧散する。

 

(ははっ、相変わらず無茶苦茶だ。これも技術の内かよ……! だが、こうなることなんざ分かってた。

さあ、こっからは一か八か。一丁やってみるか!)

 

 押し掛かる重さの中、全身に纏わせていた気を尻尾に集中させ、ホオズキの顔に向けて尻尾の先端からビーム状の気功波を放つ。

 

 無論、顔を傾ければ避けることなど造作も無い──筈だった。

 

 瞬刻、ホオズキの動きが硬直する。

 

 ホオズキは目を大きく見開き、急いで動こうと力を入れる……が、遅い。

 

「もらったぁ!」

 

 キドニィの放ったボディブローにより、ホオズキの身体は勢いよく後方へ吹き飛ばされた。

 

 岩壁に叩きつけられ、砕け落ちる小石と土煙の中、唖然としたような、嬉しいような悲しいような、様々な感情が入り雑じった声でキドニィへ喋り掛ける。

 

成長、早いなぁ……おめでとう、キドニィ。私の、負けだ」

 

「ッよっしゃーっ!!!」

 

 歓喜の声を上げて喜ぶキドニィを、ホオズキは感慨深く見つめながら口を開く。

 

「魔術、使えたんだ」

 

「ああ。つっても、種が分かれば対処は楽だろ? だから機会を待ってたんだ。どーだスゲーだろ!」

 

「うん。とても凄い。教えたのは、アリンスと、トワ?」

 

「いや、ゴマーのオッサンさ。ホオズキの避けまくるヘンテコ技術には弱点があるっつって、硬直させる魔術を教えて貰ったんだよ。ま、万全の時に掛けても無理やり動かれるだろうから、油断させる必要があった訳だけどな」

 

「まんまと、やられた……アレが、奥の手と、勘違いさせられた。お見事」

 

 神の極意。即ち、身勝手の極意は身体が勝手に判断し、適した動きを自動で行う術。だが、ホオズキのソレは長年の積み重ねによって編み出した比べるまでもない廉価版。未だ頭の片隅で思考を行っていた。ゆえに、油断や慢心が隙を生む。そのうえ、今回は魔術と気のコントロールを縛っての戦闘。全てが相まって、本来であれば効く筈の無い硬直の魔術に掛かる結果となったのだ。

 

「へへっ。よし、そんじゃ飯だ飯! 腹減っちまった」

 

「うん。何か作る。リクエストとか、ある?」

 

「んー、肉と酒!」

 

「…………」

 

 笑顔でそう言い放ったキドニィに、ホオズキは無表情を崩して何とも言えない顔をした。

 

 

 

 

 

 翌日、第1魔界。王宮前の、ドラゴンボールが置かれた広場。そこには、ダーブラ含め、王宮勤めの者達が勢揃いで見送りをしにきていた。

 

「そんじゃ、色々と世話になった。またな」

 

「……うん。また」

 

 別れの挨拶は疾うに済ませ、無駄に洗練された無駄の無いスペシャルダンスも見終わった。人間界に行くための暗証番号は覚えたし、後はもう、出発するだけである。

 

「忘れ物、ない? 歯磨き、着替え、お弁当。水筒も持った? あと──」

 

「だあー! 大丈夫だっての! そもそも何かあれば貰ったアレで連絡するって」

 

 出ていってしまう覚悟は出来ていたものの、いざ当日となれば心配が肥大化する。

 

 そんな様子のホオズキに呆れながらも、キドニィは改めて全員に感謝を伝えて宇宙船に乗り込んだ。

 そうして、宇宙船は空の彼方へ消えてゆく。

 

 数秒もしない内に、宇宙船は見えなくなった。

 

「──フン、何を呆けている。巣立つことなど分かりきっていた筈だ。それに、永劫の別れという訳ではないだろう。全員、6分以内に通常通り仕事へ戻れ。腑抜けた考えは、この大魔界の王ダーブラが許さん。よいな?」

 

「「「「「──ハッ!」」」」」

 

 見送りを終えたダーブラは、全員に言い聞かせるように活を入れる。

 随分と絆されたものだと自嘲しつつ、のそりと広場から離れて行った。そんなダーブラへ、妹であるトワは歩きながら声を掛ける。

 

「随分とお優しいわね、お兄様」

 

「全くだ。これでは暗黒魔界の王の名が廃れるというもの……しかし、圧政だけでは成り立たん。ここ数百年で魔族も変わったのだ。なに、目的は変わっておらん。暗黒魔界復活のため、計画を進める」

 

 己に言い聞かせるようにそう語るダーブラの顔は、何処か悲しげであった。

 

 

 

 

 

 

「──あ、そういえば宇宙船の操縦って誰が教えたんでしたっけ?」

 

「「「え?」」」

 

 ポツリと呟いたティーパの言葉に、広場に残っていた全員が目を合わせて硬まる。こういう時の嫌な想像は当たるもので──

 

 

 

 

 ──その日、惑星プラントに隕石のような物が墜ちてきた。

 幸いなのは、都市部から離れた場所だったことか。

 

「い、隕石……でしょうか?」

 

 黄色の肌をした蛙のような男が、警戒しながらクレーターに近づく。そして、それが隕石でない事は一目で分かった。

 彼は技術者である。ゆえに、それが人為的に造られた物であり、宇宙船のようなものであることは直ぐに考えついた。未知への恐れに対し、技術者としてテクノロジーを研究したいという興味が勝り、クレーターの側まで歩く──

 

「──いっつつ……おっかしいなぁ。ホオズキが運転してた時は、こんな感じで上手く着陸が出来た筈なんだが」

 

 宇宙船の扉が開き、中から出てきたのはボサボサ黒髪の女性。腰に巻き付いた尻尾は、その者がサイヤ人であると雄弁に語っている。

 

「あ? なんだテメェ。もしかしてツフル人ってヤツか?」

 

「……いえ、そこは話すと少し長いのですが」

 

「んじゃいいや。んで、ちょっと聞きたいことがあんだけど、いいか?」

 

 見慣れぬ宇宙船。そして、女性の話で男は察する。このサイヤ人は、何処かの惑星に飛ばされ、帰ってきた者なのだと。

 現在、サイヤ人はコルド軍に従わせられ、星の侵略を担当している。そんなサイヤ人は、戦闘力の低い子供をクズ同然に扱い、せめて役に立てとばかりに、赤ん坊を侵略のため星へ飛ばしていた。彼女は多分、その生き残りなのだろう。

 

「え、ええ。喜んでお答えします。しかし、その代わりと言ってはなんですが、その宇宙船を調べてもよろしいでしょうか?」

 

「あ? ああ、そのぐらいなら良いぜ。ただ、壊すなよ」

 

「勿論です。では──」

「──待った」

 

 女性は男を手で制止する。男は何かやらかしたかと身体を震わせるが、女性の視線の先を見るに、どうやら原因は自身ではないようだと理解した。

 

「アタシはちょいと此処を離れる。直ぐに戻るが、宇宙船は調べたきゃ調べててくれ」

 

「は、はい……えっ、き、消えた!?」

 

 女性は言い終わると同時に姿を消した。恐らく、その場から目に見えないスピードで離れたのだろう。いくら戦闘民族とはいえ、そのような者は見たことがない。

 少し女性にも興味が湧いた男は、己が最近開発したエネルギーから力を測るスカウトスコープを取り出し、女性が意識を向けていた方向へスコープを動かす。

 

「──なっ!? せ、戦闘力、6万……!?」

 

 

 

 

 

 

 墜落地点から少し離れた都市部の裏路地。

 そこには、地面に踞る尻尾の生えた気弱そうな男と、そんな男に暴力を振るいながら暴言を言い放つ6名のツフル人が居た。

 

 ツフル人とサイヤ人は互いに利用しあう関係である。

 昔々、ツフル人は、遊牧民であったサイヤ人に住居を与え、対価としてその戦闘力を欲した。そうして、ツフル人の科学力とサイヤ人の戦闘力によって、数多の星々に攻め込んでは土地を得ていった。

 それは、互いに利用しあう関係。一方は野蛮な猿と侮蔑し、一方は力の無いツフル人を嘲笑する。

 コルド軍に敗北して以来、その軋轢は広がるばかり。

 

 暴行を受けるサイヤ人の男も、そんな軋轢の被害者である。

 彼は戦闘タイプのサイヤ人ではなく、とても優しい性格だった。その結果、力の無い彼は鬱憤の溜まったツフル人によって甚振られていたのだ。

 

 頭と首を守り、ひたすらに耐え続ける。

 耐えて、耐えて、耐えて。

 

「ぅ……あ、あれ? ひっ!?」

 

 突然、暴行と怒号が途絶えた。何か起きたのかと顔を上げて辺りを見回し、その光景に恐怖する。

 自身を痛めつけていたツフル人が全員、白目を剥いて気絶していたのだ。

 

「おい」

 

「ヒィッ!? ごめんなさいごめんなさい! 僕なんて食べても美味しくないです!」

 

「食べねぇって。ったく、大丈夫かよ」

 

 声を掛けられ、サイヤ人の男は反射的に頭を下げた。

 しかし、その語りから危険は無いようだと判断した彼は、安堵した後に顔を上げて感謝を伝えようと口を開く。

 

「は、はい。助けていただいて、どうも、ありがとうござぃ──」

 

 そこには、見目麗しいサイヤ人の女性が居た。

 

「なぁに、気にすんな。そういや、お前、サイヤ人だよな?」

 

「え、あ、はい! そうです!」

 

 思わず背筋を伸ばし、元気よくそう答える。勢いよくやってしまった所為で全身の傷が痛むが、それはそれ。男は込み上げてくる感情を制御しきれずにいた。

 

「お、おう、そうか。にしても、酷くやられたな。何でお前は甚振られてたんだ?」

 

「え、えっと、それは──」 

 

「──何もしちゃいねぇからだよ」

 

 路地の暗闇から、そんな男の声が届く。

 一瞬何者かと身構えるが、暗闇の中から姿を現したのは、同族であるサイヤ人であった。

 

「お前、随分と強ぇじゃねぇか。それに比べ、なんだテメェは。この腰抜け野郎が。それでも戦闘民族サイヤ人か!」

 

「ぅ……」

 

「おいおい、そんな言い草は無いだろ。大体急に出てきて誰だアンタ」

 

「オレか? オレはただの下級戦士さ。お前は……見たところ、辺境に飛ばされたガキがデカくなって帰ってきやがったか。こりゃ随分と都合が良い」

 

「都合が?」

 

「ああ。だが、ここじゃ話し辛ぇ。どこか人の居ねぇ所に移動するぞ」

 

 下級戦士と名乗った男は、着いてこいとばかりに裏路地の奥へ歩いてゆく。サイヤ人の女性は傷だらけの男を背負い、暗闇に消えてゆく男を追うように歩き始めた。

 

「あ、えっと……す、すみません」

 

「だから気にすんなって。そんな傷だらけの状態で放っとけるかよ。そうだ、アンタ名前は?」

 

「ノービルです。貴女は?」

 

「アタシはキドニィ。サイヤ人の方の名前は分かんねぇんだけどな」

 

 キドニィという名前は、大魔界でホオズキが名付けた名前である。もしかしたら一人用のポッドに記されていたかもしれないが、跡形もなく壊れてしまった為分からずじまいなのだ。

 

「ああ、飛ばし子でしたか」

 

「へっ、戦闘力がクズ同然の飛ばし子が、まさかこんなに強くなって帰ってくるとはな。当時の奴らは節穴ばっかかよ」

 

「……なー。聞き忘れてたけど、アンタの名前は?」

 

「ああ、名乗ってなかったな。オレはバーダック。サイヤ人同士、よろしく頼むぜ」

 

 左頬に大きな十字の傷痕を残した男は、不適な笑みを浮かべてそう語った。

 

 

 

 

 






 お久し振りでございます。
 ドッカンバトルで孫悟飯ビーストが欲しくてガチャを回した結果、何故かフェス限がダーブラ様しかでないうえに虹溢れしました。何故なんでしょうね。
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