地球人と魔族の混血はサイヤ人を超えたい   作:抹茶好きの紅茶

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幕間話 差し入れ

 

「ふん、ふん、ふーん♪」

 

 鼻歌混じりにドンドンドンと念入りに肉を叩く。

 

 水にさらした野菜、肉や魚などの臭み消し、アク取り、適した味付け。大魔界の食材の大半を美味しく食べるには、地球で養殖・品種改良された食材以上に色々と下処理をせねばならない。そも、ただでさえ全体的に見た目が毒々しく食欲減退色なのだ。味や食感、匂いには気を遣わなければ。

 

 今日のように仕事が早めに終わった日は、調理室を借りて趣味の料理に興じていた。王宮の飯も特段不味い訳じゃないが……まあ、うん。地球の食事を知ってしまった私にとっては、毎食それだとツラいものがある。だからたまに、私自ら旨い料理を作るのだ。伊達に食の探求はしていない。

 

 緊急性の高い仕事よ、どうか来ないでくれと祈りながら、慣れた手付きで食材を調理する。はぁー、調理中の匂いってどうしてこうも食欲をそそるのか。揚げたての唐揚げをツマミながら料理の手を進め続け──

 

 

 

 ──で、毎度のことながら必要以上の量を余分に作る。無駄にはしない、皆への差し入れ用だ。日頃からこういうことをしておけば、コミュニケーションの円滑化が図れる上に恩も売れる。やって損はないだろう。

 

 最初に向かったのは人数の多い場所だ。大量の料理を台車にのせ、王宮の長い廊下を進んで部下達のいる部屋へと足を踏み入れる。

 

「──やっほ。皆、お疲れさま。これ、全員で食べて」

 

「あ、ホオズキさん! お忙しいでしょうに、どうもありがとうございます! いつも皆で美味しく食べさせて貰ってますよ。オイお前ら! ホオズキさんから差し入れだぞ!」

 

「「「お"ーーーー! ありがとうございます!」」」

 

「どうでしょう。我ら、日頃の感謝を伝えるべく、スペシャルダンスを披露したいと──」

「それはいい」

 

「そうですか……「「「ああー、優秀にして麗しきダーブラ王のご側近~」」」

「讃歌も必要ない」

 

「「「「……おおー! 我らが大魔界~」」」」

「仕事しろ!」

 

 はぁー……憲兵特選隊といい、何故こうもこの世界の奴らは暑苦しいのか。ともあれ、私がこうして仕事に余裕が出てきたのも部下達が頑張っているお陰である。最近はやらかす回数も減ってきているし、最初の頃と比べれば大分進歩したと言えるだろう。

 最初は酷かった……私の見た目が幼いということもあって侮られ、仕事しないわ、問題は起こすわ、命令は無視するわ。本当に……ほんっっっっとうに良くなった。

 満面の笑みで旨い旨いと言いながら感謝してくる部下達を横目に部屋を後にする。さて、次に向かうのは──

 

 

 

 

「──お疲れさま、です。ゴマー様、デゲス様。これ、よかったら食べて」

 

 書類整理をしながら片手間で魔法を行使するゴマーと、そのサポートを行うデゲスに対してそう語り掛ける。

 

「ああ、ホオズキですか。お疲れ様です。そこ、置いといてください」

 

「うん」

 

「……む。なんだ、ホオズキじゃないか。丁度いい、お前のことだ、ダーブラ王の元にも行くのだろう? この報告書も一緒に届けておいてくれ」

 

「わかった」

 

 最低限の会話で事を済ます。

 仲が悪い訳じゃない。もう、かれこれ100年ほどの付き合いになるし、私がダーブラ王の後釜を狙っていないことなど百も承知だろう。寧ろ今は仕事仲間として良好な関係を築けている。普段であればギャグチックな彼らだが、今はただ真面目に仕事をこなしていた。マジで優秀ではあるんだよなコイツら。だからこそ、あのダーブラ王も側に置いているのだろうが。

 

 

 

 

「アリンス様、トワ様。差し入れ、サンドイッチと焼き菓子。よかったら、食べて」

 

「おや、ホオズキじゃないか。ありがたく頂こうかね」

 

「あら、いつもご苦労様。美味しく頂いてるわよ。もういっそ、お兄様に料理人として働かせるよう言ってみようかしらね」

 

「…………それは、やめてほしい」

 

 そこは王宮内の研究室、目の前には見目麗しい女性が2人……ええい、相変わらず見た目だけは良いなこの2人。

 あと、冗談でも私を料理人として働かせてみろ。間違いなく、100%、ぜぇっっったいに、今の統制が破綻するぞ。

 

「実験は順調?」

 

「ええ、アナタの協力もあって好調よ。無茶を言えばもっと費用を──ふふっ、冗談よ」

 

「金が欲しいのは事実だがな。研究は金食虫さ、悪く思わないでくれ」

 

「……わかってる」

 

 私も魔術・魔法を学ぶ教育費代わりにこの2人の実験を手伝っているので事実であると承知はしている。

 無から有は生み出せないのだ。私だって、もっと予算があれば色々なところへ回したいが……財政状況を鑑みればそうはいかない。

 

 あー、魔法で無限に資源が増やせたらなぁー!

 

「ふふっ、そう都合の良いようにはいかないわよ」

 

「……読心?」

 

「いや、顔に出てたぞ」

 

「ええ。アナタって無表情にみえて、意外と分かりやすいのよ」

 

「そう……」

 

 何時ものように見透かされ、手玉に取られる。怖いよ、この人達。私も愚かではないが、それでもたまーに騙されて良いようにこき使われることがあるぐらいだ。深く付き合うとろくな目に合わないので、軽く雑談に花を咲かし、実験が再開する前の適当なタイミングで切り上げる。

 

 さてと、次が最後だ。

 

 

 

 

 厳かな雰囲気の部屋を前に、重厚な扉のドアノッカーを打つ。中の御方から許しが出たのを確認して、重たい扉を押し開ける。

 

「失礼、します。ダーブラ王。間食を……ご用意、しました。あと、ゴマー様から、書類を預かってる……います」

 

 辿々しく、何とか失礼の無いよう丁寧に伝える。

 豪華な椅子に座り書類作業に務めているダーブラ王は、手元の紙類から此方へ視線を移して口を開く。

 

「ああ、頂こう。私も丁度一息つけるところだ」

 

 書類を纏めているダーブラ王を横目に、魔法でテーブルを出現させ料理を並べてゆく……気とは別のエネルギーである魔力を消費するだけで、無から物質を生み出したり出来るし魔法って本当に便利だ。食材を冷やすことでアイスやゼリーを直ぐに作れるし、その逆に冷めた料理も出来立てのように出来る。トワやアリンスへこの事を話すと微妙な顔をされるが、まあそれはそれ。教わった魔法をどのように行使するかなど此方の勝手なのだ、使い方にとやかく言われる筋合いはない。

 

 ダーブラ王が用意した椅子に座るのを確認し、片膝をつき待機する。そんな私を一瞥し、ダーブラ王は再び口を開いた。

 

「ふっ、よい。腹が減っていたのだろう?」

 

「いいの? ……ですか」

 

「そもキサマが用意したのだろう。なに、無礼講だ。此度はそう言葉を選らばずともよい」

 

 許しが出たので遠慮無く席に座り食事を始める。うん、我ながら旨い……あれなんだよな。ダーブラ王って悪人であるが、それはそれとして意外と身内には甘いのだ。

 

「──フン。如何に身内であろうとも、無能を罰せぬ私ではない。キサマが私の利になる内は、自由を許すだけのことだ」

 

「……肝に銘じておく」

 

 兄妹揃って人の心を読むのが上手いらしい。カリン様ですら私の心は読みづらいというのに……とはいえ、全て本当の事なのだろう。まあ、今のところ裏切る気も無いからな、粛清される事はまず無いだろう。そんなことを考えながら飯を口へと運ぶ。

 

「──第3魔界はどうだ。最近はよく足を伸ばしているのだろう?」

 

「ん……カダン王が、中々使えそう。恩を売れば、利用も容易。ダーブラ王の方も、暗黒魔界の復活は?」

 

「進展は無い。しかし、あと400年もすれば目処が立つだろうな」

 

 暗黒魔界……正直よく分かってないが、復活すると面倒だということは知っている。だがまあ、400年だろ? それならば問題ない。その頃は既に悟空達が強くなりすぎている頃だろうから……大丈夫だよな? この世界、未来世界じゃないだろうな? それだったら心臓病云々が不味いし、最悪の場合は全王様に全てを消し去られるんだが。

 

「ふ、悩みごとか?」

 

「……い、え……ちょっと、食の、探求を」

 

「──言いたくないのであれば言わずともよい。キサマに限って裏切る心配も要らぬだろう。しかし、溜め込まぬことだ。キサマはこれからの大魔界に必要な人材であることを努々忘れるな」

 

「……はい」

 

 その後も適宜会話を挟みながら食事を楽しんだ。全ての皿が空になった頃合いで話を切り上げ、ダーブラ王は職務に戻り、私は食器などを片す。

 

 目障りにならない場所で珈琲を淹れ、茶菓子と共に作業の邪魔にならない場所へ置く。静かに退室しようと背を向け歩く去り際、ダーブラ王は私へと声を掛けた。

 

「──ホオズキよ。此度の食も美味であった、また頼むぞ」

 

「……仰せのままに」

 

 時刻は就寝前。重たい扉を開け、振り返らずに廊下を歩きだす。自然と閉まる扉の隙間からは、芳しいアーシーの香りが漂ってきた。

 

 

 






 身内であれば対応が優しいダーブラさん。
 実際裏切られても "灸を据える" だの "根性を叩き直す" 程度で許そうとするぐらいである。悪人ではあるが下衆ではない、そんな按配。暗黒魔界の王とはいったい……

この先の展開について

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