呪術結社鷹の爪 作:わさびにんにく
鷹の爪団の説明として何一つ矛盾は存在しなかった。呪術界で流れていた鷹の爪団の噂は概ね正しいと言える。
これほどの馬鹿であればあの一方的な縛りに同意してしまう可能性は充分にある。何よりあの人材が揃っているのに何一つ世界征服出来ていない時点で総統が馬鹿だと示す揺るぎない証拠である。
「それで結局どうするんだい?このまま情状酌量で解放・・・と言うわけにはいかないだろう」
冥冥が鷹の爪団についての今後の対応を全員に問いかける。
いくら鷹の爪団は上層部に黙認されていて脅威がないからと言ってこのまま大人しく家に帰す訳にはいかない。なんせ特級呪物の流出という前代未聞の事件を引き起こした犯人なのだから。本来であれば鷹の爪団は即刻死刑、軽くても無期刑である。
「そうだな・・・・。敵組織の重要なことを未だにほとんど分かっていない。どうにかして情報を増やしたいものだ」
夜蛾が腕組みをしながら低い声でつぶやく。主犯の呪詛師達の目的、どの様にして忌庫へ侵入したのか等未だに気になる点は多すぎる。
そんな中で伊地知が自身の意見を述べる。
「不幸中の幸いは鷹の爪団の総統と戦闘主任は馬鹿すぎて未だに自分達が呪術界で優位の立場にいることを理解してないことになります。現状自分達は処刑されるかも知れないと泣きわめいています」
伊地知の報告には丁寧な言葉の中に失礼な言葉が交じっていた。
鷹の爪団がもし世間での有用性を自認していれば高専側に横柄且つ不遜な態度で対話をしてくる可能性がある。
「なるほどね~。それなら上手くやれば須藤と名乗る呪詛師については分からなくてもそれ以外のことは聞き出せるかもしれないじゃん。やっぱ尋問しかないね」
「いや、それはちょっと・・・」
伊地知は先程の取り調べの思い出し流石に渋る。実際に鷹の爪団と直接相対していないからこそ五条はそんなことが言えるのだ。
伊地知の明らかに嫌そうな顔をするが五条はそんなことを気にしない。
「つーかさ、お爺ちゃんは鷹の爪団について何も知らなかったの」
五条は伊地知との会話を切り上げ今度は楽巌寺学長に軽い調子で質問する。
「どう言う意味だ?」
「なあに惚けちゃってんの。上層部との関わりが深いアンタなら鷹の爪団についてある程度知ってたんじゃないかって言ってんの」
「おい悟!」
五条の挑発的な指摘に対して夜蛾が咎める。楽巌寺は鷹の爪団につい書かれたホワイトボードを一瞥すると深いため息をついた。
「鷹の爪団という組織自体の現状は今日初めて知った。・・・ただ個人として知っている人間が一人いた・・・」
「?どう言う意味ですか?」
楽巌寺は一呼吸置くと自らが知る事実を告げる。
「小泉鈍一郎。奴は高専の卒業生だ」
「「「「「!!」」」」」
「そして奴はわしが請け負った生徒の一人だ」
************
薄暗い蝋燭のみで照らされた部屋の中に総統と吉田はいた。
「うう、ぐすっ、・・・うう」
「総統、総統。しっかりしてください」
伊地知に取り調べを受けて嘔吐するほど号泣した二人。立ち直りの早い吉田と違い総統は一度傷つくと長引くタイプである。未だに鼻をすすり目からは涙を流す。
「しかしじゃよ吉田くん、わし等はもうおしまいじゃ。釣りにも行けないし、ピザも食べれない。わしらはもうおしまいなんじゃ!!」
「でも仕方ありませんよ。あの眼鏡補助監督の話だと菩薩峠も捕まったって言ってましたし。打つ手なしです」
「うぅ。菩薩峠くんまでもが・・・。そもそも何であの現代最強の五条悟がよりによって今高専にいるんじゃ?五条悟がいなければ菩薩峠くんが捕らえられる何てあるわけ無いじゃろ」
「ホント空気読めない最強ですね」
総統と吉田が的外れの文句を言い続ける。実際他のメンバーが大人しく捕まったのは総統と吉田に危害が加えられないようにする気遣いなのだが二人はそんなことに気づくことは無い。
ガチャッ
キーッ
「「!?」」
そんな中で部屋の扉が開き一人の少年が入ってきた。総統と吉田は思わずその少年のことを凝視する。少年は口元まで隠した上着の首基を手で引っ張り自らの口を見せる。そして一言だけ二人に向かって言った。
『眠れ』
少年の声を聞いた瞬間総統と吉田は一瞬のうちに深い眠りについた。そして少年の後ろから五条悟が現れて部屋へと足へ踏み入れた。
「うん、棘ご苦労さん」
「しゃけ」
五条に礼を言われると呪言師の少年狗巻棘はサムズアップした。
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眠らされた総統と吉田は薄暗い部屋ではなく通常の和室に運び込まれた。そこには既にレオナルド博士とフィリップ、菩薩峠がいた。三人とも総統と吉田のように眠っている。全員がが揃った鷹の爪団は一列になる様に横に並べられた。
総統と吉田だけだとまともに話を聞くことが出来ないと考え、今回は鷹の爪団5人全員から同時に且つあまり威圧感を与えない場所で話を聞くことにしたのだ。
高専教師陣と冥冥そして補助監督の伊地知は寝ている鷹の爪団を見下ろす。
「よくもまあ緊張感もなく暢気に寝られるもんだ」
呪言を使ったとは言えここは敵の本拠地。普通なら警戒するのが当たり前なのだ。寝息を立てながら就寝している鷹の爪団を見て五条は彼らの危機意識の薄さにあきれかえる。
「うう」
吉田が寝ながら何かをつぶやく。
「五条悟め・・・お前なんか怖くないぞ・・・」
「ふん、夢の中では勇ましいことだ」
五条は意に介すこと無く鼻で笑う。
「この五条悟の・・・・・・・・・うんこ野郎・・・」
「うん・・・何て?」
この一言でこの場にいる全員の表情が固まる。
「うんこ野郎。うんこ野郎!うんこ野郎!!うんこ野郎!!!」
吉田の声は徐々に大きくなっていく。
「五条悟、うんこ野郎♪うーんこ野郎、うんこ野郎♪うんこっ・野郎♪うんこっ・野郎♪ヒャッハー!!」
このカオスな状況にそれぞれ様々な反応を示していた。夜蛾学長や冥冥は呆然と見ているが歌姫や伊地知は歯を食いしばって必死に笑いを耐えている。そして当の五条の顔は徐々に険しくなっていく。
「ゴジョーサトルはーうんこー野郎♪うんこー野郎、うんこっ・野郎♪!!!!」
ガンッ!
五条は鷹の爪団全員の頭を蹴り上げる。
「痛っ!!う・・何じゃ?」
「ようやく目が覚めたかい。鷹の爪団」
『うんこ野郎』などと寝言で罵倒されて腹が立ち相手をたたき起こした人とは思えない台詞である。そんな立場では普通こんな格好付けることは出来ない。
目をこすりながら起きた総統は目の前にいる五条の存在に気付く。
「うわあ!現代最強の呪術師五条悟!」
「うわあ!本当に真っ昼間に目隠ししてる!」
総統と吉田は五条の顔を見て素っ頓狂な声を上げる。
「はいどうも五条悟ですよ。鷹の爪団この際まどろっこしいこと止めて大人しく知っていること全部話して欲しいんだよ?」
五条は総統の顔をのぞき込み、圧をかける。涙目の顔になってはいるが今回はちゃんと話を聞くだけの耳は持ち合わせている様だ。そしてビクビクと身体を揺らしながら総統と吉田は弁明を始める。
「本当なんじゃ。本当にわし等は騙されただけなんじゃよ。須藤何て呪詛師は仲間でもなければ友達でもない!」
「それこそお歳暮のやり取りはおろか年賀状のやり取りだってしてません!」
「そんなことは分かってるよ。知ってるとしても縛りで何一つ須藤の素性については喋れないんだろ?」
とは言え聞ける耳は持っていても、冷静に喋る口は持ちあわせていない。またしてもピーチク好きなように総統と吉田はわめいている。
「え、ええっと、じゃあわしは小泉鈍一郎。栃木県出身の55歳。最近の悩みは膝の痛みと尿酸値の高さになります」
「島根から来た吉田・ジャスティス・カツヲ。21歳。好きな食べ物はカレーライスとカツ丼と鰹節です。歌います
そんなとこ~引っ張っちゃ~駄目だ~♪そんなとこ~引っ張っちゃ~駄目だ~♪」
「!・・・いやそんな事聞きに来たわけないでしょ」
五条は二人のトンチキ過ぎる行動に五条は一瞬笑いそうになるが何とか対話をしようとする。
「じゃ、じゃあいったい何を話せば良いんじゃ?」
「あっ!分かりました!あれですよ、総統。総統が発情したゴリラに三日間もジャングルを連れ回された話を聞きたいんですよ」
「いやだからそんなこと聞きたいんじゃ・・・ってゴリラに三日間?何それ?気になるんだけど」
五条は思わず吉田の言葉に食いついてしまう。普段から生真面目に振る舞う事に慣れていない五条は自由すぎる総統と吉田のペースに飲まれてしまったのだ。
「うむ、あれは壮絶じゃった・・・」
総統が少し遠い目をする。明らかにこれから総統の話が長くなることは傍から見れば分かる。
話がいっこうに進まないことにしびれを切らした遂に楽巌寺が総統の前に出た。
「・・・・久しぶりだな小泉」
「ん?・・・・が、楽巌寺先生!!」
総統は楽巌寺の存在に気付いて目を見開いた。
通常であれば何処にも需要がないおっさんの青春時代。その記憶が総統の脳内に溢れ出した。
総統と過去に関わりがあるキャラが欲しかったんですけど55歳に近い年齢の登場人物が呪術廻戦にいないんですよね。
と言うことで楽巌寺学長の元生徒と言うことにしました。