八尺様にしては小さいソレに名前をつける話。それだけ。

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小さい八尺様ってなんて呼べばいいんだ?

 

 夏、それは人々の心が少しだけ浮き立つ季節。

 海で泳いだり、山でキャンプしたり、夏祭り行ったり。

 楽しいイベントが盛りだくさんの季節。

 友達と、恋人と、家族と、色んな人が外へ繰り出す。

 そんな夏に俺はと言うと、

 

「冷房の効いた部屋でだらだらすんのさいこー。外になんか誰が出るかよ馬鹿じゃねーの」

 

 だらけていた。

 確かにイベント沢山あるけど暑いのは嫌だ。大っ嫌いだ。地球温暖化はクソ。

 

「お前もそう思うよな〜」

「ぽ!」

「うんうん何言ってるかわかんないけど多分同意してるな」

 

 同意を求め部屋にいるそいつに話を振ると元気な返事が返ってきた。

 白いワンピースに部屋の中でも被っている白い帽子、長い髪は夜を閉じ込めたように黒く、その黒と反するように白いその肌は血が通っていないのではと思う程。

 顔立ちは将来に期待が持てるぐらいには整っている。極めつけは語彙が「ぽ」。

 何を聞いても「ぽ」、好きな食べ物聞いても「ぽ」、名前聞いても「ぽ」。

 

多分八尺様だ。

 

 多分と付けたのにはいくつか理由がある。

 まず1つ、なんか小さい。八尺(240cm)には遠く及ばない。半分ぐらいしかない。

 次、魅入られるような事をした覚えがない。この夏は基本家にいたし。

 そして最後、もし八尺様だったらもう俺はとり殺されている筈だからだ。

 本来魅入られて数日以内に死ぬはずが俺はもう1ヶ月ぐらい生きてる。

 

 1ヶ月ぐらい前だらだらしてた時にいきなり部屋に現れた時にはそれはもう驚いたさ。

 めっちゃ叫んだしビビった。最初は幻覚だと思って一旦寝てみたけど起きたあともいるのを見て幻覚じゃないと知って絶望

 寝る前は部屋の隅っこにいたのに起きたら枕元にいて心臓止まるかと思った。

 有名なお寺とか神社を回ってみたけど坊さんや神主さんらは口を揃えて「何も居ない」と言われダメ元でお祓いしてもらったけど効果無し。

 コイツは元気にぽぽぽいってるし「もう終わりか……」と諦めて絶望してはや1週間。

 特に何も起こらない。コイツ自体はなにか悪さをするわけでもなくただ居るだけ。たまに食べ物を強請る以外には害は無い。

 いや最近では一緒になってだらけるようにもなったな。別にいいけど。

 そんなこんなで無害なものと判断して今に至るという訳だ。

 

「……飯食うか」

「ぽ」

「お前も食うか?」

「ぽ!ぽ!」

 

 わかった、そう言って俺は遅くなった昼食の準備を始めた。最近こいつの分も用意するようになって出費が嵩むんだよな。

 もうちょいバイト増やそうかと思案しつつ昼食を済ませ、再びだらだら。

 

 

「聞くの2度目だけどさ」

「ぽ?」

「名前何?」

「ぽ!」

「八尺様では無いよな。背丈足りないし」

「ぽ!?」

 

 怒ったっぽい。いくら小さいとはいえ女性に失礼だったか。

 

「ごめんて」

「……ぽ」

「何?何がお望みだい?」

「ぽ」

 

 機嫌を取ろうと話し掛けてみると冷蔵庫を指差す。まさか家電を寄越せと?

 

「ダメだぞ、流石にあれはあげられない」

「ぽ?!ぽ!ぽ!!」

「あ違うのね良かった」

「ぽ……」

「となると……あぁ中のプリンか」

「ぽ!!!」

 

 そう!!とでも言うように元気な返事。怪異でも甘い物が好きなんだな。これは意外な発見だ。

 

「ガキだなあ!良いよ!」

「ぽ!!!!」

「痛てぇ」

 

 思いっきり引っぱたかれた。怪異が物理攻撃するなよ。

 子供扱いするなという意思を感じた。

 また叩かれては堪らないのでそそくさと冷蔵庫からプリンを献上する。

 

「お受け取りください」

「ぽ」

 

 よかろうというようにプリンに手をつける彼女を横目にあるものを用意する。

 

「プリン食べ終わったらでいいんだけどさちょっと考えが……」

「ぽ?」

「えもう食べ終わったの?早くね?太るよ?」

「ぽ!!!!!!!!!!!」

 

 二度目のビンタ。コイツに対して初めて命の危険を感じた。

 

「気を取り直して……意思疎通の仕方はなにも口頭である必要はないのだと俺は気付きました」

「ぽ?」

「というわけでこちら紙とペンです」

 

 そう、用意したあるものとはこれのことだったのだ!

 名付けて、「何言ってるか分からないなら筆談すればいいじゃん作戦」である!

 これなら口がきけなくても問題無し!完璧!自分の才能が恐ろしい……

 

「はい、これに名前を書いてください!」

「ぽ!」

「どれどれ……」

 

 紙を見る。そこにはやけに達筆な字で大きく「ぽ」と書かれていた。

 

「……バカにしてんのか!?」

「ぽ!?ぽ!ぽ!!」

「なんで紙に書いても‪”‬ぽ‪”‬になるんだよ出力どうなってんだお前!」

「ぽ!!」

「なんだその態度は!上等だコラ喧嘩じゃオラ!!」

 

 成人男性と外見年齢8歳の女性型怪異との仁義なき戦いが勃発した。

 いくら怪異とはいえこんな小さいヤツに負けるかガハハ!!

 ここいらでいっちょわからせてやりますかね大人の威厳ってやつを。

 

 結果

 

「クソが……」

「ぽ!」

 

 負けた。腐っても怪異だった。俺の背中の上で誇らしげにしやがって。

 ええい、降りろ降りろ。

 

「はぁ……手詰まりだな。筆談もダメとなるとどうすっかな……」

「ぽ……」

「もうぽぽ子でいいか」

「ぽぽぽ!?」

 

 嫌そうだ。でも仕方ないじゃんか。分からないんだもん。

 八尺様とは呼びたくない。だってチビだし。というかコイツに様を付けたくない。

 現時点だとただのクソガキだし。

 

「今日からお前の名前はぽぽ子ね」

「ぽ!!!!!!」

 

 また引っぱたかれた。


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