【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「戦闘が増えてきたな」
「す、すみません! この選択肢が! この子がもっと良い道を教えてくれたら!」
「いや、時任のおかげで最低限に抑えられているから、選択肢を労ってやってくれ……」
普段の様子からすると、緊急時はしっかりと働いてくれる加護みたいだからな。
その代わり、日常面ではわりとからかわれているようだが。
……加護にからかわれるってなんなんだろう。
「だが、これだけ遭遇回数が増えるってことは、やっぱり俺たち狙われてるよなあ」
「ロペスもそう思うか。事故で転移した可能性は、残念ながら捨てたほうが良さそうだな」
ダンジョンに侵入した転生者の加護が暴走し、俺たちはそれに巻き込まれた、という可能性を期待していたんだが……。
ここまでくると、意図的に俺たちを狙ったと思うべきだ。
「それでも、突発的に遭遇しているということは、敵は俺たちの位置を知らないのかもしれない」
もしも居場所がバレているのだとすれば、あんなふうに兵隊を小出しにしないだろうからな。
もっと多くの兵隊を使うか、あるいは将や転生者を使って対処するはずだ。
「となると、出くわした昆虫人は逃さねえほうが良いな」
「ああ、仲間に知らされたら、今以上の数で攻めてくるだろう」
そうなると、さすがに風間たちも対応しきれない。
そこからは、一人ずつ捕らえられるか、あるいは殺されるか。
いっそのこと、さらわれて女王のところまで行けたら楽なんだが……。
女王や将もろとも自爆すれば、昆虫人たちも混乱するだろう。
「レイさん! 次の四つの道、両端が安全です!」
「それ以外は?」
「えっと左から二番目が昆虫人と遭遇します。三番目はたくさんの昆虫人と遭遇します。でも、両端は誰もいないので大丈夫です!」
「……」
「ボス? なにか気になることでもあったかい?」
これまで、かなりの分かれ道を進んできた。
それで、行き止まりにたどり着いた数も少なくはない。
枝分かれになった道は、ときには倉庫や食糧庫や休憩所につながることがある。
そして、その法則がなんとなくわかってきた。
このタイプの分かれ道のときは、両端が休憩所であることが多い。
「両端の部屋。たしかに誰もいないかもしれないが、また休憩所かもしれないと思ってな」
「もしかして、法則でも見つけたのかい? 俺にはまだわからないんだが」
「確信は持てないから、無理に危険な道を進むわけにはいかないが……どうする?」
あくまでも、なんとなくそう思っただけだ。
時任の選択肢に従うのが一番安全なのだろうし、下手に逆らって、みんなを危険な目に遭わせるのはまずい。
「じゃあ、左から二番目ですね!」
「タケミたち、戦闘になるが大丈夫か?」
「ああ、しばらく戦闘を避けられたから、十分休めたよ」
と思ったのだが、すでに全員の頭の中から両端の道を進むという考えはなくなったらしい。
「確証は持てないんだが……」
「いや、ダンジョン作りで目が慣れてるボスの勘なら、それに乗ったほうが良いだろう」
「それもロペスくんの勘?」
「おう、こう見えて俺も勘は鋭いほうなんだ」
「みんなすごいねぇ。……はっ! だから、ポーカーが強いんじゃない?」
いや、ロペスはイカサマ……。
選択肢に勝てるイカサマと考えるとすごいと思うが。
「じゃあ、左から二番目の道を進むぞ。風間、原、世良、悪いがまた戦闘になる」
「はい!」
誰も反論はないようだが、あまり消耗させすぎるわけにもいかないな。
どうやら俺を全面的に信頼してくれているようなので、そのぶんこちらは期待に応えねば。
「あと奥居」
「はい」
「念のため一番左の道を進んで、本当に行き止まりかどうか確認してもらえるか?」
「わかりました。ある程度進んでみてから、壁をすり抜けてそちらに合流します」
「ああ、頼む」
隣の道は安全らしいし、万が一敵と遭遇しても、奥居一人なら壁の中に逃げられるからな。
……いっそのこと、奥居一人で壁を無視して出口に向かってもらうべきか?
いや、これまで進んだ道を考えると、わりと広いうえに複雑だ。
奥居が逃げ切れるなら良いが、迷ってしまったり、敵に見つかり捕まってしまっては目もあてられない。
だからこうして、短時間別行動させるくらいに留めるべきだろう。
「それじゃあ進むか」
後ろから迫っていた昆虫人は、ここまでスムーズに進んだことで引き離せているらしい。
時任の選択肢も、いつしか待機することで昆虫人と遭遇する選択肢を出現させなくなっているようだからな。
だが、だからといって休みすぎても良くない。
進めるうちに進んで、背後からの敵から距離を離しておかないとな……。
◇
「怪我はないか?」
「はい、数が少ないので、このくらいならまだまだいけます」
戦闘も順調。改めてバランスが良いパーティだと思う。
前衛の風間に、後衛の原。そして回復や防御によるサポートの世良。
風間が言うとおり、昆虫人の兵隊数人なら、まだまだ余裕そうだ。
戦闘を終え、そんなふうにひと息ついていると、ちょうど壁の中から奥居がやってきた。
「どうだった?」
「レイさんの言うとおり、たしかに見慣れた休憩所でした。あのまま行っていたら、行き止まりでしたね」
「そうか。それなら、この道を進んで問題なさそうだな」
「はい。それに、私の後ろから昆虫人が何十人も来ていたので、あのままだと行き止まりで戦うことになっていました」
わりとギリギリだったか。
距離を離せていると思っていたが、昆虫人たちが違う道を進んでくれたおかげだったというわけだ。
引き返して、またこちらの道を進むと考えると、やはりそれなりに時間は稼げているみたいだな。
「やっぱり、分かれ道の作りごとに法則性を持たせているのか」
一見すると、道に迷いかねないのは、昆虫人も同じなのかもしれない。
だからこそ、法則性をつけることで、自分たちは迷わずに進めるようになっているのだろう。
行き止まり以外を進むことで、出口か入り口にたどり着けると思って良さそうだな。
ならば、法則をしっかりと見定めて進んで行こう。
幸い、これまでの道のりで、気になる点はいくつもあった。
それに従って、時任の選択肢や奥居の透過も合わせれば、このまま順調に進むことができそうだしな。
問題があるとすれば……奥に進んでいる可能性か。
どちらが出口か分からない以上進むしかないが、行き着く先が巣の最奥だった場合、俺たちは女王や数多の将と兵隊に遭遇することになってしまう。
いつそのときがきても良いように、やはり自爆の準備だけはしておかないとな……。
◇
「……いない。本当に私たちの巣に転移させたのか?」
「兵隊が死んでいることを考えると、敵がいることは間違いないだろう」
だとしたら、なぜこうも出くわさない。
外敵への対策として、私たちの巣の構造はかなり複雑にしているはずなのに、そんなに簡単に進めるものだろうか?
分かれ道の数や構造で、どの道がどの部屋か覚えるのは、私たちですら億劫だというのに。
「転生者の力かもしれないな」
「地図の能力者がいるということか。面倒な……」
この巣の中で鬼ごっこなど、私たちに有利でしかないはずだったが、どうやらそう簡単にもいかないようだ。
地図の能力者か……。手に入れたら、この巣の中での移動が楽になりそうか。
まあ、せいぜい逃げるが良いさ。
どうせこの巣から逃げ出すことなどできはしない。
時間をかけてゆっくりと見つけ出してやれば、連中は私たちに敵うはずなどないのだから……。