【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「……さすがに、そう甘くはないか」
兵隊ならば、風間たちが倒せる。
将でも、奇襲が成功すればどうにかなる。
だけど、あくまでも少人数ならの話だ。
「こ、このままじゃ、まずいですよね……?」
「さすがに、どの選択肢にも将が何人もいるとなると、これまでどおりにはならないだろうな」
……仕方ない。
ここまで進んだのは、俺の指示によるものだ。
であれば、俺が責任を取るしかないだろう。
「背後は相変わらず敵だらけだから、どこかやり過ごせる場所を目指すしかないだろうな」
そうして巣の奥に進むしかないのは、追い込まれている気がしてならない。
だが、引き返すこともできない。
じわじわと、確実に追い詰められているな。実に嫌なやり方で、参考にもなるやり方だ。
「この先ですけど……敵はいっぱいいます」
「だけど、立ち止まっていたら、さらに敵が増えるんだろ? 挟み撃ちになっちまうな」
先ほどのように、俺とロペスが無抵抗なふりをしても、数が多ければ隙も生じないだろうな。
背中からの攻撃は期待できない。
奥居に地中から足を掴んでもらっても、二人足止めする程度が限界か……。
「新、なんとか結界の維持を頑張ってほしい」
「うん。みんなをちゃんと守るよ」
行くしかないんだろうな。
切り抜けられる確率は低いが、ここで立ち止まっているほうが、より確率を低くする。
体内で魔力を操作しておく。少しずつ慣れてきた。
ぶっつけ本番でも、できるとは思う……。
「奥居、常に位置は知らせる。だけど、敵が攻撃しそうな場合も合図するから、その場合撤退を優先してくれ」
「はい。なんとかしてみます」
そもそも、来ることがわかっていたら、奥居の力で抑えきれるものでもなさそうだ。
二度目の奇襲の合図は、送ることができないかもしれない。
「十人か……」
「人間と獣人とハーフリング? 魔族まで……」
「お前ら、女王様が言っていたやつらだな」
しかも今度の相手は、武器を油断なく構えている相手ときた。
下手に奥居が動いても、彼女を危険に晒すだけだし、俺たちも襲われるだろうな。
「投降する。代わりにこいつらは見逃してくれ」
その言葉を聞いても、やはり武器は下ろされない。
遠巻きに俺たちの動きを見ているため、奇襲することは難しい。
「なら、変な気は起こすなよ? お前は女王様の元へ連れて行く」
「だが、後ろの奴らもついてきてもらう」
やっぱりそうなるか……。
せめて、他の転生者たちは見逃してもらえないものか。
女王の元へ向かい自爆するのだから、俺だけで十分だ。
「俺一人の能力のほうが、こいつら全員分よりお得だぞ」
「……それは、女王が決める」
「なら、俺は連れて行かれる前に命を断つが、その損失はお前の責任になる。それでもいいか?」
「……それは」
俺一人で満足してくれないかなあ。
時任たちは、なんか大ハズレの能力ってことにすれば、俺一人のほうがお得と思えるはずなんだけど。
「お前、どんな能力を持っているんだ?」
「モンスターを作れる」
「モンスター……。なるほど、それが本当なら人手がさらに増やせるな」
兵隊がいるから要らないと言われなくて良かった。
まあ、兵隊とモンスター、それぞれ使いどころはわけられるだろうし、まともな将ならそう考えるか。
「どんなモンスターを作れる?」
「大型のモンスターだから、ここじゃ作れないな」
というか、今の俺はスライムやゴブリンさえ作れないけど。
「……使い勝手は良さそうだな。どうする?」
「女王様に判断してもらうべきだろ」
「だが、本当に作れるのか? それに、他のやつらの能力のほうが、良い能力かもしれないだろ」
「残念ながら、他のやつらはハズレの能力だ。例えば、こいつは鍵を開けることしかできない」
悪いなロペス。
お前の能力を軽んじているわけではないが、この場ではそう言わせてもらう。
「鍵……そりゃあなんとも」
「日常ではたまに便利かもしれないが、戦闘には使えそうもないか」
「他も似たような能力なのか?」
「わ、私は、お洗濯がよく乾く能力です!」
時任の言葉に、昆虫人たちは微妙な顔になった。
良いぞ。やつらから興味をなくしてしまえ。
「たしかに、モンスター作成一人のほうが有用か」
「言っていることが本当ならな。やはり、試してもらいたい」
「お、お洗濯でしょうか!?」
「いや、お前じゃない……」
俺だよなあ。
なんとかして信じてもらいたいが、言い訳することしかできそうにない。
「今は魔力が無い」
「なるほど、魔力を消費するのか。作成するためには、どれくらい時間がかかる? 前準備は必要なのか? モンスターの素材でも使うか?」
「いや、例えばケルベロス作成と言うだけで……」
……こうやって、ケルベロスが作成されるんだ。
俺の魔力と引き換えにな。
「な!? ケルベロスだと!?」
なんか、普通に作成できた。
どういうことだ? 壁すら作成できないから、ダンジョンマスターの加護は全て使用不可と判断していたが……。
たしかに、モンスター作成も罠作成も試していなかったな。
「転がる岩作成」
……は、無理か。
モンスターだけが可能? あるいは、超位モンスターだから?
「ケルベロス。そいつらを襲え」
「お、おい!? 話が違う!」
うん。俺もそう思う。
だけど、こちらも事情が変わったんだ。わかってくれ。
敵側に転生者もいない。将は油断こそしていないが、さすがに想定外すぎて混乱している。
仕留めるならここだろう。
「奥居」
「なっ! 足が動か……なんだこれ! つかまれてる!?」
「風間、原、世良、嫌がらせ程度で良いから参戦頼む」
「はい!」
あ~あ、大混乱だ。
なんかすごいことになっている。
本来なら、もっと苦戦しただろうけど、咄嗟の判断ができたのはこちら側。
その差がさらなる混乱を生み、こちらが一方的に攻撃できている。
千載一遇のチャンスだ。貴重な時間は余さず使い切ろう。
この間に、どれだけ昆虫人を倒せるかが問題だが……。
「なんとかなったか。みんなお疲れ、奥居も出てきて良いぞ」
さすがは超位モンスター。
昆虫人の将であろうと、混乱中にほとんどを倒してくれた。
残りは風間たちが倒してくれたため、敵はすでにいなくなっている。
かつてのリピアネムのように、狭い場所での戦いだったため、ケルベロスは本領を発揮できていなかった。
しかし、それ以上に向こうが本領を発揮できていなかった。
その結果がこれだ。
「……俺のケルベロスってことでいいんだよな?」
うん、わかったから落ち着いてくれ。
お前らでかいし顔が三つもあるから、舐められたらべとべとになるんだ。
指示を聞いてくれていたため、疑う余地はないが、しっかりと俺たちの仲間みたいだ。
「作成ができた……。ダンジョンと何が違う?」
壁すら無理。罠も無理。だけどモンスターだけは作成できた。
もしかして……地底魔界と昆虫人の巣って、どちらもダンジョンという扱いなのか?
…だとしたら、あとはダンジョンの所有権の問題かもしれない。
地底魔界であれば、ダンジョン全ての権利はフィオナ様からもらえている。
そのため、地底魔界のどこにでもダンジョンの改築メニューを反映できた。
だが、昆虫人の巣は当然俺に権利は無い。
だから、簡単な壁一つ作れなかった。
だけど、モンスターはダンジョンの一部ではあるものの、ダンジョンに根付いているわけではない。
その違いが、モンスターだけは作れるような、抜け道のようになったのかもしれないな。
「とにかく、モンスターを作成できるのなら、かなり心強い」
「まったくだ。なんか、いつものダンジョンの惨事が目の前で繰り広げられてる気分だったぜ」
「いや、いつもはもっと罠とかもあるし、モンスターも複数いるんだが……」
「アナンタの旦那が止める気分はよくわかったぜ……。というか、侵入者すげえな」
本当ならもっとやれるんだけどな……。
今は、モンスターに頼るしかないし、魔力も有限。
いきなりケルベロスを作成してしまったので、今後は計画的に魔力を使うとするか。