【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「私は、玉座の魔力をがんばって補充しています」
「そうですね。フィオナ様って、意外と真面目ですから」
「意外……。まあ、意外と真面目ですからね。私」
俺の言葉に、きっと反発しようとしたのだろう。
だけど、自分でも同じことを思っているらしく、フィオナ様は俺の言葉を肯定した。
俺としては、意見があったのが少し嬉しかったりもするけれど、本人がそれでいいのだろうか……。
「そんながんばっている私に、ご褒美を所望します」
「一緒に寝ますか? 頭をなでますか? 膝枕ですか?」
「全部あとでお願いするとして、それ以外のご褒美ですね」
強欲……。ご褒美が四つということじゃないか。
まあ、それもしかたがないことなのかもしれない。
なんせ、俺たちを救出するために、玉座の魔力を使ってしまったのだから。
そして、そのせいで毎日のお楽しみである、宝箱ガシャができていないのだから。
「ということで、レイの魔力を使って宝箱ガシャを回してもらいたいなあと思うのです」
「かわいくお願いしなくても、ちゃんと回しますよ」
なんですか。そのおねだりするような仕草は。
あなた魔王であることを忘れていませんか?
「さすがはレイです。いつも私の味方ですからね!」
それはそうだ。
俺がフィオナ様の敵に回ることなんて、今までもこれからも一度だってない。
「では、一万ガシャを百回ほど」
「今、味方じゃなくなりました」
「な、なぜ……」
欲深すぎると、部下は上を見限るものなのかもしれませんねえ……。
まあ、百は無理だけど、何回かは回してあげよう。
それで満足してくれなかったとしたら、俺はフィオナ様のためにフィオナ様の敵となって、お説教しなくてはならない。
「では、抱きつくのと撫でてもらうのと膝枕をするだけで我慢します」
我慢するとは……。
というか、膝枕って俺がしてもらう側だったらしい。
それって、フィオナ様へのご褒美といえるんだろうか?
「というか、百回でなければ宝箱ガシャもしますよ?」
「だからレイって好きです!」
現金なものですね。
俺もそんなフィオナ様のことが好きですよ。
ころころと変わる表情を見ながら、俺は呆れたような癒されたような、何とも不思議な気持ちになるのだった。
◇
「五十」
「多いです」
「二十」
「多くないですか?」
「むむむ……。では、十で」
「まあそのくらいですかね」
なんか、回数の交渉をされたが、結局ダンジョン魔力は十万消費することで決定した。
百と言われていたので、その十分の一となってはさすがに満足しないだろうか?
……いや、なんか計算通りみたいな顔していやがるな。この魔王。
交渉しているふりをして、実は最初から十回くらいが目標だったのか。
俺のジト目に気が付いたのか、フィオナ様はすぐにごまかすような表情に変わった。
まあ、約束した以上は回しますけど、次回はもう少し数を減らしてもよさそうですね。
「じゃあ、宝箱を作りますけど、ここで始めちゃっていいんですよね?」
「ええ。私はそれを見ながら玉座の魔力を補充しますので」
普段は、宝箱ガシャを回すときは地底魔界の住人も呼ぶからな。
あれ、ちょっとプレッシャーになるから、今日は幾分か気が楽だ。
フィオナ様は、なんかみんなを呼んでわいわい騒ぐのが好きみたいだけど。
「なんだか気楽そうですねえ」
「ばれましたか。実際、こっちのほうがやりやすいと思っています」
「ほほう? つまり、レイは私と二人きりのほうがいいと」
「まあ、それもそうなんですけど、今回は別にそういう理由では」
「む……。照れ隠しに否定しなかったことは、成長と認めてあげましょう」
偉そうに、何様……。魔王様だな。
自分だって、照れ隠しにわけのわからないテンションになるくせに。
そして、その場合はえてして俺が被害にあう。
被害というか、なんかテンパってとんでもなく、大胆なことするからなあ。
温泉に一緒に入ろうとしたり、お腹を触らせようとしたり、絶対あとでもっと恥ずかしくなるでしょうに。
我らが魔王様は、追い詰められると強くなるタイプなのだ。
「では、レイの気が変わらないうちに、さくっとやってください」
「はいはい。では適当に回していきますね」
「適当では駄目です! 真剣な思いにこそ、宝箱の神は微笑むのです!」
知らない神様が出てきた……。
きっと、フィオナ様だけでなく、リズワンやレンシャとかいう女性も信仰しているに違いない。
「まあ、俺は神様とか敵対するタイプなんで」
「女神なら、私にとっても敵ですが、それ以外の神がいるのなら敵対しないにこしたことはありませんよ?」
それもそうか……。
唯一会った神があれなもんで、どうにも神が嫌いになりそうだった。
そう思いながらさくっと宝箱に魔力を注ぐ。
すると、見慣れた蘇生薬が出てきた。
「お見事です。これでまた、魔王軍の復興が一歩進みました」
「ありがとうございます。ですが、期待されすぎてもあとでがっかりしますよ?」
「大丈夫です。一個でも当たればあとは、もう勝ちは確定していますからね!」
つまり、残りは外しても問題ないということか。
ますます、気楽にガシャを回すことができそうだな。
「それじゃあ次は……」
なんか似たようなものを見た気がする。
そんな宝玉らしきものが出てきた。
「プリミラに渡した宝玉の仲間ですかね?」
「たしかこれは……黎明の宝玉ですね」
そして、やはりフィオナ様はどんなものかわかっているらしい。
名前からは効果は想像できないが、この様子ではそこまで大したアイテムではないらしい。
「どんな効果なんですか?」
「周囲を浄化するアイテムだったはずです」
「つまり、お掃除アイテムということですか……」
「リグマに渡したら宿屋の掃除に使いそうですねえ」
「プネヴマとか、本人がそのまま浄化されそうな気もします」
「あ、あの子は悪霊ではありませんよ?」
わかっています。
でも、なんか最近いつも浄化されそうなので、つい。
「地底魔界の場合、フィオナ様がちゃちゃっと魔力で綺麗にできるので、いまいち使い道はなさそうですか」
「残念ながらそうですねえ……。まあ、あって困るものではありませんし、宰相ボックスに入れておきましょう」
魔王ボックスの隣のそれ。俺のガシャ結果の格納用だったのか。
じゃあ、とりあえずそこに入れて次を回そう。
「……種?」
「たぶん、これは虚無の種子ですね」
「なんか物騒な名前の種ですね……。危険なものなんですか?」
「いえ、何もない空間を作り出す種です。引きこもるには最適でわりと良いものですよ?」
引きこもったことあるのか。この魔王様……。
だけど、空間作成系のアイテムはとても便利そうだな。
今度、ロペスとクララでも入れておこうか。
また喧嘩をしていたらの話だけど。
「じゃあ、何かあったとき用に宰相ボックスに」
そうして再び宝箱を開くと、やはり蘇生薬以外のアイテムが入っていた。
今回は、ずいぶんと色々な結果になっているなあ。
それにしても、また種か……。さっきとは違う種みたいだけど、これもなんかすごいものに育つんだろうか?
「フィオナ様。これはどんな種ですか?」
「う~ん? ……なんでしょうね、これ。私も見覚えがないアイテムです」
「珍しいですね。フィオナ様にもわからないアイテムとは」
まあ、そんなアイテムがあっても不思議ではない。
だけど、今までは聞いたら全て教えてくれていたので、この種はよほど珍しいアイテムなのかもしれない。
なんだか色々なアイテムが出てくるから、楽しくなってきた。
しかし、そう思ったのがいけなかったのか、残りの結果は見慣れた蘇生薬ばかりとなってしまった。
結果的には、このほうが良いんだろうけど、なんともままならないものだなあ……。