【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「なるほど……たしかに、俺ですら魔力を感じ取れる」
「すごいよね~。これでまだ成長途中なんだから、今後はもっと魔力に満ちるんじゃない?」
ピルカヤの言うとおり、もしかしたらものすごい量の魔力を保有できるようになるかもしれない。
そうなると、第二のダンジョン魔力みたいに利用できないだろうか?
それが可能ならば、あの種は大当たりの結果といえる。
「ただ、これってなんの魔力を溜めているんだ? さすがに、自ら生み出しているわけではないと思うんだけど」
そんな希望的観測をしていると、リグマの言葉に俺も疑問が湧いてきた。
魔力って、俺たちみたいな生き物なら寝たら回復するよな。
それは、周囲の魔力を吸収しているかららしい。
ダンジョン魔力とは別に、大気中や地中にある魔力を蓄えているそうだ。
ならば、この木もそこから吸収しているんじゃないだろうか?
ふと気になって、ダンジョン魔力の数値を見てみる。
「減ってる……」
「え、なにが? もしかして、地底魔界の魔力量でも減ってた?」
「いや、ダンジョン魔力が減ってる……」
具体的な数値はわからないが、確実に減っているのだけはわかる。
使った記憶もないのにこれはおかしい。
というか、ほぼ確実にこの木が吸い取ったとみていいだろう。
「ありゃあ、そこから魔力を蓄えていたかあ」
「大気中の魔力じゃないのか……」
「これだけの魔力、大気中や地中からだけじゃまかなえないと思っていたんだよ」
「よし、切り落とそう」
「お待ち下さい」
リピアネムに指示を出そうとするも、プリミラに止められる。
悪いなプリミラ。この木はどうやら放っておくわけにはいかないんだ。
「この木の魔力を取り出せないでしょうか?」
いやあ、それは無理だろ。
一度吸収された魔力を別に移すなんてことは……。
「クララたちの技術で利用できるようであれば、この木は第二の玉座として、魔王様のお役に立てると存じます」
「む……」
フィオナ様のためか。
となると、早計に切り落とすのもよくないな。
ちょっと、クララたちに相談してみるか。
あとはダスカロスやテクニティスにも。
「いっそ、おじさんたちが魔力を溜めておけたらいいんだけどねえ」
そう言いながら木に触れると、リグマがぱっと手を離した。
なんだ? 珍しく焦った姿だったが。
何か問題でも起きたか?
「どうした?」
「いやあ。なんか、おじさんの魔力吸い取られた気がしてねえ」
「ちょっとステータス確認するぞ」
「ああ、頼むわ」
許可を得てからリグマのステータスを見ると、たしかに魔力が減っていた。
それに対して、この木はさらに魔力が増したように見える。
「吸収されてるね」
「まじかあ……。なんか、とんでもない木だなあ」
四天王の魔力も吸い取る木か。
触れた者の魔力を吸い取るのか? だとしたら、ダンジョン魔力は……。
もしかして、ダンジョンに常に触れているため?
やっぱり危険な木かもしれないなあ。
「やっぱり……」
「クララたちに利用方法を相談してみましょう」
俺の言葉はプリミラに遮られた。
まあ、もとからそういう話だったしな。
みんなに相談して、そこからどうするか決めればいいか。
◇
「星冠樹……?」
なんか、知っていそうだな。
フィオナ様やプリミラすら知らないのに、大したものだ。
「どういう木なんだ?」
「おそらく、エルフの国にある樹と同じものです」
縁起が悪そう……。
いや、クララたちもエルフの一種だから、そうとは限らないか。
「エルフの国ヤニシアが魔法に長けているのは、この樹という魔力源のおかげで研究が盛んだったからです」
「へえ、それじゃあ悪いことだけじゃないんだ」
扱い切れれば、むしろプラスになるのならますます切り落とせないな。
「うまく利用する方法はあるか? このままだと、魔力をただ吸われていくだけなんだけど」
「ええ、それ自体は可能かと思います。今は無差別に魔力を溜め込んでいますが、それはこの樹自身の魔力の蓄えが不足しているためであり、一時的なものでしょうから」
ということは、ダンジョン魔力も減り続けるわけではないのか。
ただなあ。ダンジョン魔力を、この樹にあえて保存する理由もないんだよなあ。
別にダンジョン魔力が上限に達しているわけではない以上、別口で保存する意味がない。
「エルフたちは、この樹をどうやって活用していたんだ?」
「国民たちのうち余っている者が魔力を保存しておき、後で利用するという方法ですね」
やはり、玉座と同じような感じか。
……となると、フィオナ様が魔力を溜めておけば、予備として扱えなくもないか。
いや、もしかして。
「魔力を込めた者と、取り出す者が別でも成立するのか?」
「はい。例えば最高評議会が無駄になる魔力を溜めておき、研究者がそれを取り出すなんて使い方が主流でしたね」
ということは、ダンジョン魔力をフィオナ様に与えることもできるということだな。
この前みたいに有事の際には、魔力を使うことにもなる。
もしもそれが立て続けに起きた場合、玉座の魔力を補充する間もなくなるかもしれない。
そう考えると、誰でも魔力を補充できるこの樹は、案外良いものかもしれないな。
「とりあえず、フィオナ様にも知らせるか」
「はい。さすがに魔王様の耳にも入れておくべき内容ですね」
プリミラも俺の意見に同意してくれたので、除け者にしていたフィオナ様を二人で呼びに行くことにした。
◇
「なんですか! 二人して、魔王を除け者にするなんて!」
「ぬか喜びさせまいという配慮です」
「私に配慮しているのであれば、私に寂しい思いをさせないのが最優先だと心得なさい!」
すごい情けないこと言い出したぞ。この魔王様。
玉座の上で体育座りしていじけていたフィオナ様は、俺とプリミラを叱るが内容が内容なので、俺たちはただ反応に困るだけだった。
「それはそうと魔王様」
「それはそうと!?」
さすがは四天王だ。
こんな魔王様の叫びも一切関係なく、淡々と用件に移ろうとしている。
なので、その訴えはプリミラではなく俺に向けられた。
なんですかその目は。どうやって助けろと言うんですか。
「とりあえず、手でもつないでおきます?」
「子供扱いですか! ですが、手はつないでおきましょう」
子供ですか。
まあ、本人が求めるなら、やぶさかではないけれど。
「レイ様がエルフたちの国にある星冠樹を作り出しました」
「え、あんなものを作っちゃったんですか? やりますねえ」
「なんか、この前のガシャの謎の種がそれだったみたいです」
「ふむふむ、なるほど」
「ということで、今後は玉座だけでなく、星冠樹にも魔力は貯蔵してください」
「なんてものを作り出したんですか! レイ!」
俺のせいじゃないのに……。
フィオナ様は、ようやく玉座の魔力を補充し終え、これからは宝箱ガシャを再開できるという段階だった。
それが遠のいたことで、その原因である俺に抗議しているらしい。
「ちなみにフィオナ様だけでなく、誰でも補充できるらしいですよ? その気になればダンジョン魔力で埋めることもできるみたいです」
「……つまり、ダンジョン魔力で補充してもらって、私がそれを取り出してガシャを」
あ、やばいこと考えている。
強欲な魔王め。俺が勇者だったら、間違いなくこの方が魔王だと断定できる所業だ。
「良いものを作りましたね、レイ。では、さっそく宝箱ガシャを……」
「星冠樹は、玉座同様に有事の際の魔力とすべきかと存じます。ですので、魔王様の案は却下します」
「進言から断言に!? 四天王が私に反乱を……」
「落ち着いてください。わりといつものことです」
俺の言葉どおり、本当に冷静になって考えたのか。
フィオナ様は、たしかにとつぶやくだけだった。
それでいいのか魔王と四天王。
「まあ、本当にたまになら使ってもいいですよ。もちろん使い切ったら駄目ですけど」
「だから、レイのことは好きなんです!」
抱きついてくる現金な魔王を見て、俺もプリミラも呆れたようにため息をつく。
しかし、当の本人だけはそれに気付いた様子はなかったようだ……。