【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

422 / 422
第422話 表面張力はありません

「さて、星冠樹よ! レイから蓄えた魔力を魔王に還元するのです! ……地底魔界って自然の星はありませんし、影冠樹とかにします?」

 

「まあ、フィオナ様がそうしたいのであれば、それで良いと思いますよ?」

 

 やっぱり、エルフの国にある樹と同じ名前というのは、縁起が悪いんだろうか。

 俺は特に気にしていないが、そういうことなら今後は名前を変えてしまおう。

 

「では改めて影冠樹よ。魔力ください」

 

 最初のちょっと威厳がある態度は疲れたのか、おねだりになった。

 しかし影冠樹は何も応えてはくれない。

 

「お、おのれエルフ……」

 

「濡れ衣です!」

 

 魔王様の理不尽な恨みを買いそうになったダークエルフの代表は、大声でフィオナ様の発言を否定する。

 まあ、濡れ衣にもほどがあるな。きっとやりかたが違うか、まだ他者に魔力を渡せる段階ではないんだろう。

 

「クララ~。この樹、私に反抗的なんですけど~」

 

「いえ、魔王様……。星冠樹……影冠樹もまだ魔力が不足していまして。一定量は自身の内に蓄えていないと枯れてしまうのです」

 

「なるほど。補充が足りていないと」

 

「はい、この樹はまだまだ小さいですからね。今は自身の成長のための魔力が必要な時期なのでしょう」

 

 まあ、だいぶ小さいからな。

 なんか仰々しい名前の樹だから、きっと立派な大樹として育ちそうな予感はしていた。

 ……となると、もしかしてこの空間では狭いか?

 

「なあクララ」

 

「なんでしょうか?」

 

「天井の高さ足りる? このまま影冠樹が成長したら、つっかえたりしないか?」

 

「……確実に到達しますね」

 

 やっぱりか。

 となると、この畑の天井を広げるように拡張が必要そうだな。

 

「プリミラ。ここの天井拡げてもいい?」

 

「ええ、拡がる分にはむしろ助かります」

 

 ということで、この場所の主の許可も出たことだし、ちゃちゃっと天井を高くしてしまう。

 というか、この部屋そのものを天井が高い部屋に作り替えた。

 よし、これで影冠樹が育ってもきっと問題ないはずだ。

 

 ……だけど、それ以外は天井のスペースが無駄になっているなあ。

 

「天井に罠とか設置するか? 侵入者を倒せるように」

 

「いいえ、大丈夫です」

 

「吊り天井にしておくか?」

 

「いいえ、大丈夫です」

 

 そうか。

 まあ、プリミラがそう判断したのなら、その言葉に従っておこう。

 

「プリミラ。レイくんの扱いが達人級になってるよなあ……」

 

 なんだその発言は。

 まるで俺が扱いにくいやつみたいじゃないか。

 

「それはそれとして、これでいくら成長してもいいようになったし、魔力を注いだほうが良いのか?」

 

「そうですね。このままですと、成長のために見境なしに魔力を吸い取りそうなので、ある程度落ち着くまでは地底魔界の全員で協力して」

 

「じゃあ、とりあえず適当に注いでみるか」

 

 ダンジョン魔力を一万ほど……。

 あれ、まだ足りなそうだな。じゃあ追加で一万。

 まだ駄目? 仕方ない。満足するまで注いでやるとするか。

 

「あの……こんなに急速に成長させられるなんて、ヤニシアの国でも不可能だったのですが」

 

「あれ、もしかしてまずかった? 満足するまでダンジョン魔力を注いでしまおうと思ったんだけど」

 

「いえ、問題はありませんが……。本来なら、国民総出で時間をかけなければ育てられないものでしたので……。レイ様の魔力の高さに脱帽していました」

 

「俺というか、ダンジョン魔力がすごいだけなんだけどな」

 

 というか、マギレマさんをはじめとした各施設の管理者のおかげだ。

 順調に客が入るということは、それだけダンジョン魔力を溜められるということにつながっているからな。

 なので、たまにはこうして一気に消費しても問題ないはずだ。

 

「……つまり、私のために一万ガシャを何度でも」

 

「しません」

 

「魔王なのにないがしろにされています!」

 

「むしろ一番大切にしているじゃないですか!」

 

 心外な発言にこちらも応戦するが、フィオナ様は俺の発言を聞いた途端になんかもじもじしはじめた。

 そこで照れくさそうにする意味がわからない……。たまにこの魔族のことがわからなくなるんだよなあ。

 

「ま、まあ許しましょう! 今後も私を一番にするように」

 

「今までだってずっとそうしているじゃないですか」

 

 また照れてるし。

 まあ、上機嫌ならばそれはそれで良い。

 ついでにダンジョン魔力でガシャをする件もうやむやにできたし、良い感じだ。

 

「こんなところか?」

 

「は、はい。すでに成長は安定しています。これならば、今後は無差別に魔力を吸収することもないはずです」

 

 よし、それだけでもだいぶ扱いやすい樹になってくれた。

 あとは、エルフの国のように、余った魔力を誰かが蓄えて、必要に応じてそれを使うことにしよう。

 なんなら、ダンジョン魔力をフィオナ様に譲渡できるということだし、とても頼れる樹になりそうだ。

 

「フィオナ様。ためしに影冠樹から魔力を取り出してガシャを回しても良いですよ」

 

「いいんですか!? いや~、さすがはレイですね~。私を甘やかすことにかけては、右に出る者がいません」

 

 ただの実験です。

 それが伝わっていないようなので、念のために忠告しておこう。

 

「当然ですが、枯渇させたり無駄遣いは禁止です。影冠樹の魔力が不足したら、フィオナ様の魔力や玉座の魔力を吸われるかもしれませんよ?」

 

「むむむ……借金のようで恐ろしいですね。いいでしょう。では、一度だけ」

 

 よかった。さすがのフィオナ様も、今回はすんなりと言うことを聞いてくれた。

 そうだよな。地底魔界から無差別に魔力を奪われたら、ダンジョンが拡張もメンテもできなくなる。

 魔王様や四天王が魔力を使って戦えなくなる。玉座という予備魔力すら枯渇する。

 うん。この樹を枯渇させる真似だけは、絶対にしてはいけない。

 

「ふっふっふ……レイがダンジョン魔力を一万以上注いで、それを扱えるようになったということは。ついに私にも一万ガシャが」

 

 あ、それたぶん無理です。

 

「さあ、今度こそ私にガシャチケットをよこすのです。一万ガシャ分の魔力を!」

 

 今度は影冠樹はフィオナ様に魔力を与えてくれた。

 しかし、当然というべきか、一万もの魔力は与えてくれない。

 当然だろう。だって、フィオナ様の魔力の最大値は9999なのだから。

 

「これが一万の魔力……。なんだかいつもと違うガシャ結果になりそうな予感です!」

 

「いえ、フィオナ様」

 

「さあ、宰相レイよ。私に宝箱を用意するのです」

 

 まあいいや。試してもらったほうが早いだろう。

 言われるがまま、俺はフィオナ様のために宝箱を作成した。

 

「私の魔力を注ぎ、蘇生薬確定ガシャの開始です!」

 

 たしかに注ぎましたね。9000ほどの魔力を。

 

「レイ。開いてください」

 

「はい」

 

 そんな期待に満ちたフィオナ様の目が点になる。

 まあ、いつもの結果だもんなあ。

 

「不死鳥の羽です」

 

「い、いつものやつ……。レイ、あなたが所持してください。ちなみに自爆のためのアイテムではありませんからね?」

 

「それは……まあ、基本的にはわかっています」

 

「基本以外でもわかりなさい! まったくもう! なんで、蘇生薬じゃないんですか!」

 

「だっていつもの9000の魔力消費ですし」

 

「あれ? ついに私にも一万ガシャが回せるようになったんじゃないんですか?」

 

「別に、フィオナ様の魔力の最大値は増えていませんからね」

 

 俺の言葉を聞いて、フィオナ様はようやく事情を呑み込めたみたいだ。

 ダンジョン魔力を使ってガシャを回せるということもあって、どうやらずっと勘違いしていたらしい。

 

「……お、おのれエルフ」

 

「濡れ衣です!」

 

 フィオナ様の呪詛と、それを否定するクララの声だけがその場に響くのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~(作者:SIS)(オリジナルSF/冒険・バトル)

 友人の勧めで『ビルドロボオンライン』なるゲームを始めたサラリーマン小鳥遊将也(たかなししょうや)。▼ 最初はそこまで乗り気ではなかったものの、作りこまれたゲーム内容に魅了された彼は、文句を言いながらもなんだかんだとゲームを楽しみ、独自の道に突き進んでいく。▼ 彼は知らない。▼ 後に、自分が廃人ゲーマー達から正体不明、野生のレイドボス、なんて呼ばれるようにな…


総合評価:2360/評価:8.17/連載:149話/更新日時:2026年09月12日(土) 06:00 小説情報

ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

全51話・約32万字/完結済み▼毎日20:18更新▼『ソル&ヴァルキリー 』。神の代弁者・魂導者(ソル)となり、戦乙女(ヴァルキリー)を空へ育て導くヒロイン育成系学園RPG。▼これは、そんなゲームの世界で、▼「戦乙女という空を飛べて広範囲殲滅魔法を使える存在がいるのに、騎士になる意味はあるのか……?」▼と考えてしまい、魂導者となったやられ役のかませ騎士、ルシ…


総合評価:6572/評価:8.48/完結:52話/更新日時:2026年05月09日(土) 10:18 小説情報

エロゲ転生〜やり込んだ知識でハーレム無双〜(なお特殊性癖)(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

やり込んだエロゲに転生してしまった主人公。▼抜きゲー世界であるが、バトルもあるので、死なない、詰まない様にしながらエロく生きたいと思います。▼なお初っ端から周回用アイテムを回収する模様。▼カクヨムとマルチ投稿▼諸事情により未完▼本当に申し訳ない。▼理由は活動報告にて


総合評価:5248/評価:8.24/未完:130話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:00 小説情報

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4962/評価:8.73/連載:89話/更新日時:2026年07月03日(金) 12:07 小説情報

病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き)(作者:池崎)(オリジナルファンタジー/戦記)

突如として前世の記憶を思い出し、自身が病弱貴族になってしまったことを悟った主人公は、とある出来事をきっかけに──「治癒魔法をかけ続けたら戦えるのでは??」と気づき、おっさん治癒術師を巻き込んで修練に励む。▼その結果──確率で血反吐を吐きながら拳で戦うHENTAIスタイルになってしまう。▼「だ、大丈夫! すごく痛いけどすぐ治るから!!」▼


総合評価:3125/評価:8.23/連載:14話/更新日時:2026年08月12日(水) 12:39 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>