【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ぐはぁっ……!」
また魂が抜けていますね。
本当に、癖になっちゃっているんでしょうか?
この子じゃなければ、何度死んでいたことかと心配になってきます。
むしろこの子だからこそ、魂が簡単に抜けるのでしょうか?
「ロマーナ。プネヴマをテラペイアのところまで、運んであげてください」
「かしこまりました」
あ、鎖が巻き付いて引きずられている。
ロマーナも慣れたものですね。
やや雑に見えますが、魔王軍に順応してきたということでしょうし、良いことです。
「さて、研究でもしますか」
親友はすでに倒れたため、今日はしばらく介護は不要。
侵入者はレイ様が対処しているため、アンデッドたちの出番も不要。
ちょっと前の慌ただしさは嘘のように、最近はまた平和な日々を送っている。
いえ、ちょっと前本当にひどかったですからね……。
誰ですか。魔王様からレイ様を奪い取ろうなんて、命知らずな真似をした者は。
魔王様と四天王様総出で巣に襲撃とか、勇者との決戦並の一大事でしたよ。
私たちはともかく、最近従業員になった者たちは、魔王様の怒りに震えあがっていましたからね。
そして、それをあっさりと鎮めてしまうレイ様も、だいぶ異常ですね。
今の魔王軍は、あのお二人が揃っていることでバランスが取れているのでしょう。
「ロマーナの腕をハイドラにする計画は……」
「ロマーナがかわいそうなので、やめてあげてくださいね」
「強くてかっこいいですよ?」
「エピクレシ様の感性は、いまいちわからないです……」
「なんなら、あなたの首をハイドラに変えても……」
「その場合、俺の意思って残るんですかね?」
どうでしょう。
ハイドラの比率が増えることで、自我が奪われる可能性も……。
やってみますか!
「やらないでくださいね」
「大丈夫ですよ。プネヴマがいれば、自我が乗っ取られてもあなたの魂を発掘できますし」
「もう乗っ取られること前提じゃないですか」
でも、便利だと思いますよ?
首が落とされても再生して増えますから。
まあ、そのぶんハイドラの比率も増えていって、最終的にハイドラゾンビになりそうですけど。
「もっと、建設的な研究しましょうよ」
「ふむ……新たなアンデッドでも作りますか?」
「エピクレシ様のお眼鏡にかなう死体や魂ってありましたっけ?」
「まあ、心当たりはなくはないですが……」
一つ候補はあります。
妥協したら、候補はさらに増えます。
最優先の候補は正直手に余るので、まずは妥協した個体で試してみますか。
「まあ、結果は見えていますけど、試さないのも気持ちが悪いですしね」
「なんか、よからぬこと考えていそうですねえ……。一応、ダスカロス様に報告しておきます」
「ええ、任せました」
ダスカロスも、私のしたいことを頭ごなしに否定はしないでしょうし、ついでに立ち会ってもらいますか。
◇
「なるほど……。まあ、成功したら魔王軍にとって有益だな」
「でしょう? まあ、無理だとは思っていますけど」
「私もそう思う。だが、君のことだから、試さずに結論を出したくはないということか」
「そうですね。検証しないことには、始まらないと思います」
「そういうところ、レイと君は似ているかもしれないな」
わかります。レイ様はきっと私と同じく、まず試して結果を求める方ですからね。
似ていると言われたことで、やや嬉しくなり、私は上機嫌で親友にお願いしました。
「ということで、プネヴマ。ここで死んだ転生者の魂は、調べ終わりましたか?」
「う、うん……。けっこう……いるね……」
私が知っているのは、病の能力者とその一味。
そして、あの制御できる気がしない蛇。
本命は蛇ですが、下手に復活させようものなら、何をしでかすかわかりませんからねえ。
それ以外で実験するのが妥当でしょう。
「ええと……私たちが……生き返る前に、魔王様や……レイ様が……何人か……倒したみたい……」
「ほう、さすがですね。私たちが知る以外にも、すでに転生者と戦っていましたか」
「蘇生前の出来事を魔王様やレイから伺ったが、イドでなければ破壊できない壁を破壊する転生者もいたらしい」
……やはり、転生者の力というものは危険ですね。
それだけに、手札に加えられたら強力ではあります。
アンデッド化して使いこなせれば良いのですが、従属させられるかという問題がありますね……。
意思を奪って昆虫人たちのように転生者を利用するにしても、私のアンデッドにはそんな器用な真似はできそうにありません。
もっと言うと、一度死んだ転生者をアンデッド化したところで、女神の加護まで引き出せるかどうか……。
「ダスカロスは、一番安全そうな転生者のことわかりますか?」
「今言った壁を破壊した者とともに行動していた、爆破の加護の転生者だろうな」
「ほほう。わかりやすく使い勝手はよさそうですね」
しかし、そんなのをアンデッド化させたら、ここにいる三人が爆破によって攻撃されそうですが……。
ああ、それでも安全ということは、なんとなくわかりました。
「なるほど、それではプネヴマ。その転生者の魂を呼んでください。アンデッド化による交渉といきましょう」
「へ、平気……? なんか……文句言われそう……」
「大丈夫です。断られたら、ぽいってしちゃいましょう」
魂の時点で反抗的なら捨てればいい。
だから問題なのは、アンデッド化するまでは従順なふりをして、その後に女神の加護で暴れようとする者たち。
そんな意識を無くしてしまえばいいですが、それだとわざわざアンデッド化する利点もなくなります。
モンスターや昆虫人の兵隊のほうが、よほど役立つでしょうからね。
「ええと……うわぁ……。なんか、すごい……命乞いしてる……」
「ふむ。つまり、反省していると? では、アンデッド化して従順に働くか、交渉をお願いします」
「ええと……」
◇
「仮の体ですが、まずは復活させました」
「あ、ありがとうございます……」
「さて、あなたに期待しているのは、女神の加護の行使です。試しに、そうですねえ。あちらに向かって攻撃してみてもらえますか?」
誰もいない広場で、私は爆破の転生者に指示を出す。
ですが、その指先は指示したほうを向いていませんね。
……はあ、やっぱりそういうタイプでしたか。
「蘇らせてくれて感謝するわ。じゃあ、用は済んだから消し飛びなさい。魔族」
その一挙手一投足を見逃さない。
魔力の反応、問題なし。
魔力の巡り、問題なし。
魔力の発生、問題なし。
体内から増幅された魔力は、指先へと収束している。
「あれ、な、なんで……」
「はあ……」
まあ、そううまくはいきませんよね。
おそらく工程に問題はなかった。
ですが、女が爆破の力を発揮することはなく、私たちは誰一人として攻撃を受けていません。
「アンデッド化したことによる弊害ですかねえ? それとも、一度死ぬことで女神の加護は消えるのでしょうか?」
「女神が回収している可能性もあるが、その場合こちらをさすがに危険視するだろうな。死んだら自動で女神のもとに戻るのかもしれない」
「ですねえ。ああ、あなたもういいですよ。さようなら」
「ま、待っ!」
女神の力で私たちを攻撃しようとした。
それすなわち、明確な反逆です。
許すわけないでしょう。そんな危険な存在を。
女の転生者の焦る声を無視して、私はその身体を燃やして消滅させました。
万が一爆破の加護を行使できて、こちらに反逆した場合にそなえ、女の身体は引火しやすい素材で作っておきました。
今回は、女神の加護は不発でしたが、結局焼死することになりましたね。
危険かもしれない相手なので、対策はしているに決まっているでしょう。
まったく、それすらわからないなんて、転生者の出来もまちまちですねえ。
「反逆の可能性はありますし、力は行使できなくなっている。やはり、転生者をアンデッド化させる利点は見いだせませんねぇ」
ひとまずの結論が出たので、今日はそれに満足しておくとしましょう。
床に落ちた灰の掃除をスケルトンに命じ、私は研究成果をまとめるために部屋に戻ることにしました。