とある編入生の日記   作:エアリアルって可愛いよね

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何故か続きました。

因みに今回どこかで見たような人達が出て来ると思いますが、全員単なるそっくりさんです。


第三話 僕に/私に勝てるのは幼馴染だけだから

第三話 前編

 

 

◯月B日

 

取り敢えず学園に出るまでに、お母さんと通話した。

 

色んなことがあったって報告と、僕の日記についても。

 

最後に気になったから、スレッタと一緒にガンダムのことについて聞いてみたけど、お母さんは否定してくれた。

 

そうだよね、お母さんは僕達のことを思ってくれてるから。

 

 

でも、僕はお母さんが何か危ないことをしてそうで心配だったりもする。

 

もし、もしも。もしも、お母さんが良くないことをしようとしていたら、その時は…。

 

そう考えたら、そろそろ時間だって言われてびっくりしちゃった。そろそろ登校しないと。

 

それはそうと男なのに僕も魔女だって言われちゃったって伝えたら、お母さんからその見た目だししょうがないよって言われちゃった。悲しい。

 

 

 

 

廊下を歩いてると、他の人達が僕らのことをひそひそ声で話しているのが聞こえた。

水星水星って、珍しいのはわかるけどそこまで気にすることなのかな?

 

スレッタが縮こまっちゃって、それに対して気にせず行こうって声をかけようとしたら、そこにニカさんが声をかけてくれたんだ。

 

いやまあ、ニカさんが声を掛けたのはスレッタの方だけど。

 

昨日はありがとうってニカさんに言おうとするスレッタと一緒に頭を下げようとしたら、ニカさんは興奮した様子でスレッタのエアリアルのことを凄い凄いって言ってきて、質問攻めにして来て。

 

群体制御にはどんな階層構造を使ってるのって言われて、一応僕が継起的空間と併用してるって言ったら、何故かニアリスさんもパイロット科だよねって飛び火。

 

まあ僕は別に技術屋じゃないけど、自分たちの家族とも言える機体に興味を持ってもらえるのは、やっぱり少し嬉しいかもしれない。

 

どんなMSを使ってるのって言われたその時、グエルさんが取り巻き三人と合わせ、四人でずかずかとやって来た。

 

 

この前の決闘は無効ってわざわざ教えてくれた。やっぱ偉そうだけど、根はいい人だよねこの人。

 

でもスレッタはビビって僕の後ろに回り込んで、伺うような形になってて…。

 

うん、スレッタも僕とは別の意味で人と接するのが苦手なんだよね。

 

 

でもスレッタが決闘の相手をグエルさんに聞いて、俺だって答えて貰って…それでスレッタが、良かったって言って、グエルさんは良かっただと!?と逆ギレ。

 

それにスレッタも言い訳するように、「一度勝ってますし…」って言ってしまい。

 

 

つい吹き出してしまったら調子に乗るなよ田舎者共が…って僕も睨まれてしまった。ごめん、面白くて。まあでも田舎者なのは事実だし、否定できないなあ…。

 

まあ、そこでヒートアップしそうだからスレッタにもういくよって言って、ニカさん含めた面々に失礼しましたって言って去った。

 

ニカさんに呼び止められたけど、流石にあそこじゃこれ以上話せなかったしごめんなさい。

 

 

 

 

その後、僕達はミオリネさんの温室へ。

 

 

手伝ってって言われたから、助けてもらった恩義もあるしで手伝った。

 

入っても良いの?って聞いたら、良いよって言われて。

 

で、スレッタが、私達親友ってこと!?なんて言い出してはあ!?とか言われちゃった。

 

まあ、ミオリネさんの言う通り負けたらここに居るみんなが終わりだしね。

 

一蓮托生ってこと?って聞いたら、ミオリネさんは何故か顔を赤くしてまあそんなところよって言った。

 

熱でもあるのかなって聞こうとしたら、そこに何故かエランさんが来て。

 

 

決闘委員会の呼び出しらしい。僕達の連絡先が分からなかったって。

 

で、それでスレッタに連絡先を聞こうとしたんだよ彼は。

 

もう立派なナンパだよねこれって当時の僕は思った。

 

なので僕も連絡先の交換をって言ったら、勿論君とも繋ぐつもりだよって言われてちょっと恥ずかしかったです。まる。

 

ただ、この人…何かズレてるような気もする。

 

不審なところがあったら、調べてみる必要があるのかもしれない。

 

 

まあそれはそうと、リストが埋まって良かったね、スレッタ。

 

うん!って言ってるスレッタを見てると、こっちも心がぽかぽかしてくる。

 

 

エランさんにやりたいことリストについて説明したら、他には何があるのかなって言われた。

 

 

スレッタと一緒にリストの読み上げをしてたら、ミオリネさんに「デートする」って言われて…キッショ、なんで分かるんだよ。

 

あんた達既にデートしてるようなもんでしょって言われて、違う、そういうことじゃないって言い返そうとしたんだけど。

 

その時にエランさんがスレッタに対して沢山叶うといいねって言ってて、スレッタが嬉しそうにしてた。

 

ただミオリネさんはその間、じと…っと僕の方を見つめて来てた。機嫌悪くさせるようなことでも言ってしまったのかなあ。

 

 

それはそうと、決闘委員会のところに呼ばれて。

 

水星ちゃんに水星くんって言われたんだけど…なんだろう、この人。

 

シャディクさんって言うらしいけど、金髪に褐色肌、それに加えてなんと上半身の前半分が見えてるんだけど…暑がりなのかな?

 

一応握手したけどそのことが気になって仕方なかった。

 

 

で、その後。

 

 

スレッタとグエルがなんか宣誓?みたいなことをしてたんだけど、僕はしなくていいらしい。

 

なんか、特別戦だから?みたいな理由なんだって。

 

 

でも内容はちゃんと教えてくれた。

 

 

一対三の特別戦、戦術区域は6番。スレッタの戦うところとは隣接してるらしい。

 

敵側は適当なパイロット科の生徒で、最高戦力とまではいかないけど十分精鋭と言える人達。

 

僕の勝利条件は、制限時間内にブレードアンテナを折られずに生き残ること。

 

敗北条件は勿論、ブレードアンテナを折られること。

 

 

負けたら僕は退学、メリクシオは解体なのは前から聞いてたけど、非公式だからといって僕に対するメリットが何も無いのは良くないからということで、一応勝ったら僕は何かを得られるんだと。

 

ただ一対一ではないし、相手の三人はそれぞれ御三家で対等な立場だから、僕が要求する相手は決闘委員会全体らしい。

 

今のうちに考えてといてね〜って言われた。

 

えー、何にしようかなあ…。

 

 

 

それはそうと、決闘委員会から立ち去る時、銀髪で褐色の女子生徒が感じ悪くグエルさんのことを笑っていた。

 

それを見たスレッタが「ダメです」と注意したけれど、僕も同じように感じたから、思わず口が出ちゃった。

 

「正直言ってダサいと思う、前に進んでる人をそうやって笑うの」

 

なんて。

 

別に相手の顔は見ていない。興味がないから。

 

でも、必死に抗っている人を嘲笑って「自分は分かっている」風を装うのは、一番つまらない生き方だと思った。

 

 

その後、エレベーターの中でなんであんなことを言ったのかって、複雑そうな顔をしたグエルさんに問われたんだけど。

 

 

それにスレッタは、逃げたらひとつって答えたんだ。

 

 

 

とても強い敵、立ち向かうことも憚られるような存在が居るとしたら。

 

例えば、誰も逆らえないような偉い人だったり、決闘の相手だったり。

 

そんな相手に対して、逃げたら安心安全、失敗しないという結果が手に入る。

 

 

って僕はそれに補足したんだけど…うん。

 

「俺は逃げん」「俺は負けん」

 

 

負けたじゃん。

 

 

「油断さえなければ俺が勝つ」

 

 

だから結局負けてるじゃん。昨日の今日でそれは流石に無理あると思うんだけど……。

 

 

 

まあそれはそうと。

 

 

進めば、立ち向かえば。

 

 

逃げなかった自分、経験だとか、その心意気が認められたりとか。

 

逃げるより沢山手に入るんだって、スレッタが続けて言ってくれた。

 

 

グエルさんはそれを聞いて「ご立派な哲学だな」なんて鼻で笑ったけれど、それがお母さんから教わった大事な指針なんだと伝えると、彼の顔つきが変わった。

 

 

「……良い親なんだな」

 

 

何か思うところがあるのか、彼はそれだけ残して、どこか寂しげな様子で立ち去っていった。

 

それを見送ったスレッタが、ぽつりと漏らす。

 

「……わけ分かんないです」

 

……うん、僕もそう思う。

 

複雑な家庭事情があるのかもしれないけれど、僕らにはまだ、彼の背負っているものの半分も理解できそうになかった。

 

 

第三話 後編

 

 

 

メリクシオの狭いコクピット内。モニターの光がニアリスの横顔を無機質に照らし出す。

 

 

「ロックオンシステム、展開確認。システム、フル稼働。パーメットリンク確立、正常値。コンピュータ、全回路正常。全接続、同期……──メリクシオ、システムオールグリーン」

 

淀みのない、超早口のシステムチェック。

 

それは、彼が家族の状態を瞬時に把握し、一体化するための儀式のようなものだ。

 

「そっちは? スレッタ」

 

『大丈夫。ごはんもちゃんと食べたし!』

 

「なら安心」

 

 

緊張感の欠片もないやり取り。だが、そこに割って入る通信が、コクピット内の空気を一変させた。

 

 

『……二人とも』

 

 

モニターの端に表示されたのはミオリネ。

 

どこか落ち着かない様子で、けれど虚勢を張るように彼女は言った。

 

『私の番号も、あんたたちの端末に登録しておいたから』

 

 

冷静を装ってはいるが、ミオリネの内心はドギマギと騒がしかった。

 

 

独房でニアリスが見せた、勝利を確信したあの笑み。理論上はほぼあり得ない「三対一」の勝利を、自分までもが信じそうになっている──その事実が、彼女をかつてないほど動揺させていた。

 

 

『そんな、勝手に……』

 

「仕方ないよ、スレッタ。僕たちの人生がかかってる」

 

 

スレッタを宥めるように遮ると、ニアリスはカメラ越しにミオリネを見つめた。

そしていたずらっぽく笑いながら、そっと小指を立てる。

 

 

「これは“取引”なんでしょ? ミオリネさん。なら、僕たちはそれに見合った結果を出してみせる」

 

 

“取引”という言葉。ミオリネが自分の心を守るために使っているその武装を、ニアリスはあえてそのまま肯定し、受け入れた。

 

そのあまりに誠実で、かつ逃げ道のないコミュニケーションに、ミオリネは苛立ちと、原因不明の心臓の高鳴りを同時に感じてしまう。

 

 

『え、ええ。そうよ。……無様に負けたら、ただじゃおかないんだから!』

 

調子を狂わされたまま、ミオリネは二機を見送った。

 

 

 

 

一方、決闘委員会の「第二の部屋」では、シャディク・ゼネリがやれやれと言った様子で独り言をこぼしていた。

 

 

「全く、ここを使う日が来るとは思わなかったけどね」

 

 

しかし、カメラが回れば即座に表情を切り替え、立会人としての責務を全うする。

 

 

『これより、双方合意のもと、決闘を執り行う』

 

『今回の決闘には特別ルールを採用。合同チームは、ニアリス・マーキュリー機のブレードアンテナを制限時間内に破壊すれば勝利。対するニアリス・マーキュリー側は、制限時間終了までアンテナを保持すれば勝利となる』

 

 

並列で行われる二つの決闘。その異例の光景に、学生たちは端末に食い入るように見入っていた。

 

それは、地球寮のメンバーも例外ではない。

 

 

「……ジェターク社は本気を出したみたいだし、もう片方は御三家の混成チームと三対一。……普通に考えたら、もう終わりだよ、あの二人」

 

 

マルタンが絶望的な観測を口にする中、ニカ・ナナウラだけは、彼らの余裕のある、静かな佇まいから目を離さなかった。

 

 

「……まだ分からないよ、マルタン」

 

「ニカ……?」

 

 

彼女には見えていた。

 

 

風の精の名を冠する通り、変幻自在な戦い方を前回してみせたエアリアル。

 

そして未だ全貌は不明なものの、深い海の底のように静まり返った、メリクシオとニアリスの放つ異質なプレッシャーが。

 

 

 

 

 

『MSコンテナから出すわ。学籍番号と名前を名乗って』

 

『は…はい!』

 

「分かった。それと、ミオリネさん」

 

『…何?』

 

「僕のことは気にしなくて良いから、スレッタのことだけを気にかけて」

 

『ニアリス!?それってもしかして…』

 

「うん、勘。僕が相手する三人より、今回スレッタの相手をするグエルさんの方が絶対強い」

 

『ちょっとそれってどういう…』

 

「後で説明する。とにかく僕のことは気にしなくてもいいから、勝つって言ったでしょ?」

 

『あんた後で覚えときなさいよ…』

 

 

通信を切り、読み上げる。

 

 

「LP042、ニアリス・マーキュリー…」

 

「メリクシオ、出ます」

 

 

えーっと、今回のは色々と特殊だから口上は省略、で良いんだよね。

 

 

『両者、向顔』

 

『フィックスリリース』

 

 

 

戦域に展開した直後、複数の通信回線が勝手に割り込んでくる。

 

 

『来やがったな、水星野郎!』

 

『……さっさと終わらせよ』

 

『必殺ッ!』

 

 

……うーん。三者三様、なんだか凄く感じが悪い。

 

敵の構成を視認する。通信順に、ディランザ、ザウォート、ハインドリー。

 

御三家の標準機が一機ずつ、隙のない編成だ。

 

投影されたマップを確認すると、見晴らしのいい荒野が広がり、その端に鬱蒼とした森林部が隣接している。

 

相手は一応精鋭らしいけれど、動きにまとまりがない。一対三という数の有利に、無意識に油断しているのが手に取るように分かった。

 

 

「始めよう」

 

 

勝利条件は「アンテナの保持」。

つまり、制限時間いっぱいまで鬼ごっこをして、逃げ回っていれば僕の勝ちだ。

 

 

メリクシオのシェルユニットに、赤い線が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、危ない!」

 

 

観戦席で、ニカが思わず声を上げる。

 

画面の中では、三機のMSがそれぞれの武装を構え、一点に留まるメリクシオへと殺到していた。

 

 

空中からザウォートがビームガンを連射し、退路を断つ。

 

 

そこへ重量級のディランザが突進しながらビームライフルを叩き込み、止めと言わんばかりに待ち構えたハインドリーが電磁ランスを突き出す──観戦者には、さながらライオンの行う狩りのように見えただろう。

 

 

だがニアリスの視界は、それら全てをスローモーションのように捉えていた。

 

 

(……上に一、正面に一、左に一……うん、スレッタの攻撃に比べれば、軌道が単純すぎて欠伸が出そう)

 

 

メリクシオは右に回避するのではなく、敢えて左前に抜けた。

 

それは回避というには、あまりにも力みのない動作。

 

 

『消えたんだけどなにこれ!?』

 

『後ろだ、追え!』

 

 

ディランザのパイロットが叫ぶ。だが、彼らが振り向いた先にメリクシオの姿はない。ニアリスは既に森林エリアの木々の隙間へと、滑り込むように身を隠していた。

 

 

『この!この!!この!!!』

 

 

ザウォートが空中から森を焼き払わんばかりにビームを乱射する。しかし、ニアリスはそのことごとくを不規則に動き、かつ正確に回避した。

 

 

「……誤射には気を付けた方が良いよ」

 

 

ニアリスの呟き通り、ザウォートの放った一撃がハインドリーのラウンドシールドを掠める。

 

 

『何やってる!ヘタクソ!』

 

『うるさい、あいつがチョコマカ動くから……!』

 

 

(……仲が悪いなあ。それに、動きのクセも分かりやすい)

 

 

『オラオラ行くぜぇ!』

 

 

ディランザが森の木々をなぎ倒しながら、ビームトーチを振りかざして突進してくる。重装甲に任せた、強引な力押し。

 

だが、ニアリスはスラスターを一瞬だけ吹かし、ディランザの懐へ潜り込むと、そのまま背後へ「流した」。

 

 

『てめえどこ狙ってやがる!』

 

『そっちこそ、僕が狙ってたのを邪魔するんじゃないよ!』

 

 

勢い余ったディランザが、回り込んで待ち構えていたハインドリーと正面衝突しそうになり、両機が慌てて回避運動を取る。その間を、メリクシオは猛牛使いのような軽やかさで通り抜けていった。

 

 

『逃げんなよ、田舎モンが!』

 

『ああああウザイ!さっさとアンテナ出せよ!』

 

『あーもうふざけんな!』

 

 

手玉に取られていることに苛立ち、わめき散らす彼らの動きはもはや連携とは程遠い。

 

一対三という数の優位に依存し、ただ感情のままに機体を振り回しているだけだ。

 

 

ニアリスはその光景を、冷静すぎる瞳で見つめていた。

 

 

(……うん。もう、だいたい分かった)

 

 

三人の機体の特徴も、操縦のクセも、彼らの戦術の底も見えた。

 

このまま制限時間まで逃げ回っていれば、勝利という結果は手に入る。けれど、それはニアリスの「負けず嫌い」な部分が、静かに拒絶していた。

 

 

「……別に、倒してしまっても構わないんだよね」

 

 

ぽつりと独り言を漏らす。

 

その瞬間、メリクシオの動きに変化が訪れる。

 

機体全体がまるで深い眠りから覚めた生物のような、生々しい熱を帯び始めた。

 

 

「……行こう、メリクシオ」

 

 

先程までの、あくまで緻密な機械的なスラスター制御に収まっていた機動ではなく、まるで人間が地を蹴り、空を泳ぐような、滑らかで有機的な機動。

 

 

『なんかこいつ、動きが……!?』

 

『気持ち悪……』

 

『関係ないね!うらああ、抹殺!』

 

 

慌てて射線を合わせようとする三機に対し、ニアリスは無慈悲な牽制を叩き込む。

 

右手のビームライフルから放たれた光条がザウォートのビームガンを正確に貫き、頭部のバルカンはディランザの足元を執拗に叩いて煙幕を放った。

 

 

「まずは、君から」

 

 

ライフルを腰へ戻すと同時に、背中から2本のビームサーベルを抜刀。

 

 

決闘出力の為に本来の青から緑色となっている双刃を携え、メリクシオは最短距離でハインドリーへと肉薄した。

 

 

『──ッ!?』

 

 

電磁ランスを突き出す暇さえ与えない。

 

メリクシオの腕は、筋肉がしなるような動きでハインドリーの「肘」と「膝」を正確に斬り飛ばした。火花が散り、手足という自由を奪われた機体が、無様に地面を転がる。

 

 

『あ〜堕ちろ!』

 

 

「次は君」

 

 

振り返りざま、空中から急降下してビームサーベルで斬り掛かったザウォートを迎え撃つ。

 

ニアリスの思考に応じ、メリクシオは空中でひねりを加えながら、二本の刃を交差させた。

 

ザウォートの飛行ユニットと両腕が、紙細工のように容易く切り裂かれる。

 

 

『あ、あああ……っ! お前お前お前ェェェ!!』

 

 

絶叫と共に墜落していく機体。

 

 

残るはディランザのみ。

 

 

『ふざけんなよ、この……化け物がッ!』

 

 

ビームトーチによる強引な激突。

 

 

火花が散る鍔迫り合いの中、メリクシオはあえて正面からコクピット付近を蹴り飛ばした。

 

 

重厚な設計のおかげでパイロットは無事だったようだが、恐怖に飲まれた彼は距離を離してライフルとバルカンを乱射し始める。

 

 

だが、ニアリスはその全てを紙一重で回避し、吶喊した。

 

 

再びの鍔迫り合い。二刀流のメリクシオに対し、手数で劣るディランザは受け流しからのタックルで姿勢を崩そうとするが──

 

 

ニアリスは、あえて「寝そべる」ことでそれをやり過ごした。

 

 

地面スレスレを滑るような回避。そこからバネのように跳ね起きたメリクシオは、ダンスを踊るような足捌きでディランザの背後へと回り込む。

 

 

「……少し、静かにして」

 

 

振り向いたディランザに、閃光が二度走る。

 

 

右の刃が左の四肢を、左の刃が右の四肢を、寸分狂わず断ち割った。

 

 

 

 

砂塵が舞う荒野。

 

そこに残されたのは、四肢を失い、ダルマのように転がった三機の残骸。

そして、その中心で、赤いラインを静かに明滅させながら立ち尽くす、無傷のメリクシオだけだった。

 

 

「……あ。そっか」

 

全機を戦闘不能にした後で、ニアリスはふと、今回の特殊ルールに気づいた。

 

勝利条件はあくまで「制限時間終了までブレードアンテナを守りきること」。つまり、相手を戦闘不能にしたところで、タイマーがゼロになるまでは、この砂まみれの戦域に留まっていなければならないのだ。

 

 

嫌がらせの一種なのかなあと彼は思ったが、実際のところは単純で、三対一で真正面から勝つことを想定していないだけである。

 

だが、彼の脳内ではスレッタ>グエル>さっきの三人である。まあ実際にそれは正しいのだが。

 

 

『クソ、なんだこの馬鹿MS!動け! 動けよ!』

 

『お前ェ…!』

 

『なんだよあれ、チートかよ…』

 

 

足首や手首を失い、芋虫のようにのたうつ残骸の中から、負け惜しみの通信が届く。

 

 

「……まあ、リベンジしたいならまた今度ね」

 

 

それに対して独り言を漏らしながらもヘルメットを脱いだニアリスは学生手帳を取り出し、隣接する戦術区域──スレッタの戦場を映し出す画面へと視線を移した。

 

 

そこでは、スレッタのエアリアルが、深紅の新型機と熾烈な死闘を繰り広げていた。

 

 

(……やっぱり、前回とは違う)

 

 

あの赤いMSは、見るからに近接戦闘に特化した難解な機体だ。

 

 

それを初乗りで、かつ十全に使いこなしているグエルはかなりの腕前なんだと理解した。

 

前回の敗北はあくまでスレッタとエアリアルに対する情報の欠如、及び機体の性能不足によるもの。

 

十分な機体があれば、彼はスレッタと互角にまで渡り合える。

 

 

自分の戦域の無様な残骸たちとは、あまりにも格が違う戦い。

 

 

それを眺めているうちに、メリクシオの頭上に、勝利を示す文字列が浮かび上がった。

 

「あ、時間終わった」

 

少年の淡々とした声が、戦術区域へと静かに響いた。

 

 

 

 

 

『この人、強い……。でも、負けません!』

 

 

急激に動きの質が変わったダリルバルデ。その猛攻に耐え、ワイヤーアンカーに翻弄されながらも、エアリアルは壁面へと着地した。

 

残った左腕でビームサーベルを構え、壁を蹴る。

 

 

『このグエル・ジェタークが、負けてたまるかよお!』

 

 

ダリルバルデが両腕のサーベルで迎え撃とうとした、その瞬間。

 

 

スレッタの脳裏をよぎったのは、水星でずっと一緒に育ってきた、あの幼馴染の顔だった。

 

 

『だって、やりたいことリストもまだ全然埋まってないし……それに!』

 

『ニアリス達に勝ち越すまで、私とエアリアルは、誰にも負けられないんです!』

 

 

通算1251戦、332勝332敗。

 

1回勝って1回負けてを繰り返してばかりで、二差ついたことは一度もない。

 

一歩も譲らないあの幼馴染に、一度も勝ち越せないまま終わるなんて絶対に嫌。

 

 

スレッタのその意地が、エアリアルの刃を加速させた。

 

 

一閃。

 

 

砂埃が晴れた先には、ダリルバルデのブレードアンテナだけを正確に貫いたエアリアルの姿があった。

 

モニターには、スレッタの勝利を示す文字列が鮮やかに浮かび上がる。

 

 

『……はぁ、はぁ……』

 

 

息を切らしながら端末を見ると、エランからの「CONGRATULATIONS」というメッセージを皮切りに、知らない人たちから大量の通知が届き始めていた。

 

 

『あああ、あのミオリネさん!? なんか、文字がいっぱい……!』

 

 

『なんでメッセージを全開放してんのよ……。登録した人のだけ表示して』

 

 

呆れながら指摘するミオリネの指示通りに操作すると、画面はすっきりと収まった。

 

 

『勝ったわよ。……私たち』

 

 

『……ってことは、ニアリスも!?』

 

 

「うん。勝ったよ」

 

 

突如、通信回線に割り込む聞き慣れた声。

 

 

『…………ニアリス!? いつからそこに……!』

 

 

スレッタが驚愕して後ろを見る。

 

そこには、激戦を繰り広げたはずなのに塵一つついておらず、涼しい顔をしたニアリスの乗るメリクシオが、いつの間にかエアリアルの背後に立っていた。

 

 

 

「決闘が終わった時を見計らって入ってきたんだ」

 

 

『あんたねえ…後で詳しく話を聞かせてもらうけど。まあ、とにかく勝ったわよ。私達』

 

 

「これで退学はなし、やったねスレッタ。見てたよ、凄かった」

 

 

『ってことは、私達みんな…』

 

 

「セーフ。一件落着だね」

 

 

『そう!ざまあみろクソ親父!』

 

 

ミオリネの高笑いが響く。

 

安堵したスレッタは、ふと「やりたいことリスト」の項目を思い出し、弾んだ声で言った。

 

 

『よ、良かったね!…ミオミオ!』

 

 

『はあ!?』

 

 

トラップカード!スレッタの天然が発動!

 

 

『友達、あだ名でで呼ぶの…リストの結構上の方に書いてあったから…可愛く、ないですか?』

 

 

『却下、センスなさすぎ』

 

 

「え、結構可愛いと思うけど…良いじゃん、“ミオミオ”」

 

 

ニコニコしながら便乗するニアリスに、ミオリネの矛先が向いた。

 

 

『あんたは後で覚えておきなさいよ』

 

 

「なんで!?」

 

 

残当であった。

 

 

そこに、グエルがうつ伏せになったダリルバルデからなんとか這いつつ出てきた為、エアリアルの手に乗っかりつつスレッタも降りる。

 

 

周りに誰も居ない、ふたりきりで彼らが話すのは初めてであった。

 

ニアリスは一応居るが、メリクシオに乗っているので除く。

 

 

「あ、あの…ごめんなさい。あ、なたのこと…見くびってました。」

 

「あなたはその…とっても、強かったです!」

 

 

スレッタはニアリスの影に隠れることなく、自分の言葉でグエルを称えた。

 

ニアリスに支えてもらうだけじゃなく、自分も対等になりたい。その決意が言葉に宿る。

 

そっぽを向いていたグエルが、ゆっくりとスレッタを振り返った。

 

手を差し出すスレッタに、グエルは目を輝かせて差し出された手を両手でガシっと掴み。

 

 

「ひぃ!」

 

 

がしっと手を掴まれたことに対して動揺するスレッタに、彼は普段の高慢さがなくなったキリッとした表情で。

 

 

「スレッタ・マーキュリー…」

 

「俺と、結婚してくれ」

 

 

プロポーズした。

 

 

「……え」

 

『…はあ?』

 

スレッタはドン引き、ミオリネは困惑し。

 

 

 

「っははは、これはいいな」

 

セセリアとシャディクは笑い。

 

 

「な……」

 

「兄さん!?何をバカなことを…」

 

ヴィムは絶句、ラウダも驚き。

 

 

 

「「「「「「「ええ〜???」」」」」」」

 

 

中継を見ていた地球寮の面々は驚愕し。

 

 

(……え? スレッタが、結婚? グエルさんと? え、なんで、なんでいきなり? これ現実? 今、僕、何を見せられてるの……?あれ……頭が、脳細胞が……壊れる……)

 

 

間近で見ていたニアリスは脳を破壊されていた。

 

 

「け、けけけ、結婚って……!」

 

 

「待て! 今のは違う!」

 

 

我に返ったグエルが無意識かつ衝動的に放ったその言葉を慌てて取り消そうとするが。

 

 

パニックに陥ったスレッタは、反射的に“自分にとっての最大のハードル"を突きつけた。

 

 

「わ、私と結婚したいなら! そこにいるニアリスと戦って勝ち越してからにしてください!!」

 

 

「……え、僕?」

 

 

いきなりとばっちりを受けたニアリスの意識が、ショックで現実に戻される。

 

 

そのままスレッタは逃げるようにエアリアルに乗って去っていき。

 

夕暮れの戦場には、中継用ドローンに見守られながら地べたに座り込むグエルと、呆然と立ち尽くすニアリスだけが残された。

 

 

「撮ってんじゃねえええええ!!!」

 

 

絶叫するグエルに対し、ようやく脳細胞が回復したことで正気を取り戻したニアリスが、なんとも言えない顔で手を差し出した。

 

「……とりあえず、 立てる?」

 

「……っ、あ、ああ……」

 

 

残されたふたりの間には、こんなやり取りがあったという。

 

 




・ディランザのパイロット

美形の人。
普段は読書が趣味の物静かなイケメン。
しかし決闘では一変、ハイになってオラつき始める。
普段の静かさと決闘時のギャップから、三人の中では一番モテる。
薬中ではない。


・ザウォートのパイロット

緑色の天パにメカクレでセリフが大体棒読みで実はオッドアイという属性過多の人。
普段はデスメタルをヘッドフォンとアイマスクをかけて大音量で聞いている。
協調性と社交性は低めで、被弾するとキレる。
薬中ではない。(二度目)


・ハインドリーのパイロット

オレンジ色の髪をした子供っぽい人。
普段は黙々とシューティングゲームをやっている。
決闘では必殺!滅殺!とかの過激発言を連発する。
実は左利き。
薬中では(ry


因みにこの決闘の後、紆余曲折あって三人とも仲良くなった。

後にアスティカシアの三馬鹿と呼ばれたらしい。


凄くキャラ濃いからまたチョイ役で出るかもしれない。
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