え、じゃあ早く続きを書けって?その通りですね。
「ほう、俺のことも知っているのか。随分とストマック社に詳しいみたいだな。バイトから聞き出したのか?」
「まあ、な。シータとジープはどうした?俺の記憶が正しければ、仕入れ担当はあの二人だったはずだが?」
「あの二人は解雇した」
「…は?」
ランゴ兄さんの返答に、俺は思わずそんな声をあげる。
シータとジープを…解雇した?
「あの二人は業務改善が見られず、仕入れ数は下がる一方だ。当然の結果だろう?」
「それが実の弟妹でもか…?」
「仕事ができないやつはストマック社には要らない。たとえ血のつながった家族でもな。それに、元はといえばお前たちグラニュートハンターのせいだろう?」
「…そうか」
俺はそれ以上の言葉を吐けなかった。
『『兄さん!』』
「っ…」
一瞬、二人の顔が頭をよぎる。
俺によく懐いていて、でもそんな二人はもうストマック社にいない。
俺は心のどこかで期待していたのかもしれない。
兄さんたちにもまだ優しさが残っているかもしれないって。
ストマック社の邪魔をし続ければ、いつか闇菓子から手を引いてくれるかもしれないって。
…でも、現実はそう甘くなかった。
俺がストマック社に抗い続けた結果、ヒトプレスの仕入れ数は落ちた。
そして二人は、クビになった。
──俺のせいで。
「っ!」
自責の念を振り切る。
それでも、俺のやることは変わらない。
これまでも、そしてこれからも。
「御託はもういい。栄美さんは返してもらう」
「ふん、やってみろ。出来るものならな。おいアルバイト!そいつから逃げきったら、報酬の闇菓子は弾んでやるぞ」
「へへっ、約束ですよ、ランゴ様!」
ちっ、すかさずバイトのやる気を引き上げた…やっぱり手腕は確かだな、ランゴ兄さん。
それに何より…。
「はっ!」
「っ!ふっ!」
エージェントの動きが鋭い。
無駄がなく、戦況を見て臨機応変に対応してくる。
やはりランゴ兄さんのエージェントはシータやジープのより強い…!
「ハァッ!」
「ぐっ!?」
「!ショウマ!」
「助けに来たよ、兄…ヴァルプ!」
すると、建物の上からショウマがブレイドでエージェントを斬りつけた。
見ると、ホルダーにいるゴチゾウが誇らしげな表情をしている。
どうやらゴチゾウの報告を受けて俺のもとに来てくれたらしい。
「赤ガヴ、お前にも会えるとはな」
「!?ランゴ!どうして…」
「どうやら仕入れ担当が変わったらしい。ショウマはあのグラニュートを。エージェントは俺が」
「分かった!」
ショウマはワニのような巨大な口を持つグラニュートを追いかける。
「待て!」
「そっちがな!」
<ショコラ・ヴァルプシステム!>
俺はショコラカスタムに武装し、エージェントの銃弾を受け止める。
そして、ヴァルプスラッシャーにショウマのゴチゾウをセットする。
<バグキャン・バレット!>
「食らえ!」
「ぐあっ!?」
俺がトリガーを引くと、銃口から大量のキャンディの銃弾が発射され、エージェントのうちの一人が爆散した。
「後一体…!」
ショウマ、そっちは任せたぞ…!
「おらっ!」
「フッ!」
「!ぐあっ!?」
一方、逃走中のグラニュートと鉢合わせた絆斗はヴァレンへと変身し、そのまま交戦。
しかしグラニュートが巨大な口で嚙み砕いたドラム缶の屑をそのまま弾として発射。ヴァレンはその攻撃に怯んでしまう。
「うっとおしいな、グラニュートハンターどもめ!邪魔すんじゃねぇ!」
「ぐっ…」
ヴァレンは体中の痛みを抑えながら、グラニュートの手に握られた栄美のヒトプレスに視線を送る。
そして…
「ハァッ!」
「ああっ!ぐっ…!」
あろうことか、ヴァレンはグラニュートの噛みつきを防御もせずまともに食らう。
そしてその状態のまま、ヒトプレスへと手を伸ばす。
「ふっ!っしゃあ!」
「てめぇ、返しやがれ!」
「ぜってぇ返さねえ!」
ヒトプレスをめぐって、ヴァレンとグラニュートの取っ組み合いが開始。
さらにそこへ、グラニュートを追ってきたガヴが合流した。
「ヴァレン!」
「!いいところに来た…先輩!」
ヴァレンは次の瞬間、ガヴに向かってヒトプレスをパスする。
ガヴはその意図を察したのか、いったんその場を離脱した。
「この野郎…!」
「あとはお前をぶっ倒すだけだな…!」
「やれるもんなら、やってみろ!」
「ぐあっ!?」
突き出されたグラニュートの拳に、ヴァレンは後方へと吹っ飛ぶ。
負傷が大きいのか、立ち上がることもままならない様子だった。
「あれは、ヴァレン?」
すると、エージェントを倒し、グラニュートを追ってきたヴァルプがやってきた。
「俺の闇菓子のチャンスを…どうしてくれんだよ!」
「…!まずい!」
怒り心頭のグラニュートは大きな口を開け、大技の構えに入った。
「くっ!」
「ハアーッ!」
ヴァルプは即座に銃弾を放ち、栄美を開放して戻ってきたガヴが頭上から斬りかかる。
そしてそれと同時に、その火球は放たれた。
「うわあっ!」
「!」
「ヴァレン!」
ヴァレンにその火球が命中し、爆炎が立ち上る。
そしてその炎の中から、ガヴとヴァルプの知る人物が現れ、倒れ伏す。
2人は思いも寄らず、ヴァレンの正体を知ることとなった。
「ああっ…」
「えっ…。辛木田さん…!?」
「…絆斗…?」
ーー困惑。二人を襲うのはただこの感情である。
しかし、それをグラニュートが待ってくれるはずもない。
「ヘッ!」
「やめろ!」
絆斗に迫るグラニュートを押しのけるガヴ。
「っ。絆斗、大丈夫か!」
「お前…」
「2人とも、乗って!」
「てめえら、待ちやがれ!」
絆斗のもとへ駆けつけるヴァルプに対し、バギーを召喚し、それに乗るように促すガヴ。
バギーに乗り、グラニュートの攻撃をよけながらその場を後にするのだった。
「はぁ、はぁ…」
肩で息をする絆斗を支えながら、俺は歩を進める。
やがて人気のない路地にたどり着き、壁にもたれかからせるように絆斗を降ろす。
気付けば時間が経っていたのか、すでに夕日が沈み始めていた。
「大丈夫?病院とか行ったほうがいいのかな?」
「行きたくねえな。普通の体じゃなくなったし」
「そう、か…」
「ヴァルプ。お前、俺のこと知ってんだろ?」
「っ!」
俺はその問いに反射的に体を震わせる。
やめろ、俺だってまだ混乱してるんだ。
「俺のこと『絆斗』って呼び捨てにする奴は…一人だけだ」
「…」
そうだよな、もう、隠し通せない。
それを悟った俺はベルトを外し、変身を解除する。
それを見てか、ショウマも変身を解除し、その正体をあらわにした。
「やっぱり、守か…」
その言葉を最後に、絆斗は地面に倒れ伏した。
「絆斗っ!」
「辛木田さん、しっかりして!」
「ひとまずはぴぱれで手当てしよう。運ぶぞ」
「う、うん!」
再びバギーに乗って急いではぴぱれに向かった後、備え付けてある包帯やらガーゼやらで傷をふさいでいく。
「ひとまず、応急処置はできたけど、医者じゃないから何とも言えないな」
正直、こんなものネットで拾った付け焼刃程度でしかない。
でも病院に行けないし、これくらいしかできることはない。
「辛木田さんがヴァレンだったなんて…」
「ああ、俺も…驚いたよ」
初めて会った時、改造されて力を手に入れたと言っていた。
つまり、絆斗を変身できるように改造した誰かがいる。
あの夜の絆斗の電話…あの言ってたことはたとえ話じゃなかったんだな。
そう思っていると、俺の電話に着信が入る。
電話主は…
「幸果さん…」
『あ、マモルン?栄美さんいたよ。家に送ったんだけど、ちょっとパニックになってて。しばらくこっちにいるから』
「分かりました。ショウマと絆斗には俺から言っておきます」
そう言って俺は電話を切る。
「社長はお前らが仮面ライダーだって知らないんだな」
「起きてたのか」
「辛木田さん、大丈夫?」
「まあ、な。助けてもらったのは、礼を言う」
絆斗はそう言いながら、体を起こす。
「でも…なんであの場でグラニュートを倒さなかった?」
「えっ?だって辛木田さんが危なかったから…」
「そんなの別にいい!」
「絆斗?」
「あいつを野放しにしたら、また誰かがさらわれて食われるんだぞ!一日でも早く、一日でも多くグラニュートを倒さねえと、どんどん被害者が増えるんだ!」
「辛木田さん、落ち着いて…」
「お前らは俺なんかほっといてグラニュートを…!」
「何言ってんだよ馬鹿野郎!」
俺は思わず、絆斗の胸倉をつかみ上げる。
病人に対する行動じゃないかもしれないが、今の絆斗の言動は…見過ごせない。
「兄さん…?」
「自己犠牲のつもりか?大した度胸だなでも!生きてるから…人を助けられるんだぞ?」
「っ…それは」
「この際お前が変身してるのは構わない。お前のその復讐心は痛いほど理解してきたつもりだ。それでも…目の前で親友が犠牲になるのは…見過ごせるわけないだろ…?」
俺は肩で息をしながら、目の前の絆斗を見据える。
柄にもなく、熱くなりすぎたことに気づき、絆斗から手を離した。
「…悪かった。自分のふがいなさを、お前らに押し付けようとした」
「いや、俺も怒鳴りすぎた…」
「…なら、これでお相子だな」
絆斗はそう言って拳を突き出してくる。
俺も拳を突き返し、合わせる。
「ていうか守、お前いつから仮面ライダーやってたんだ?」
「詳しくは覚えてないけど…数年前から?」
「…マジか。大先輩じゃねえか」
「よせよ。ちょっと長くやってるだけだ。ショウマも絆斗も、いてくれるだけで心強い」
「兄さん…うん、俺もっと頑張るよ!」
「絆斗も頑張れよ?母親の仇、取るんだろ?」
「…おう」
絆斗はそう返事しながら、カバンの中から写真を取り出す。
その写真には、絆斗とその母親が写っていた。
しかし、それを見た瞬間、ショウマが少し苦しそうに頭を抑える。
「っ!」
「ショウマ…?」
「あ、大丈夫。ほら、辛木田さんは休んだほうがいいんじゃない?」
「ああ、そうだな。一旦帰るわ。…改めて、ありがとな」
絆斗ははぴぱれを後にする。
仮面ライダーだとはバレた。
だが、まだ俺がグラニュートだということは知られていない。
きっと今も、俺たちは本当の意味で仲間とは言えない。
もし俺の正体を知られれば、この関係だってきっと崩れてしまう。
それでも俺は絆斗を突き放せない。
この関係が、これからも続いてほしいと思ってしまう。
そんな俺はきっと……欲張りなんだろう。
数年前と曖昧にすることによってデンテ離反時期を有耶無耶にすることに成功。
幼少期ショウマの改造中に人間界にハマったっぽいし年単位なのは確実だと思うんですけどね…。