ようこそ戦わなければ生き残れない教室へ   作:仮面の観測者

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『cl』と『pr』これからも使うと思いますが、基本的には『クラスポイント』と『プライベートポイント』を使います。


第19話 王との対峙

 翌日、cl(クラスポイント)が95になったことが茶柱先生の口から伝えられた。それなのに振り込まれるはずのpr(プライベートポイント)は0だった。茶柱先生は少しトラブルで止まっているらしい。クラスメイト達から不平不満の声が上がるが、本当にどうしようも出来ないのだろう。

 

「学校側の判断だ、私にはどうすることも出来ん。トラブルが解決次第、ポイントは支給されるはずだ。ポイントが残っていれば、だがな」

 

 素直に不穏な言葉を残さないで欲しいと基山は思った。

 

 

 

 昼休み。クラスメイト達の殆どは食堂に移動していた。基山もその例外ではなく、軽井沢に誘われたのだ。そのまま2人で食堂に移動しようとした時、もう2人追加された。

 

「あ、あの、私達も付いて来て良いですか?」

 

「愛里に、綾小路君じゃない。珍しいわね」

 

 佐倉と綾小路が食堂まで一緒に行こうと誘ってきた。綾小路は相変わらず無表情というか、感情を表に出さない。ただ、時々視線を感じることが多く、これが観察している感じなのか。又は別の思惑があるのかはっきりしないので分からなかった。

 佐倉は逆に分かりやすいくらい緊張していた。誘うこと自体慣れていないんだ。体が上下に震えている。

 

「俺は別に良いぞ。……むしろ一緒に食べたいと思ってたんだ」

 

「なによそれ、あたしじゃ役不足ってわけ?」

 

「あっ、いや、そういうわけで言ったんじゃなくて……普通に一緒に食べたいと言いますか……」

 

「あっそ。……あたしも別に良いわよ。基山、食べている時は殆ど無言だから」

 

 もはやコントである。軽井沢に完全にリードされていた。なんか、男してこれで良いのかと疑問に思っちゃう基山。

 ただ、良いこともあって、佐倉の緊張は少しほぐれていた。

 

「それじゃあ、付いて行くね」

 

「よろしく頼む」

 

 4人は学食を食べるため、食堂に移動した。券売機で手こずっていた佐倉を3人で助けたりして、ちょうど4人分座れる席があったからそこに座った。

 4人共見事に山菜定食である。ただ、基山と軽井沢は弁当を出した。そこにはおかずがあった。

 

「美味しそう……」

 

「基山が考えてくれたのよ。無料の山菜定食だけじゃお腹空くから、追加でおかず持って来ても良いんじゃないかって」

 

「このおかず、殆どが0円で売っている食材を使っているんだ。だから料理出来る人はなんでこれしないんだろうって思ってる」

 

 佐倉と綾小路は軽井沢と基山のおかずに夢中である。最初に折れたのは軽井沢である。溜め息を吐いた後、佐倉の前におかずを置いた。

 

「……愛里、取っても良いわよ」

 

「え? でも、良いんですか?」

 

「あたしが気になってしょうがないの」

 

「あ、ありがとう」

 

 佐倉は口を付ける前に、おかずを貰った。軽井沢の心の余裕がここまで育っているとは基山も良い意味でびっくりである。

 基山は綾小路と向き合う。綾小路は視線を真っ直ぐ飛ばしていた。余程欲しいみたいだ。

 

「あげるぞ」

 

「いや、しかし……好意だよな?」

 

「好意というか、善意か? とにかく貰っとけ」

 

「……この礼は必ずする」

 

 綾小路は基山のおかずを貰った。4人は「いただきます」と手を合わせてご飯を食べ始めた。

 

 十数分はご飯を食べることに集中しており、食べることを終えて「ごちそうさまでした」と手を合わせた。暫く静寂だったが、佐倉が口を開いた。

 

「実は、相談があるの……」

 

「「相談?」」

 

 基山と軽井沢は同じタイミングで言葉を揃える。綾小路も目を見開いていた。

 

「うん。……名前は言えないんだけど……クラスメイトが、その……暴行をしている現場を、見ちゃって」

 

「えっ? マジで?」

 

 軽井沢の言葉に佐倉は頷いた。これがトラブルの原因だとすれば、ポイントの支給が遅れるわけである。

 

「それは、オレ達以外に言ったのか?」

 

「ううん、言ってないよ。……みんなに相談する前に、綾小路君や基山君に相談したかったの」

 

「そうか……。何故オレまで相談したかったんだ?」

 

「そ、それは、安心出来るから、かな。基山君とは違う感じで頼りに、なりそうだったから」

 

 綾小路は分かりやすく目を見開いた。基山や軽井沢も目を合わせる。確かに綾小路は勉強会の時、佐倉の隣なこともあり時々だが勉強を教えていた。その行動が小さな信用を生んだのだろう。

 

「……買い被り過ぎだ。オレに、何かを解決出来るほどの力は無い」

 

 嘘つけと基山は考えた。それなら須藤を助ける時に動いちゃいない。

 

「それでも、期待には応えないとな」

 

「そういうものか?」

 

「まぁ人それぞれだけど、俺は応えたいかな。それに俺にだって何かを解決出来るほどの力は持ってないよ。須藤を助けようとした時だって、軽井沢達がいたからなんとか助けられたんだから」

 

 綾小路は考え込んだ後、基山に切り出す。

 

「だが、基山は徹夜という手段を用いて過去問にも匹敵する解説付きの問題集を作り出した。これは解決出来る力を持っていると言えるんじゃないか?」

 

「綾小路は知らないから言えるんだ。……俺はその後説教されたし、みんなを心配にさせたと痛感したよ」

 

「お前ほどの人間でも説教されたんだな。……なるほど、軽井沢と佐倉も関わっているのか」

 

 基山は軽井沢と佐倉を見てみると、分かりやすく目線を逸らしていた。綾小路はこの様子を観察して関わっていると見抜いたのか。

 

「もし、もしだけどさ。綾小路一人でどうしようもなかったら、俺を頼ってくれ」

 

「……良いのか。お前はオレという人間を知らないだろ」

 

「それはこれから知っていくさ。良い部分も悪いと思った部分も受け入れる」

 

「……受け入れるだけじゃ足りないな。……お互いがブレーキになるっていうのは、どうだ」

 

「ブレーキ?」

 

 基山は不思議な表情をした。綾小路は真っ直ぐに見つめてきた。

 

「オレはお前の無茶な行動とかを止める。基山はオレの……オレの思考を止めて欲しい」

 

「……分かったよ。それが、綾小路の想いなんだろ」

 

「ああ。オレは、誰よりもオレのことを知っているからな」

 

――これは約束より重い契約だ。

 

 綾小路の言葉から基山はそう感じ取った。

 

「……佐倉の言っていた件、オレも協力しよう。佐倉が一人で背負うには、重過ぎるからな」

 

「勿論、俺も協力する」

 

「……しょうがないわね。あたし達も協力するわ」

 

「あ、ありがとう……!」

 

 綾小路の提案によってこの話はまた放課後、基山の部屋ですることになった。

 

 

 

 放課後。基山の部屋には軽井沢、佐藤、松下、森、佐倉がいた。その状態でチャイムが鳴る。基山が出迎えると綾小路がやってきた。

 

「待たせたな。ちょっと堀北と話していたんだ」

 

「いやそんなに待ってないよ。さぁ上がってくれ」

 

 綾小路は基山の案内で部屋に上がる。既に軽井沢達は各々待っている状態だった。綾小路は取りあえず佐倉と佐藤の間に座った。基山も軽井沢の隣に座った。

 

「それで佐倉さん、暴行に走ったクラスメイトって誰?」

 

 松下の問いはみんなが思っていることを代弁していた。佐倉は少し躊躇した後、意を決して言った。

 

「須藤君です」

 

「……まじで?」

 

 佐藤の驚きに佐倉は頷いて返した。みんなも驚いていたが、基山は案外冷静だった。

 

「やっちゃったかぁ……。あっ、話を続けてくれ」

 

 基山は特に不満を漏らすようなことはせず、佐倉に話の続きを促した。佐倉は特別棟にいたところを偶然目撃。些細な口論から暴言に変わった。持っていたカメラで証拠を残した後、その場を後にしたとのことだった。

 そのカメラを今持っていると見せた。

 

「どんな写真かだけ見ても良いか?」

 

「は、はい……」

 

 佐倉の周りにみんなが集まる。佐倉はカメラを起動して写真を見せた。

 

「うわっ……」

 

 森が声を漏らす。少しぶれているものの、写真には須藤が3人に暴力を振るっている証拠があった。基山はその一人に見覚えがあった。

 

(石崎か?)

 

 写真は続いていく。やはり何度見ても石崎の姿があった。

 やがて全部見せ終わったのであろう、最後は佐倉の自撮り写真が写し出された。

 

「あっ……」

 

「「えっ!?」」

 

「「んっ?」」

 

 佐倉は咄嗟にカメラを隠す。どうやら不測の事態に陥ってしまったようだ。一瞬だが写っていた佐倉の姿は今よりも可愛く、笑顔だった。まるでカメラを向けられることに慣れているようだ。

 

「そ、その、聞かないでくれると、助かります……」

 

「……分かったわよ。秘密なんでしょ」

 

「この場での、秘密だな」

 

 軽井沢と綾小路が理解を示した。他のみんなも考えた後に頷いていた。

 

「ありがとう……」

 

 ちょっとした事故が起きつつも、基山達は話を続けた。

 

「どうすれば良いのかな?」

 

「これが公になれば間違いなく佐倉さんにも話が聞かれるわね」

 

「もし先生に聞かれたら素直に受け答えをするしかないな。……怖いのなら、オレを頼れ。少なくとも、近くにはいてやる」

 

「うん。……ありがとう。……みんなに話せて良かった」

 

 松下と綾小路が現実的な意見を出してくれるだけで頼りになった。それに綾小路は佐倉のメンタルケアもしてくれた。ここまで熱い台詞を吐けるとは基山は思ってもいなかった。

 それからどうしようかと会話は続いたが、名案は得られず。確定したのは佐倉を全面的に支えることと、佐倉は先生の言葉に普通に従った方が良いということだった。

 

 急遽集まった会議はこれで終わり、佐藤と松下、森は先に部屋を後にした。残ったのは主である基山と軽井沢、綾小路と佐倉の4人だった。

 基山は麦茶を人数分配った。

 

「それにしても、あの写真に写った愛里凄く可愛かったわ」

 

「そ、それは、その……」

 

「あっ、別に深く聞くつもりはないわ。ただ、どうやってあの可愛さを出せるのって思っただけだから」

 

「……教えましょうか?」

 

「ほんと!? 教えてくれると、嬉しいわね」

 

 軽井沢と佐倉は女子トークに花を咲かせていた。その様子を基山と綾小路は見つめている。

 

「楽しそうだな」

 

「そうだな。……それにしても、綾小路から『頼れ』って発言が出てきたことにびっくりしたわ」

 

「あれは……あの発言が一番佐倉に効くだろうと思っての言葉だ。……オレ自身のために言ったんだ」

 

「そうだとしても、間違いなく佐倉さんの支えになってる。本当に凄いよ」

 

 寄り添うことは出来ても不器用だから上手く言葉が出て来ない時がある。それに比べて綾小路は人が欲しいと思っている言葉を言える。それで支えになっているから、基山は普通に凄いと思っていた。

 

「……そうか」

 

 綾小路と会話していた、その後チャイムが鳴った。みんなの頭にハテナマークが浮かび上がる。

 

「誰か呼んだ?」

 

「い、いや、忘れ物は……無いよな?」

 

 基山は部屋中を見ても佐藤達に忘れ物をした痕跡はない。次はドアを力強く叩いたのかドンドンと音が響いた。

 

「……気を付けろ」

 

「軽井沢と佐倉さんを頼む」

 

 基山はドアまで近寄る。鍵を開けて、ドアを開いた。その先にいたのは、紫がかった黒髪を首筋まで伸ばした少年がいた。

 

「ククッ、やっと来たか」

 

「だ、誰ですか?」

 

「誰だって良いだろ。こっちはポイントを支払ってまで来たんだぜ、上がらせてもらうぜ」

 

「は? えっ、ちょっ、力つよ!?」

 

 ポイントを支払ったという単語は聞き捨てならなかった。その隙を突かれたのか少年は強引に部屋へと上がった。基山は取りあえず鍵を閉めて、部屋へと向かう。少年が基山のベッドに深く腰を下ろしており、綾小路の後ろに佐倉と軽井沢がいた。佐倉と軽井沢は怯えていた。

 

「先客がいるのか」

 

「まぁいるけど。それよりも名前知らないんだけど。俺は基山真司。お前の名前は?」

 

「1年Cクラス、龍園翔だ」

 

 龍園という少年は基山を睨む。まるで獲物を見つけた目線だ。基山もこんな目線で睨まれるのは慣れていなかった。

 

「お前が石崎を助けた馬鹿か。これから後悔するぜ、石崎を助けたこと」

 

「なんで、とは聞かない。でも後悔しても良いと思っている。……それよりもなんで俺の部屋知っているんだ。ポイントを支払ったって言ったけど」

 

「……変な奴だぜ。部屋は言葉通りポイントを支払ったんだ。良いよなぁ、ポイントを支払えば何でも出来るんだからよぉ」

 

「……えぇ……」

 

「あぁ? なんだよ」

 

 基山はドン引きしていた。わざわざ部屋を知るためにポイントを使うなんて。行動力については凄いと思ったが。

 

「そんな、ポイント支払わなくても教室に来るなり、俺を捕まえるなりして部屋まで案内するか聞き出せば良かったじゃないか」

 

「は?」

 

「なんか、こっちが申し訳なくなってくる」

 

「てめえ……」

 

「それに断れないよ。断っても、何度も聞きに来そうだし、怖いし」

 

 基山の言葉に龍園は目を丸くした。その後、目を閉じて口角を上げて笑った。

 

「クククッ、ハハハハッ! てめえはただの馬鹿じゃねえな! おもしれえ!」

 

「それは、どうも?」

 

 龍園は笑った後、ベッドから立ち上がる。そのまま基山の前まで近付いた。

 

「お前のその偽善が何処まで続くか見物だぜ。これからは俺も相手になってやるよ。クラスでも……ライダーバトルでもな」

 

「っ」

 

「お前を潰すだめならなんだってするぜ。最後まで勝ち残るのは、この俺だ」

 

 龍園はそれを言い残すと部屋を後にしようとする。龍園の言葉にハッタリなんて無いのだろう。本当に何でもしそうだ。

 

「龍園!」

 

「なんだ?」

 

 基山は携帯を持って龍園に近付いた。

 

「連絡先、交換しようぜ」

 

「あぁ?」

 

「狙いが俺なら、そのまま俺を呼んでくれ。周りは巻き込むな」

 

「もし周りを巻き込む。そうだな、あの女を巻き込んだ場合は?」

 

 龍園は軽井沢を軽く睨んだ。基山も軽井沢を見ると震えていた。

 

「その時は……本気でお前と戦って、勝つ」

 

 基山は龍園を軽く睨んだ。

 

「そういう顔も出来るか。……良いぜ。乗ってやるよ」

 

 基山と龍園は連絡先を交換した。今度こそ、龍園は部屋を後にするのだった。

 

「……怖かったな」

 

 最後まで笑っており、悪い意味で敵が増えてしまった。きっと戦う日は来るという確信だけがあるのだった。




今更だけど、原作キャラの空気感やキャラ崩壊起こしてないですかね? 温かく見守って欲しいです。
それと原作の雰囲気も変えたい所は変えますし、変えたくないところは報告してみて下さい。


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