修学旅行やヒュプノスの襲撃を乗り越え、束の間の平穏を享受しようとする竜馬だったが、運命は彼を巻き込み続け、古菲からの願いから始まり、ネギま! キャラ達との交流が続く最中、竜馬は己の魂と完全同化したと思われていた本来の竜馬と精神世界で邂逅し、記憶を読み取った彼から超たちへの加勢を願われるのであった。
弟子入り(古菲)イベントを無事乗り越えた二日後の火曜日。
俺が何時も通りにランニングをしていると、広場にて二つの影が組打ちをしている様子が映る。
それは件のネギ少年と古さんだ。
二人とも互いに軽く打ち合いながら、古さんはネギ少年の悪しき癖を指摘し、それをネギ少年が直す、その姿はまるで演武を見ている印象を持つ。
二人が俺の気配を察したようなので、俺はそのまま彼らに近付く。
「やぁ、二人とも。 二日振り……かな?」
俺がそう言うと、古さんは少し身体を強張らせ、ネギ少年は多少驚きはしているが、俺に挨拶を返す。
「おはようございます、緋勇さん!!」
「お、おはようネ……竜馬」
なんか、古さんの歯切れが悪いな。
「古さんに弟子入りできたようだね、ネギ少年」
その言葉を聞き、彼はハッとしたように頭を下げる。
「緋勇さん。 あの時は助言をいただき、ありがとうございました」
「いや、気にしなくて良い。 俺は弟子をまだ持てる立場ではないし、君の近くには師と仰げる人材がいたからこそ、道筋を立てただけだ。 だから気にする必要はないよ」
そう言い終えると、ネギ少年は質問をする。
「もしかして、緋勇さんも特訓を?」
俺はその問いに「当たらずも遠からず、かな?」と答える。
「例えば、水泳ってあるでしょ?」
「す、水泳……ですか?」
唐突に出てきた水泳と言う例えに、困惑するネギ少年に俺は続きを話す。
「まぁ、モノの例えだ。 君なら……『魔法』で例えた方が解り易いかな?」
俺は例えを魔法に変えて答えてみる。
「例えば魔法だと……確か、呪文の詠唱だったかな? あれだって暗記して、淀みなく詠唱し、極一部の例外を除いて適切な魔力量を使うことで適正な結果を発生させる……って認識で良いのかな? 門外漢なのでそこはあまり詳しくないけど……」
俺がそう聞くとネギ少年は概ね肯定を示した。
「つまりは、どんなに魔法を覚えても普段から使い慣れていないと、いざという時にその魔法が出せない事が出てくる事が予想されるだろう?」
俺の想像ながら、分かり易いと思った例に、納得し始める。
「身体もそうだ。 使わない部位は日が経つ毎に衰え、その機能は削ぎ落とされてゆく。 武道とは、文字通りに武の道だ。 一日サボれば取り戻すには二日や三日を要する、つまりはそんな話さ」
俺が例えを話終えると理解したようで、顎に手を添えて理解に落とし込み始める。
「昨日今日の君に見せてもちんぷんかんぷんだろうが……古さん?」
俺が古さんに視線を送ると顔を真赤にしたかと思えば、察してくれたのか、答えをくれる。
「ネギ坊主は飲み込みが早いネ。 昨日の夕方から始めてこれなら放課後の修行には見取り稽古もできるネ!」
それは好都合。
俺はネギ少年に声を掛ける。
「君が怠慢ではないと理解をしているが、これだけは言わせてほしい。 今朝の特訓を乗り越えればこの不肖と古さんの稽古試合の見取をしてもらうことになるだろう」
俺の言葉にネギ少年は目を丸くする。
「君は飲み込みの早い方らしいからね、もしかすると、俺との稽古試合を組めるまでそう長くはないだろう」
俺はそう言うと、ネギ少年の邪魔になりかねないと言ってその場を去って、違う場所で形稽古をする。
…
……
………
早朝の出来事から時間が経ち、午後四時半。
俺は世界樹から数百メートル離れた彼らが使っていたあの天然芝のグラウンドに来ていた。
そこでは既にネギ少年と古さん、明日菜に桜咲さんが訓練をし、近衛さんが座って見ていた。
「あっ!! 竜馬!!」
数十メートル後方から来た俺に気が付くとは、目が良いらしい。
「やぁ、五人共。 お疲れ様」
俺がそう言うと、古さんからとてつもない視線を感じる。
何となく、分かる。
ネギ少年の試験内容を加味した見取稽古。
不意打ちからのカウンター戦法の披露だ。
古さんはまず、活歩を用いて俺の懐に入る。
また腕を上げたな 古さん、出会った当初は二メートルまでだったあの距離を少ない挙動で四メートルは移動できている。
眼の前には古さんが炮拳が眼前に迫る、ここからが開始だ。
俺はそれに臆せず、更に踏み込むと同時に上体を反らし、右足を古さんの傍らから出し、十分な距離を空け、まとい掛けを仕掛け、古さんの袖を絡め取ろうとすると、それを見越してか、古さんは手首を順回転方向に捻り、逆に俺の袖を逆に絡ませ、手首を掴む。
この一連の動作をコンマ単位の秒数で行い、次の動作に入り始める。
掴んだ手首を引っ張って踏み込みと『霍打頂肘』での一撃を『各務』で往なし、『龍閃脚』の鋭い上段蹴りが古さんの眼前へ迫るが、それを円の動きで往なし、ガラ空きとなった胴体に崩拳を叩き込む。
俺は身体を捻って崩拳を回避し、そのままエアチェアーの要領で片手で全体重を支えつつ『龍昇脚』の崩しで顎先に蹴りを入れる。
古さんは最小限の動きで回避し、俺は後方回転で距離を空け、それぞれが構える。
「やっぱり腕が上がり続けてるね、古さん」
「竜馬も腕が上がったネ」
お互いの力量の上昇に舌を巻きつつ、数分間の攻防をネギ少年に見せる。
…
……
………
試合が千日手となり、終りを迎えた。
俺と古さんは互いに向き直り、礼をする。
「竜馬! 中々の功夫ネ!」
「古さんこそ、また技のキレと気の運用の精緻さが増しているね」
古さんはそのままネギ少年に今回の見取稽古の分析を聞きながら特訓をするらしい。
俺は手持ち無沙汰をどうすべきか考えた時、蓬莱寺師匠の顔が浮かんだ。
そう言えば、最近は剣をマトモに振るっていないな。
そう感じ、俺は明日菜たちの方へと向かう。
「やぁ、二人とも」
俺が話し掛けると二人は組手をしながら返事を返してくる。
「お疲れ様です、 緋勇さん」
「お疲れ、竜馬!」
俺は二人の稽古の様子を見ながら、桜咲さんに問いかける。
「桜咲さんはもう一本木刀は持っているかな?」
桜咲さんは明日菜の攻撃を往なしながら指摘点を口にしており、それを言い終えると「竹刀袋にもう一本あります」と答える。
「済まないけど、久々に剣を振りたくなったからお相手願うよ、桜咲さん」
桜咲さんは多少驚きはしたものの、俺の提案を了承してくれる。
「分かりました。 私も蓬莱寺さんの事は長から聞き及んでいますが、私もその一端を剣士として知りたいと思っていました。」
桜咲さんは明日菜に一度外から見た剣同士の戦いを見ていてほしいと言って明日菜を下がらせ、明日菜も少し離れた場所で見る姿勢を取る。
桜咲さんは竹刀袋からもう一本の木刀を取り出し、コチラに投げ渡す。
俺は柄を手の甲で軽くカチ上げ、直上に打ち上げる。
跳ね上げられた木刀は円を描きながら自由落下をし、柄の部分が地面を向いた瞬間に俺は木刀を手に取る。
そのまま、八相の構えを取る。
木刀の切っ先は天を突くように、左半身を前に突き出した後の先、避弾経始にも似た考えの構えは攻防一体と化す。
俺の構え一つである程度の実力を看破したのか、極度の緊張も、侮りもなく、ただただ中段に構える。
俺はその堅実で洗練された構えに感嘆の息を漏らす。
「緋勇さん。 やはり、貴方は強い……構えだけで解ります」
「僕も君はかなりの使い手だと認識していたが、まさかこれ程とは予想外だ、その弛まぬ鍛錬には畏れ入るよ」
俺と桜咲さんの相対を間近で目撃している明日菜は分からないまでも、理解しようと努力に努めているようだ。
試合の開始は誰が何も言わないが、風や草木同士が互いを擦り合わせる漣のような音が響く。
動いたのは桜咲さんだった。
剣道の基本に忠実、神鳴流の体捌きや歩法ではない、近代剣道の足運び。
互いの剣の圏が重なり合う瞬間、牽制の応酬が始まる。
桜咲さんの剣先が少し揺れ、隙を生み出すための布石を作る。
俺はそれを軽く往なし、剣の構えを青眼の構えに変え、刺突や切り上げを警戒させる。
だが、彼女は経験を積んだ剣士だ。
そのような小細工は通用しない、と言った雰囲気で中段から八相に構える振り上げと振り下ろしは男女でも剣を取れば環境などで優劣は変わる。
俺は中段に構えながら桜咲さんを見据える。
「いや、すまないね。 君を護衛として色眼鏡で見過ぎていたようだ」
俺は左手で木刀を持ち、右手は徒手にて構える。
ここからは剣道ではなく、武としての戦い。
精神修練での剣道ではなく、行儀も外聞もない実践的戦闘訓練。
三十秒足らずの攻防で俺は理解した。
彼女はやはり神鳴流の免許皆伝手前の実力。
彼女はこの時点で奥義を一通りはできる、そう確信めいたものを感じさせる。
彼女もそれを感じてか、剣道での基本の立ち回りでは無く、武人として、神鳴流剣士として、構える。
俺は瞬動で桜咲さんと距離を詰める。
桜咲さんはそれを見越して半歩後方へ下がりつつ、斬り下ろしで俺の脳天に一撃を入れようと振り下ろす。
俺はそれを左の木刀の平地部分を用いて刀の軌道をそらし、そのまま側面に弾き、隙を作ってこそに拳を放つ。
彼女は柄の部分で俺の拳を往なし、柄頭で顎狙いのカチ上げ、その流れからの振り下ろし。
しかも、手首のスナップを利かせた一撃は剣先のトップスピードを極限まで上げる。
目では捉えられても身体は僅かに反応が遅れる。
ただ、剣先は曲がったりしないし剣先の速度が上がるだけだ。
俺は木刀の背の部分に手を添え、木刀を差し出すような形で彼女の一閃を受ける。
そこから二度三度と体捌きや剣、拳、投げなどを織り交ぜた実戦試合の様相を呈してきた練習試合に激しさが増すことを考えた俺は桜咲さんに語り掛ける。
「さぁ、お互い仕切り直しとしよう。俺は あの
それでも。
「俺は君の本気が見たい、故に一撃だ」
「一撃?」
「そう。俺と君が本気でやり合えば、ここらへんが更地になることは明白だ」
「故の一撃勝負」
俺は剣に氣を纏わせる。
師匠たちが行う特異な集気法と勁力の高まりを刃に這わせる。
俺の気を見て察したのか、彼女は口を固く結び、気を練り始める。
「剣掌……奥義!」
「神鳴流奥義!!」
二人の
一陣の風が吹く。
次の瞬間、動いたのは俺だった。
俺は遠心力を利用し、複数の発勁を引いては寄せる波のように放つ。
桜咲さんは上段の構えから放たれる剛の剣を振り下ろす。
「円空旋!!」
「斬岩剣!!」
二人の剣が交わると同時に殺しきれなかった剣圧が地面を浅く砕き、土煙が舞い上がらせる。
「キャッ!!」
その凄まじさから明日菜は軽く悲鳴を上げる。
俺の持っていた木刀は技の押し合いで耐久力が無くなり、轟音を放つと同時に柄を残して粉砕。
桜咲さんも同じく柄と木刀の刀身の半分が粉々になって使用不可となる。
俺は構えを解いて謝罪をする。
「申し訳ない、興が乗ってしまい、君の木刀を破壊してしまった」
桜咲さんは少し呆然とした後、桜咲さんは少し動揺したように俺に声を掛ける。
「ま、まさかここまでになるとは……私も反省します」
互いが互いに謝ると、互いに感想戦が始まる。
「しかし、驚きました。 緋勇さんは無手の戦士であり、剣の師がいるとは言っていましたが、これ程の技量を持っているとは……」
「僕も驚いた。 僕の目算では神鳴流の免許皆伝手前の実力だと思っていたが、皆伝目前の腕前とは畏れ入るよ」
俺と桜咲さんはあれこれ話し、多分出来ていると思い、俺は明日菜に声を掛ける。
「神楽坂。 多分だけど、俺が何をしたか
桜咲さんは俺の技を近くで、しかも直に体験したからどのような術理が働き、この結果となったかは理解できるだろう。
だが、つい先日まで門外漢だった明日菜がこれを理解できるとは桜咲さんは想像していないだろう。
「えっ!? 私!?」
その言葉に驚きつつも明日菜は答えを出す。
「刹那さんも使う気? だったよね? それを複数回飛ばした……ように見えたけど……」
その八割方当たった回答に桜咲さんは目を見開く。
それもそのはず、僅か数日程度の鍛錬でその術理を眼力だけで捉えられたのだ。
その動体視力と観察眼には驚かされるのも無理はないだろう。
俺はその後、弁償として如月師匠の店で黒壇と樫の木刀を各二本買って返すことを一方的に約束して俺は帰ることにした……いと思っていたが、あの時点から誰かに尾行されている感覚を感じて、近くの森林地帯に進路を変更して誘い込むことに決める。
時間はあれから1時間程経ち、時間は八時前。
辺りは夜の静寂が支配しており、あるのは夜を主とする鳥獣の鳴き声と草木の擦れ合う湿った摩擦音。
森の半ばにある湖畔、俺はそこで立ち止まり、尾行者に声を掛ける。
「俺を付けてきている人、出てきなよ」
俺がそう言うと、二つの影が現れる。
それは俺が思いもしなかった人物だ。
エヴァンジェリンと茶々丸だった。
次回予告
あとがき
大変遅くなってしまいましたが、最新話更新です。
最近は他の趣味が忙しくて疎かに……(ソシャゲを見ながら)
最近は他にも呪術廻戦×オリ主(.hackシリーズ関連能力持ち)の作品を書き始めたりと活動はしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
リメイク版はもうしばらくお待ちいただけると幸いです。
品質維持に関してのアンケート
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維持している
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