果たしてそこで遭遇する人物とは!?そしてその出会いからどんな事件が起こるのだろうか
「……ねぇ、はじめちゃん。本当にここで合ってるの?」
七瀬美雪は、不安げに周囲を見回した。
昼間の新宿。人混みの熱気と、排気ガスの匂いが混ざり合う歌舞伎町の入り口だ。
隣を歩く金田一はじめは、だらだらと鼻の下を伸ばしながら、派手な看板の数々を見上げている。
「大丈夫だって美雪!剣持のおっさんが言ってたろ。『新宿で一番旨いラーメン屋の無料券、余ってるからやるよ』って」
「剣持警部も、なんでこんな騒がしい場所のお店を……。それに、さっきからはじめちゃんの目、ラーメンじゃなくて歩いてるお姉さんたちに行ってるじゃない!」
「ひ、人聞き悪いこと言うなよ!俺はただ、大都会の治安をパトロールして……」
その時だった。
「キャーーーーッ!」
悲鳴は、すぐ近くの路地裏から響いた。
はじめの目が一瞬で鋭くなる。いつもの「ぐうたらな高校生」の仮面が剥がれ落ちる瞬間だ。
二人が声のした方へ駆け込むと、そこには三人の男に囲まれた一人の女性がいた。
「おいおい、お嬢さん。新宿に来て俺たちに挨拶なしってのはねえだろ?」
下卑た笑い声を上げる男たちの手には、鈍く光るナイフがある。
美雪が息を呑む。一が一歩前へ出ようとした、その時――。
「……やめときな。昼間の酒と女への嫌がらせは、この街じゃ高くつくぜ」
低く、通る声。
路地の奥、影の中から一人の男がゆっくりと姿を現した。
赤いジャケットに、どこか着崩したシャツ。一見するとただの遊び人風だが、その体つきは服の上からでもわかるほど引き締まっている。
「あぁ!?なんだテメェ、格好つけやがって!」
ナイフを持った男が、男に飛びかかる。
はじめは叫ぼうとした。だが、その必要はなかった。
男は最小限の動きでナイフをかわすと、すれ違いざまに男の腕を取り、軽々と地面に叩きつけた。
「ぐはっ!」
流れるような動き。格闘技というより、実戦で鍛え上げられた「狩り」の動きだ。
残りの二人が怯んだ隙に、男は女性の手を引き、一たちのそばまで押しやった。
「お二人さん、このお嬢さんを頼んだぜ」
男はニカッと笑う。その顔は、先ほどまでの冷徹な雰囲気とは打って変わって、なんとも締まりのない、スケベそうな顔だった。
「もっこりチャンスを邪魔しやがって……。さて、お掃除の時間だな」
一は、その男――冴羽獠から目が離せなかった。
(この人……ただの街の喧嘩屋じゃない。この圧倒的な威圧感、どこかで……)
一の脳裏に、かつて対峙した数々の凶悪犯、あるいはプロの捜査官たちの姿がよぎる。だが、この男はその誰とも違う。
数分後、路地裏には転がる三人の男と、何事もなかったかのように耳をほじる獠の姿があった。
はじめが声をかけようとした瞬間、美雪の背後の壁に、何枚もの「バラの花びら」がハラハラと舞い落ちた。
新宿の喧騒の中、一の背筋に冷たいものが走る。
このバラ、そしてこのタイミング。
「……高遠」
はじめの呟きを、獠の鋭い耳が拾った。
獠の目が、わずかに細められる。
「坊主。今、なんて言った?」
IQ180の少年探偵と、新宿のスイーパー。
運命の歯車が、新宿のど真ん中で噛み合った。
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