その日。アテナは殺せんせーと一緒に、かき氷を作っていた。ちなみに、氷は先生が北極の氷から取ってきたものである。彼女は目をキラキラとさせながら氷を見つめている。
「おおお。アテナには分かるのです。この氷、そんじょそこらの氷とは次元が違うのです! 例えるなら、メ◯とメ◯ゾーマくらい違うのです!」
「ヌルフフフフフ。当然です。先生が寒い所で必死に厳選した物ですからね。どうぞ。シロップも色々ありますよー」
「ひゃっほーい。いただきまーす!」
彼女は嬉しそうにかき氷を頬張り、その旨さに大きく目を見開き、電流でも走ったかのような衝撃が襲いかかる。
「!? こ、これは凄いのです! アテナ、こんなにも美味なかき氷は初めて食べたのです!」
「ヌルフフフフフ。喜んでもらえたようで何よりですよ。では先生も、自分の分を作りますかね」
殺せんせーがかき氷マシンを動かして自分の分を作る中、忍び寄るE組の生徒達が複数。
「殺せんせー!」
「かき氷、俺たちにも食わせてよ!」
「俺も俺もー」
彼らは笑顔を浮かべながら親しそうに近づいていたが、それが暗殺のための作り笑いだというのをアテナは見抜いていた。殺せんせーなら間違いなく見抜けるだろうし、この暗殺はどう考えても失敗すると分かりきっていたので、気にせずにかき氷を食べ続ける。
そうしてると、生徒達が一斉にナイフを抜いて殺せんせーを刺しに行った。しかし、案の定先生はそれを回避し、それどころか生徒達の持ってたナイフをハンカチで包んで放り捨て、代わりにチューリップを持たせていた。
「笑顔が少々わざとらしい。油断させるには足りませんねぇ。こんな危ない対先生ナイフは置いといて。花でも愛でて、良い笑顔から学んで下さい」
相変わらずとんでもないスピードだなあとアテナが思ってると、片岡が何かに気づいたかのように声を出す。
「ん? ていうか殺せんせー! この花、クラスの皆で育てた花じゃないですか!」
「にゅやッ。そ、そーなんですか!?」
「酷い殺せんせー。大切に育ててやっと咲いたのに」
矢田が悲しそうにそう言うと、殺せんせーは目に見えて焦りまくっていた。
「す、すいません。今新しい球根を⋯⋯」
一瞬で姿を消したかと思ったら、また一瞬で姿を現し、触手には沢山の球根があった。
「買って来ました」
そして片岡と岡野の2人に責められながら、先生は球根を1個ずつ丁寧に植えていた。アテナはその珍妙な光景を肴にかき氷を食べており、磯貝と前原は呆れたような顔で話をしている。
「なー磯貝。あいつ、地球を滅ぼすって聞いてッけど」
「お、おう⋯。その割にはチューリップ植えてんな」
「真面目だよな殺せんせー。てか、雪神はなんで殺せんせーと一緒にかき氷食べてんだよ。どうせなら俺たちも誘ってくれよな。暗殺があるから言えなかったけど、普通にかき氷食べたかったぜ」
「そうなのですか? では一口どうぞ」
そう言って、かき氷を一口掬って前原に差し出した。ちなみにこのスプーンは、先ほどまで彼女が口にしていたスプーンである。
「うぇ!? い、いや⋯⋯ありがたいけど、雪神は気にしないのか?」
「? 気にするとは何の話ですか? アテナは誰かと一緒に食べるの好きですし、前原さんの事を愛してますから、何の問題もないですよ」
「あ、愛いいいいいいいいいい!?」
突然の告白に、前原の頭は一気に沸騰した。近くで聞いてた磯貝も困惑しながら顔を赤らめている。
「ほ、本当か!? 本当に俺を愛しているんだな! 信じて良いんだな!」
「はい。なのでこのかき氷をどうぞ。アテナから前原さんへの愛です。まだ足りないなら、殺せんせーに後で作ってもらうよう頼みますが」
「い、いや。作ってもらう必要はないから大丈夫だ。うぇ、うぇへへへへへへへへ。あ、愛してるならしょうがないよなあ。愛してるんだから。俺も愛してるぜ〜アテナ」
気味の悪い笑みを浮かべながら彼はアテナのかき氷を口に入れた。
「うん。美味い。めちゃくちゃ美味いよ。アテナ」
「喜んでもらえて良かったです。そしてパンパカパーン、前原さんはアテナと呼んでくれました。アテナの親密度が25上がりました。好感度が18上がりました!」
「最高だ。俺、今までの人生で一番美味いものを食ったかもしれない」
「前原さんは大げさですね。かき氷好きなのですか?」
「好き。というか愛してる」
「なるほど。であるなら、殺せんせーに追加のかき氷を作ってもらうよう頼みましょうか?」
「いや。これだけで大丈夫。というかこれが良いんだよ。代わりと言ってはなんだけど、そのかき氷、もう一口くれないか? 出来れば、次は『はい、あーん』と言ってほしいんだが」
「分かりました。はい、あーん」
「あーん⋯⋯美味い! こんなに美味なかき氷は初めて食べた。やはり美少女からのあーんは最高だな」
前原がアテナからのかき氷に泣いて喜んでると、磯貝が言いづらそうにしながら指摘する。
「あー前原。その気持ち悪い表情止めとけよ。殺せんせーがさっきからこっちをチラチラ見てるから」
「な!? そ、それは気をつけないといけないな。たく、油断も隙もありゃしない」
前原が表情を戻しながら先生の方を見ると、先生は球根を土に植えつつ、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、何かをメモしていた。メモ帳の表紙には生徒の恋愛事情とゴシップネタ帳と書かれている。メモの内容が碌でもないことなのは明らかだった。
「あのタコを殺せええええええええ!!」
「落ち着け前原ああああああ!」
暴走して殺そうとする前原とそれを余裕で躱す殺せんせー、前原を止めようとする磯貝、事情をよく知らない片岡たちが困惑するなどかなりカオスな状況になっていたが、アテナは特に気にする様子は無かった。
「よく分からないけど、みんな暗殺に積極的で凄いのです」
そう言いながらかき氷を食べようとすると、その手を誰かに止められてしまった。振り返って止めた相手を見ると、不破と神崎が笑顔でありながら妙な圧を発していた。
「優月さんと有希子さん? どうかしたのですか。お二人もかき氷を食べたいとか?」
「いやいや。私たちはかき氷を食べに来たんじゃなくて、アテナを止めに来たんだよ」
「それはどういう」
「アテナちゃん。そのスプーンでかき氷を食べちゃだめだよ。前原君との関節キスになっちゃうから」
「? 関節キスというのはよく知らないですが、何か駄目な事なのですか?」
「そうだよ。関節キスってのは人の口が付いた物を違う誰かが口を付けるものなんだよ。そして、女性がこの関節キスをするとね。精神的に大変なことになってしまう可能性があるの。だからそのスプーン、私たちが洗っといて新しいスプーン持ってくるよ。アテナちゃんが精神的に辛い目に合うのは嫌だから」
「そうなのですか!? 教えてくれてありがとうございます!」
そう言って、アテナは笑顔でスプーンを渡す。神崎たちの言ってる事はまるっきり嘘なのだが、アテナは自分を愛してくれる人たちが嘘をつくなんて全く考えてないので、普通に信じてしまったのだ。神崎たちはその事に少し罪悪感を感じながら、そのスプーンを持っていった。
彼女たちが校舎の調理室でアテナの使ったスプーンを洗い、新しいスプーンを用意してる最中、不破が話しかける。
「ねえ、神崎さん。私たちなにしてるんだろうね」
「⋯⋯そうだね。前原君と関節キスしたって、普通は気にすること無いはずなのに」
彼女たちがあんな事をしたのは、前原にあーんをした光景を見たからだ。それを見た瞬間、居ても立ってもいられなくなり、アテナが無知なのをいい事に、ついあんな事を言ってスプーンを取り上げてしまった。
「変な感じだよね。私、アテナちゃんと一緒に遊んでる時、他の人の名前が出るとモヤモヤしちゃうことあるんだけど、前原君にあーんしてるのを見たとき、同じような感じが来たんだ。それも、今までよりずっと強く。しかも前原君に苛立つというか怒りみたいなのを感じて」
「神崎さんもなの?」
「もってことは不破さんも?」
「うん。私も同じだよ。一体何なんだろうね。この妙な感じ」
2人は答えの分からない感情に悩みながら、新しいスプーンを持っていった。
一方。アテナは新しいスプーンが来るのを待ちながら、渚、茅野と話をしていた。
「渚さん。何を書いてるのですか?」
「これ? 先生の弱点を書き溜めておこうと思って。そのうち、暗殺のヒントになるかもって」
弱点 カッコつけるとボロが出る
「渚。その弱点、暗殺の役に立つの?」
茅野がそう聞くと、渚はそっと目を逸らす。
「⋯⋯ま、まあ。何が役に立つかは分からないからね。うん。どんな事でもメモしておかないと」
「確かにそうですね。一見、何の役にも立たなさそうな道具が実はラスボス戦攻略のピースになることはゲームでもよくあることです。メモをしておいて損はないと思います!」
「いや雪神さん。現実とゲームは違うから。そう上手く行ったら苦労しないって」
呆れながら茅野がアテナの方を見ると、なぜか時でも止まったかのようにじっと見続けていた。1分ほど経っても何も言わずじっと見続けていた為、流石にアテナも不審に思い、声をかける。
「茅野さん。どうかしたのですか?」
そう聞いても何も答えず、茅野はアテナに近づいていき、彼女の首元にそっと手を当てる。
「? 茅野さん。何か答えてください」
そう言って彼女が茅野の手を握ると、意識を取り戻したかのように目を見開き、慌ててその手を首から離した。
「!? ご、ごめん。私ったら何を」
「どうしたの茅野。なんか、心ここにあらずって感じだったけど」
「あはは。ちょっと考え事しててさ。えーっと⋯⋯ほら、渚がメモ帳のページを無駄遣いしまくるから、節約を心がけてる身としてはなんか言ってやりたくなって」
「無駄遣い!? 僕これでも真面目にやってるんだけど!」
「分かってるよ。でも、そんな弱点どこで使うかよく分かんないし、他にもケーキのいちごは最後に食べるとかあんこはつぶあん派とか、訳分かんないことばっかり書くもんだから」
「だ、だって。情報は少しでも多ければ良いと思ったから。僕たち、先生のことは何も知らないわけだし」
「だとしても、もう少し他のことを書いたほうが良い気がするけどなー。あ、雪神さんが賛成したからって理由は無しね。さっきも言ったけど、ゲームと現実は違うんだから」
「い、意見を封殺された」
彼らがじゃれ合ってる所を見ながら、アテナは首筋にそっと手を置いて呟く。
「今の感覚⋯⋯まさか彼女は」
そして突然、瞳が金色に輝き、とある映像が見えた。それは茅野が首から触手を出し、自身を攻撃して殺す映像だった。
「この未来はマズイですね⋯⋯死なないために必要なコマンドは」
そう呟くと、また別の映像が映し出される。その映像では2人が何かを話していた。
そして、茅野が納得したように頷くと、アテナは彼女の首にそっと手を置く。すると手を置いた部分が金色に光りだし、心なしか茅野の表情が和らいでいくように見えた。
「なるほど。この選択をすると良いのですね。未来の日時は明日の放課後。選択を誤らないようにしないといけませんね。せっかく発動しましたし、この先の未来もちょっと覗きましょう。殺せんせーが何をしてるのか気になりますし」
映し出された映像がまた切り替わる。今度は殺せんせーがなぜか縄で縛られながら木にぶら下がる未来であり、生徒達が必死に細長い竹の先端にくくりつけたナイフを振り回したり、銃を撃っているが、先生には全く当たらない。先生が調子に乗ってブランコのように揺れていると、ぶら下がってた木が折れ、先生が地面に落ちた。
「これは暗殺出来る大チャンス。タイミングを見逃さないようにしないといけませんね」
そう言うと、彼女はその瞳を閉じる。次に開けた時には瞳は青色に戻っていた。そしてその瞳に映ったのは、ポカンとした顔で見ている渚と茅野だった。
「? どうかしたのですか。2人とも」
「いや。それは僕たちのセリフだよ。急に未来がマズイとか明日の放課後どうとか言ってたけど、何かあったの?」
「⋯⋯もしかして、アテナの言葉聞いてました?」
「聞いてたというか聞こえたというか。また瞳が金色に光ってたし、急にブツブツ喋り始めるからどうしたのかと思って。こっちの呼びかけにも全然応じてくれないし」
渚の言葉でアテナは理解した。さっきまでの言葉、全部口に出してしまっていたのだと。頭をフルスロットルで回転させて必死に考える。どうすれば自分の秘密を守りつつ、彼らを納得させられるように出来るかと。
「雪神さん。どうかしたの?」
「⋯⋯⋯⋯アテナは逃げるコマンドを使います!」
「え!? ちょ、ちょっと待ってよ雪神さーーん!」
「待てと言われて待つキャラはいません!」
考えた結果、出来ないと判断した彼女は、追いかける2人を振り切るように全速力で逃げていった。
防衛省の烏間はE組校舎へと向かっていた。翌日から彼も殺せんせーの監視やE組の生徒達を技術的、精神的にサポートする為に彼も教師をすることになったのだ。科目は体育の副担任である。校舎に着くと、細長い竹を何本か抱え、どこかへ向かっていく彼女と鉢合わせた。どこか疲れてるようであり、額には沢山の汗が浮かんでいる。
「あ、烏間さんこんにちは」
「こんにちは。明日から俺も教師として君等を手伝う。よろしく頼む」
「そうなんだ。じゃあこれからは烏間先生だ!」
「ところで、随分と疲れてるようだが、何かあったのか?」
「うん。さっきまで雪神さんと追いかけっこしてて。あの子、意外と足速いし体力もあるみたいで全然追いつけなかったんだよ。おかげでもうクタクタ。しかも、あの独り言に関しても何も聞き出せなかったし」
「独り言?」
「うん。急に瞳が金色に光って、未来がどうとか死なないためにどうとか独り言を言い始めたんだけど、その事について何も教えてくれなかったんだよね」
「⋯⋯なるほど?」(瞳が金色に光る。そんな現象があり得るのだろうか。いや、最近の中学生は昔では考えもしなかったことを当たり前のようにやる事もあるからな。何かの道具を使えばそんな事も可能かもしれないし、この子たちは、そういった面白いことが出来るチャンスがあればやりそうなものだ。独り言を言い始めた件は不可解だが⋯⋯俺の知らない特殊な事情があるのかもしれない)
そう結論づけると、彼は次に気になったことを質問する。
「そういえば、奴はどこだ?」
「それがさ。殺せんせー、クラスの花壇を荒らしちゃったんだけど、そのお詫びとしてハンディキャップ暗殺大会をやってるの」
彼女の見た方向に目を向けると、先生が縄でぐるぐる巻きにされながら枝にぶら下がってブランコのように揺れており、生徒達が必死に殺そうと銃や先端に対先生用ナイフをくくりつけた竹を振り回していた。
「ほら。お詫びのサービスですよ。こんな身動き出来ない先生そう滅多にいませんよぉ」
先生の動きは明らかに舐め腐っており、生徒たちの攻撃を余裕で躱していた。
「くっ⋯。これはもはや、暗殺と呼べるのか」
「呼べないかもね。どう渚、アテナ?」
「うん。完全に舐められてる」
「あそこまで馬鹿にされると一周回って笑えてくるのです。でも、馬鹿にできる時間もそろそろ終わりなのです」
そう言うと、アテナはハンドガンを下の方に向けて構える。
「? アテナさん。一体何を」
「ふふん。まあ見てるのです」
彼女はBB弾を何発も発射した。それと同時に。
「ヌルフフフ。無駄ですねえE組生徒の諸君。このハンデをものともしないスピード差。君たちが私を殺すなど夢のまた⋯」
先生がぶら下がってる木の枝が折れた。
「あっ」
ボトッと落下したその瞬間、彼女の放ったBB弾が先生の顔を一発貫き、足の触手を3本破壊した。
「ぬびゃあ!? な、なぜ弾丸が! てかまずい!」
「今だ。殺れえええええええ!」
「にゅやーーーー! い、今はやめてえええええ!」
触手を破壊されて動揺し、隙だらけ。そんな状態を見逃すはずがなく、生徒達が一斉に襲いかかる。
「本当にカッコつけてたらボロが出た。渚の弱点メモ、役に立つかもね」
「う、うん。そうだね。どんどん書いていこう」
渚は茅野にそんな返事をしながら、アテナの方をじっと見つめていた。そしてそれは烏間も同じだった。そんな中。
「ちょっ。待って! な、縄と触手が絡まって!!」
先生は必死に逃げようとしていたが、縄が絡まり、慌ててることもあって上手く逃げ出せないようだった。
弱点 テンパるのが意外と早い
しかし、流石はマッハ20の怪物と呼ぶべきか。強引に縄から抜け出して校舎の屋根の上へと避難した。
「ここまでは来れないでしょう! 基本性能が違うんですよバーカバーカ」
「あそこに逃げられると当てられないのです⋯⋯もう少し上手く当てられる未来を見ておくべきでした」
疲れたのか、ハァハァと息を切らしている。そして一通り吐き終わって息を整えると。
「ふう。明日出す宿題を2倍にします!」
「「「「小せえ!!」」」」
弱点 器が小さい
「そしてアテナさん! 私の触手を破壊して頭をぶち抜いたあなたは宿題4倍です!」
「「「「やってること最低だ!!」」」」
「むう⋯⋯酷いクエストを受注してしまったのです」
殺せんせーはそのままどこかへ飛び去って行った。
「逃げた」
「でも、今までで一番惜しかったよね」
「というか雪神! あの殺せんせーに銃弾を当てるとかすごいな!」
「確かに! まるで落ちるのが分かってたみたいな完璧なタイミングだったよ。どうやったのあれ!」
「ふふふ。アテナは神様なので、あれぐらいの事は余裕でこなせるのです」
「確かに、あれだけの芸当が出来るなら、雪神は本物の神様かもしれないな」
「アテナは本物の神様なのです。それよりも、次は暗殺クエスト達成出来るように頑張りましょう!」
「「「「おーーー!!」」」」
皆がはしゃいでる中、茅野が渚に質問する。
「どう? 殺せんせーは殺せそう?」
「殺すよ。殺す気じゃなきゃ、あの先生とは付き合えない」
烏間は中学生が嬉々として暗殺に参加する異常な光景を見ながら思っていた。
(不思議だ。生徒の顔が最も活き活きしてるのは、
彼は皆にもみくちゃにされてるアテナを見て不審に思っていた。
(彼女の攻撃。本当に奴が落ちて来るのを分かっているかのようなタイミングだった。まるでそうなる未来でも見たかのような。あの正確な射撃はよほどの鍛錬を積んだ軍人でなければ不可能な芸当。中学生が身につけられるようなものではない)
そして彼は、ふと茅野の言葉を思い出した。
瞳が金色に光って、未来がどうとか死なないためにどうとか独り言を言い始めたんだけど、その事について何も教えてくれなかったんだよね
同時に思い浮かぶある仮説。それはあまりにも非現実的で考えた自分でも馬鹿馬鹿しいと思えるものだった。
(あまりにも突拍子の無い仮説だ。しかし、絵空事として切って捨てるべきではないと俺の中の何かが訴えている。雪神アテナ。しばらく彼女の様子を観察したほうが良いのかもしれないな)