やれと言われた。


※一旦消して色々手直ししました。
 

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或いはネコでいっぱいの世界

 

「やっほー。ボク神さま」

 

 全裸。均等の取れたムキムキボディ。なんかいい感じに恥部を隠してる浮遊する腰蓑。並の成人男性では真っ青な肉体美とは裏腹に、顔の部分は鬣にも似た髪と落書き染みた猫の顔がくっついてる。

 

……うわ、マジで神さまじゃん。にゃんこ大戦争のやつ。

 

 目の前の変態から視線を逸らして周囲を見渡せば、プラネタリウムにでも迷い込んだのか、上下左右どこまでも星の煌めく宇宙空間を漂っていた。

 壮大な光景に圧迫されるも、それを台無しにするほどの、どこからともなく静かに響く音程のとれていない旋律の笛の音が、酷く……黒板を引っ掻く音を聞かされているような不快感を煽ってくる。狂いそう。

 

「ミュージック流しておかないとパパが目を覚ましちゃうから我慢してね。

で、キミは死んだから転生させるね。流行りの小説みたいで分かりやすい導入でしょ?」

 

 インフルエンザの時に見る夢みてぇな内容だな。死んだ自覚ないんだけど。

 

「人生なんてそんなもんだよ。キミ達人間はちょっとした不幸で終わるからね」

 

 上位者みたいな発言してる。

 

「神さまだからね。それじゃあ、ヒロアカ世界に行ってくれる? 能力はにゃんこ大戦争のネコを召喚できるようにしておくから。目的はにゃんこたちを広く認知させること。わかった?」

 

 わかったけどわかりたくない。抗議の言葉を吐き出そうとするも、口がないかのように何も喋れないことに気が付く。

 

「話せないのはしょうがない。キミの体はもうないからね」

 

 うわ、なんか吸い込まれるような感覚だ。体が引っ張られてる。

 

 ちょっと待てよまだ行くって決めてないし流れ的にお前心読めるんだからそれぐらいわかるだろ話聞けよ5分だけでもいいから俺ヒロアカのことあんまり知ら――

 

「――あ、縛りとして課金キャラ使用禁止も設けておくか。無課金で頑張ってね。

かわいそうだからEXキャラは自力で解放出来たら使っていいよ。ボクって優しいでしょ?

じゃあね」

 

 ふざけた宣言に一瞬思考が止まり、ピンと指を弾くような動作で身体がその場から離れ、そのまま意識が遠のいた。

 

 

☆☆☆☆

 

 

 不思議なクラスメートだった。

 

 平均をぐんと超えた背丈は、自己申告によれば2mを超えているそうだ。

 人としてのパーツがない顔は、辛うじて、どこに何を収めるか分かる程度に凹凸がある。

 けれども、時おりぽこぽこと眼球を表面に浮かべたり、鼻を作ったり、物を食べる時は顔の下半分を真っ二つにして口を形成したり……。

 

 顔のパーツをその都度形成する彼は、異形型の中でも突出して不気味な奇行が多い、そんな友人だった。

 

「ご主人は喋るのが面倒なだけだにゃ」

 

 殆ど声を聞いたことがないくらいには無口な彼の気持ちを代弁するのは、いつだって彼の頭を陣取る、少し変わった個性――『ネコ召喚』によって現れる謎生物だった。

 

 丸い球体に、突起物を上に二つ、下に四つ。子供の落書きのようなデフォルメされた目と口と鼻をつけた、意思のある、ネコを自称する不思議な個性。

 

「人間とは愚かな物だにゃ……特にお前」

「ぶっ殺すぞ!」

 

 妙に愛らしいフォルムをしているのに、口を開けば哲学的な事を口にして、よくかっちゃんを小馬鹿にしていた。周りにいるみんなは、それに便乗して楽しんでいた気がする。

 

 USJ、体育祭、林間合宿――全て、全て。彼は確かにそこにいて、僕たちと一緒に立ち向かってくれた。

 

――違和感だ。

 

 ネコがいる。当たり前だ。垣根の上で昼寝をしている。ネコの顔をしたトリが枝に止まって鳴いている、ネコの顔をした巨人が子供を肩に乗せて遊んでいる。どこを見てもいる。あり触れた光景。日常。僕の家にだっている。

 

……いつから?

 

 彼らはいつからここまで広まった? どうして誰もそれを不思議に思わない? 最初はいなかった。でも、気が付いたらネコたちがそこにいるのが当然になっていた。

 

 彼は……個性の持ち主である戦場(いくさば)くんは、上下左右、どこを見ても存在するだけのネコたちを、どうやって維持している?

 

「……戦場くん」

 

 偶々、帰り道が一緒になった戦場くんに話しかける。前を歩いていた彼は、ぐるりと首だけを後ろに回して僕を見た。

 

「出久くんは何かお困りかにゃ。ずっと沈んだ顔をしているにゃ」

「あ、うん。少し気になった事があって……」

 

 何を言おうか。いざ口にしようとすると、上手く言語化できない。

 

「その、戦場くんは個性を無差別に使っているんだけれど、ちゃんと許可をとってるのかなって。ほら、僕たちって、まだ正式なヒーローじゃないから」

 

 ごぽりと。顔だけ後ろに向けている戦場くんの口元が横一門に裂けた。

 彼の口から漏れ出ている言語化できていない不快な音を、僕の頭はなんとか懸命に理解しようと躍起になっている気がした。

 

「a、ア、あー……許可、なnて、必要なiよ」

 

 ごぼ、ごぼ、ごぼ……調子を整えるような濁音混じりの喋り方。

 あまりにも久しぶりに聞いた彼の声は、ここまで不快感のある、背筋が凍るような声だっただろうか。

 

「どうして……?」

 

 頭で警報が鳴っている。耳鳴りが止まない。じわじわと込み上げるような吐き気がする。

 

 

「ダッte、ネコなんて、ム、むかsi、むかし、昔からいるだろ?」

 

――静寂。

 

 視線が、向けられている。

 

 垣根の上で眠っていたネコが見ている。

 木の枝に止まっていたネコノトリが見ている。

 子供を乗せたままのネコ巨人が見ている。

 

 ネコが、見ている。

 

「……そう、だね。昔からいるんだから、許可も何もないよね」

 

 ふっ――と。何かが抜け落ちたような、或いは、腑に落ちたような気がした。

 それに伴って、先程までの静寂が嘘のように、わいわいと温かな賑わいが広がって行く。

 

「ごめん、変なこと聞いて」

「気にする事ないニャ。ご主人が久しぶりに喋るのを見れてボクも嬉しいニャ。今夜はネコ缶パーティにゃ。出久くんも如何かにゃ?」

「あ、僕は遠慮しとくよ。気持ちだけ受け取っておく。ありがとう」

 

 家のネコと一緒にヒーロー特集を見る約束をしているんだ。

 

 早く帰らなきゃ。早く帰らなきゃ。早くかえらなきゃ。はやくかえらなきゃ。はかやくらなきゃ。くかやえはらなゃき――

 

――たすけて

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

――路地裏。金網のフェンスで囲われた一角。木とベニヤ板で作られた掘立小屋の扉を開ける。

 

 ごちゃごちゃと乱雑に家具が置かれた狭苦しいワンルーム。

 中央にどんと鎮座する寝台の役割も兼ねたソファーには、膝を揃えて座る少女が一人。

 

 上下黒のワンピース。きめ細かな長いブラウンの髪。傷一つない褐色の肌。

 細められた黄金色の瞳が、さも愉快だと言わんばかりに此方に向けられ、厭らしくにやついた口元からは、キャンディーの棒が飛び出している。

 

「お勤めご苦労様です、おかえりなさい」

 

 同じ人間とは思えない美しさの、魔性とも呼べる容貌をした少女が、鈴の音のように聞き心地の良い声で挨拶を労いの挨拶をかけてくる。

 

 この世界に放り込まれて野晒し生活を送っている時、ふらりと現れたのが、この少女だった。

 

 名前は知らない。

 

 知っているのは、金。地位。身分。住処――この世界に置いての全てを彼女が用意してくれて、俺はそれに疑問を持つ必要はなくて、それを享受するだけでよかったこと。

 

 害はない。興味もない。放って置いても好き勝手に動いているので、好きにさせている。

 

「年下に甘えてる紐だにゃ」

 

 正論はいつだって人を不幸にする。頭上のネコを緩慢に指で弾いて黙らせる。

 

「事実を事実として受け入れないと、人間は成長しないにゃ。それよりネコ缶が食べたいにゃ」

「ええ、ええ、どうぞ。あちらに用意しています」

 

 言いたい事だけ言ってぴょんと床に降り立ったネコが、隅にある餌皿に駆け寄ってがつがつと飯を貪りはじめる。

 それを横目に、洗面所まで移動して諸々を済ませる。

 

 シャワーを浴び終えて戻ってみれば、少女はまだそこにいて、退屈そうにソファーでテレビを見ていた。

 

 俺の姿を視認すると、態々立ち上がって俺の手を引いて、先程まで自分が腰を落ち着かせていたソファーに座らせた。

 それから、ぴったりと張り付くように自分も横に座って、腕を絡めて体を預けてきた。

 

「今日は何かありましたか?」

 

 何も。何もない。いつも通りだ。いつも通りネコがいて、いつも通り誰かがネコと遊んでいる。

 

 大人も、子供も、ヒーローも、ヴィランも。代わり映えのない日常だった。

 

「そうですか、良かったですね。……どうぞ」

 

 嘲笑混じりのニヤニヤ笑いで、自分が口に入れていた棒付きのキャンディーを見せびらかすように差し出してくる。

 それに対応するように、ごぽりと口を真横に開き、細長い舌をグンと伸ばし、幾分か小さくなっていたキャンディーに巻き付けて口に入れれば、ふわりと果物の甘さが口内に広がった。

 

「うふふ」

 

 そんな様子を、何が楽しいのか、彼女はにやにやと笑いながら見つめてくる。……眠い。何かをすると疲れる。

 

「あら、おねむですか? でしたら、時間までおねんねしましょう。ちゃーんと起こしてあげますから」

 

 位置を調整した彼女が、俺の頭を両手で優しく挟み込むと、そのままそっと自身の膝の上に乗せた。滑らかな指が頭部を撫でつける。うつらうつらと睡魔がやってくる。

 

「――楽しいですよぉ、あなた達は。もっと楽しませてください。そうしたら、ずっと一緒にいてあげますから。ずっと、ずっと……傍で、愛してあげます」

 

 

 こちらを覗き込んでいる彼女の顔が歪む。

 形成していたパーツがどろどろに混ざり合い、溶けて粘液上になったそれが、ぼたぼたと落ちてくる。

 鉄のような、或いは、酸味のある饐えた臭いが漂った気がした。

 

 ぼたり、ぼたりと顔に落ちてくるそれが肌にしみ込み、脳内に宙と知らない音が入り込む。

 

 

――ぐぐもったフルート。甲高いオーボエ。汚らしい太鼓。

 

 鬱陶しく迫り来ようとする、溶けた彼女の顔を手で払いのけ、頭に響くゆったりとした子守歌に耳を傾ける。

 

「いけずぅ……」

「ハレンチだにゃ」

 

 間の抜けた会話を最後に、ぷつりと意識は途絶えた。

 

 





 やがて世界はネコで包まれた。


 以前投稿したものを消したのは中身が気に食わなかったからです。申し訳ありません。

 これなら短編でもある程度完結してるかなって。

以下登場人物


・戦場

主人公。転生したら顔がなかったけど目と口とか色々増やせるようになってた。最近物凄く疲れる。眠い。


・緑谷出久

原作主人公。戦場くんとはお友達。今日も学校楽しかったなー。


・かっちゃん

愚か者。



・少女

全部やってくれる。とてもいいひと。



・ネコ。

いつもそばにいてくれる気の良い隣人。和解せよ。
ネコたちはそんなに悪い存在じゃないよ。主に戦場くんの翻訳係。




 続きは書きません。思いつかないから。いあいあ。


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