もしエウリュステウスの側近にヘラクレス並の化物がいたら   作:名無しのマネモブ

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続きです。


マカリオスの母親について

「おお、見ろ。今日もマカリオス様が山を持ち上げているぞ」

 

エウリュステウス王が統治するミュケナイ王都、朝日が昇る中で遠くにある山が動いているのを見た市民達はミュケナイの守護者であるマカリオスが鍛錬に励んでいるのだと察していた。

 

「マカリオス様はすごいなぁ、山を持ち上げるだなんて。しかも稲妻の速さで走る事もできるらしいじゃないか」

「ああ、本当にスゴイよ。流石は大神の血を引く御方だ」

 

マカリオスが鍛錬に励み続けた結果、ミュケナイでは山が動くのは当たり前の光景となっていた。市民達はもう驚く事もなく日常生活を送っており呑気に雑談するくらい余裕があったのだ。

 

時折ミュケナイを訪れる旅人や行商人達が驚き腰を抜かす事もあったが、特に害もないのですぐに落ち着いて物珍しそうに眺めて故郷への土産話にしていた。

 

「……まさか本当に山を持ち上げるとは」

 

呑気な様子で眺めて感心している市民や旅人達とは対照的に顔を青くした屈強な人間もいた。彼は腕に覚えがある勇士でありミュケナイの守護者マカリオスを倒して名を上げようと考えていたのだが、山を持ち上げ動かすという滅茶苦茶な光景を見て絶句し思わず気後れしていた。

 

「クッ!怯えるな!俺だって、俺だって名のある勇士だ!……だが山を持ち上げるような男に勝てると思える程自惚れてはいない。悔しいが出直すか、一から修行し直そう」

 

今のままでは到底勝てないと悟った勇士は故郷に戻り鍛え直す事にしたのであった……そして10年後になって各地を旅して修行し自らを極限まで鍛えた勇士はマカリオスに本気の勝負を挑み打ち合って3回目で倒されるものの、自分の力を出し切った勇士は満足気な表情を浮かべており、その実力を称賛したマカリオスの誘いに応じてエウリュステウス王に仕える事になったがそれはまた別の話である。

 

 

 

 

「うむ、最近は平和なものだ」

 

日課となっている鍛錬を終えたマカリオスはミュケナイ市内を散策する。エウリュステウス王の統治とマカリオスの存在によってミュケナイは非常に安定しており順調に発展していた。

 

「腕試しに来る勇士もめっきり減ったなぁ。まあ鍛錬に集中できるからいい事だ」

 

元奴隷と侮り挑んでくる挑戦者達が随分減ったとマカリオスは不思議に思いつつも、鍛錬に集中できていいと呑気に考えていた……挑戦者の数が大幅に減った理由はマカリオスが鍛錬として山を動かし稲妻の如き速さで走るのを見た勇士達の殆どが心を折られていたからであるがマカリオスが気付く事はなかった。

 

賑やかなミュケナイ王都の様子を見てマカリオスは満足しつつも、ふと頭に浮かんだ疑問について考える。

 

「そういえば俺の母はどんな人だったのだろうか?」

 

自分の父が大神なのは知っているが母については殆ど何も知らないと気づいたマカリオスは自分の母親について気になり調べてみる事にしたのであった。

 

 

 

 

「そういうわけで私の母について知りたいのです。母は私が生まれた後すぐに亡くなったそうで母についての記憶は殆どないのですが、母が私を優しく抱きしめてくれた事はうっすらと覚えております」

「何故私に聞くのだ阿呆が」

 

真面目な表情を浮かべて尋ねてくるマカリオスを見たエウリュステウス王はコイツやはり阿呆だなと心底呆れていた。

 

「いえ、最初は王の御手を煩わせるつもりはなかったのですが、頭の悪い私が一人で調べても多分上手くいかないと考えまして」

「自分で言っていて悲しくならんのか?まあ貴様が一人で調べたところで上手くいかないだろうというのは同意するが……私に聞いてどうするのだまったく」

 

マカリオスの言い分に少し理解を示しつつもエウリュステウス王は自分に聞くのはおかしいだろうと呆れる。

 

「それは私よりも大神にお尋ねするべきなのではないのか?」

「おお、なるほど!流石です我が王よ!」

「いや普通に考えればわかるだろうが!」

 

我が王は賢い御方だなぁと素直に尊敬するマカリオスは物は試しと天に祈る事にした。

 

 

 

 

―ふうむ、お前の母親についてか……………すまん、まったく覚えておらん。まあ人間の中では比較的顔は整っていた……と思う―

 

 

 

 

「と大神は仰っていました」

「そ、そうか」

 

少し残念そうにしているマカリオスの言葉を聞いたエウリュステウス王は本当に聞いたのかコイツと呆れつつも、大神がわざわざ答えてくれたのかと驚いていた。

 

「ふむ、私としてはどうでもいいが、貴様が辛気臭い顔を浮かべているのを見るのは鬱陶しいな」

「も、申し訳ありません」

「フン、まあいい。確かお前の母親の同僚達はまだ生きていたはずだ。貴様の屋敷に呼び出し聞いてみたらどうだ?」

「おお、わかりました!」

 

エウリュステウス王の提案を聞いたマカリオスは明るい顔で屋敷に戻り母親の同僚達と呼び出す事にしたのであった。

 

 

 

 

「……ここが俺の母が眠る墓か」

 

その後話を聞き終えたマカリオスは奴隷用の共同墓地にいた。

 

「といっても母の亡骸はここにはないらしいが」

 

母の同僚達から聞いた話では、母は生まれたマカリオスを抱きしめた直後に女神の制裁を受けて消滅したという。その時の母は落ち着いた表情を浮かべ静かに運命を受け入れていたと聞いたマカリオスは手に持った布切れを眺める。

 

「残っているのは母が着ていたこの布切れだけか。俺を生かしていただいたヘラ様やヘスティア様には感謝しきれないな。いつか必ず大恩を返さなければ」

 

自分が生きてエウリュステウス王に仕えられるのは二柱の女神の慈悲のお陰だと理解したマカリオスはヘラとヘスティアに深い感謝を捧げる……大神の妻である女神は不義の子の祈りに対して渋い顔をしていたが、ふと何かを思いつきマカリオスの感謝の祈りを受け入れる事にしたのであった。

 

「一度戻り我が王にご報告しよう。ご迷惑をおかけしてしまったし謝罪しなければ」

 

 

 

 

「ほぉ、その薄汚い布切れが唯一の形見というわけか」

 

宮殿にてエウリュステウス王はつまらないそうな顔をしつつもマカリオスの報告を聞いていた。

 

「女神の制裁を受けたら死体など残るはずもないか……まあ仮に生きていても早死にしていただろうし女神の制裁は女神の御慈悲であったかもしれんな」

「えっ?」

「何を驚いておるのだ。大神の寵愛を受けた奴隷など長生きできるわけないだろうが」

 

驚いた顔をするマカリオスに呆れたエウリュステウス王は言葉を続ける。

 

「たかが奴隷が大神の寵愛を受けるなど周囲が許すわけがない。貴様の母親の同僚達は受け入れていたが普通なら嫉妬されてもおかしくないのだぞ」

「そ、そうなのですか?」

「うむ、それに大神のお手付きとなった奴隷など主人達も持て余すぞ……まあ秘密が露見したら周囲の嫉妬を買って殺されただろうよ。大神の加護があれば生きられるかもしれんが、貴様の話を聞く限り大神も貴様の母親の事はそこまでお気に召さなかったようだしなぁ」

 

エウリュステウス王の言葉は事実であった。何の後ろ盾もない奴隷の少女ではどの道周囲の人間達に嫉妬され殺されていただろう。エウリュステウス王がここまではっきりと言うのは奴隷の少女など自分にとってはどうでもよかったのもあるが、頭が悪くても勘が異常に鋭いマカリオスに嘘を言っても仕方ないと考えていたからである。

 

「それで?その小汚い布切れはどうするのだ?」

「命を懸けて私を産んでくれた母の形見ですから大事にしようかと思っております」

「ふぅんそうか、なら墓でも作って亡骸の代わりに埋葬してみたらどうだ?」

「えっ?」

 

エウリュステウス王からの提案にマカリオスは驚く。

 

「そんな汚い布切れを後生大事に持っているつもりか?愚かな貴様ではふとした拍子になくして大慌てするのが簡単に想像できるぞ」

「そ、それは……はい」

「いやそこは否定しろ阿呆が!まあいい、持っていたらなくすのならば墓を作って亡骸の代わりに埋葬すればいいだろう。それなら決してなくさないし貴様も安心できるはずだ」

「な、なるほど」

 

王の言葉を聞いたマカリオスは納得しつつも困惑した表情を浮かべエウリュステウス王に確認する。

 

「奴隷の、ただの奴隷である母の墓を作っても本当によろしいのでしょうか?」

「別にかまわん。たかが奴隷女に専用の墓など不相応だとは思うが、ゼウスから寵愛を受け貴様を生んだのだし多少特別扱いしてもよかろう。貴様の屋敷内に墓を作ればいいのではないか?」

 

エウリュステウス王はどうでもよさげな様子で肯定する。マカリオスの母親の墓を作れと提案したのはただの気まぐれであったが、マカリオスは心底嬉しそうな表情を浮かべ王に感謝していた。

 

「……わかりました、感謝いたします我が王よ!」

「うむ、これからも私の為に働け。ああでも勝手に墓を作るなよ、職人を派遣させるからそれまで待て」

「えっ、ダメなのですか?私を産んでくれた母に感謝し盛大な墓を作ろうと思ったのですが」

「ダメに決まっておろうが!いいか、愚かな貴様は知らないだろうが墓にも格式があってだな……」

 

盛大な墓を作ろうと能天気に考えていたマカリオスを見たエウリュステウス王は頭を抱えつつ説教をする事にした。

 

……その後マカリオスの屋敷の片隅に作られた墓は小さめだがしっかりとした造りをしていた。そこに母の形見である布切れを埋葬したマカリオスは自分の母はきっとエリュシオンにいるであろうと信じ祈りを捧げる。マカリオスは自分を産んでくれた母と自分を生かしてくれた慈悲深い女神達に深く感謝しつつ、自分を拾って家臣としてくれた上に墓を作る事を許可してくれたエウリュステウス王に更なる忠誠を誓うのであった。

 

 

 

 

そして遠い未来でマカリオスは死ぬ時に「自分の死体は母の墓の隣に埋葬してほしい」と遺言を残す。マカリオスの遺体は大神ゼウスが回収し一欠片も残らなかったが、彼が着ていた戦闘装束……エウリュステウス王から賜りマカリオスが大事にしていた装束は人間達に回収され、新たなミュケナイ王となったヒュロスに渡され丁重に埋葬される事になる。

 

マカリオスの墓は現代になっても残り母の墓と一緒に観光名所として有名になっているが、墓に納められていたはずの装束については行方がわからず今も調査が行われているが何者が盗んだのかは不明である。




FGOでエウリュステウス王が何もいい事なく退場したので書きました。とある掲示板で建てたスレをもっと書きたかったのですがパートスレにするのも嫌なので、折角だし二次小説として書く事にしました。

ちなみにこのオリ主の実力はは0.9ヘラクレスを想定しています。本気になった時の足の速さは0.9アキレウスです。
正面からの殴り合いならアルケイデス相手でも僅かな優位がありますが、でも強いだけのバカで知力デバフが大きいので搦め手を使われると全然ダメな程度の強さです。



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