もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
1999年8月1日のデジタルワールドに戻ってしまったファイル島は、デビモンによって黒い歯車に侵食されていた。エリアごとにバラバラに分解されてしまい、陸の孤島がたくさんできている。それぞれのエリアを守護デジモンと選ばれし子供のパートナーデジモンが手分けして守護していたのだが、パートナーデジモンたちが捕まったため守護デジモン不在のエリアもある。そこは特に黒い歯車の侵食がひどく、操られているデジモンばかりだった。
まずははじまりの街を取り返さなければならないということで、最寄りの龍の目の湖にあるデジタルゲートを潜った僕たちを待っていたのは星一つない暗黒の空だった。ダークマスターズとデビモンが同時に存在するという地獄絵図だ。はやく奪還しなければならない。
「ジャザードモン、はじまりの街までの偵察を頼む。僕たちはこのあたりのエリアのデジモンたちを解放していくことにする」
「わかった、気をつけて」
「そっちもな」
ジャザードモンが森に消えていく。はじまりの街に程近いこのエリアは成長期のデジモンたちが多く、ミノモンたちが力をつけるにはじゅうぶんなエリアなのだ。
「ミノモン、がんばって!黒い歯車に操られてるみんなを助けるんだ」
「うん、任せてよケンちゃん。ぼくがんばるからね!」
「ほんとにアグモンが進化できるか試してみよう。いこう、アグモン」
「うん。ぼくも太一じゃないのに進化できるかわかんないし、やってみよう。いくぞー!」
僕たちはデジタルバリアで姿を隠しながら敵に近づいていく。ミノモンが松毬状の硬い物質を投げつけて敵の注意を逸らし、こちらに黒い歯車がよく見えるような体制になったところで秋山がアグモンにデジヴァイスを掲げた。
驚いたことにデジヴァイスが反応した。本来、パートナーデジモンとパートナーはひとりと決められていて、進化させることができるのはパートナーだけのはずだった。だからパートナーを先に襲うような敵が多いわけだが、秋山はその常識を見事に打ち破ってみせたのである。これが不可能を可能にする因子というやつなのだろうか。アグモンはグレイモンに進化して、見事に黒い歯車を破壊してみせた。正気に戻ったデジモンたちは茂みにかくれてしまう。
僕たちはこの調子で休憩を挟みながら黒い歯車に操られているデジモンたちを解放して行った。その中にはかつての戦いで生き残った個体もいた。僕たちが選ばれし子供であり、秋山がデジモンと仲良くなることで進化させることができる才能の持ち主だとわかると、次から次に仲間になりたいとついてくる個体が現れた。僕たちもかつての半分以下という人数しかいないため心強い。秋山は次々に八神のデジヴァイスで野生のデジモンたちを進化させていき、僕たちの仲間はどんどん増えて行った。
ダークマスターズとの戦いの中で仲間をたくさん集めてくれた太刀川みたいだとアグモンは喜んでいる。
ミノモンは黒い歯車との戦いの中でワームモンに進化し、粘着力の強い網状の糸を吐出し相手の動きを封じこめてしまう「ネバネバネット」と、絹糸のように細いが先端が尖った針の様に硬質な糸を吐出す『シルクスレッド』のコンボで的確に黒い歯車を除去できるようになっていった。
「オサム、はじまりの街はデビモンに占拠されてるから正面から突入するのは危険。守護デジモンのエレキモンも黒い歯車で操られている。だから注意して」
偵察に行っていたジャザードモンが帰ってきて今のはじまりの街の状況を教えてくれた。僕たちは休憩をはさみ、体調を万全にして作戦を立てることにした。秋山が八神のデジヴァイスで進化させることができるデジモンには制限があるため、アグモンをはじめとしてワクチン種の成熟期に進化できるデジモンに今回は出撃を依頼することにする。僕はジャザードモンと共にサポートにまわり、エレキモンを最優先で賢とワームモンと共に開放することにした。
一歩足を踏み入れたはじまりの街はひどい有様だった。デジタマが踏み荒らされ、あちこちに殻が飛散している。デビモンが幼年期の生まれたばかりのデジモンたちを殺して回った証だった。ふかふかなソファのような建物も床も引き裂かれ、見るも無惨な光景が広がっている。
「ネバネバネット!」
エレキモンめがけてワームモンが奇襲を仕掛ける。身動きがとれなくなったエレキモンめがけてジャザードモンがレーザーを発射し、黒い歯車をピンポイントではかいする。そして僕たちは正気に戻ったエレキモンがデビモンに殺されないよう救出し、距離を取ることに成功した。
「ベビーたちが......!!」
ショックのあまり泣き出したエレキモンを見て秋山がデビモンを睨んだ。
「いくぞ、アグモン!」
「うん!もう許さないぞ、デビモン!ここからはぼくたちが相手だ!」
アグモンがグレイモンに進化してデビモンに襲いかかる。賢にエレキモンを逃すよう頼んだ僕はジャザードモンに乗って秋山のサポートに回ることにしたのだった。