転生したらヒトカゲだった。しかも色違い 作:リザードン大好きマン
お久しぶりです。リアルが落ち着いたので投稿を再開したいと思います。
第一話から第三十ニ話の振り返り
ヒトカゲ(色違い)に転生! 痛い! 苦しい! 辛い!
↓
怒りの力でリザードに進化。ピチューと一緒にマサラタウンへに行く。
↓
レッドと出会う。レッドがヤンデレに進化。ヤンデレッド誕生
↓
レッドとピチューと別れる。ニビシティに行く。
↓
タケシ&イワークに勝利。ハナダシティに行く。
↓
マサキに出会う。こいつやっべー的なノリで逃げ出す。
「ジムリーダーとして、迷子のポケモンを保護する。これは使命だわ!」
「リザッ!?(違う。違うから。待ってくれ)」
なぜその結論になったのか理解できないまま、目の前の少女は目を輝かせている。
(どうしてこうなった)
――――――
ハナダシティへの道は、思ったより長かった。
マサキの家を出てから半日ほど歩いた頃、道の両脇の景色が変わってきた。岩山の多かったニビシティ周辺とは違い、草原が広がり、遠くには川の光が見える。空気が湿っていて、鼻の奥にかすかに水の匂いが混じっていた。
海沿いとは違う、川の匂いだ。
(そろそろハナダが近いかも)
前世の知識では、ハナダシティは水が豊かな街だ。街の北には大きな滝があり、橋が有名で、何より水ポケモンが多い。炎タイプである俺にとって、あまり相性のいい街ではない。
……まあ、強くなるためには行くしかないんだが。
そんなことを考えながら歩いていた時、前方から妙な音が聞こえてきた。
何かが倒れる音。続いて、老人の声。
「ま、待ちなさい! それを返しなさい!」
「キャアアア! コウさんっ!!」
俺は反射的に走り出していた。
草むらを抜けると、道の脇の窪地に二人の老人が倒れていた。男性の方が地面に膝をついており、女性は荷物を抱えて震えている。その周りを、三匹のオニスズメが旋回していた。
オニスズメの一匹が荷物の一部を嘴で咥えていた。中身が散らばり、食料らしきものがいくつか転がっている。
(食料を狙ったのか)
すでに男性の方は頭から血が出ていた。転倒した時に岩で打ったらしい。
考えるより先に、体が動いた。
「リザァッ!!」
なきごえ。
空気を震わせる咆哮が窪地に弾けた。オニスズメたちが一斉に羽を逆立て、動きを止める。その隙に地面を蹴り、荷物を咥えていたオニスズメの真正面に立つ。
目が合った。小さな鳥の目に、明確な怯えが宿った。
次の瞬間、オニスズメは荷物を放して飛び上がった。残りの二匹もそれに続き、三匹がばさばさと羽ばたきながら空へ逃げていく。
静寂が戻った。
俺は落ちた荷物を拾い、老女の方へ差し出した。
「あ……あの……」
老女は呆然としていたが、すぐに差し出した荷物に気づいて両手で受け取った。
「ありがとうございます……!」
老男性の方が、地面から何とか体を起こそうとしていた。膝をついたまま、頭を押さえている。血は少量だったが、立ち上がるのは辛そうだ。
(手を貸すか……)
野生ポケモンが人間を助けるというのは、普通に考えれば不自然だ。だが、目の前の老人が立ち上がれずにいる。
俺はそっと老人の脇に寄り、体を支えるように肩を貸した。
「え……?」
老人が驚いたように目を丸くした。それでも、俺の肩に手を置いて、ゆっくりと立ち上がった。
「あ、ありがとう……」
掠れた声だった。
老女が夫の頭の傷を確認しながら、涙目で俺を見た。
「本当に助かりました。えーと、トレーナーがいない…? あなた、野生のポケモンなの?」
「リザ」
「まあ……」
老女は少し考えてから、穏やかに微笑んだ。
「よかったら、うちに来ませんか。お礼をしたいんです」
――――――
二人の後について歩くこと三十分ほど。ハナダシティの外れに、小さな一軒家が建っていた。
古びているが手入れは行き届いていて、玄関前には色とりどりの花が植えてある。生活の温かさが滲み出ているような家だった。
「さあ、どうぞ。狭いですけど」
老女――ハナさんと呼ばれていた――が扉を開けた。
室内は確かに広くはないが、清潔で落ち着いていた。壁には古い写真が何枚か飾られており、棚には手作りらしい細々した雑貨が並んでいる。
「まずは手当てをしましょう」
ハナさんが夫の頭を手当てしながら、俺に椅子を勧めた。ポケモンが椅子に座るのはおかしな光景だが、二人は特に気にする様子がない。
老人の名前はコウさんといった。
コウさんは手当てを受けながら、改めて俺を見た。
「色違いのリザードか……珍しい。しかも、ずいぶん大きい」
「コウさん、今は休んでいてください」
「ハナ、俺はもう大丈夫だよ」
二人のやり取りを聞きながら、(仲がいいな)と思った。
ハナさんがお茶を淹れてくれた。当然、ポケモンがお茶を飲むのも不思議な光景だが、差し出されたカップを受け取って口をつけると、温かくて少し甘い味がした。
「本当に助かりました。最近、あの辺のオニスズメが荒れているんです。縄張りが変わったのかしら」
「ポケモンたちも大変なんだよ。人間が道を広げたせいで、棲み処が狭くなっているんだ」
(そういうことか)
しばらく三人で過ごした。二人は俺に色々話しかけてくれたし、俺も短く鳴いて返した。もちろん言葉は通じないが、二人は俺の反応を見て楽しそうにしていた。
日が傾き始めた頃、ハナさんが「泊まっていきなさい」と言った。
(宿か……)
野外で野宿するより、屋根の下で休める方がありがたい。俺は頷いた。
夕食は温かいスープだった。隅に置かれた皿に、野菜の煮込みと肉が盛られていた。人間の食事だが、遠慮なくいただく。うまかった。
食事をしながら、コウさんが棚の上を指差した。
「あそこに、昔集めたわざマシンがあるんだ。わざマシンはあまり出回っていないから貴重なんだよ」
棚の上に、小さなケースが二つ置かれていた。
(あれがわざマシン……)
「『かみなりパンチ』と『あなをほる』だよ。孫にあげたんだが、いらないって置いていったんだ」
(孫……)
「あの子、ジムリーダーなんてやってるから、わざマシンなんていくらでもあるんだろうね」
ハナさんが苦笑いした。
(ジムリーダーの孫……ハナダジム、つまり)
その時は、深く考えなかった。
――――――
真夜中だった。
布団の上で眠っていた俺は、かすかな物音で目が覚めた。
外だ。
玄関の方から、何かが動く音がする。ひそひそ声も聞こえた。
(……ロケット団か?)
根拠はないが、体が先に反応していた。
静かに布団から出て、廊下を進む。玄関を覗くと、扉の向こうに人影が見えた。二人、三人。暗がりの中でも、胸の「R」のマークが分かった。
(やっぱりか)
玄関が静かに開かれようとしていた。
俺は先手を取ることにした。
扉を内側から蹴り破るように押し開ける。
「なっ!?」
外に三人の団員がいた。鍵開けのような道具を持っていた男が、俺の姿を見て目を丸くする。
「なんだ、ポケモン……!? こいつはまさか!?」
「リザァッ!!」
なきごえを叩き込む。三人が同時によろめいた。
(家の中に入れない)
扉の前に立ち、えんまくを吐き出す。黒煙が玄関前に広がった。
「っ、見えない!」
「いけ、マタドガス!」
白い光が弾け、紫色の丸い体が現れた。マタドガスだ。毒ガスで煙を払おうとしている。
(厄介だな)
煙の中を駆け抜け、マタドガスの横を抜ける。えんまくで視界を奪って動き回る戦法は、密集した場所の方が効く。
マタドガスが毒ガスを吐いた。俺は低く身を沈めてそれを避け、そのまま地面を蹴って接近する。
メタルクロー
銀色の爪がマタドガスの表面を切り裂いた。ガスが漏れ出す感触。そのまま連続で叩き込む。
「マタドガス!」
団員が叫んだ時には、マタドガスはもう地面に落ちていた。
残り二人。
「くそっ、捕まえろ!」
「報告にあったやつだ! こいつを獲れば――」
俺は振り返りざまにりゅうのいぶきを放った。
青白い奔流が一直線に走り、二人をまとめて吹き飛ばした。壁に叩きつけられた二人は、そのまま動かなくなった。
静寂。
荒い息を整えながら周囲を確認する。三人とも戦闘不能だ。
「な、何事だ!?」
家の中から声がした。コウさんが廊下に出てきており、ハナさんも後ろで様子を見ていた。二人とも顔が青ざめていた。
外の惨状を見て、ハナさんが口を覆った。
「ロケット団……! また来たのね……!」
(また、ということは以前も来たのか)
「あの、大丈夫か?」とコウさんが俺を見た。「怪我は……?」
「リザ」
「あなたが助けてくれたんですね」
ハナさんの目に、涙が浮かんでいた。
「今夜だけじゃない。今日も助けてもらって……本当に、ありがとうございます」
頭を下げられた。
俺は何も言えなかった。というか、言えない。ただ短く鳴いた。
「……リザ」
どういたしまして、という意味のつもりだったが、伝わったかどうかは分からない。
それでも、ハナさんは「分かりました」というように微笑んだ。
――――――
騒ぎが収まった頃、外から足音が近づいてくる音がした。
「おばあちゃん、おじいちゃん!! 大丈夫!?」
扉が勢いよく開いた。
飛び込んできたのは、橙色の髪をサイドテールにまとめた少女だった。年の頃は十代の半ばくらい。露出度の高いノースリーブに、サスペンダー付きのショートパンツ。息を切らしながら、真っ先にハナさんの元へ駆け寄った。
「怪我はない? 連絡を受けてすぐ来たんだけど」
「大丈夫よ、カスミちゃん。助けてもらったの」
「助けてもらった……? 誰に」
カスミが周囲を見回し、俺の存在に気づいた。
目が合った。
一拍、沈黙があった。
(やっぱり、カスミか)
ハナダジムのジムリーダー。水タイプの使い手。アニメでは「おてんば人魚」と自称していたはずだ。
カスミは俺をじっと見ていた。色違いのリザードが家の前に立っているという状況に、困惑している顔だった。
「これ……誰のポケモン?」
「野生のポケモンよ。今夜もロケット団が来たんだけど、この子が全部追い払ってくれたの」
「え……野生で、ロケット団を?」
カスミの目が、俺をまじまじと見た。
「ほんとうに野生なの?迷子になったのかしら」
(迷子じゃない)
「ねえ、トレーナーはいるの?」
(いない)
「いないの?」
カスミがさらに近づいてくる。俺は半歩後ずさった。
「怖くないよ。ちゃんと見させて」
カスミは俺の周りをぐるりと歩いた。首輪を見て、目を止めた。
「『イグニス』……名前があるじゃない。しかも道具もつけてるし。やっぱりトレーナーがいるんだ」
「野生ポケモンだって本人が言ってるわよ?」
「私にはわかるの! ジムリーダーとして色んなポケモンを見てきたんだもの」
(違う。俺は野生だ)
「それか……うん、そうね。保護しなきゃ」
(うん?)
カスミが目を輝かせた。
「ジムリーダーとして、迷子のポケモンを保護する。これは使命だわ!」
「リザッ!?(違う。違うから。待ってくれ)」
「決まった。今夜はここに泊まって、明日私の家に連れて帰る」
(聞けよ!!)
俺の抵抗を完全に無視して、カスミは祖父母の方を向いた。
「おばあちゃん、今夜泊まっていい?」
「もちろんよ」
「じゃあそういうことで。イグニス、よろしくね」
(よろしくじゃない!!)
カスミはもう俺のことを「保護対象のはぐれポケモン」と決めていた。その目に疑いの色は一切なかった。
コウさんが困ったように苦笑している。ハナさんはそれを見て少し申し訳なさそうだった。
「あの……一つお願いがあるんですけど」とハナさんが俺に向かって言った。
(なんだ)
「今日二度も助けていただいたから……これを」
ハナさんが棚から二つのケースを取ってきた。
「さっき言っていたわざマシンです。『かみなりパンチ』と『あなをほる』。よかったら使ってくれませんか」
(!!)
かみなりパンチ。
水タイプへの有効打になる電気技だ。今の俺に一番必要な技かもしれない。
「受け取ってくれる?」とハナさんが優しく聞いた。
「リザ」
両手でケースを受け取った。ずっしりとした重さがあった。
「よかった」
ハナさんが微笑んだ。
コウさんが続けた。
「使い方は分かるか? わざマシンは装置に入れて起動すると、映像と感覚が直接頭に流れ込んでくるんだ。ただ……」
「知識が入るだけで、技はすぐには使えないのよ」とハナさんが言葉を添えた。「練習が必要なの。昔の話だけど、カスミちゃんもずいぶん苦労していたわ」
(ゲームみたいにボタンひとつってわけにはいかないか)
「カスミちゃんのところにいれば、練習できる場所くらいあるでしょうしね」
ハナさんが言った。
カスミはそれを聞いて、胸を張った。
「もちろん。うちのジムはプールもあるし、広いから練習し放題よ。あ、でも水には気をつけてね。炎タイプには危ないでしょうから」
(それ、ジムリーダー自ら言うか)
「でもまあ、そこは慣れてもらうしかないわね」
(………なんか話が決まっていく)
その夜、部屋の隅でわざマシンのケースを眺めながら、俺は小さくため息をついた。
カスミとの共同生活が、明日から始まるらしい。
本人が断る間もなく。
色違いのリザードが一人でいるのを「はぐれポケモン」と判断し、保護を宣言するあたり、確かにアニポケのカスミに近いキャラだと思った。
(まあ……かみなりパンチを習得するためには、練習場所が必要だし)
前向きに考えることにした。
(あと、水への苦手意識も克服しないといけない)
かみなりパンチのケースを改めて見る。
これを習得すれば、水タイプへの弱点を突ける。俺はさらに強くなれる。
(……やることは決まっている)
尾の炎が、ゆらりと揺れた。
まずは、このわざマシンを起動することだ。
ケースの横に小さなボタンがあった。不安を胸にそれを押すと、かすかな光が溢れ出した。
次の瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。
映像だった。
様々なポケモンが電気を拳に纏める場面。筋肉の動かし方。電気エネルギーの集め方。拳を振り抜くタイミング。成功した場面と失敗した場面が、次々と流れてくる。
それが全部、数秒の間に頭に入ってきた。
光が消えた。
(……分かった。完全に分かった)
理屈は理解できた。電気エネルギーを体内で生成し、腕に集中させ、拳に乗せて打ち出す。それだけだ。
右手を握る。
電気を生成する……。
何も起きなかった。
(……あれ)
もう一度。電気エネルギーを腕へ。
何も起きなかった。
(……知ってる。できるはずだ。なんでだ?)
頭では完璧に分かっている。でも体がついてこない。
(変な感覚だな)
知っていることと、できることは違う。当たり前のことだった。
(明日から、地道にやるしかないな)
ケースを閉じて、横に置いた。
廊下の向こうから、カスミとハナさんの話し声が聞こえてくる。賑やかで、楽しそうな声だ。
尾の炎が、静かに部屋を照らしていた。
【名前】イグニス
【種族】リザード
【性格】おくびょう
【特性】りょうげんのひ
【持ち物】しんかのきせき
りょうげんのひ:自分のHPが1/2以下になるまで、ほのお技を使えない。HPが1/3以下になると、ほのお技の威力が2倍になり、「すばやさ」のランクが1段階上る。
【技】
・ひっかく
・ひのこ?
・えんまく
・なきごえ
・りゅうのいぶき
・メタルクロー