転生したらヒトカゲだった。しかも色違い   作:リザードン大好きマン

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お久しぶりです。リアルが落ち着いたので投稿を再開したいと思います。

第一話から第三十ニ話の振り返り
ヒトカゲ(色違い)に転生! 痛い! 苦しい! 辛い!

怒りの力でリザードに進化。ピチューと一緒にマサラタウンへに行く。

レッドと出会う。レッドがヤンデレに進化。ヤンデレッド誕生

レッドとピチューと別れる。ニビシティに行く。

タケシ&イワークに勝利。ハナダシティに行く。

マサキに出会う。こいつやっべー的なノリで逃げ出す。



第二十三話 「野生です。通してください」

 

 

 

 

「ジムリーダーとして、迷子のポケモンを保護する。これは使命だわ!」

 

「リザッ!?(違う。違うから。待ってくれ)」

 

 なぜその結論になったのか理解できないまま、目の前の少女は目を輝かせている。

 

(どうしてこうなった)

 

 

 

――――――

 

 

 

 ハナダシティへの道は、思ったより長かった。

 

 マサキの家を出てから半日ほど歩いた頃、道の両脇の景色が変わってきた。岩山の多かったニビシティ周辺とは違い、草原が広がり、遠くには川の光が見える。空気が湿っていて、鼻の奥にかすかに水の匂いが混じっていた。

 

 海沿いとは違う、川の匂いだ。

 

(そろそろハナダが近いかも)

 

 前世の知識では、ハナダシティは水が豊かな街だ。街の北には大きな滝があり、橋が有名で、何より水ポケモンが多い。炎タイプである俺にとって、あまり相性のいい街ではない。

 

 ……まあ、強くなるためには行くしかないんだが。

 

 そんなことを考えながら歩いていた時、前方から妙な音が聞こえてきた。

 

 何かが倒れる音。続いて、老人の声。

 

「ま、待ちなさい! それを返しなさい!」

 

「キャアアア! コウさんっ!!」

 

 俺は反射的に走り出していた。

 

 草むらを抜けると、道の脇の窪地に二人の老人が倒れていた。男性の方が地面に膝をついており、女性は荷物を抱えて震えている。その周りを、三匹のオニスズメが旋回していた。

 

 オニスズメの一匹が荷物の一部を嘴で咥えていた。中身が散らばり、食料らしきものがいくつか転がっている。

 

(食料を狙ったのか)

 

 すでに男性の方は頭から血が出ていた。転倒した時に岩で打ったらしい。

 

 考えるより先に、体が動いた。

 

「リザァッ!!」

 

 なきごえ。

 

 空気を震わせる咆哮が窪地に弾けた。オニスズメたちが一斉に羽を逆立て、動きを止める。その隙に地面を蹴り、荷物を咥えていたオニスズメの真正面に立つ。

 

 目が合った。小さな鳥の目に、明確な怯えが宿った。

 

 次の瞬間、オニスズメは荷物を放して飛び上がった。残りの二匹もそれに続き、三匹がばさばさと羽ばたきながら空へ逃げていく。

 

 静寂が戻った。

 

 俺は落ちた荷物を拾い、老女の方へ差し出した。

 

「あ……あの……」

 

 老女は呆然としていたが、すぐに差し出した荷物に気づいて両手で受け取った。

 

「ありがとうございます……!」

 

 老男性の方が、地面から何とか体を起こそうとしていた。膝をついたまま、頭を押さえている。血は少量だったが、立ち上がるのは辛そうだ。

 

(手を貸すか……)

 

 野生ポケモンが人間を助けるというのは、普通に考えれば不自然だ。だが、目の前の老人が立ち上がれずにいる。

 

 俺はそっと老人の脇に寄り、体を支えるように肩を貸した。

 

「え……?」

 

 老人が驚いたように目を丸くした。それでも、俺の肩に手を置いて、ゆっくりと立ち上がった。

 

「あ、ありがとう……」

 

 掠れた声だった。

 

 老女が夫の頭の傷を確認しながら、涙目で俺を見た。

 

「本当に助かりました。えーと、トレーナーがいない…? あなた、野生のポケモンなの?」

 

「リザ」

 

「まあ……」

 

 老女は少し考えてから、穏やかに微笑んだ。

 

「よかったら、うちに来ませんか。お礼をしたいんです」

 

 

――――――

 

 

 二人の後について歩くこと三十分ほど。ハナダシティの外れに、小さな一軒家が建っていた。

 

 古びているが手入れは行き届いていて、玄関前には色とりどりの花が植えてある。生活の温かさが滲み出ているような家だった。

 

「さあ、どうぞ。狭いですけど」

 

 老女――ハナさんと呼ばれていた――が扉を開けた。

 

 室内は確かに広くはないが、清潔で落ち着いていた。壁には古い写真が何枚か飾られており、棚には手作りらしい細々した雑貨が並んでいる。

 

「まずは手当てをしましょう」

 

 ハナさんが夫の頭を手当てしながら、俺に椅子を勧めた。ポケモンが椅子に座るのはおかしな光景だが、二人は特に気にする様子がない。

 

 老人の名前はコウさんといった。

 

 コウさんは手当てを受けながら、改めて俺を見た。

 

「色違いのリザードか……珍しい。しかも、ずいぶん大きい」

 

「コウさん、今は休んでいてください」

 

「ハナ、俺はもう大丈夫だよ」

 

 二人のやり取りを聞きながら、(仲がいいな)と思った。

 

 ハナさんがお茶を淹れてくれた。当然、ポケモンがお茶を飲むのも不思議な光景だが、差し出されたカップを受け取って口をつけると、温かくて少し甘い味がした。

 

「本当に助かりました。最近、あの辺のオニスズメが荒れているんです。縄張りが変わったのかしら」

 

「ポケモンたちも大変なんだよ。人間が道を広げたせいで、棲み処が狭くなっているんだ」

 

(そういうことか)

 

 しばらく三人で過ごした。二人は俺に色々話しかけてくれたし、俺も短く鳴いて返した。もちろん言葉は通じないが、二人は俺の反応を見て楽しそうにしていた。

 

 日が傾き始めた頃、ハナさんが「泊まっていきなさい」と言った。

 

(宿か……)

 

 野外で野宿するより、屋根の下で休める方がありがたい。俺は頷いた。

 

 夕食は温かいスープだった。隅に置かれた皿に、野菜の煮込みと肉が盛られていた。人間の食事だが、遠慮なくいただく。うまかった。

 

 食事をしながら、コウさんが棚の上を指差した。

 

「あそこに、昔集めたわざマシンがあるんだ。わざマシンはあまり出回っていないから貴重なんだよ」

 

 棚の上に、小さなケースが二つ置かれていた。

 

(あれがわざマシン……)

 

「『かみなりパンチ』と『あなをほる』だよ。孫にあげたんだが、いらないって置いていったんだ」

 

(孫……)

 

「あの子、ジムリーダーなんてやってるから、わざマシンなんていくらでもあるんだろうね」

 

 ハナさんが苦笑いした。

 

(ジムリーダーの孫……ハナダジム、つまり)

 

 その時は、深く考えなかった。

 

 

――――――

 

 

 真夜中だった。

 

 布団の上で眠っていた俺は、かすかな物音で目が覚めた。

 

 外だ。

 

 玄関の方から、何かが動く音がする。ひそひそ声も聞こえた。

 

(……ロケット団か?)

 

 根拠はないが、体が先に反応していた。

 

 静かに布団から出て、廊下を進む。玄関を覗くと、扉の向こうに人影が見えた。二人、三人。暗がりの中でも、胸の「R」のマークが分かった。

 

(やっぱりか)

 

 玄関が静かに開かれようとしていた。

 

 俺は先手を取ることにした。

 

 扉を内側から蹴り破るように押し開ける。

 

「なっ!?」

 

 外に三人の団員がいた。鍵開けのような道具を持っていた男が、俺の姿を見て目を丸くする。

 

「なんだ、ポケモン……!? こいつはまさか!?」

 

「リザァッ!!」

 

 なきごえを叩き込む。三人が同時によろめいた。

 

(家の中に入れない)

 

 扉の前に立ち、えんまくを吐き出す。黒煙が玄関前に広がった。

 

「っ、見えない!」

 

「いけ、マタドガス!」

 

 白い光が弾け、紫色の丸い体が現れた。マタドガスだ。毒ガスで煙を払おうとしている。

 

(厄介だな)

 

 煙の中を駆け抜け、マタドガスの横を抜ける。えんまくで視界を奪って動き回る戦法は、密集した場所の方が効く。

 

 マタドガスが毒ガスを吐いた。俺は低く身を沈めてそれを避け、そのまま地面を蹴って接近する。

 

 メタルクロー

 

 銀色の爪がマタドガスの表面を切り裂いた。ガスが漏れ出す感触。そのまま連続で叩き込む。

 

「マタドガス!」

 

 団員が叫んだ時には、マタドガスはもう地面に落ちていた。

 

 残り二人。

 

「くそっ、捕まえろ!」

 

「報告にあったやつだ! こいつを獲れば――」

 

 俺は振り返りざまにりゅうのいぶきを放った。

 

 青白い奔流が一直線に走り、二人をまとめて吹き飛ばした。壁に叩きつけられた二人は、そのまま動かなくなった。

 

 静寂。

 

 荒い息を整えながら周囲を確認する。三人とも戦闘不能だ。

 

「な、何事だ!?」

 

 家の中から声がした。コウさんが廊下に出てきており、ハナさんも後ろで様子を見ていた。二人とも顔が青ざめていた。

 

 外の惨状を見て、ハナさんが口を覆った。

 

「ロケット団……! また来たのね……!」

 

(また、ということは以前も来たのか)

 

「あの、大丈夫か?」とコウさんが俺を見た。「怪我は……?」

 

「リザ」

 

「あなたが助けてくれたんですね」

 

 ハナさんの目に、涙が浮かんでいた。

 

「今夜だけじゃない。今日も助けてもらって……本当に、ありがとうございます」

 

 頭を下げられた。

 

 俺は何も言えなかった。というか、言えない。ただ短く鳴いた。

 

「……リザ」

 

 どういたしまして、という意味のつもりだったが、伝わったかどうかは分からない。

 

 それでも、ハナさんは「分かりました」というように微笑んだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

 騒ぎが収まった頃、外から足音が近づいてくる音がした。

 

「おばあちゃん、おじいちゃん!! 大丈夫!?」

 

 扉が勢いよく開いた。

 

 飛び込んできたのは、橙色の髪をサイドテールにまとめた少女だった。年の頃は十代の半ばくらい。露出度の高いノースリーブに、サスペンダー付きのショートパンツ。息を切らしながら、真っ先にハナさんの元へ駆け寄った。

 

「怪我はない? 連絡を受けてすぐ来たんだけど」

 

「大丈夫よ、カスミちゃん。助けてもらったの」

 

「助けてもらった……? 誰に」

 

 カスミが周囲を見回し、俺の存在に気づいた。

 

 目が合った。

 

 一拍、沈黙があった。

 

(やっぱり、カスミか)

 

 ハナダジムのジムリーダー。水タイプの使い手。アニメでは「おてんば人魚」と自称していたはずだ。

 

 カスミは俺をじっと見ていた。色違いのリザードが家の前に立っているという状況に、困惑している顔だった。

 

「これ……誰のポケモン?」

 

「野生のポケモンよ。今夜もロケット団が来たんだけど、この子が全部追い払ってくれたの」

 

「え……野生で、ロケット団を?」

 

 カスミの目が、俺をまじまじと見た。

 

「ほんとうに野生なの?迷子になったのかしら」

 

(迷子じゃない)

 

「ねえ、トレーナーはいるの?」

 

(いない)

 

「いないの?」

 

 カスミがさらに近づいてくる。俺は半歩後ずさった。

 

「怖くないよ。ちゃんと見させて」

 

 カスミは俺の周りをぐるりと歩いた。首輪を見て、目を止めた。

 

「『イグニス』……名前があるじゃない。しかも道具もつけてるし。やっぱりトレーナーがいるんだ」

 

「野生ポケモンだって本人が言ってるわよ?」

 

「私にはわかるの! ジムリーダーとして色んなポケモンを見てきたんだもの」

 

(違う。俺は野生だ)

 

「それか……うん、そうね。保護しなきゃ」

 

(うん?)

 

 カスミが目を輝かせた。

 

「ジムリーダーとして、迷子のポケモンを保護する。これは使命だわ!」

 

「リザッ!?(違う。違うから。待ってくれ)」

 

「決まった。今夜はここに泊まって、明日私の家に連れて帰る」

 

(聞けよ!!)

 

 俺の抵抗を完全に無視して、カスミは祖父母の方を向いた。

 

「おばあちゃん、今夜泊まっていい?」

 

「もちろんよ」

 

「じゃあそういうことで。イグニス、よろしくね」

 

(よろしくじゃない!!)

 

 カスミはもう俺のことを「保護対象のはぐれポケモン」と決めていた。その目に疑いの色は一切なかった。

 

 コウさんが困ったように苦笑している。ハナさんはそれを見て少し申し訳なさそうだった。

 

「あの……一つお願いがあるんですけど」とハナさんが俺に向かって言った。

 

(なんだ)

 

「今日二度も助けていただいたから……これを」

 

 ハナさんが棚から二つのケースを取ってきた。

 

「さっき言っていたわざマシンです。『かみなりパンチ』と『あなをほる』。よかったら使ってくれませんか」

 

(!!)

 

 かみなりパンチ。

 

 水タイプへの有効打になる電気技だ。今の俺に一番必要な技かもしれない。

 

「受け取ってくれる?」とハナさんが優しく聞いた。

 

「リザ」

 

 両手でケースを受け取った。ずっしりとした重さがあった。

 

「よかった」

 

 ハナさんが微笑んだ。

 

 コウさんが続けた。

 

「使い方は分かるか? わざマシンは装置に入れて起動すると、映像と感覚が直接頭に流れ込んでくるんだ。ただ……」

 

「知識が入るだけで、技はすぐには使えないのよ」とハナさんが言葉を添えた。「練習が必要なの。昔の話だけど、カスミちゃんもずいぶん苦労していたわ」

 

(ゲームみたいにボタンひとつってわけにはいかないか)

 

「カスミちゃんのところにいれば、練習できる場所くらいあるでしょうしね」

 

 ハナさんが言った。

 

 カスミはそれを聞いて、胸を張った。

 

「もちろん。うちのジムはプールもあるし、広いから練習し放題よ。あ、でも水には気をつけてね。炎タイプには危ないでしょうから」

 

(それ、ジムリーダー自ら言うか)

 

「でもまあ、そこは慣れてもらうしかないわね」

 

(………なんか話が決まっていく)

 

 その夜、部屋の隅でわざマシンのケースを眺めながら、俺は小さくため息をついた。

 

 カスミとの共同生活が、明日から始まるらしい。

 

 本人が断る間もなく。

 

 色違いのリザードが一人でいるのを「はぐれポケモン」と判断し、保護を宣言するあたり、確かにアニポケのカスミに近いキャラだと思った。

 

(まあ……かみなりパンチを習得するためには、練習場所が必要だし)

 

 前向きに考えることにした。

 

(あと、水への苦手意識も克服しないといけない)

 

 かみなりパンチのケースを改めて見る。

 

 これを習得すれば、水タイプへの弱点を突ける。俺はさらに強くなれる。

 

(……やることは決まっている)

 

 尾の炎が、ゆらりと揺れた。

 

 まずは、このわざマシンを起動することだ。

 

 ケースの横に小さなボタンがあった。不安を胸にそれを押すと、かすかな光が溢れ出した。

 

 次の瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。

 

 映像だった。

 

 様々なポケモンが電気を拳に纏める場面。筋肉の動かし方。電気エネルギーの集め方。拳を振り抜くタイミング。成功した場面と失敗した場面が、次々と流れてくる。

 

 それが全部、数秒の間に頭に入ってきた。

 

 光が消えた。

 

(……分かった。完全に分かった)

 

 理屈は理解できた。電気エネルギーを体内で生成し、腕に集中させ、拳に乗せて打ち出す。それだけだ。

 

 右手を握る。

 

 電気を生成する……。

 

 何も起きなかった。

 

(……あれ)

 

 もう一度。電気エネルギーを腕へ。

 

 何も起きなかった。

 

(……知ってる。できるはずだ。なんでだ?)

 

 頭では完璧に分かっている。でも体がついてこない。

 

(変な感覚だな)

 

 知っていることと、できることは違う。当たり前のことだった。

 

(明日から、地道にやるしかないな)

 

 ケースを閉じて、横に置いた。

 

 廊下の向こうから、カスミとハナさんの話し声が聞こえてくる。賑やかで、楽しそうな声だ。

 

 尾の炎が、静かに部屋を照らしていた。







【名前】イグニス
【種族】リザード
【性格】おくびょう
【特性】りょうげんのひ
【持ち物】しんかのきせき

りょうげんのひ:自分のHPが1/2以下になるまで、ほのお技を使えない。HPが1/3以下になると、ほのお技の威力が2倍になり、「すばやさ」のランクが1段階上る。

【技】
・ひっかく
・ひのこ?
・えんまく
・なきごえ
・りゅうのいぶき
・メタルクロー
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