助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件   作:萩月輝夜

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どうなってるかなぁ~と開く。

UA:40000!?
お気に入り:1800?!
感想コメント:21!?評価点数と枠埋まってる?!
日間五位!?

…困惑と感謝しかないんですけど…連載しない予定だったんですけど…。
ひぇええええ…(恐怖)

有り難うございます…泣
割りとこの作品真夜様のテンションが可笑しいけどこれで良いのか…?


入学編②

早朝、達也と深雪は鍛練の為九重寺へ向かっていた。

神社の境内には泥だらけになって地面に転がっている達也に剃髪の糸目をした坊主…この神社の住職であり達也の師匠である九重和尚が”歓迎”と言う名の手厚い特訓をしていた。

 

立ち上がらせ神社の縁に集まり深雪謹製の朝御飯(サンドイッチ)に舌鼓を打ちつつ成長する達也へ言葉を掛ける。

 

「いやぁ~体術だけならもう達也くんには叶わないな」

 

「それで互角、と言うのに毎度のことボコボコにされるのは喜べることではありませんが…」

 

「それは当然さ。僕は君の師匠だよ?そう簡単に一本取られてやるわけには行かないさ。君は未だ十五歳の成長発展途中。半人前の君に遅れを取るようでは弟子に逃げられてしまう」

 

「そうです。先生が珍しく誉めてくださっているのですから胸を張ってくださいお兄様」

 

師匠と妹にそう言われ苦笑するしかない達也。

手にしていたサンドイッチを口へ放り込み深雪が差し出したサーモボトルのキャップに注がれた紅茶で流し込み視線を九重へ告げた。

 

「…それで師匠。頼んでいた件は?」

 

そう問いかけると手にしていた湯呑みを縁へ置いて話し始めた。

 

「ああ。頼まれていた件だったが直ぐに調べが付いたよ。紫ノ宮朔也君…彼は何処にでもいる普通の魔法師だね」

 

「普通の魔法師、ですか…?」

 

九重の口から突いた言葉が想像していたものとは違っており拍子抜けのようなリアクションを取る深雪。

 

「ああ。だが彼の両親()()()人物…まぁ家族だけど彼以外は”非魔法師”…一般人だ。彼は特別変異、と言うべき才能を持っていたらしいねぇ…」

 

達也は九重の言葉に引っ掛かった。

 

()()()と言うのは…?」

 

「うん。彼は…物心が付く前に交通事故で家族を亡くしているようなんだ」

 

「交通、事故…!?」

 

魔法が発展した世界だと言え年間で自動車、歩行者の接触事故は発生していたが二十一世紀初期と比べれば目に見えて低下していたが事故は起こるものだった。それに当たってしまった…と言うのは不幸でしかない。

 

湯呑みを縁に置き真面目な表情を浮かべる九重は空を見上げた。

 

「その際彼も重症を負ったらしいけど奇跡的に生存した。彼の実家はかなり裕福な家だったらしく父方の祖父に引き取られ資産を守るその最中魔法の才能があることが判明した。中々の苦労人のようだねぇ…」

 

「ええ…朔也さんは随分な苦労をされているのですね…」

 

深雪は彼の境遇を想い悲しげな表情を浮かべており達也の脳裏にも柔和な笑みを絶やさずにいる表情が浮かび上がる。その表情の裏には様々な苦悩を経験したのだろうと()()()()()のだ。

だが達也はここであることに引っ掛かる。入学式当日の夜に真夜が告げた言葉だ。

 

『私が知っている人物ならば』

 

この言葉をあの朔也に向けると言うことは過去に叔母は彼にあっているのか?と言うことになる。

しかし、調査をせよと言うのは噛み合わない。知っているのなら自分で調査をする筈だ。四葉の捜査網を持っていれば魔法師の一人の来歴を調べ上げることなど造作もない筈なのだから。

 

「(最初から知っていた…?だが一体叔母上は何を持ってあいつを調べようとしている…?)師匠。朔也が得意とする魔法はわかりますか?例えば精神干渉系統が得意、だとか…」

 

「うーん…そうだねぇ。得手不得手は特になくオールラウンダーな魔法師らしいね。そつなく全てをこなす、と言う点では深雪くんと同じかも」

 

「どうしてお兄様は彼が精神干渉系統の魔法が得意だと?」

 

そう問われ達也は昨日の騒動に関して朔也が使用した魔法を説明する。その特徴を聞いた深雪は驚き九重も「ほう…」と関心を向けていた。

 

(CADの発動兆候はみられなかった…補助なしで意識改編をして見せるあれは俺の知らない魔法…か。叔母上は彼の特異性を何処かで知って引き込もうとしているのか?)

 

達也は叔母が考えていることに底知れないモノを感じながら達也自身は彼の力を見極めようと決めた。

九重寺から少し歩きキャビネットに乗り込み二人は隣り合って第一高校へ向かう道すがら達也が口を開いた。

 

「深雪、朔也をどう思う?」

 

「朔也さんは…優しい人だと思います。物腰柔らかで昨日も争いを諌めて頂きました」

 

深雪の朔也の第一印象は物腰柔らかく礼儀正しい、時折落ち着きすぎてる面を覗かせる不思議な青少年であり好ましい性格をしていた。

 

「そうだな…それには俺も同意する。俺としても奴とは友達になっておきたいからな」

 

「はい。一科であってもお兄様を侮蔑しない…寧ろ敬意を持って接されてると思います。私達の大事にすべき友人になられるかも知れません。私も朔也さんとはお友達になりたいです…ご家族を亡くされている、と言うのは私たちと同じですから」

 

深雪の表情に少しだけ翳りが見えた。数年前に母である深夜とその護衛である桜井穂波も亡くなっている。

彼もまた幼い最中に両親を失いそして妹を亡くしている、と聞いて同じ立場の深雪はもしも、自分が…と重ねたのだろう。

 

◆ ◆ ◆

 

深刻な話をしているそれが()()()()()()()()()であることを誰も疑わない。

一方でそんな暗い雰囲気など知らぬ、と言わんばかりアパートでは早朝、制服に着替え台所に熊の絵柄がプリントされたエプロンを着用した朔也が鼻唄混じりに自分のお弁当を詰めていた。

 

「~~♪~~♪っと…朔也特製唐揚げ弁当完成、ってね」

 

キッチンにはカラッと揚がった唐揚げのいい匂いが充満していた。大量に揚げたそれはタッパーに押し込まれ今日明日、と夕御飯のおかずになるだろう。

今日のお弁当は唐揚げをメインに据えて卵焼き、ほうれん草の胡麻和え、沢庵の漬け物、そしてシャウ○ッセンと舞茸のバターソテーだ。前世では料理などしたことはない。むしろ台所を荷物置きにして封鎖していたレベルだったのだが…この世界では自動調理技術が向上しておりHARをつかって料理すればいいのだがこの転生スペックでは料理技能も上がっているらしい。昨日からなんだか楽しくなってしまって家に備え付けの器具をつかって…で今に至る。

完成から暫く経過し粗熱を取り保冷魔法を施し通学鞄の中に押し込み準備を終えて同時進行で作っていた朝食をニュースをみながら取っていた。

 

「…そろそろ真夜さんに会いに行く算段立てないとなぁ…長野の山奥に直接乗り込んでもいいけど下手すれば四葉と戦争になるな…まぁ勝てなくないけどそれだと悲しむしなぁ…いっそのこと黒羽兄弟が俺の事を拐いに来てくれれば万事解決なんだけどなぁ…」

 

おかずを口腔内に放り込み白米と共に咀嚼しお茶で最後飲み込む。

食器を下げ軽く濯いだ後に食洗機に放り込み少しゆっくりしてから時刻となったので自宅を出てコミューターに乗り込み第一高校への道すがら先を歩いていた達也と深雪を見つけたので声を掛ける。

 

「おはよう、二人とも」

 

そう声を掛けると深雪が昨日よりも接する態度が柔らかくなっていたのを聞いて驚いた。

 

「おはようございます()()()()

 

「おはよう、朔也」

 

「…お?おう…(あれ?深雪昨日って俺のこと名字呼びだったような…?)」

 

自然な流れで通学路を達也と深雪を挟む様に歩いていると後ろから後ろから声が掛かった。

 

「達也くん、朔也くんオハヨー、深雪さんおはようございます。」

 

達也と共に振り返ると小走りに小柄な人影が接近しているのに気がついた。

 

「(ああ、俺も巻き込まれちゃう奴かこれ?)おはようございます会長。一人ですか?」

 

立ち止まり振り返ると小走りにやって来る真由美を待っているとニコリ、と笑みを浮かべ馴れ馴れしい…と言うか大分砕けた感じに話しかけられた。男子のほうには大分おざなりな対応だったが。

 

「ご一緒によろしいかしら?深雪さんとお話ししたいことがあるので」

 

「それは構いませんが…」

 

「そう?じゃあ歩きながらお話ししましょうか」

 

そう告げ四名で歩き出す。

真由美の用件は深雪を生徒会へ勧誘したいため生徒会室で一緒にランチを取りませんか?と言う提案でありその事に深雪は難色(実際にはやや俯き加減)を示したが真由美がそう言った偏見差別を持つ人間ではなく寧ろ気に入った人物なら身内に入れてしまうような寛容性があり達也も含め生徒会室でランチを取ることになった。

 

「それと…朔也くんも生徒会室で一緒にランチをしない?貴方ともお話ししてみたかったの」

 

二人を誘ったついで、という意味ではなく来て欲しいと社交辞令ではない誘いが会長自らの提案を断るわけには行かなかった。

 

「…わかりました。では相席させていただきます」

 

◆ ◆ ◆

 

昼休み。

俺は昼食に誘われた雫とほのかに断りを入れ深雪と共に生徒会室の前に向かうと達也が既に待っていた。

その顔はあまり乗り気でない、と言うことが見られ苦笑いする。

 

(まぁ…この時点だと達也はあまり十師族に関わりたくないわな)

 

全員が揃いドアノック(正確にはインターフォン)を深雪が行いスピーカーから真由美の声が届きロックが解除され室内に入室すると真由美、摩利、鈴音、あずさが席に着席しこれから昼食を取ろうとしていたのか机の上には容器らしきものは見当たらなかった。

深雪が上座に座り俺は達也と隣り合って着席し「肉か精進か」と問われたが「あ、弁当を持ってきているのでお構い無く」と断りを入れると達也達はダイニングサーバーから配膳された弁当を受けとり食事を取り始めた…その前に簡単な紹介が入った。

 

弁当を持参した、と言うことで達也が摩利へ作ったことを問いかけ「意外か?」と返され「いいえ」と返答すると見透かされた、と思ったのかなんとも恥ずかしそうに箸を進めていたが摩利が俺の弁当をみて「彼女から作ってもらったのか?」とからかうような声色で問いかけたので返答した。

 

「いや、一人暮らしなので自分で詰めてますよ?」

 

そう問い返すと何故だか深雪の表情が少しだけ翳った。何故なのだろう…?

 

食事を取り始め他愛ない会話をして大体が食べ終わる頃に真由美が本題を切り出した。

 

「こほん…深雪さん。私は貴女に生徒会に入会してくれることを希望しています。引き受けていただけますか?」

 

その事に深雪は少し思案し兄達也の筆記試験での結果を引き合いに出し暗に”一科の生徒でも追い付けなかった成績を持つ兄どうですか?”と売り込み始めたのだった。

確かに、と真由美が頷くがそれは隣に座る鈴音によって断られてしまう。

悪意、ではなくこの第一高校の規則であることを明記し謝罪したのを受け深雪は悲しそうな表情を浮かべるがルールに則らなければならない生徒会に入会するためには受け入れる必要がありそれを理由に入会を突っぱねれば達也に迷惑が掛かる、と判断した深雪は謝罪し書記としてその末席に加わった。

 

「そう言えば朔也くん、貴方は今のこの第一高校の現状をどう思っているかしら?」

 

深雪が生徒会に入会することを承諾して直ぐ様真由美が俺に質問してくる。

先程までの人の良さそうな笑みを浮かべていた同一人物とは少し差異があるような固い…上に立つものの表情を浮かべこちらに投げてきた。

 

(俺の返答しだいで達也の風紀委員入りがなくなる可能性があるから…慎重に話すか)

 

そう思い俺は思ったことを口に出した。

 

「正直…アホらしいな、と思っています」

 

そう告げると摩利が此方を鋭い目で射貫く。鈴音も此方を見つめあずさは面食らったような表情になり全ての視線は俺に注がれていた。

 

「一科だ二科だ、何てのは入学した段階での分かりやすい区分に過ぎません。その中から本当の(才能)を咲かせるのは環境もありますが本人の資質もあると多分に思います。現に達也は俺より筆記試験点数上ですしね」

 

たはは、と笑い頭を掻く。そして目を細目少しだけ声を低く告げた。

 

「その立場に甘んじて鍛練を怠るような奴はどんな素晴らしい環境であっても(才能)を腐らせる。逆に劣悪な環境であっても努力する奴は(努力)を結ぶ……蓮は汚泥の中から神々しい花を咲かせます。それと同じです。一科だから許される、二科だから許されない、って言うのをまかり通させるのは未来の魔法師の道を閉ざすことになります。差別は目に見えるものだけではない…本人の”心”もありますから」

 

そう言って俺は達也を見ると驚いたような表情を浮かべていた。

逆に真由美は俺の返答を聞いて納得したような表情を浮かべ先輩七草真由美として返答してくれた。

 

「!…そう。ありがとう朔也くん。いい答え聞かせて貰ったわ」

 

「いえ、過ぎた言葉だと思いますが…」

 

これで本来の目的は終わりか、と行ったところで摩利が手を上げ俺からしてみればこっちが本命だった。

達也を風紀委員に任命する、と言う悪ふざけの何者でもない提案をして見せたのだ。

達也は驚き深雪は目を輝かせ真由美は「それだ!」と便乗する姿をみて「コントかよ…」と内心苦笑いしていると時間がやって来て風紀委員会に所属することへの問答が流され詳細は再びここ生徒会室で行うと宣言され達也はここに来ざるを得なくなってしまった。

 

「…あ、朔也くんも放課後ここに来て頂戴?」

 

ニコニコと小悪魔的な笑みを浮かべる会長にロックオンされてしまったようだ。

どうやら俺も逃げられないらしい。風紀委員入りはこの場では避けられたが…どうなるのか。

 

◆ ◆ ◆

 

放課後生徒会室。

案の定、と言うか予定調和と言うか副会長であるはんぞー君の発言により深雪が反応し売り言葉に買い言葉、ではないがヒートアップ。達也はその場を納めると同時に深雪の目が曇っていないことを証明するべく戦いを挑む。

俺は「何故生徒会役員でない一般生徒がここにいる?」と厳しい目を向けられたがそこは割愛するとして場所は変わって第三演習室。模擬戦を行う為達也は生徒会の許可を得て預けていたCADを持ち出し取り出すとあずさが”シルバーホーン”を目敏く見つけ興奮していたが達也は少しだけ反応を見せ準備を終えて両者定位置へ立つ。

戦闘開始前特有の空気が漂った。

 

「朔也くんはどちらが勝つと思う?」

 

審判は摩利が勤めオーディエンスは俺たちの四名は直ぐ近くのラインより外れた場所で見ていた時俺を挟んで真由美と深雪が近くにおり質問された。

実力…表面だけなら服部だがそれが違う、と言うことを俺は知っていた。名前を呼ばれない者への配慮して小声で迷うこと無く答えた。

 

「達也ですよ」

 

「…!」

 

「…どうしてそう言いきれるの?」

 

「達也の重心の動かし方が武術の心得がある者の体運びをしています。自分で自己申告していましたが恐らく魔法技能が劣っているからこそそれ以外でカバーする為、でしょう。それに…」

 

「それに…?」

 

「大切な妹の前でカッコ悪い姿をあいつが見せる訳ありませんから」

 

「朔也さん……」

 

俺はイケメンっぷりを利用し深雪にウインクして見せると「くすっ」と笑みを浮かべる。

先ほどはんぞー君に言われたことで不機嫌になっていたのが吹き飛んでくれたらしい。良かった。

 

「…男の子の意地って奴かしら?」

 

「それを言うなら男の意地、ですよ会長」

 

会話をしていると準備が整った。摩利が「始め!」と開始の合図を告げた次の瞬間。

 

「「「ッ…!」」」

 

開始して数秒ほどで勝敗を決した。

達也が崩れたのではない、服部が演習室の地面へ力なく意識を失い崩れ落ちたのだ。

崩れた服部の後ろにいるのは達也だ。

 

「…勝者、司波達也」

 

達也は眼前の勝利になど興味がないように一礼し回れ右して定位置へ戻ろうとしたが摩利に声を掛けられた。

審判の摩利が見失うほどの加速で服部の背後を取りダウンをもぎ取った。疑われているが達也はきっぱりと言いきった。

 

「事前の加速魔法を掛けていない、またはCADを操作していないのはお分かりの筈ですが」

 

不快、といった感情は言葉にのせられておらずただ、それが事実であると。

それを補足するように深雪が兄の師匠が忍術使い”九重八雲”であることを明確にするとこの場に集った全員が納得する。服部が倒れたのも忍術か?と言う疑問に達也が波の合成…単一のサイオン波を緩急を付け変化させた事を説明するとそれがいかに大変な事かを一科の生徒達は驚いていた。

驚いている最中気絶していた服部が起き上がり会話を聞いていてその事で深雪に謝罪の言葉を掛けそれを深雪は受けとった。はんぞー君は達也を強気な顔で視線をぶつけ何も言わずに踵を返し演習室の扉へ向かう。

 

(一先ず、達也の風紀委員会入りは確定、か…気配を消してここから立ち去ろうかな…)

 

などと考えていると予測された…と言うか想定もしていない人物が現れ逃げ道を潰されてしまった。

 

(げっ…!?)

 

「む、ここにいたのか七草」

 

「十文字くん?どうしてここに?」

 

「少し野暮用でな…そこの二人は…新入生だな?」

 

彫りが深い巌のような男…風貌は高校生には失礼だが見えない十文字克人が現れたのだ。

視線を向けられ存在するだけで圧倒される威圧感を感じながら自己紹介を行う。

 

「俺は1-Aの紫ノ宮朔也です」

 

「自分は1-Eの司波達也です」

 

「十文字か。それにしても今年はいい風が吹くかもしれんぞ?いい有望株が入った」

 

「どういうことだ?」

 

狼狽えるはんぞー君を面白がるように先ほどの”結果”を伝える。

 

「わ、渡辺先輩…!」

 

「さっきまで服部と達也くんで風紀委員会加入を掛けて勝負をしていたんだが…服部が足を掬われて敗北してな?」

 

「ほう…?確かに身のこなしから只者ではない雰囲気を漂わせる…武術を嗜んでいるな?」

 

「良く…お分かりですね」

 

「まぁな…うむ…服部」

 

「は、はいっ」

 

そう告げると克人は興味深そうに達也を見る。達也は自然体でありながら警戒する素振りを見せた。胸元の紋章の有無ではなくそのもの個人を見据えた視線は直ぐ様敗北した、と言われたはんぞー君へ向けられた。

 

「精進しろ。服部。強さにかまけ胡座を掻くようでは足元を掬われるぞ」

 

「はいっ…!」

 

低く体の芯を打つような声色は今の彼にとっては激励なのかもしれないな、と聞いていると今度は真由美が口を開く。それは予想外の発言であり達也にとっては千載一遇のチャンスであった。

 

「有望株、と言えばこっちにもいるわよ?」

 

「?どういうことだ?」

 

「彼、達也くんが勝つって明言したんだから。すごい洞察力だと思わない?」

 

「か、会長…たまたまですからね?別に俺は…」

 

「確かに…胆力もあるだろう。昨日の今日、大勢の前に出て諌を沈めていたしな?」

 

真由美に便乗するように摩利が悪乗りする…その言葉を受け克人が此方を見て提案してきた。

 

「…それなら俺と試合をしないか。紫ノ宮」

 

「会頭それは…!」

 

服部が狼狽えるが当の本人は微動だにしない。ただ朔也を見つめている。

 

「後輩の実力を測るのも先輩の役目だ。どうだ?」

 

「…(どうだ…って言われてここで断ったら絶対変な雰囲気になるじゃん…!?ああ、もう……はぁ…仕方ない、か)分かりました。先輩の提案有りがたく受け入れさせていただきます。ただ今使用しているCADが無いので取りに行かせてください」

 

内心で余計なことを、と思いながら周囲を見渡すと先輩達は実力不明の後輩が気になっているのか視線が集中していた。同時に達也と深雪も視線を向けている。逃げられない、と判断し受け入れた。

 

「ああ。いいだろう」

 

許可証を貰い断りを入れて保管室へ向かい専用のアタッシュケースを持ち出した。

戻る道すがら思案する。

 

(今後の事もある…もしかすると”防壁”を破る必要があるからな…そう考えると此はチャンスかも知れない)

 

いいタイミングだったと自分に言い聞かせ皆が待つ演習場へ戻り先ほど達也が使っていたテーブルにCADが入ったアタッシュケースを置いて開き手に取る。

 

達也が目にしたのはおおよそ市販品ではない特化型…まるで特撮ヒーロー作品で主人公が使うようなヒロイックな銃が握られていた。

 

(なんだ…あのCADは…?見たこともない形だが…特化型なのは間違いないだろう)

 

達也の推測を他所に準備を終え定位置へ立つ。

 

「お待たせしました」

 

「いや、構わん。有望株、と言われるお前達の実力を見せてくれ」

 

手にした特化型を手に自然体で立つと審判として摩利が再び立つ。ルールは変わらずに怪我をさせない、膝を着かせるか気絶させるかのいずれかだ。達也と朔也の位置が変わっただけで先程と変化は大きくない。

 

静寂が支配し誰かが息を飲んだ瞬間に摩利の手が下ろされた。

 

「始めッ!」

 

「……」

 

さすがは十師族の一員と言うべきか。展開速度は先ほどのはんぞー君よりも早い。

克人は”十文字”家が得意とする障壁魔法を盾のように成形し前方朔也へぶつけるそれは当たれば衝撃で気絶する威力を持っていたが並みの魔法では破壊することは出来ない。そう()()()()()()()だが。

 

迫る障壁に驚愕もしなければ慌てる素振りを見せない朔也。

普段の柔和で優しげな雰囲気を一変させ抜き身の刀のような鋭利さを放っていた。

自然体で下ろしていた特化型CADを握っていた左手を跳ね上げるように構えトリガーを引いたその時想子の奔流が吹き荒れる。その魔法を達也は”視”た。

 

猛り立つ星喰らう豪腕(キャンサード)”』

 

指定した空間内の質量及び運動エネルギーを吸収し今突き出した腕を仮想質量(慣性質量のみの増加)と推進力として上書き触れただけで分子崩壊をさせてしまうほどの超質量攻撃を繰り出す加重・収束系統の魔法である。

次の瞬間朔也に接触しようとしていた障壁は放たれた深緑の豪腕に接触し破壊され突き抜け克人へ向かい突撃する。

 

(なんだ、あれは…!?)

 

「「「なッ…!?」」」

 

「…ッ!」

 

その光景に真由美達が驚きの声を上げる。

同時に克人も息を呑んだが直ぐ様別の障壁を展開し二の矢、第三の矢を放つ。その強度は単純な障壁魔法ではない…”ファランクス”と呼ばれる十文字家の秘技だ。

ぶつかり合う障壁と豪腕は互いに譲ること無く激突し次に破壊されたのは深緑の双鋏だった。

再び迫る無数の障壁を視界に納め流れる汗を散らす。

 

(強度が甘かったか…やっぱり十文字先輩の”ファランクス”を抜くのは容易じゃないか…なら!)

 

魔法を発動しながら()()()()を行い両腕を突き出す。

 

猛り立て星喰らう豪腕に(キャン)対峙した者に二度目は無い(サード)

 

「なんだと…!?」

 

再び出力される鋏は双鋏の豪腕となり倍の大きさとなる。障壁を薙ぎ払うように突進するその光景に流石の克人も度肝を抜かれたようだった。しかし彼も十師族の一員で簡単に負けるわけには行かないと強度を高めその大きさは映画館のモニター程の大きさとなる。

そして再び激突する二つの魔法……拮抗していたが最後に勝利したのは朔也の魔法だった。

 

(今だ…!)

 

突風が吹き荒れたそのタイミングで意識が逸れたその瞬間に精神干渉系統魔法(セフィロアリエス)を用いて張っていた力を抜かせる。

 

「なッ…!?」

 

知覚できない速度で放たれ無力化出来なかった次の瞬間にがくり、と力が抜け膝をついたのは克人の方だった。

想子の嵐が止み静寂が広がる…それを破ったのは審判の摩利であり勝者の名を告げる。

 

「しょ、勝者…紫ノ宮朔也ッ」

 

「ふう…」

 

額に流れる汗を拭い一息吐いた後特化型を下ろす。

やりきった表情を浮かべているが内心心臓バクバクである。

 

(マジで危なかったぁ…つか”ファランクス”迫ってくるの怖すぎだろぉ!?)

 

コンパネが迫ってくると言えばその迫力が分かるだろうか?それだけの質量を軽く軽自動車のスピードで突っ込んでこられた日には敵はペシャンコになり涙目である。

 

「あ…」

 

「ふっ…渡辺の言う通り今年は有望株が多いな…俺も足を掬われてしまうとはな。服部の事を笑えまい…」

 

「あ、いや…こっちも必死だったんで…なんかその…すみません」

 

「謝る必要はない。むしろ此方が感謝したい程だ。まさか俺の”ファランクス”を打ち破る魔法師がいるとは…紫ノ宮、今度良かったら部活連主導の訓練に参加してくれないか?いや、参加してくれ」

 

「えぇ?!あ、いや…俺で宜しければお手伝いしますけど…」

 

「そうか!ではまた連絡する。行くぞ服部こうしてはおれん。後輩に膝をつかされた、となれば俺たちのプライドが廃るぞ」

 

少しだけ上機嫌になった克人が呆けている服部へ声を掛けて演習場を後にする。

 

「…は、はいっ」

 

先程までの模擬戦を見て呆けていた服部は頷き先に出ていった克人の後を追いていき残されたのは朔也と呆然と見ていた他複数…ハッと我に返った真由美が捲し立てるように詰めよった。

 

「い、今の魔法はどういうこと!?十文字君の”ファランクス”を貫通するなんてどういう仕組み?!」

 

「…申し訳無いんですけどそれは教えられません」

 

「ッ!…そ、そうよね…ごめんなさい。私気が動転してたかも…」

 

「まぁ…そうですね。驚かれるのも無理は無いと…」

 

言及しなかったが一般生徒に十師族の一員が膝を着かされた、となれば魔法界にとっては無視できない事柄だろう事は理解していた。

 

「(迂闊だったかもしれないな…)安心してください。この事を誰彼構わず言いふらさない、と約束しますよ。それにここにおられる人達は口が固いでしょうから」

 

「…ええ。そうしてくれると助かるわ。あーちゃん、摩利、あなたもいいわね?」

 

そう投げ掛けると二人は頷く。あずさに関しては驚いている最中なのか呆然としていた。

一方で摩利は面白そうなものを見つけたような不敵な笑みを浮かべている。

 

「いやしかし…十文字が膝を着かされるとは思わなかった…今年は大量だな真由美」

 

「摩利」

 

「分かっている。引き合いに出しただけさ?此ほどの逸材を手放すのをお前も惜しいとおもっているだろ」

 

摩利の提案に真由美が「うーん」と悩んでいると「あっ」と声を上げて手をパチリ、と叩いた。

 

「そうだわ!朔也くん!貴方を生徒会長権限で風紀委員に任命します」

 

「実力は私風紀委員長である渡辺摩利が目撃し承認した、ということにしておく」

 

此が権力…!と思いっきり権力振りかざしてるじゃないか!と突っ込みたくなったが無駄だろう。

ある意味で首輪を着ける目的だろうそれを受け断る、と言う選択肢は消えていた。

 

「(やっぱこうなるのかぁ…)はい、謹んでお受けします…」

 

結局朔也は風紀委員会に所属しトラブル?に巻き込まれる事となった一方で達也は視たこともないその魔法を叔母へ報告しなくてはならない事にどうするべきか思案していた。

 

(十文字家の”ファランクス”を破り膝をつかせるとは…お前は一体何者なんだ?)

 

◆ ◆ ◆

 

◆ ◆ ◆

 

その日の夜、司波家のリビングにて。

 

「…以上が今日の朔也の行動についての報告となります」

 

まるで親友を売るような行為に達也は苦悩する。

あの場では”他言しない”という約束をしており真由美は誠実にそれを履行していたが達也は違った。

深雪も内心で苦い顔を浮かべていたが反対にその報告はまるで会社の業務報告のように受けとる真夜は微笑を浮かべ紅茶を飲みながら聞いていた。

 

「ええ。達也さんご苦労様です。それにしても十文字家の”ファランクス”を砕くとは…一体どんな魔法だったのですか?達也さんの”目”であれば解析できるでしょう?」

 

「…ッ」

 

やはり聞かれるか、と内心で焦っているとモニター越しの真夜の目が此方を射貫く。

 

「達也さん?」

 

まるで「嘘偽り無く話しなさい」と突きつけられているような感覚を覚える。ここで黙っていた方が後々問題になるか、ならば…と口を開いた。

 

「朔也が使っていた魔法は超質量攻撃を繰り出す加重・収束系統の魔法で発動したその際イメージとして出現した形は…まるで()()()()()()()()()()豪腕でした」

 

「…ッ!そうですか…達也さん。報告ご苦労様でした。ああ、今日以降の彼の報告は必要ありませんのでしなくて結構よ」

 

突然の報告の取り止めに達也は困惑した。一体なぜだ、と…一方で深雪は恐れながら真夜へ質問を許可するように願い出ていた。

 

「叔母様、質問をしても宜しいでしょうか…」

 

「?ええ。なにかしら深雪さん」

 

「その…どうして朔也さんの事をお調べになられているのですか…」

 

「?どうしてかしら?」

 

「いえ、その…彼は我々に害をもたらす人物ではない、と私と兄も思っております。ですので…」

 

「ふふふ…なんだそんなことを心配していらっしゃったのね深雪さん」

 

言葉を選び慎重に発言していた深雪を嗤う、ではなく笑うその表情は叔母としての側面を見せていた。

 

「大丈夫よ二人とも。少なくとも二人が想像していることには絶対にならないわ…四葉家当主として約束する。そうね…少しだけ話しておくけど彼には少なからず関わりがあるのよ。()()()()()、ね?」

 

「幼い頃から…?それはどういう」

 

意味でしょうか?と問いかけようとしたが真夜は白魚のような肌の細い指を唇にもってジェスチャーする。

 

「…これ以上はお話しできないわ。深雪さん淑女は秘密が多い方が美しく見えるものなの。貴女も大人の女性になれば分かるわ」

 

「…分かりました。差し出がましい真似をお許しください叔母様」

 

「いいのよ深雪さん。でも一つ確認しておきたいのだけど…」

 

そう告げると先程までの叔母としての優しさが少し鳴りを潜め…なんとも形容しがたい感情が画面越しに伝わってきた。

 

「もしかして貴女、朔也さんに…惚れたのかしら?」

 

その言葉に深雪の背筋にゾクり、としたものが走り慌てて否定した。

 

「…ッ!?いえっ…彼はどちらかと言いますと親戚の叔父様、と言ったような雰囲気でしてとても親しみやすい殿方だな、と思っておりますが…」

 

そう告げると先程まで感じていたゾクリとした悪寒は消え去り目の前の真夜は微笑を浮かべる。

 

「そう…気を付けなさい?彼は女性を惑わす魔性の持ち主ですから。…………あら、もうこんな時間なの。二人の睡眠時間を削るのは忍びないですからそろそろ終わりにしましょう。では二人とも、遅刻をしないように早めに寝るのですよ?お休みなさい」

 

そう告げ真夜から通信を終えると暗かった室内が明るくなると画面の前に立っていた兄妹二人は顔を見合わせた。

 

「一体あれは…どういう意味なんだ?」

 

「分かりません…叔母様は一体どうされたのでしょうか…?」

 

深雪の疑問は尤もだったがその解答を今の達也は持ち合わせてはいない。

同時に紫ノ宮朔也と言う友達への謎が深まった。

 

「ともあれ…俺たちが朔也と付き合いをすることに対して否定はしていなかったからな…問題はなさそうだ」

 

「ええ。そうですねお兄様」

 

互いに顔を見合わせ苦笑するしか出来なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

「…やってしまった」

 

通信を終えた後自分の姪に当たるような行動をしてしまったことに後悔している真夜。

年の離れた、あまつさえ自分の姪に”彼を取られるかもしれない”という不安の気持ちが先行してしまったことに恥ずかしくなった。

 

「ぅぅ~~~~~~~ッ!!恥ずかしい……!」

 

画面に映っていた当主四葉真夜はその通信を終えるのを確認すると直ぐ様自室のベッドに飛び込んだ。

枕とローブに顔を埋め抱き締め声にならない声をぶつけるその姿に当主としての面影は無い。

 

「でも…やっと見つけた」

 

顔を上げると自室のベッドの隣にあるローテーブルには分家である黒羽貢を遣わせて調べさせた朔也の調査報告が乗せられており彼の父親は”彼本人”ではない…そして第一高校に入学した調査対象の写真も添付されていたそれは彼女の記憶にある少年の見た目と同一していた。

そして、極めつけは甥の達也に聞いた十文字克人に膝を着かせた魔法の特徴(深緑の豪腕)の詳細を聞いて確信した。彼が戻ってきてくれたのだ、と。その事に全てを魅了する微笑みを浮かべていた。

 

しかし、そこで真夜は気がついてしまう。

彼が再び戻ってきてくれたのは嬉しいことなのだ…しかし彼は今甥と同じ高校で昔と姿が変わっていない…いや()()()()()である…と言うことを考えると先ほどまでにこにこしていた絶望で彼女は泣きそうになった。

 

そう、年齢だ。

 

(…朔也さんとの年齢差三十三…!?………ぁうぅ~~~っ!?…こ、これじゃあ只の未成年に欲情する変態じゃない…)

 

いくら真夜の見た目が若いと言っても三十代前後であり朔也はまだ十五歳(前世だと丁度見た目年齢と同年代)であるのだ。その事にショックを受けベッドに倒れ込み足をバタつかせたかと思えばバタつかせた足を下ろし静かにしていたが暫くして顔を上げる。

 

「れ、恋愛に年齢は関係ない、って姉さんに言われたり本にも書いてあった…だから問題無い…そ、そうよっ!ここまで私を待たせた…せ、責任を取ってもらうんだからっ」

 

顔を赤くしてローブを抱きながら小さく拳を握り一人決意する真夜。

早速彼に再会するために暗躍し始める。黒羽家は完全な飛び火してるのである。

不安に揺れる真夜だったが当の本人である朔也は今の見た目の真夜も好き…寧ろ良いと言って退けるほどぞっこんでありなんの不安も無いのだが…完全に彼女の一人妄想相撲状態だ。

 

「こ、こうなったら制服と変装して直接会いに行こうかしら……まだ若いし、行けるから…!」

 

一高の制服を偽名で取り寄せ中身がばれないように偽装した。

真夜は後日朔也と再会して取り寄せたことを忘れ部屋に招き入れた時其を見られその後…と明記しておこう。

 

 




構成上真夜叔母様を出せるのが最後しかない…本当にごめんなさい
真夜様オンリーの話考えないと…恐らく入学編はさらっと終わると思います。(続けばですけど)

感想に関しては返信を極力させていただきます。暖かいコメント有り難うございます。
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