助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
皆さん真夜様好きですねぇ…俺も大好きです。
色々乙女すぎる真夜叔母上を暖かく見守ってください。
※真夜様成分無いです。ごめんなさい、戦闘描写多め。
魔法詳細大分捏造してます。見辛いかもです申し訳ない。
劇場版魔法科のサントラが届いたので初投稿です。
(始まったか…!)
講堂の窓ガラスが揺れた。が朔也は動かない。
同時に多くの風紀委員会のメンバーがマークしていた有志同盟の生徒を拘束するとタイミング良くガラスが割れ発煙を上げるがビデオテープのように逆再生され戻っていくのは服部の魔法だ。
そして講堂のドアを蹴破り銃器とガスマスクを装備した乱入者達は銃を構える…が突如としてもがき苦しみ地に伏した…理由は摩利の魔法による窒息だ。
既に生徒会と風紀委員会は
(一先ず動く必要は無さそうだな…図書館も実技棟周辺に関しても達也やエリカ達がどうにかしてくれそうだし)
本命はこの後の廃工場へ乗り込む事だ…だからといって風紀委員会の仕事を疎かにするほど朔也は不真面目ではない。
摩利に問いかけこの講堂に集まった生徒を避難させるために誘導をするように、と指示を受け開始した。
達也は実技棟と図書館へ。朔也は生徒達を安全な所へ避難させる為に誘導し索敵する。
「達也。俺は皆を避難を誘導させる。お前達は別棟へ侵入した泥棒達の対処を」
「ああ。そっちは任せろ」
「朔也さんもお気を付けて」
「うん、そっちもね」
魔法科高校であっても”魔法師”というだけで戦闘を得意とするものが全てではないのだ。
突然の事に驚き、すくみ…本来のポテンシャルを発揮できずに殺されてしまうものも多くない。
事実この場で驚き動きが取れなくなっている生徒は多い…この状況で守りながら戦うというのも難しいのも事実であったので余計な被害を出す前に戦闘が行われている場所から離す、というのも立派な仕事だった。
「こっちに避難してください!焦らないで!大丈夫です!」
銃声のするなか頑丈な建造物への移動を開始させる。勇猛な風紀委員会メンバーはテロリスト達と戦闘を繰り広げていた。この世界に転生したのなら魔法を用いて無双…と考えるだろうが元一般人である朔也は必要な戦闘でなければ加入しないことにしていた。
(殺しがしたい訳じゃないからな…出来ることなら、だけど…)
もし仮に…大切な人がこのような目に会えば自分もどうなってしまうのかわからないが。
他風紀委員会のメンバーと共に生徒を逃がす。
途中でテロリストの放った凶弾が殺到するが障壁魔法を張り単一魔法で応戦する。その中には森崎もおり”ドロウレス”で見事テロリストを”エアブリット”の意識を刈り取る。素直にすさまじい技能だと感心しながら此方も遅れては行けないと単一魔法で迎撃し意識を刈り取らせる。
「(腕は良いんだよな…森崎)そっちは頼むぞ森崎」
「ッ…ああ。そっちもな」
一方は気に食わないと敵視し一方はアホらしい…と思いながらも目的が一致し他生徒を守りながら共闘する、という奇妙な光景が広がっていた。
◆ ◆ ◆
一方で達也達も図書館に潜入し非公開の魔法論文盗もうとしていた賊達と対峙する。
当然ながら賊達は盗み出すまでは成功していたが記憶キューブは達也の魔法によって”分解”され当初の目的が潰えた賊達は拳銃を向けるが深雪の魔法によって凍らせられたのを共に行動していた紗耶香が見て何もかも格が違う、と見せつけられ其に憤慨し激怒するが突きつけられた深雪の自分より劣っている兄への鮮烈な宣誓によって思考と感情を絶たれて呆けているのを生き残っていた賊から声を掛けられ逃げ出す紗耶香は同行し一階で他の襲撃者を撃破していたエリカによって打ち倒された。
後で知った事だが襲撃が失敗し指示を仰ごうと司甲が学校から逃走を図ろうとしたが一科生一年のほのか達が襲撃までの指示の一連を目撃録画しており風紀委員会の沢木と辰巳に連絡し拘束されていたのだった。
壬生先輩はエリカとの勝負に敗北し治療と事情聴取の為に保健室に運ばれ、彼女が利用されたことの発端の事を達也は知ることになった。
原因としては壬生先輩が渡辺先輩に言われたことを誤って理解していて、全ては誤解だったと言うことだ。
その瞬間壬生先輩が近くにいた達也の胸に埋まり後悔と恥ずかしさで涙した。
その光景を深雪は目を伏せ俺も何も見ていないポーズを取っていた。
落ち着きを取り戻した壬生先輩の口から「ブランシュ」の存在を聞かされ達也は案の定、と言った反応を示しており問題はその首謀者が何処にいるのかという話になる。
「奴らが今、何処にいるかと言うことになるのですが…」
「達也くん、まさかとは思うけど彼らと一戦交える気なの?」
真由美が達也に確認する。その肯定は過激なものであった。
「一戦交えるではなく、叩き潰すんですよ。徹底的にです」
その発言に渡辺先輩が食いつく。
「危険すぎる!学生の領分を越えている!」
「確かに学生の領分を越えています。これは警察に任せる案件です」
真由美の尤もらしい発言に達也は強烈な一言を突きつけた。
「壬生先輩を家裁送りにするつもりですか?強盗未遂で。それこそ当校の汚点になるかと思いますが」
その発言に十文字先輩を除く全員が絶句する。十文字先輩が達也の発言に反応した。
「警察の介入は好ましくない。だが相手はテロリストだ、下手をすれば命に関わる。俺も七草も渡辺も当校の生徒に命を掛けろ、とは言えん」
「当然だと思います。最初から委員長や部活連のお力を借りるつもりはありませんでした」
「一人でいくつもりか?」
「本来ならば、そうしたいのですか」
「お供します」
「俺も行くぜ」
「あたしも行くわ」
妹の発言を皮切りにこの場にいたレオ達が参戦の意思を固めてきた。
達也と深雪の視線が朔也へ注がれる。このまま彼らに任せても良かったが達也達が無双する光景を見たい、という願望が沸々と沸いてきたのと俺がいることで何かしらの変化が在るのではないか?と疑問に思い確かめたくなったのだ。
「…俺も行くよ。敵がどのくらいの数なのか分からないし。少数精鋭ってことで…だけど場所はどこに?」
そう告げるとカウンセラー…もとい公安所属で九重和尚の弟子である小野遥がやって来てテロリスト”エガリテ”が潜伏しているとされる廃棄されたバイオ燃料工場の位置を地図アプリに表示しマーカーが点滅する。
その距離は第一高校から本当に少し離れた目と鼻の先にありレオとエリカが反応する。
「本当に目と鼻の先じゃねぇか」
「舐められたものね」
「灯台下暗し、とは正にこの事ですか…廃棄されているということですがなにか持ち込んだりしてるんですか?BC兵器とか…」
そう問いかけると遥は首を横に振る。
「いいえ、当局の調べで連中はBC兵器を持ち込んではいないみたい。本当に根城にしてる、という感じね」
その返答に眉をひそめる。知っていた、というのに放置していたのだろうか。
「…調べは着いていたのに踏み込まなかったんですか?こんな事態になるまで?」
「うっ…」
朔也に指摘され言葉に詰まる遥、その表情は普段の柔和な表情に公安の粗雑な対応に対して怒りが滲んでいただろうが今はそんな議論をする事すら惜しいと誰もが感じていた。
視線を遥から達也へ向ける。
「突入には車を使った方がいいかな…」
「その方が良いだろう。後ろから突入することは連中も想定していることだろうからな」
「一気に突入し敵中枢を叩く…一番効率の良い方法か」
「ああ。意表を突く尤も効率的な作戦だ」
会話を聞いていた克人が頷き提案する。
「そうだな。ならば俺が車を用意しよう」
「えっ?十文字くんも行くの?」
その提案に真由美が驚く。その驚きに返答するように時克人が答え真由美へ釘を刺した。
「十師族に名を連ねるものとしてこれは当然の動きだ。だがそれ以上に俺も第一高校の生徒としてこの事態を看過することなど出来ん。これには俺が行く。真由美、お前はここに残って残存がいないか確認を頼む」
「…分かったわ。それじゃあ風紀委員長もこっちに残ってちょうだい。打ち漏らしががあったときにこまるから」
お留守番を言い渡された真由美はテロリストの巣窟へ向かおうとしていた摩利へ釘を刺すと不承不承ながらも「…了解した」と頷いた。
◆ ◆ ◆
「お疲れレオ」
「へへっ…楽勝…」
「いや、へばってるから」
「そういうなよエリカ。レオは頑張った」
閉鎖された廃工場の鉄門扉は大きくひしゃげていた。数百キロで突入するオフロード車に門扉に突撃する前に装甲魔法を展開し突入したのだ。レオは多大な集中力によりへばっていたのを気張って答えるがエリカが茶化すのを朔也が嗜めるとプイ、と顔をそらすのは自分でも言葉が過ぎたと思っているからだろう。
車から降りて工場内に突入するのは朔也と達也、深雪だ。エリカ達は退路の確保を命じられ不満げな表情を浮かべていたが適材適所だろう。
「さて…俺が先に突入して制圧する。俺の魔法は知ってるだろう?」
颯爽と歩きだしまるで近くのコンビニへ買い物に出歩くように薄暗い廃工場へ足を踏み入れる。
すると別の場所から武装したテロリストがやって来て達也は一先ず応戦することとなる。
武装したテロリストはざっとみて”五十”は下らない、一体何処に隠れていたのか、と誰かが思ったが誰も口に出さず襲ってくる悪意を撃破することに集中した。
武装した、と言っても通常戦闘を行う小銃や榴弾、そしてアンティナイトで武装していたがこの場に集う魔法科高校の生徒を相手するには武装も覚悟も足りていなかった。
直ぐ様制圧され地面に倒れるテロリスト達は呻き気を失い逆に魔法科高校の生徒は無傷の五体満足で立っており追加の増援を警戒し引き続き警戒するエリカとレオ達と分かれた達也達は先んじて朔也が入っていた廃工場へ足を踏み入れると衝撃の光景が広がっていた。
「…これは朔也さんがお一人で…?」
「ああ、これほどの人数をたった一人で全滅させるとは…四葉の魔法師にも負けず劣らずの精神干渉魔法だ」
達也の脳裏に分家の一人の女性が思い浮かんだ。良い勝負だろうと思っていると深雪も同じことを思っていたらしく疑問を口にすると達也はそれに同意した。
「…朔也さんは本当に一般家庭の突然変出の魔法師なのでしょうか…」
「分からない。だが紫ノ宮という家名は”四”の家系から発生したのかもしれないな。そうであれば納得が行くが…」
そう告げた達也の視線の先には廃工場の奥へ続くその道中の通路に此方も何処から出てきたのか分からない武装したテロリスト三十数名が”無傷”のまま…まるで寝ているように意識を失っている光景が広がる。
達也は”目”を通じて状態を探る…身体への外傷はなく脳へのダメージ…はないが脳へ残されている波形がデルタ波を示しておりまるで睡眠…いや無気力状態を引き起こしているものの脳へのダメージはない。
(コレが朔也が使う
そんなことを思っていると叫び声が向こうの部屋と通路から聞こえる。
「ーーーーーッ!!!」
「お兄様今のは…」
「銃声…やはり奥で待ち構えていたか。行くぞ」
「はい」
廃工場から男の悲鳴が聞こえ朔也のものではないことが分かるがこの事件の首謀者かもしれない。
達也達は廃工場内の奥へ走った。
◆ ◆ ◆
達也達が到着する数分ほど前。
「………」
「撃てっ!」
朔也は先んじて突入し廃工場の奥へ向かい歩き始めていると”殺気”が飛んでくるのと同時に大小の通路からわらわらとテロリストが出現し手にしたライフルを構え発射するがその銃弾は届かない。
弾丸が体に接触する前に水のヴェールがそれを阻み地面へ叩き落とす。
「無駄だよ。その攻撃は俺には届かない」
「なっ…!?」
「う、撃てーっ!」
驚きすくむ、まるで化け物でもみるような目で銃を乱射するが当然通用せずこれもまた当然、反撃を受ける。
”
「な、なんだ!?貴様はっ」
ここに来るまでの通路に別部隊を配置していたがそれを無傷で突破したことに驚いていたようだ。
しかし相手もプロらしく直ぐ様攻撃を仕掛け魔法を阻害するための”アンティナイト”を作動させる。三重にも巡らされた妨害の波が朔也を襲うが意に介せず魔法を発動し無力化する。
「撃て!!殺せ!!」
三十数名のテロリストが重火器を構えるが即座に
…ちなみに朔也は他の魔法を使えない訳ではない。使い勝手が良すぎる《転生特典》を利用する傾向があるからだ。
一瞬にして数十名のテロリスト達の重火器が凍りつき使用が不可能になる。ナイフを取り出そうし接近を仕掛けるがナイフは”
仲間が吹き飛ばされるショッキングな光景を見て驚くテロリスト達の意表を突くことは簡単であり魔法を用いて意識を刈り取り無力化していく。
その姿はテロリストから攻撃を受けているのに傷一つつかずに此方へ向かってくるのを見てみれば恐怖でしか無い。
それでも命を取らないでいるのは彼が転生者であり無用な殺生をしたくない、と思っているからだ。
「命までは取らないでおくさ。でも、まだ中に居るんだろうな…」
周囲にいた重火器をもった三十数名のテロリスト達は全て無力化され地面に転がる。銃声が先程まで広がっていた通路には静寂が広がり通路を進む。奥に行くまでに未だ時間がかかりそうだ。
奥へ進むとまさに蜂の巣をつついたようにうじゃうじゃと湧いてくるテロリストたちの持つ重火器を無効化し、近接戦闘しか出来ないようにする。接近してくるテロリストは障壁で弾き飛ばし精神干渉系を用いて無力化する。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!ぐふっ…」
この場に残った最後の一人を吹き飛ばすと情けない声を出して気絶したのを見届け転がっている銃器が使えないように再び《フリーズフレイム》を発動し氷付けにして廃工場内のテロリストの武装を無力化した。
工場内の案内図を確認しどうやらこの廃工場にもう一部屋…そこが最後の部屋らしく親玉がそこで待ち構えてるのだろう。
道中に気配は感じられないのでそのまま突き進もうとすると後ろから足音が聞こえる。
とっさに振り替えるとそこには見慣れた顔…達也と深雪が確保した道を駆け足で駆け寄ってくる。
「無事か…というのは愚問か」
「ご無事ですか?朔也さん」
二人から問われ片手を挙げる。無事であることを示す駆け足からゆっくりしたスピードへ変わる。
「見ての通り…この先にこの事件の首謀者がいるみたいだ」
「そのようだ」
達也の短い肯定に朔也と深雪は顔を見合わせる。
扉を開けるの朔也が担当し警戒しながら室内へ突入すると広いホールのような場所へ出ると一人たっている男を目視で確認する。
残りの人員はあそこら辺に隠れてそうだな…と予測を立てると朔也がこのホールに入ってきたことを感知し振り返る。
メガネを掛けた細い体躯のいかにも『革命家』といった風体。予想外の乱入者に対し余裕たっぷりに告げた。
「ようこそ、初めまして、司波達也くんそして隣にいるお姫様は妹の司波深雪さんかな?そして隣の少年は招かれざる客のようだが…まぁ良い。歓迎しよう」
「お前が”ブランシュ”のリーダーか?」
達也が問いかけると高笑いし大袈裟な手を広げ歓迎のポーズを取るが対峙する男二人は冷ややかな視線を向ける。
「…ふははっ!その通り。改めて初めまして。僕がブランシュ日本支部のリーダーである司一だ」
目の前いる自分の事は選ばれた人間だとでも思っているのだろうか?こういった手合いのインテリは話すと長くなる、と察知し要求を直球で告げた。
達也はホルスターからCADを引き抜き突きつける。
「ふむ、それはCADだね。拳銃ぐらい用意しているものかと思ったが…それにしても大胆な事だ。ここまで身を隠さずに入ってくるとは。魔法師でも銃で撃たれれば死ぬのだよ?」
狙撃を仄めかされたが達也は動じること無く朔也と深雪も身じろぎもせずに目の前の男を見据えていた。
「俺は魔法師じゃない」
「おお、そうだったね君は未だ学生だ。余りも貫禄が在りすぎて忘れていたよ」
「おしゃべりな男だ。その口八丁で第一高校の生徒を誑かしたんだろうが…俺はお前と喋っている暇など無い。一応警勧告しておく。全員隠れている者達含め全員武器を捨てて投降しろ」
そう告げると司一は愉快そうに笑い声を上げた。
「はははははっ!魔法が絶対的な力だというのならそれは誤りだよ」
哄笑と共に狂気を色濃く滲ませた笑みを浮かべる司一は右手を挙げると隠れていた武装した兵士…”ブランシュ”のメンバーである総勢五十名が出現し銃器を構える。その中にはアサルトライフルやサブマシンガンに軽機関銃…とそれだけ見れば驚異的だが。
「交渉は対等で無ければならないからね。君にチャンスを与えよう。君が此方側に着く、というのなら君たちがしてきたことを水に流そうじゃないか?君が”アンティナイト”を用要らずにキャストジャミングが出来るというのは非常に興味深い」
「……(はぁ…ここまで胸糞が悪くなるのは何時ぶりだろう…)」
達也に自信満々に告げる数々の傍若無人で身勝手な他人の願いを踏みにじる司一の言葉とその表情…自分だけが利を得れば良い、という考えは嘗て…あの大漢の
そんなことを考えていると事態は進み司一は大仰な仕草…まるで”手品師”のような外連味たっぷりにメガネを投げ捨て両目を妖しい光を放つ…”邪眼”と呼ばれる意識干渉系統外魔法を使用した。それを用いて朔也と深雪を始末させようとしたがが達也はその対処方法を知っていた為操られること無くただ可哀想なものを見る”目”で狼狽える司一は奇妙なことを口にしていた。
(そろそろ潰すか…)
「ば、バカな…これがあれば能力が向上する筈だろうッ!?」
「能力が向上する…?何を言って………ッ!?」
司一の指に在る指環…そのデザインの中に取り込まれた青白く輝く宝石は朔也に取っては見慣れたモノだった。
本来であればここで部下に撃て、と命じて達也が分解魔法を使う筈だったが文字通りそこからは
「ひっ…!?あっ…がっ…!?がぁああああああああああッ!?」
突如として司一が苦しみ始め膝を着く。その表情は苦しみその皮膚は一気にシワにまみれて老人の姿へ変わる。
周囲の武装した構成員が茫然の表情を浮かべていたがそれは次第に”恐怖”へと変わっていくその理由は司がいる場所に幾何学模様の魔方陣が展開し足元から
「なんだ…」
「お兄様、あれは…!?」
(馬鹿な……あれはっ…!?)
見覚えの在る魔方陣…それは”転召”によく似たエフェクトだった。
両腕両足は黒く変色し大木の幹のように太く爪先は切り裂かん程に鋭く背面に蝙蝠のような翼が生え広がり頭頂部には頭蓋を突き破り黒曜石のような輝きの二対の角が出現する。
そして顔は黒山羊のように変化するその姿は邪教徒達が崇める”
(なんでこいつが現実世界に出てきてやがる…!?)
その姿を知っている。
その能力を知っている。
TCGアニメ…”バトルスピリッツブレイヴ”に登場する山羊座の十二宮Xレア、魔羯邪神シュタインボルクだ。
「ーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「「うわぁああああああっ!?」」
身の毛もよだつような地獄からの叫び。
それを発した瞬間に構成員達が逃げ出すがその一人が”悪魔”の伸ばした手に捕まれた。
「何を…!」
味方を身動き取れないようにしたその行動を見て達也は次起こることを”予想できてしまった”のだ。
「お、お兄様ッ!?」
突如として達也は視界を遮るように深雪を抱き締める。
「ッ!?深雪見るな!」
次の瞬間、捕まった構成員が変化した司に首から喰らわれ噴水のように吹き出すそれは噴水のようだ。
「や、やめっ…!ぎゃああああああッ!…あ…」
頸動脈から食い契られた男は息絶えそこから全身を食い尽くされソコには血溜まりしか残らなかった。
それを見た構成員達は銃を乱射するもの、逃げ出すものがいたが”悪魔”にはそれが通用しないのは当然だった。
「ッ…なんと惨い…ッ」
おぞましい光景に深雪は思わず口元を押さえたが淑女として必死に堪える。それよりも目の前の”悪魔”に対してのおぞ気が勝った。
(なんだあれは…身体を構成する情報体が見えない…?!)
達也は”目”の力を使うが目の前の化け物の情報を入手できていない。
目の前に実体はあるが
(幻術…!?だが質量はある、だが実体がない、だと…?)
(くそっ…面倒なモノを…!)
逃げ出すもの、銃を乱射する構成員だったが出現した悪魔によって皆殺しにされ廃工場の地面はどす黒い血の海へ沈む。一方で朔也は目の前に出現した”シュタインボルク”に意識を向ける。別の事への意識が勝っていた。
(この世界に”シュタインボルク”がいるってことは誰かが”召喚”したのか!?それよりもあの効果を魔法科世界に能力を落とし込むとなれば面倒な…!)
その厄介さを朔也は知っていた。だからこそその能力を”通常の魔法”しか使えない達也達では対処しあぐねる、と感じとり行動を移した。
「ーーーーーーーッ!」
「ッ深雪!」
「お兄様ッ」
咆哮を上げ怪物が動き出す。狙いを深雪に定めた。
男を喰らい身体が妖しく光ると手にしていた蛇が絡み付く錫杖を天に掲げ深雪へ目掛け振り払うそれは達也の魔法”術式解体”によって破壊される。
「ーーーーーッ!」
攻撃を無力化され怒りを見せているのか邪教の主は魔方陣を複数展開し攻撃を仕掛ける。
放たれた邪悪な波動は先ほどと同じ魔法で在ったため打ち落とし防御する…しかし直撃を受けていないにも関わらず
「こいつは一体…!?」
魔法を無力化する”術式解体”を使っているとは言え莫大な想子量を備えている達也はこれが異常なことであることを感じていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
そして隣にいる深雪も肩で息をして額には汗が滲んでいる光景は明らかに疲弊している。
迫る魔法を打ち落としながら達也は敵へ”目”の力を使った。
「これは…!」
邪悪な波動…それは既にこの場を支配していることを理解した。
これは系統外の魔法であり”想子”に干渉しているのだ、と。
障壁越しであったとしても想子は魔法師に密接に関係しており対峙する相手の肉体・意識に関係している想子に直接干渉する精神干渉系統魔法…魔法を発動した瞬間に、あるいは行動を起こした瞬間に必要な想子に干渉し
(ちっ…!やっぱり”コアシュート”…魂、または想子に作用してるのか!?)
(朔也がいる所で使いたくはなかったが…やむを得まい)
達也は一瞬迷ったが”分解魔法”を用いて排除することを選択しようとするが実体の無い…情報体が読み取れない化け物相手に対しては放たれる魔法を無力化することしか出来ず黒山羊の化け物は狙いを達也達三人に狙いを定め放たれる攻撃を達也は攻撃を分解し深雪は障壁を張って受け流す。
人数は此方の方が多いが敵が使う宙に浮かぶ無数の魔方陣によって放たれる攻撃の方が手数が多かった。
そして魔法の特性により押し込まれ劣性に立たせられる朔也達。
(こいつは…キツい…だがここで”コレ”を切らないと全滅、する…!)
「ーーーーーーーッ!!」
悪魔の眼が妖しく輝くと同時に体に纏う邪悪なオーラが一層輝きを増した。
今一度錫杖を大きく振るうと放たれた三日月上の波動が達也達へ襲いかかる…その前に”魔法”と言う力を現実とするために”実体化”した怪物に達也は狙いを定め”霧散霧消”を放ち肉体を大きく損傷させる。ようやくここに来て攻撃が通ったのだ。
「(通じた…!)なっ…!」
右腕を大きく抉られた”シュタインボルク”が咆哮を上げる。
削られた右腕の断面図は黒い靄が吹き上がっており痛みを証言するように咆哮を上げていたが残っている右腕の錫杖を血の海に沈む”ブランシュ”の構成員の死体を分解し吸収する。
(トラッシュ回収…!
「ッ!?」
分解され血煙となった死体を吸収し抉り取られた右腕が元通りに復元された。
(元通り、だと…!?”再成”…いや違う…物質を変換して身体情報に置き換えているのか?…くっ、不味い…身体の想子がコレほどまでに不足するとは…!)
想子を奪い取るこの”フィールド”は三人の能力を著しく低下させている。
「ーーーーーーーーッ!」
腕を抉られた怒りか達也…ではなく深雪に目掛け放たれる逆月。直撃すればどんな結末になるのか朔也は理解していた。
あれは喰らってはいけない、と。
(不味い…あれを喰らったら達也は文字通り”死ぬ”…!)
恐らくあれは”魔力減衰”の出力を引き上げたものであり剥奪した想子を、疲労(リザーブ)ではなく情報空間の彼方へ完全に霧散・散逸(トラッシュ)させられる…あの攻撃を受ければどんな魔法師も想子プールが空となり魔法師としての活動が一時的…いや脳の魔法演算領域が焼き切れ永久に
達也の”術式解散”が魔法式を分解するのに対して此方は
「深、雪っ!」
あの攻撃を喰らってはいけないと達也も理解していた。避けるべきだ、と警鐘をならすが彼が守るべきは深雪で在るそれを守るために動くが兄である自分が死ねば妹は悲しむだろう、と容易に想像できたが達也は兄でありガーディアンである。深雪の命を守るのは何よりも最優先された。だが、それすら行動に移せないほど想子が枯渇し前に立ち壁になることしか出来ず抱き締め攻撃をから守るしか出来ない。
達也と深雪が諦め掛けたとき二人の前に影が飛び込む。
『
朔也は自らに精神干渉…自己暗示を掛け達也達の前に立ち気だるい体を奮い立たせ残った想子を用いて”最硬の防御魔法”を発動する。
『
その魔法能力は隔絶した防御機能を持つ。
そして先程まで追撃を行おうとしていた”シュタインボルク”の攻撃中断するそれはこの空間そのものの
そして属性(ここでは朔也が対象とするメンバー”魔法師”を対象)を共有する達也と深雪に”魔法障壁”……その者達へ情報強度を極限まで高め”超重情報装甲”と言うべき能力を付与させる。
「コレは…!」
達也は驚く声を上げる。コレもまた見たことの無い魔法だった。
ここで”アクア・エリシオン”は四つの物理、概念装甲を持つ事象領域固定魔法(領域干渉)である。
赤(熱・振動)紫(精神・精神干渉)白(物理・空間)青(概念・次元)。
今回”シュタインボルグ”が放った魔法は紫に該当しこの攻撃を弾き返し無力化したのだ。
回復を封じられた”シュタインボルク”は身動きを取ることが”アクアエリシオン”により封じられ”リブートコード”によって回復した朔也のターンが回ってくる。
放たれる筈だったその攻撃は無力化されたが
「お前一体しかいないからブロックは出来ねぇだろう…!行けっ!!!」
『
放たれた
「ーーーーーーーーーッ!?!?」
慟哭が残響のように廃工場に響き渡ると同時に先程までの騒ぎが嘘のように静まり返る。
幻だったのか、と問われればそれは嘘ではなく地面には血溜まりと切り刻まれ呪い殺された”ブランシュ”の構成員と干からび老人のようになって事切れた司一が転がっている。
「……やっぱりか」
消滅しその場所にキラリと光るのを見つけふらつく体にムチ打ちながら先程まで”シュタインボルク”がいた場所…司がいた場所に近づき膝を下ろす。
ソコには光り輝く宝石…ではなく”コア”が輝いていた。
それに手を伸ばし掴み確認してからポケットに仕舞い立ち上がったその時だった。
(あ、ヤバイ…)
次の瞬間に身体がふらつき意識を保てなくなる。
無理もないのは”シュタインボルク”の魔力枯渇の影響下に在りながら上級魔法を二連発で使ったことに在るからだ。
そもそもの想子保有量を神様にお願いして達也並みに増やして貰っていたがこの状態になるのだから相当厄介な能力だったらしい。それと同時に自分が保有する魔羯邪神の能力が
(紫の属性は趣味じゃないんだけどなぁ…まぁ使えるか。ま、それはさておき達也と深雪が無事なら、いっか…)
多少動けるまで回復した二人が此方へ向かっているのを確認して背中に固い感触がぶつかったのを最後に意識が暗転した。
次回で入学編最終回。
感想評価お待ちしております。