お知らせが2つ。まず皆様のご意見を考慮しアンチヘイトタグをつけました。コナンでコレつけると極端な嫌われに見えそうなんだけど
もう一つはpixiv投稿分に追いついたので投稿速度は超低下します。申し訳ない
あの後私達は病院に連れてかれた。重傷のコナン君は救急車で搬送され、私は自身の車に乗ってだ。コナン君はそのまま手術室。蘭ちゃんも毛利さんも心配してるようだ。蘭ちゃんが輸血を決意した顔で申し出ていたのが印象的であった。
道中からここまでMs.Hermitこと灰原哀は私に対して敵意にも似た警戒心を感じた。子供たちはコナン君は大丈夫だよねとワンワンと泣いていた。目の前の強盗団という脅威が過ぎ去ると子供たちは興奮状態が一度収まり負傷したコナン君の容体に気をやっていた。
「大丈夫よ。彼はここでは死なないわ。私、未来人だからね」
「占い師のお姉さん⋯⋯」
彼の命運はここで尽きてないから⋯⋯という私しか感知できない事実なんだが彼ら相手ならこういうのも安心させる方便と映るだろう。そんな私を灰原哀は怪訝そうに見ている。
「そんなに見つめられると照れるわね。ところで灰原哀ちゃん、私にばっかり気にかけてないでコナン君の心配はしなくていいのかしら?」
「もちろん心配よ。貴女こそ随分と余裕そうね。まるで最初から全部わかってたみたいに」
私と灰原哀が互いに牽制しあっているとそんな私の首根っこを掴む影がある。そしてその腕は徐々に入れる力を上げていき私をそのまま待合室から外に連れ出していく。
手の主は萩原千速警部補。神奈川県警の交通機動隊に勤めるお巡りさんだ。萩原研二君の姉であり幼少期の私ともかかわりがある人である。もっとも幼少期の違う学年、クラスメイトの姉などそこまで知っていることもないので主な付き合いは成人後である。そんな彼女が私を連れ出したかと思えば壁に押し付ける。
「来てくれて助かったわ千速さん。応援が早く着いたのは千速さんのおかげかしら」
「明日谷、どこまでが貴様の掌の上だ、少年が傷つくのもお前自身が傷つくのも⋯⋯すべて織り込み済みだったとでも言うつもりか」
その表情は怒りと悲しみが入り混じったような瞳だ。さてなんて答えたものか。自分の目的を通すために少年を傷つけたと正義感の強い千速さんなら思っている事だろう。まあなら思い込みに乗っておくのが無難だろう。余計な詮索も煙に巻ける。
「だいたい視えてたわよ。千速さんが来るのは少々想定外だったわ。萩原君と松田君に唐突に不自然な連絡をしたからもしかしたら来るかもしれないとは思ったけれど。あの洞窟に強盗犯がいて少年たちが巻き込まれるのも視えていたわ。まあそれくらいはあのメモを見たらわかるわよね」
押し付ける手に力が入る。気に食わない答えだったようだ。
「ならなぜ貴様が傷つきに行った。いや貴様の事だ。ただで人助けはしないだろうから何か目的があったはずだ。研二たちを誘ったのも暴力沙汰が解っているからだろう。だったらなぜ決行した。すべてばらせばアイツらは手を打っただろう」
「⋯⋯さあ、どうかしらね」
⋯⋯本当に面倒な人だ。
萩原君と松田君の死の運命を塗り替えた後に二人から私の事を聞きつけたのか彼女は会いに来た。
『占い師リンネとはお前か』
『ええ、私よ。それなりによく当たるってここらへんじゃ評判らしいわね』
『弟、萩原研二と松田陣平を助けてくれて、礼を言う』
彼女は路端でいつもの格好で怪しく営業している私に頭を下げていた。比較的長身で萩原君のような整った顔で清廉とした雰囲気を纏っていた。やりにくいし苦手だと直感的に感じた。
『前言を翻すけど占いなんて当たらないものよ。萩原君も松田君も自分で変えたのよ』
『そうだとしても二人の恩人には変わりないさ。だからこそ』
そそくさと切り上げようとした私の手が掴まれる。有無を言わさない雰囲気が漂っている
『貴様がそんな目でこんな仕事をしているのが気に食わん。いずれ日の光の下に引きずり出してやる』
それ以来何かと気にかけては来るし、その度にお小言を頂戴している。彼女にとっては萩原君にまとわりついてやんちゃしてるガキみたいに見ているのだろう。
⋯⋯私は彼女の事が多分嫌いだ。嫌いと一言で表わすには少々複雑で屈折しているが一言で表現するなら嫌いであってると思う。私の人生に付きまとう呪いと救われなさ、育まれた人生や死生観において彼女は配慮(諦め)がない。
もっとも彼女ともっと早く出会っていれば私の性根もいくらかましであった可能性もある。出会った時期が更生するには大人になっており、適当にあしらうには私はガキ過ぎた。
銃撃されて入院した俺は、起きた後おっちゃんに蘭からの輸血で助かったことを教わった。最近蘭に俺の正体が気づかれているんじゃないかと思っていたがこれはもう確信していいだろう。蘭は俺の正体に気づいている。
昼間に来ていた服部にも相談したが⋯⋯これは年貢の納め時という奴だろう。⋯⋯蘭に言うっきゃないか。
「悪いわね。どうやら私の中にはまだ、冷たい黒い血が流れていたみたいだわ」
ベッドの上でそう考えていると俺の頭部を狙う様に突き付けられる銃口。灰原が冷たい顔で俺に銃を突き付けていた。
坏戸シティホテルでの一件、あの時にピスコ以外の黒づくめの仲間に正体がバレていて居所を突き止められた。組織への復帰の条件は俺を殺すことらしい。ピスコ以外の黒づくめの仲間⋯⋯あの現場にいて疑わしいのは明日谷リンネか。今の灰原の言葉を信じるなら疑わしいのは彼女だ。
灰原が銃の引き金を引く。
俺の眼前に白薔薇の花束が拡がる。
まあこの話は灰原のでっち上げで釘を刺しに来たらしいのだが、そのでっち上げのリアリティを格段に上げている存在がいた。
「工藤君、あなたに選択肢は3つ⋯⋯と言おうと思っていたのだけれど」
「貴方は今選択できるほどの余裕はないわ」
「⋯⋯リンネさんか」
洞窟探検で彼女は俺の事を守ってくれていたが灰原に確実につなげるまで守りたかっただけともとれる。俺の幼児化から灰原の幼児化について気づいている可能性もある⋯⋯いや、まさか。
「灰原、お前」
「ええ、さっき言った話はもしもなんて話じゃないの。もう私達の首元まで来ている可能性があるわ」
「おそらく彼女は私の事も気づいている」
そう言って灰原が懐から出したのは隠者のカード。これを洞窟探検の間、灰原が彼女の荷物を漁ると通報するように指示するメモとコレが出てきたらしい。隠者、まさしく今の灰原を表すカードである。であるならば洞窟の事件も仕込みだったのだろうか?
「灰原、リンネさんは、明日谷リンネは組織の人間なのか?」
「分からないの。彼女から組織の人間の冷たい感じはしないの。⋯⋯だけれど彼女が組織と繋がりが無いとは断定できないわ。外部の探り屋かもしれないし」
「だから貴方が工藤新一であるという彼女の中での前提を崩さないといけないの。私の為にもね」
帝丹高校文化祭。なんで私みたいな不審者が高校の文化祭に来ているのか。あのあとポアロで蘭ちゃんや園子ちゃんが話しているのを聞いていたら何故かコナン君が誘ってきた。文化祭ってリンネお姉さんもお仕事の営業が捗るんじゃないって。
それに反応した蘭ちゃんや園子ちゃんから誘われる。どうやらコナン君は私を文化祭に招きたいようだった。⋯⋯ならその企みに乗ってあげようかしら。というわけで私は帝丹高校に来ているのだが⋯⋯
きゃああああ
⋯⋯なんでこうなるのかしらね。
蘭ちゃんと園子ちゃんのクラスの劇。仮面をかぶった黒衣の騎士がお姫様役の蘭ちゃんを助けに来るシーンに突如響いた悲鳴。上映中はお静かにって言われていたでしょうなんて一観客としては愚痴の一つでも零したくはある。
そんな死の運命に引き寄せられていた人いたかしらとも思うが、注視してみない限りいくら私でもわからない。文化祭の演劇の観客、百人規模の人間をいちいち注視しているはずもない。
解放もされないし退屈な時間だと思っていれば私の耳に予想外の声が聞こえた
「オレや、オレ。工藤新一や」
思わず顔を向ける。毛利さんの隣にはコナン君。そして高校生くらいの工藤新一を名乗る少年。
頭の中が混乱し即座にヴィジョンを頼ろうとしたがそれより手早く彼の正体はあらわになった。彼は服部君という工藤君と同じ高校生探偵らしい。正直顛末としてはお粗末だがきっとこれ自体は服部君が気を利かせた物のように感じる。
コナン君はこの場で工藤新一であることを否定したいんだろう。ターゲットにはおそらく私も含まれている。
面白いじゃない。ラブロマンスより私好みよ。
事件は観劇に来ていた医師が毒物で殺されたらしい。容疑者は病院勤めの3人の同行者と、院長の娘で飲み物を売っていた生徒。しかも殺された医師と娘さんが婚約をしていたらしい。
なかなかに人間模様が複雑な事件だ。娘さんが婚約を解消したとの話が浮上してから事件は自殺へと結論が傾き始めたところで喋りだしたのは黒衣の騎士だった。
「いや、これは自殺じゃない。きわめて単純かつ初歩的な、殺人です」
注目が黒衣の騎士に集まる中彼はその仮面を取った。その顔は私も知る工藤新一のものであった。
成程。これが君の見せたかったモノねコナン君。
とっさに周囲の顔色を伺う。服部君は完全に驚いている。これは工藤君が現れたという驚きと同時に困惑してコナン君と工藤君を見た。という事は彼の頭は今私と同じ状態。そして同じ目の動きをしたのは蘭ちゃん。
服部君は稚拙ながら工藤君の助けになろうとしたことから、この仕掛けは私と蘭ちゃんに向けてだったという事になる。
次に目を向けるのはコナン君。マスクをしているが顔立ちはコナン君だ。しかも彼の今の体躯を模倣するのは現実的ではない。しかし違和感はある。このコナン君は周りをじっと見つめているが現場をちょろちょろと動き回ってはいない。まあ風邪をひいているようだし病み上がりだ。ちょろちょろしてないからという決めつけはいささか早計だろう。
工藤君は推理を披露し続けている。時折群衆の中にいる私と目が合うのは私の出方を伺いたいからだろう。蘭ちゃんにも小声で何か話していたし。
⋯⋯まあ未来を視ればこの細工の答えは分かるのだが、それは少々無粋かしら。せっかく頑張って用意してくれているんだし勘弁してあげよう。
推理も終わり犯人は警察に連れていかれた。工藤君は事情聴取に付き合うか聞かれていたが体調が悪そうでそれを断ると身体を崩れさせる。そんな工藤君をみんなが心配するように取り囲んでいく。それとは逆行して私は煙草を吸いに体育館を出ようとする。そんな私を監視するようにコナン君はついてきた。
「風邪悪くするわよ。コナン君」
「それにしても工藤君帰ってきたのね。私の勘違いだったかしら」
コナン君は鋭い視線を私に向け続けている。
「早く戻りなさいな。無理しているんでしょう。おなかの傷から退院したばっかりで風邪までひいちゃってたからか」
「今日の君、とても静かでお行儀が良かったわよ」