色々と食い違うところはあれど、超かぐSSお初なのでお目こぼしをば……ヨヨヨヨ……
全てはハッピーエンドを迎える為。
どれほど時間がかかろうと、私は必ず――かぐやにまた逢うんだ。メリーバッドエンドなんて認めない、完全無欠のハッピーエンドでないと。
だってかぐや自身が言ったんだ、バッドエンドはやだハッピーエンドがいい、私がいろはをハッピーエンドに連れていくって。
そう、立ち止まる暇はない……んだけど。だけど、どうしよう。
奇態な色の封筒を前に、私は今途方に暮れている。
何をするべきか、というかどうすればいいのか。このかぐや宛の督促だか催告だかは、放っておいたらとんでもない事態になるのではないか。
……どうしようかなぁ、気が重いにも程がある。
一人になっても、変わらず時間は過ぎていく。きっと8000年前から、それはずっと同じだろう。
かぐやと過ごした日々から一年ほど経ち、身の丈に合わないタワマン暮らしに少しだけ気持ちが膿んで来はじめている。私宛に送ってくれたふじゅペイ
のお陰で生活費には困らない、昔のように身体を壊しながら頑張る必要は無くなった。
とは言えここは広すぎる、いっそ住み慣れたあのアパートに戻ろうかな。なんてふと思ってしまい、様子を見に懐かしの家路を辿ってみたのが数日前。
築年数が経過しても建家は特に変化なし、カーテンもない窓を見る限り新しい住人も入っていないようだ。去年は突然出ていった訳だし大屋さんに挨拶だけでもしておこうかな、と元マイルーム前に立って。私はふと気が付いたのだ、郵便受けの異常に。
「ん、……あれ」
誰もいない筈の部屋なのに、郵便物がかなり溜まっていた。紙質的にどうもDMではなさそうだ、と覗き込むと僅かに見えたのは「酒寄」の宛名。
「え、なんでこっちに……あ」
一瞬だけ考えた結果は、かなり間の抜けた結論。私、住民票移してないや。
引っ越し自体、KASSENの時とっさに思い付いたようなものだ。いくらライバーで稼げたからってそれが続く訳じゃない、短期で出ていくことになるかもしれないし、それにバイトやら何やらの合間を縫ってお役所に行くのめんどい。めどい。
……なんて考えで放置したのだった、横着したな過去の私。まあ本籍地も未だ実家だしなぁ、それで不便もないけど。
住民票の所在地に来る郵便物なんて、お役所絡みだけだろうな。免許もないし、大したものでもあるまい。
勝手に抜き取るのも憚られるし、大屋さんの所行って茶飲み話がてら取らせて貰おうか――その時はそう、軽く考えていた。
そこから私は、何度もこう思うのだ。いっそ無視するべきだったかもしれない、そういう風に。
「え。……ふじゅ~って贈与税かかるの……!?」
持ち帰った珍しい色の封筒を開けて、しばし絶句。再起動を経ても、たぶん私の瞳孔は全開だ。
どうもふじゅ~は仮想通貨扱いで、贈与分が年額110万を越えると課税されるらしい。……うん、そんなもん余裕で越えてるわ。
そして、そして。かぐやがライバーとして稼いだ分の所得税も、勿論発生していた訳で。申告していない分の追徴分も、当然。
「そもそもあいつに戸籍なんかあるのか……って住民票上私の養子になってる……!?」
確か本来は、二十歳過ぎないと養子縁組みなんか出来ない筈。……しかし、だ。あれは謂わば限りなくAIに近い存在。銀行のデータを書き換えるとか言ってた事もあるし、住民基本台帳が電子化された現代では戸籍の捏造くらいなら朝飯前なんだろう多分。どうやってツクヨミにアカウント作れたのか謎だったけど、そういう事か。
いやどうせそこまでやるなら、こんな面倒事を残さないで欲しかったな。
しかしこれは、不味いぞ。法律上保護者である私が、これをどうにかしなければならない。
でも金額が、余りにも大きすぎる。残金の大半が消える、下手したら足りない。ライフラインは何回か止まった経験あるけど、あれは金額的にはそこまで大きくなかったから一括入金できた。でもこれは……うーん。
お兄ちゃんローンはもう限度額いっぱいで無理だし、まさか実家頼りたくないし。
さて、どうしようか。
……どうしようかじゃないな、うん。封筒に書かれた番号をタップで打ち込み、私は背筋をただして覚悟を決める。
逃げ道がないなら、私は逃げない。向こうだって鬼じゃない、支払い猶予とか減額申請とかも出来なくないかもしれない。
交渉はしておくべきだ、言葉を持つ現代人として。
…………………………
……………………
………………
……………
……ふう。
修羅場は数をこなすと楽しみに変わる、とはよく言ったものだ。途中からだいぶ熱くなってしまった、私って意外と演技派かも。
被り続けた優等生のガワは、まだ剥げきってない。恥も外聞も棄て、一人の苦学生となりお役人様と話し合った。
電話口では話がつかず向こう様まで赴き、全力で泣いてすがって歯茎を剥いて。連日必死で訴えてようやく円満な解決案を提示して頂き、戦い疲れた私は一人リビングに転がっている。
一週間、ひたすら頭を下げ続けた結果。なんとか現実的な額を現実的な期間で分納する算段が付いたし、親へと連絡がいく事も恐らくはない。
しかしまだまだ不安材料は山程ある、なんならまた変なトラブルがどっかから転がってくる可能性もある。家賃もいい加減辛いしやはりここは引き払おう、余分なものは売り飛ばして良し。
とりあえず今は休んでおこう、今夜は久々にツクヨミでヤチヨに愚痴る事にする。
そして明日は、明日の分頑張ろう。それでいい、それがいい。
いつになるかわからないけど、また逢えたらお説教してやるからね。きっと他にも色々増えるぞ、8000年分とまではいかなくても長い話をブチまけてやる。
月に帰ったっきりのかぐや姫、精々覚悟なさい。
「……ごめん、いろP。ヤッチョには合法的にそれを一挙解決する術がないのです」
「非合法なら出来るって事かな?」
「んー……ツクヨミを危機にさらしたくないんだけどなぁ……」
「何やらかす気なのよあんたは」
かぐやとやっちょんの人格に関しては……えーと……あんまり理解が及ばなくて……。
あ、重めの督促状が来てからあれこれ泣きついても本当はダメです。意外と泣き落とし聞きません、それより実現性のある納付プランを作らされます。
ライフラインはガス電気はともかく水道だけはそう簡単にはとまらないよ!おばちゃんは昔止まったけどね!