オラリオに流れ着いたのは間違いでしか無いだろう   作:Astrad

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 因みに、最近紫音は人形を使って物理的に人手を増やしています。ベルが酒場のウェイターになったおかげで客が更に増え、色々と個人的に動く必要が出て来たので人手が足りないからです。
 ミア母さんは人件費変わらずに人手が増えたので何も言いません。シルはヘスティアに正体がバレないようにするだけで精一杯です。


助走

 翌日、私はヘスティアに先導されてヘファイストス・ファミリアの本拠に向かっていた。

「にしても、君がヘファイストスに依頼があるって予想外だよ。君、大体の物は自力で作れるでしょ?」

 頼られて嬉しそうにピョンピョン跳ねながら、後ろにいる私に対して見透かしたように質問を投げかけてくる。ふむ、鍛冶神との付き合いからの観察眼か?それとも、純粋に神としての眼力か?

「ええそうですが、流石に私にも手に負えない物はあるのですよ。普通の武装ならともかく、神造兵装一歩手前の物を弄るとなれば、鍛冶神に任せないと壊しかねないので」

 特に何も考えず、直球で質問を返す。ヘスティア神と話しながら今後の事を考える。まず最初に来るのは、リリルカの一件があり、その後にミノタウロスでランクアップという流れであったはずだ。

 

 しかし、今の彼はかなり強い。技術を一学んで六知ると言う程にはあるが故に、ミノタウロスなら特に苦戦しないだろう。いっその事カドモス位連れてくるか?それとも連れて行くか?そんなことを考えながら、紫音はヘファイストス·ファミリアが構える店に着くのであった。

 

 「おーい、ヘファイストスー。客を連れてきたよー!」

 何時もより早く来たヘスティアが開口一番に宣ったのは、そんな言葉であった。顔を上げてみれば、腰に神造兵装を下げた青年が1人。ヘファイストスは度肝を抜かれる。しかもそれは此方の世界に降ろされた物ではなくあちら側にある筈の物。

 

「いらっしゃい、ちょっとヘスティアを借りてもいいかしら?」

「ええ、構いませんよ」

 平静を装いながらヘスティアを有無を言わせず、裏に連行する。

「ちょっと、何するんだよヘファイストス!」

「どうしたもこうしたもないわよ!!彼一体何なのよ!」

 慌てふためく彼女に対して、ヘスティアは自信たっぷりに答える。

「僕のベル君(眷属)に稽古をつけてくれている子だよ、まあちょっと変わった所もあるし、あっち側から流れてきちゃった子らしいけれど、根はいい子だよ!」

 

 ヘスティア神は竈火の神、平穏・安寧・家庭を司る、悠久の聖火を司る処女神である。故に、彼女の前で悪意を隠すことが出来る者は存在しない。少なくとも、人間であれば不可能である。紫音も然り。故に、ヘスティアからの善人である、という保証を成される事はギリシアの神々の間では最上級の保証とされる。

 

「あちら側ってねぇ...まあ、あなたが良い子っていうのなら問題はないんでしょうけど。まあいいわ」

 ヘスティアを連れて店内に戻る。彼が如何なる依頼を成すか判然としないが、彼女の紹介であるのなら話は聞かなければならない。

 

 店内で商品を見ている青年に声をかける。

「待たせて悪かったわね。それで、私に依頼したい内容は?」

そういうと、彼は異空間から一つの大剣を取り出してこういった。

「この大剣を、概念を損なわずに長剣に作り替えて欲しい。そして、可能であれば幾つか組み込んで頂きたい」

 彼が手にしている大剣に、彼女は見覚えがあった。それは人の執念の結晶。人の尺度においての遥か昔、神なき世界(人理の内海)にて数少ない残っていた高位の幻想種、一角獣を乙女を以て誘き出し、共に炉へくべる事で神鉄を成し、鍛たれた奇跡の具現。死なざる者に死を与える聖典。

 

 そして、彼が差し出した材料にも見覚えがあった。そして、納得がいった。確かに、これは鍛冶を司る神(ヘファイストス)にしか出来ないと。ゴブニュにも長剣へと作り替える事は可能であろう。しかし、”これ”を組み込むには零能の身には不可能。何故か彼が所有していたクリロノミアの提供がなければ断るしかなかっただろう。

 

 彼の依頼を引き受け、前金代わりに置いて行かれた数十枚のカドモスの被膜と大量の魔石を八つ当たり気味にヘスティアに運ばせながら算段をつけていく。

「どれだけ頑張っても1週間以上かかるわね...」

 

 

 その日の夜、神ヘスティアとベル・クラネル、そしてベート・ローガとリリルカ・アーデという世にも奇妙な一行が同じ部屋に座していた。

 

 「疑うようで悪いが、ベート殿とヘスティア様。2人の話している事に空白だったり虚偽の事実はないという事でよろしいか?」

「うん。2人の話している事に嘘はない。竈火の女神として保証するさ」

「正直、こいつらの頭がおかしい様に思うだろうが、事実だし空白もねぇ」

 

 何があったのかと言えば、原作のアレだ。リリルカ・アーデの加入イベントだ。だが、色々とソーマ・ファミリアはミステイクをやらかした。

 

 第一に、ソーマ・ファミリアの凶行はベートにはっきり視認されていた事。最近はABCを教える必要はなかったので、気に留める程度で同行しているわけではなかったようだが、運よく凶行を目撃したようだ。

 

 第二に、ベルは強い事だ。自慢ではないが、ベルは強く育っている。付与魔法も既に使いこなしているし、恐らくレベル2相手に戦ったとしても勝利を収める程だ。そんな彼が苦戦する筈もなく、あっさりとリリルカに追いつき、助けることが出来たようだ。

 

 さて、どうしてやろうかなぁ。このまま行ってもいずれ報復を受ける事は確実だが、2人をベートが連行して来た事からもこのまま放置したらベートが殴り込みに行きかねない。まあ、私も行くだろうけど。

 

「よし、行くか。2人とも、ついて来なさい。ヘスティア様もご同行を。ベート殿はどうします?」

立ち上がり、体を解しながら声をかける。

「流石に、ここで見捨てるわけには行かねぇし、何よりも腹立たしいんだよ。雑魚が雑魚から奪うっていうのがよぉ」

苛立たし気に言葉を吐き捨てる彼であったが、そこには確かに義憤と優しさが含まれている。

 腕利きの冒険者とそれを更に超えた者、計2名。片方だけでも壊滅を免れ得ないが、両方揃っている以上運命は決まった。

「あの、師匠、ベートさん。どこに行くつもりですか...?」

 内心察しながらも、ベルは念の為に問いかける。

「決まってんだろ」

「愚問ですね」

 

 異口同音ながらも、答えは一つ。ソーマ・ファミリアをぶっ壊す。

 

 




 因みに、リリルカは酒場の営業中ヘスティアの部屋にしまわれていました。ベートが監視していたので逃げようがなかった。
 紫音はベルが許しているし、大した怪我も負っていない為にリリルカをガネーシャ·ファミリアに突き出していませんが、ベルが重傷を負っていた場合は神ソーマを始めとしたソーマ·ファミリアの構成員全員が達磨になって最低限止血をされた状態で広場に打ち捨てられていました。

 次回「ソーマ·ファミリア最後の日」「ベルとレフィーヤ、そしてアイズ」

 遠征はもちっと後になりそうです。
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