今回はオリジナルの話になります。
天狼島が冬なので、エドラスは秋の中旬くらいに起きた出来事ということで進めます。
夏も終わり、ムシムシとした暑さから解放され、過ごしやすい季節になった日の昼間。
「見て見て、今魚が跳ねたよ!」
「はしゃぎすぎよ、ウェンディ」
太陽によって照らされ、キラキラと宝石のように煌めく広大な海、その海を優雅に跳ねるトビウオ。
以前、
今にも飛び跳ねそうなウェンディを、注意しながらも綺麗な風景に見惚れ、シャルルは尻尾を左右に振っていた。
その光景に、姉妹みたいだなと俺は微笑む。
そんな俺たちが、列車に揺られながら向かっているのは、港町ハルシオンを抜けた先にあるナトゥラという町。
そこは気候が、とても安定しているため、春夏秋冬問わず新鮮な果実が採れ、名物には果物をふんだんに使ったスイーツが楽しめる観光地だ。
それでは何故、その町に向かうのかソレは昨日の昼に遡る。
❖ ❖ ❖
俺とナツの対決が終わって、一週間が経った日、 丁度、酒場で注文の入った飯を作っていたときのことだ。
ヒルズでの荷物の整理や、家具の調達が一通り終わったようで、仕事をするためにウェンディとシャルルが、
「ランスさん、この依頼一緒に行ってください!」
「
その日は、ウチの大喰らいたちが一同に集結していたため、ミラ一人の手では負えなくなっており、久々に俺が招集されていた。
忙しなくフライパンを動かしながら、差し出された紙に視線だけを向けた。
依頼書には、屋敷内の財宝を狙う夜盗の捕縛と書かれていた。
ランスは依頼書の続きを確認すると、難色を示す。
同伴するとはいっても、最初はマグノリア内で経験を積ませたく思っていたため、渋い顔をしていると
「何事も挑戦じゃ、ほら、可愛い子にも旅をさせろと言うしの。仮令、何か起ころうともアンタがいれば、どうにかなるじゃろうし」
カウンター席で、焼き鳥を肴に酒を飲んでいるマカロフから、助け舟が出される。
それでも渋っていると『やっぱり私なんかじゃ』と、涙目になっていくと、あーあ泣かせたと、酒場で顔を赤くさせた呑んだくれ共から野次を飛ばされる。
そこに、依頼を受注しにやって来たナツが
「俺に負けたからビビってんだろ」
俺の頭をポンポンと叩き、肩を揉みながら、口を手で隠しプププと笑う。
そんな光景を目の当たりにし、楽しく野次を飛ばしていた奴らは、酔いが覚めたのか一目散に代金を置いて、依頼板に向かい依頼書を掻っ攫い、ギルドから出ていく。
偶然ギルドに立ち寄ったルーシィが、普段は仕事もせず飲んでばっかの面々が、急に出て行ったことに目を点にする。
まぁ、別に敗者だから、この態度は甘んじて受け入れよう、だけどな。
ハッピーは、これから起きる事を予見し、合掌する。
「何度も言ってんだろ、キッチンは料理人の戦場だ。手も洗ってねぇ素人が土足で踏み込んでんじゃねぇ!」
イキイキしているナツの顎に、強烈な右ストレートをお見舞いすれば、モノの見事に打ち上げられ、天井に突き刺さり頭から腰までが埋まってしまう。
マカロフは、いい加減学ばんかと、ため息をつく。
ミラは、直すのが大変ねと、呑気なことを言い、ルーシィは、ポカンと口を開けていた。
ウェンディは、現状にアワアワとしていて、シャルルは馬鹿を見る目で、コチラを見ていた。解せぬ。
「兎に角、儂と同じ轍は踏まぬよう、気をつけなされ」
何処か遠くを見つめるように、切ない雰囲気を纏ったマカロフの重たい言葉に、此処で頷かない訳にも行かず。
渋々、その依頼を受注することにした。
❖ ❖ ❖
「着きましたよ、ランスさん!!」
と、昨日の一件を思い出していると、目的地に着いたようで、ウェンディに手を引っ張られる。
そうして、駅を出るやいなや、果物の試食会を行なっているようで、ウェンディがリンゴを貰い幸せそうに頬張っており、興味なさげに見ていたシャルルも、女の子らしく甘い物には目がないようで、頂いた梨っぽい果物を食べ、頬に手を当てていた。
まさか、依頼のこと忘れてないよなと、思いながらも依頼主のマルムという人物ことを、試食会のスタッフに聞けば、ピシィと空気が凍った。
あれだけ、歓迎ムードだったのに空気が一変したかのように、静かになってしまった。
不思議に思っていると、ふくよかな体型にサングラスと金ピカの衣服を身に着け、全ての指にデカい宝石が付いた指輪を付け、金持ちっぽい奴が現れた。
俺とシャルルは、全身金ピカの男をジト目で見るが、ウェンディだけは感嘆とした声を上げ、純粋に凄いと感じているようだった。
「いやぁ、迎えが遅くなり申し訳ない。私が依頼人のマルム・ヴィシャスです」
人の良さそうな笑顔で一礼してくる。
「それで、貴方が滅竜魔導士殿ですかな?」
俺を見て、滅竜魔導士か聞いてきたため、横に首を振りながら、隣にいるウェンディの背中を押す。
少女が
疑われて、ビクッとするウェンディ。
「安心してください、この子は強いですよ」
「ですが」
怪しまれてオドオドするウェンディの頭を撫で、依頼人に営業スマイルで語りかけるも、信用できてないようで
「この私、ランスロット・セブンスが保証いたします」
俺の名を告げてみれば、マルムは目を見開く。
どうやら、俺のことを知っているようで、手を掴まれブンブンと上下に振ってくる。
そんなこんなで、またもや金に装飾された派手すぎる馬車に乗り込み、依頼人の屋敷に入れば、ウェンディたちと別れ、部屋を案内される。
外見は至って普通だったのだが、中に入ってみれば動物の剥製やら、有名画家が描いたと思われる絵画が、飾られていた。
使用人から夕飯まで待機してくれと言われたが、大人しく待機するつもりは無く、
まぁ、態々こんな事をするのには理由があるんだが、この依頼を受注する為に評議院に連絡を入れた際、普通であれば適当な受付係に話を通せば終わりなはずが、どういう訳かラハールに引き継がれた。
話を聞けば、この依頼をしてきた町長には、最近きな臭い噂にナトゥラの港に怪しい船が停泊しているなど、報告が上がってきているらしく、近々調査に入る予定だったらしいのだ。
てか、検束部隊が一個人のために動くってことは、グレーどころか真っ黒じゃねぇか。
間もなく、上からの家宅捜索の令状が発行されるらしいのだが、もしも、この話が事実であれば、その間に証拠を隠滅される可能性があるため、ついでに証拠を掴んでほしいとのこと。
そんなわけで、マルムの書斎を捜索しているわけだが、如何せん怪しげな資料は出てこない。
まぁ、そんなモン残す意味もないから、燃やしたりしたとかだろうと思考していると、振り子時計の音が鳴り、ふと見れば六時を指していたため、
食卓に並んでいたのは、高級食材で作られた豪華なディナーの数々。
確か、コイツが町長になってから、数年しか経ってないのに、今日の食事の総額で言えば100万Jは超えているはず、どっから、そんな資金が出てきてんだ?
不審に思う俺とは違い、一切の情報を知らないウェンディたちは、このご馳走に舌鼓を打ち、顔が蕩けていた。
さてさて、結局のところ証拠が得られず、夜になってしまったわけだが、ソレはソレ、コレはコレといった感じで、しっかり依頼は完了しようと思う。
❖ ❖ ❖
時刻は22時を回り、人影が一切無くなった屋敷の通路に、一筋の月明かりが差し込む。
侵入してきた不届き者が、月明かりに照らされる。
狐のお面を被り、全身を黒の外套で身を包んだ、如何にもな奴が書斎に忍び込んだ。
書斎にある本棚に収まっている、赤い本を斜めに倒せば、ガラガラと歯車が回り始める音が聞こえる。
音が鳴り止むと、本棚の中心部には金庫が出現しており、慣れた手つきで解錠すれば、その中からは茶封筒と思わしき物が入っていた。
泥棒は目に魔法陣を浮かばせ、差し込む月明かりで、中身を確認しようとするが
「うーん、暗くて見えづらい」
「なら、灯りでも付けるか?」
「助かるぜ、兄ちゃん……ッ!?」
暗闇の中、書類を見るのは困難なため、どうするべきか悩んでいると、男に声を掛けられ思わず返事をしてしまった。
そうして、書斎に照明が付くと、金髪赤目の男が隣に立っていた。
男は瞠目し、直ぐ様扉から外に出ようとするが、其処には手を拡げて封鎖する、青髪の少女と白い猫がいた。
❖ ❖ ❖
さてと、アイツの持っている封筒気になるな。
マルムが、あんな厳重に保管してたってことは、余程大事な物のようだし、取り返して少し拝見させてもらうとするか。
思考を巡らせていると、泥棒は床に手をつけていた。
「透過魔法…すり抜け!」
床に半透明な魔法陣が出現すると、泥棒は地面に吸い込まれるように、姿を消した。
結構珍しい魔法使うんだなと、感心していると、ウェンディとシャルルは追いかける為に、先に出ていったようだ。
「まぁ、いいか…
実は、照明を付ける件の際に、泥棒の体に触れていたため、探知が可能になっていた。
透過魔法は、壁抜けに透視など便利ではあるが、この短時間で長距離を移動できる代物ではないため、容易く居場所の特定が出来た。
というわけで、
いやー、マジで便利だよね。この魔法。
突然現れた俺に驚くも、最後の抵抗として俺に殴りかかってくるが、抵抗虚しく一本背負いで地面に叩きつけると、軽く脳が揺れたのか、目を回しながら気絶していた。
泥棒の外套からハミ出していた封筒を拾い、透過魔法による透視によって、コソッと中身を確認してみれば
「なるほどね」
資料を拝見させてもらっていると、漸く追いついたウェンディたちが、肩で息をしながら、俺がいたことに驚いていた。
翌朝、泥棒は町の憲兵に引き渡し、回収した封筒をマルムに返してやれば、大喜びで跳ねていた。
このあと起きる面倒事について、考えた結果ウェンディたちには内緒で、報酬については断っておいた。
もしも受け取れば、後で腐った
そして、ラハールの下に証拠のコピーを転移させて連絡を入れれば、俺たちの仕事は終わりだ。
あとは帰るだけなのだが、美味しい果実を堪能したのは最初だけだったので、名残惜しそうにしている二人が可哀想なため、『もう二泊くらいしていくか』と、提案すれば目をキラキラさせていた。
オリジナルエピソードが、長くなりそうなので、ここで一度切らせていただきます。
プロットはありますが、文にするのが苦手なもので、もう暫くお待ちくださいませ。
オリ主編6月末に締め切り
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没作として残留
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