ゾンビサバイバルローグライクCataclysm:DDAの二次創作
サイバネ女兵士がゾンビパニックの起きたニューイングランドを生き延びて"帝国"に帰るまでを書こうとしていた気がする
続かない
電気のつかないだけの、ニューイングランドに有り触れた家屋の廊下で、白峰は動かなくなった死体を念入りにハンマーで殴り潰した。とろい普通の死体ならば、銃は使わないほうがいい。うるさいし、弾も豊富ではないからだ。数体を静かに殴り殺し、音に注意しながら外見だけはキレイなその家屋を漁り始める。
そして、単純作業の中で、つい考えに耽った。世界はかなりの頻度でその理不尽さを見せる。しかし、それにしても死体が動く、なんていうのは意味不明だ。未だに信じたくもないが、現実、あちらこちらで死体が歩いている。なぜ、こんなことが起こるのか。一応最先端な筈の白峰の科学知識を駆使して考察しても、やはり荒唐無稽という結論がでてしまう。
何度繰り返したかわからない思索を中断し、慌てて周囲の様子を探る。無駄な事を考えていれば死にかねない。奴らは時として無音で後ろに立っているのだ。
そうして、一通り家屋を探索し終えた、潰しきった数体以外に動く死体は居ないようだった。同様に、特筆すべき物資もなさそうだった。特に弾薬が見当たらないのは困りものだ。
安全だと判断すると意識的に気を抜き、掃討し終わった家屋内で有用な物を物色し始めた。
常に緊張しているのは危険だ。それに、気を抜いているといえども、警戒を絶やすことはない。
久しぶりに相対した死と隣り合わせの現場で、完全に緊張を抜くことはできない。というより、この地は地獄に近すぎるのだ。
ブランクがあるとはいえ歴戦の陸戦隊士官である白峯であっても、まるで新兵のように緊張を抜けない程に。
現場から離れて2年でこの有様か、と内心で自嘲する。
あるいは、十分な武器弾薬と移動手段があれば、とっくの昔にこの不安感とはおさらばできていただろうに。
しかし、多少は持っていた強力な19.56mm弾は、とっくの昔に撃ち尽くしてしまっていた。
強化戦闘服もバッテリー切れと度重なる戦闘による損壊で、もはやスクラップとそう変わりない有様だ。体内の肉体強化・治癒促進ナノマシンも出血によって幾らか抜けている。
領事館から持ち出した車は、怪物に襲われた時にスクラップと化した。
今の白峯を守るのは、徒手格闘の技術と、威力も弾数も足りない拾い物の銃器しかない。
まぁ、三日前まで同道していた大使のようになっていないだけ、幸運なのだろうが。
特殊な状況での「生き方」を知っている白峯でさえ、かろうじて生き残っているという有様なのだから、他の領事館や大使館に存在していた同輩の無事は望めないだろう。
取り敢えずは残存する生存コミュニティに接触しなければ。
一人では限界がある。たとえ素人集団であっても役に立つだろう。それにその時は、特殊部隊員の経験が生きるだけだ。
白峯は数日前、雑音混じりのラジオから久しぶりに流れていたまともな音声から、『難民キャンプ』の座標を得ていた。
周辺の地形情報はなんとか把握している。副脳を使って最適ルートと迂回路も演算済みだ。物資も、この家を漁ったことでなんとか許容量が集まった。
問題はない。それを自分に言い聞かせながら、白峰は現在地からの最適ルートを脳裏に浮かべつつ、荷物を纏めて家を出た。
それから、昨日拝借した、鍵のついたバイクに跳び乗ると、静かに出発した。