第二百六十二話 許昌作戦会議
蜀との最終決戦を目前に控えた許昌は、かつてないほどの緊張感に包まれていた。
王城には各地から伝令が集まり、街道では兵糧を積んだ荷車が昼夜を問わず往来する。鍛冶場では武具の手入れが続き、兵舎では兵たちが槍や弓を整えていた。
誰もが理解している。
次の戦いが、燕と蜀、両国の命運を決める最後の戦になることを。
王城奥の軍議の間。
巨大な地図が机いっぱいに広げられ、その周囲には燕軍の中枢を担う者たちが集まっていた。
上座には燕王・白蓮。
その右には華琳。
左には雪蓮。
さらに桂花、星、恋、霞、翠らが席に着き、時雨も静かに腕を組んで地図を見つめている。
室内に漂う空気は重かった。
誰も軽口を叩かない。
白蓮は全員の顔を見回し、静かに口を開いた。
「始めよう」
「赤壁へ向けた最後の軍議だ」
全員の視線が白蓮へ集まる。
桂花が立ち上がり、地図の上へ木札を並べていく。
「現在判明している蜀軍の動きです」
「建業を中心に兵力を集結。長江沿岸では船団の整備が進められています」
木札が建業から赤壁へと並ぶ。
「敵は赤壁周辺で決戦を行う構えです」
華琳は顎へ手を添える。
「予想どおりね」
「長江を利用してこちらの進軍を止めるつもりかしら」
桂花は頷く。
「その可能性が高いです」
雪蓮は地図を眺めながら笑みを浮かべた。
「水辺なら向こうにも利があるわね」
「でも、こっちだって赤壁がどんな土地か知らないわけじゃない」
その言葉に星が続く。
「赤壁は地形が複雑だ」
「河川と丘陵が入り組み、大軍ほど動きづらい」
「正面から押し潰すだけでは被害が大きくなる」
時雨は静かに地図へ目を落とした。
赤壁。
古くから幾度となく戦場となった土地。
地形を味方につけた者が勝つと言われる場所だ。
しばらく沈黙が流れる。
やがて白蓮が時雨へ視線を向ける。
「時雨」
「お前はどう見る」
全員の視線が時雨へ集まった。
時雨はゆっくりと口を開く。
「真正面から戦えば、兵力はこちらが上だ」
「だが、天の御使いもそれくらい分かっている」
「必ず何か仕掛けてくる」
華琳は小さく笑う。
「私も同感よ」
「追い詰められた相手ほど、大胆な策を打つものだから」
桂花は地図へ新たな木札を置いた。
「敵軍は決戦兵力を集中させるでしょう」
「こちらも全軍を投入しますか」
白蓮は少し考え込む。
しかし、時雨は首を横へ振った。
「いや」
「全軍は動かさない」
その一言に部屋が静まる。
霞が眉をひそめた。
「時雨、それは何でや」
「兵力で押した方が早いやろ」
時雨は落ち着いた声で答える。
「勝つだけならそれでもいい」
「でも、一刀は俺を狙ってくる」
「なら、本隊には十分な予備兵力を残す」
「何が起きても対応できるようにな」
星は満足そうに頷く。
「らしい考えだ」
「最悪の事態まで見据えている」
恋も静かに言った。
「時雨なら大丈夫」
その言葉に張遼が笑う。
「恋がそこまで言うなら安心やな」
重かった空気が少しだけ和らぐ。
だが、白蓮の表情は真剣なままだった。
「今回の戦いで天下が決まる」
「だからこそ油断は許されない」
全員が静かに頷く。
軍議は夜更けまで続いた。
兵站の確認。
進軍経路。
伝令の配置。
負傷兵の後送。
あらゆる事態を想定し、一つずつ確認していく。
軍議が終わり、人々が席を立つ中、時雨だけは地図の前に残っていた。
その視線は赤壁の一点に注がれている。
「一刀……」
小さく呟く。
「これで終わりにしよう」
決意を胸に、時雨は静かに軍議の間を後にした。
許昌では決戦への準備が着実に進み、燕軍は赤壁へ向けて動き始めようとしていた。
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周倉関羽ルート(ヒロイン愛紗)
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孫瑜孫権ルート(ヒロイン蓮華、粋怜)