【黒山の狼、乱世を嗤う】   作:パスカルDX

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外伝 第28話 白銀の猛獣――柳琳と虎豹騎

外伝 第28話 白銀の猛獣――柳琳と虎豹騎

 

 

 

 

休日。

 

その言葉を。

 

時雨は。

 

未だに。

 

完全には理解していなかった。

 

仕事をしない日。

 

軍議へ出ない日。

 

書類を読まない日。

 

兵を動かさない日。

 

策を考えない日。

 

華琳は。

 

そう説明した。

 

栄華は。

 

休日に書類へ触れた場合。

 

次の三日間。

 

時雨の財布を預かると宣言した。

 

柳琳は。

 

傷を休ませることも。

 

将の務めだと諭した。

 

春蘭は。

 

最初。

 

休日など必要ないと叫んだ。

 

だが。

 

華琳から。

 

時雨を訓練へ誘うなと命じられると。

 

不満そうに。

 

従った。

 

霞は。

 

酒でも飲もうと誘った。

 

桂花は。

 

余計な場所へ近づかないよう釘を刺した。

 

風は。

 

一日中眠ればよいと勧めた。

 

全員。

 

時雨へ。

 

仕事をするなと言う。

 

だから。

 

その朝。

 

時雨は。

 

いつもより遅く起きた。

 

本当に。

 

僅かに遅いだけだった。

 

日の出より前ではなく。

 

日が昇り始める頃。

 

華琳の寝台。

 

隣。

 

黄金の髪。

 

静かな寝息。

 

昨夜。

 

華琳は。

 

時雨が休日に勝手な予定を入れないよう。

 

自分の寝室へ泊まらせた。

 

監視。

 

ではない。

 

華琳は。

 

休暇の補助だと言った。

 

違いは。

 

時雨には。

 

よく分からない。

 

時雨は。

 

ゆっくり。

 

身体を起こした。

 

華琳を。

 

起こさないよう。

 

寝台から降りる。

 

衣。

 

帯。

 

剣。

 

剣へ。

 

手を伸ばしたところで。

 

寝台から。

 

声。

 

「置いていきなさい」

 

時雨の手が止まる。

 

振り返る。

 

華琳。

 

目。

 

閉じたまま。

 

「起きてたのか」

 

「あなたが」

 

「寝台から出た時から」

 

「起きていたわ」

 

華琳は。

 

ゆっくり目を開ける。

 

蒼い瞳。

 

まだ。

 

眠気。

 

少し。

 

残る。

 

「今日は休日よ」

 

「ああ」

 

「剣は要らない」

 

「何かあれば」

 

「王宮よ」

 

華琳は。

 

僅かに眉を上げる。

 

「あなたが」

 

「何かを起こさなければ」

 

「何も起きないわ」

 

「俺が起こしてるのか」

 

「大半は」

 

「そうね」

 

時雨は。

 

剣を見る。

 

次。

 

華琳。

 

「短剣だけ」

 

「駄目」

 

「なぜ」

 

「休日だから」

 

「理由になってない」

 

「王命よ」

 

「横暴だな」

 

「王ですもの」

 

華琳は。

 

寝台の上。

 

腕を伸ばす。

 

「こちらへ来なさい」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

「なぜ」

 

「まだ」

 

「朝よ」

 

「ああ」

 

「もう少し」

 

「眠りなさい」

 

「起きた」

 

「なら」

 

「横になっているだけでいいわ」

 

時雨は。

 

窓を見る。

 

外。

 

明るくなり始めている。

 

兵。

 

すでに。

 

動く時間。

 

訓練場。

 

朝の鍛錬。

 

見られる。

 

「外へ行く」

 

華琳の瞳が。

 

細くなる。

 

「どこへ」

 

「決めてない」

 

「仕事?」

 

「違う」

 

「訓練?」

 

「しない」

 

「軍議?」

 

「ない」

 

「なら」

 

華琳は。

 

少し。

 

疑うように。

 

時雨を見る。

 

「何をするの」

 

「歩く」

 

「王宮の中を?」

 

「外も」

 

「護衛は」

 

「いらない」

 

「要るわ」

 

「休日だ」

 

「休日だからこそよ」

 

華琳は。

 

寝台から起き上がる。

 

黄金の髪。

 

肩へ落ちる。

 

寝衣。

 

時雨の視線。

 

僅かに。

 

胸元へ落ちる。

 

華琳の目が。

 

すぐに。

 

気づく。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「今」

 

「見たでしょう」

 

「ああ」

 

華琳の頬へ。

 

僅かな赤み。

 

だが。

 

口元。

 

少し。

 

満足そう。

 

「休日の朝から」

 

「正直ね」

 

「聞かれた」

 

「ああ」

 

「そうだったわね」

 

華琳は。

 

寝台から降りる。

 

時雨の前へ。

 

近づく。

 

「なら」

 

「私と」

 

「朝食を取りなさい」

 

「その後」

 

「外へ行くなら」

 

「柳琳を連れていくこと」

 

時雨の眉が動く。

 

「柳琳?」

 

「今日は」

 

「虎豹騎の訓練日よ」

 

「ああ」

 

「午前中は」

 

「城外の訓練場にいる」

 

「護衛として」

 

「ちょうどよいでしょう」

 

「虎豹騎」

 

時雨が。

 

小さく繰り返す。

 

華琳は。

 

その目の変化を。

 

見逃さない。

 

「興味があるの?」

 

「ああ」

 

「休日なのに?」

 

「見るだけ」

 

「訓練へ口を出さない?」

 

「ああ」

 

「指揮を奪わない?」

 

「ああ」

 

「勝手に」

 

「虎豹騎へ」

 

「模擬戦を申し込まない?」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

華琳の目が。

 

鋭くなる。

 

「時雨」

 

「申し込まない」

 

「今」

 

「考えたでしょう」

 

「ああ」

 

「考えないで!」

 

華琳は。

 

深く息を吐く。

 

「柳琳へ」

 

「休日の時雨を」

 

「見張るよう伝えておくわ」

 

「護衛じゃなかったのか」

 

「両方よ」

 

「同じだ」

 

「違うわ」

 

「何が」

 

華琳は。

 

時雨の胸元へ。

 

指を置く。

 

「護衛は」

 

「危険から守る」

 

「監視は」

 

「あなた自身から守る」

 

時雨は。

 

少し黙る。

 

「同じだな」

 

「違うと言っているでしょう!」

 

---

 

朝食後。

 

時雨は。

 

城外へ向かった。

 

剣。

 

なし。

 

短剣。

 

なし。

 

普段着。

 

深緑の帯。

 

黒い上衣。

 

休日。

 

だが。

 

歩き方。

 

いつも通り。

 

隙。

 

少ない。

 

南門を出る。

 

道。

 

西へ。

 

魏軍の訓練場。

 

広い。

 

騎兵。

 

歩兵。

 

弓兵。

 

複数の区画。

 

その中。

 

最も奥。

 

高い柵。

 

二重の門。

 

入れる者。

 

限られる。

 

虎豹騎。

 

曹操直属。

 

魏軍の精鋭。

 

数。

 

多くない。

 

だが。

 

一人一人。

 

選ばれた兵。

 

騎乗。

 

剣。

 

槍。

 

弓。

 

全て。

 

一定以上。

 

突撃。

 

追撃。

 

護衛。

 

斥候。

 

夜襲。

 

要人救出。

 

どの役割も。

 

こなす。

 

通常の騎兵では。

 

対応できない場所へ。

 

投入される部隊。

 

魏の牙。

 

魏の爪。

 

敵からは。

 

白銀の猛獣と。

 

呼ばれることもある。

 

時雨は。

 

虎豹騎の存在を。

 

知っていた。

 

涼州遠征でも。

 

一部。

 

後方へ配置されていた。

 

だが。

 

本格的な訓練を。

 

見たことはない。

 

理由。

 

単純。

 

忙しかった。

 

自分の軍。

 

黒狼隊。

 

遠征軍。

 

涼州軍。

 

見るもの。

 

多かった。

 

さらに。

 

虎豹騎は。

 

華琳直属。

 

指揮官。

 

柳琳。

 

時雨が。

 

知る柳琳。

 

穏やか。

 

柔らかい。

 

医療。

 

民生。

 

傷ついた兵。

 

敵味方。

 

分けず。

 

治す。

 

怒鳴らない。

 

笑う。

 

手。

 

優しい。

 

だが。

 

虎豹騎の指揮官。

 

その姿を。

 

時雨は。

 

まだ。

 

ほとんど知らない。

 

訓練場へ。

 

近づく。

 

音。

 

聞こえる。

 

馬蹄。

 

地面。

 

揺れる。

 

号令。

 

短い。

 

鋭い。

 

「第二列」

 

「間隔を詰めなさい!」

 

時雨の足が。

 

僅かに止まる。

 

声。

 

柳琳。

 

間違いない。

 

だが。

 

普段と違う。

 

柔らかくない。

 

怒鳴ってはいない。

 

それでも。

 

遠くまで。

 

通る。

 

迷い。

 

ない。

 

「左翼」

 

「遅れています!」

 

「敵は」

 

「待ってくれません!」

 

「馬の呼吸へ」

 

「合わせなさい!」

 

「力で」

 

「動かさない!」

 

時雨は。

 

門へ進む。

 

門兵。

 

時雨を見る。

 

すぐに。

 

姿勢を正す。

 

「張燕将軍」

 

「見学」

 

「華琳様から」

 

「許可は」

 

「届いております」

 

門。

 

開く。

 

時雨は。

 

中へ入る。

 

最初に。

 

白銀。

 

見えた。

 

虎豹騎。

 

鎧。

 

統一。

 

銀に近い色。

 

黒い布。

 

馬。

 

黒。

 

栗。

 

葦毛。

 

選ばれた軍馬。

 

騎兵。

 

五十騎。

 

二列。

 

走る。

 

速度。

 

一定。

 

間隔。

 

ほぼ同じ。

 

先頭。

 

一騎。

 

柳琳。

 

普段。

 

柔らかな衣。

 

今。

 

鎧。

 

白銀。

 

肩。

 

胸。

 

腕。

 

守る。

 

髪。

 

高くまとめている。

 

腰。

 

剣。

 

背。

 

弓。

 

手。

 

長槍。

 

馬上。

 

姿勢。

 

低すぎない。

 

高すぎない。

 

馬と。

 

一つ。

 

穏やかな医官。

 

ではない。

 

精鋭騎兵の。

 

指揮官。

 

柳琳が。

 

槍を上げる。

 

虎豹騎。

 

左右へ。

 

分かれる。

 

一切。

 

乱れない。

 

中央。

 

模擬敵兵。

 

木盾。

 

槍。

 

並ぶ。

 

柳琳の槍。

 

前へ。

 

「突撃!」

 

声。

 

落ちる。

 

虎豹騎。

 

一斉。

 

加速。

 

馬蹄。

 

轟音。

 

地面。

 

震える。

 

左右から。

 

敵陣。

 

挟む。

 

正面ではない。

 

少し。

 

斜め。

 

盾。

 

死角。

 

狙う。

 

木盾。

 

揺れる。

 

模擬槍。

 

騎兵。

 

僅かに。

 

身体をずらす。

 

避ける。

 

一騎。

 

一騎。

 

別々。

 

だが。

 

全体。

 

一つ。

 

時雨の目が。

 

僅かに。

 

細くなる。

 

興味。

 

強い。

 

柳琳。

 

先頭。

 

敵陣へ。

 

最初に入る。

 

槍。

 

木盾の隙間。

 

突く。

 

止める。

 

引く。

 

次。

 

馬を。

 

横へ流す。

 

後続の道。

 

開く。

 

自分が。

 

目立つ。

 

敵の注意。

 

集める。

 

その間。

 

虎豹騎。

 

左右。

 

深く入る。

 

模擬敵陣。

 

崩れる。

 

「止まれ!」

 

柳琳の号令。

 

突撃の勢い。

 

残る。

 

だが。

 

虎豹騎。

 

一定距離。

 

一斉に。

 

止まる。

 

馬。

 

前脚。

 

強く踏む。

 

土。

 

舞う。

 

一騎。

 

僅かに。

 

位置。

 

ずれる。

 

柳琳の目。

 

すぐに。

 

そこへ向く。

 

「韓延!」

 

名を呼ばれた兵。

 

馬上。

 

姿勢を正す。

 

「はい!」

 

「今」

 

「半馬身」

 

「前へ出ました」

 

「敵が」

 

「伏兵を置いていれば」

 

「あなた一人が」

 

「囲まれます」

 

「申し訳ありません!」

 

「謝罪は」

 

「馬へ」

 

「次は」

 

「手綱を引く前に」

 

「呼吸を整えなさい」

 

「承知しました!」

 

柳琳は。

 

次。

 

別の兵へ。

 

「孟秋!」

 

「左脚」

 

「力が入りすぎています」

 

「馬が」

 

「外へ逃げました」

 

「はい!」

 

「恐れは」

 

「馬へ伝わります」

 

「自分だけで」

 

「隠せると思わないこと」

 

「承知しました!」

 

声。

 

厳しい。

 

だが。

 

侮辱。

 

ない。

 

失敗。

 

具体的。

 

何が悪い。

 

どう直す。

 

明確。

 

時雨は。

 

柵の近く。

 

立つ。

 

柳琳。

 

気づいていない。

 

訓練へ。

 

集中。

 

次。

 

弓。

 

虎豹騎。

 

馬上。

 

短弓。

 

標的。

 

林。

 

木製の人形。

 

走りながら。

 

射る。

 

一射。

 

二射。

 

三射。

 

柳琳自身も。

 

槍を背へ。

 

弓。

 

取る。

 

矢。

 

番える。

 

放つ。

 

一射。

 

標的の喉。

 

二射。

 

脇。

 

三射。

 

馬の脚に見立てた。

 

低い位置。

 

全て。

 

正確。

 

時雨の目。

 

僅かに。

 

明るくなる。

 

「柳琳」

 

小さく。

 

呟く。

 

いつもの。

 

柳琳。

 

薬。

 

布。

 

温かな手。

 

今。

 

弓。

 

槍。

 

号令。

 

殺すための。

 

技術。

 

人を救う者。

 

同時に。

 

最も効率よく。

 

敵を倒す部隊。

 

率いる。

 

矛盾。

 

ではない。

 

時雨は。

 

そう思う。

 

救うために。

 

殺す。

 

守るために。

 

突撃する。

 

命を。

 

知る者だから。

 

無駄に。

 

兵を死なせない。

 

その指揮。

 

「第三隊!」

 

柳琳が呼ぶ。

 

「前へ!」

 

十騎。

 

進む。

 

「負傷者回収訓練!」

 

模擬戦場。

 

地面。

 

人形。

 

三体。

 

一つ。

 

味方兵。

 

一つ。

 

馬。

 

一つ。

 

敵兵。

 

虎豹騎。

 

走る。

 

二騎。

 

盾。

 

敵の方向へ。

 

一騎。

 

弓。

 

牽制。

 

三騎。

 

馬から降りる。

 

味方の人形。

 

担ぐ。

 

残り。

 

周囲。

 

警戒。

 

柳琳。

 

全体。

 

見る。

 

「敵兵も」

 

「回収します!」

 

虎豹騎の一人が。

 

一瞬。

 

動きを止める。

 

「敵もですか!」

 

柳琳の目。

 

鋭くなる。

 

「生きているなら」

 

「情報を持っています」

 

「死なせれば」

 

「何も聞けません」

 

「それに」

 

声。

 

少し。

 

低い。

 

「敵であっても」

 

「見捨てる必要がない命は」

 

「見捨てません」

 

「承知しました!」

 

敵兵役。

 

人形。

 

回収。

 

隊列。

 

戻る。

 

速い。

 

無駄。

 

少ない。

 

時雨は。

 

さらに。

 

興味。

 

強くなる。

 

医療。

 

軍事。

 

一つ。

 

柳琳は。

 

治療だけを。

 

教えていない。

 

誰を。

 

どの順番で。

 

救うか。

 

戦場で。

 

どう運ぶか。

 

その間。

 

敵を。

 

どう抑えるか。

 

全部。

 

虎豹騎へ。

 

叩き込んでいる。

 

時雨は。

 

柵を越える。

 

近くへ。

 

訓練場の端。

 

歩く。

 

兵の一人。

 

時雨へ気づく。

 

視線。

 

動く。

 

次。

 

隣。

 

さらに。

 

他。

 

僅かに。

 

乱れる。

 

柳琳の声。

 

飛ぶ。

 

「前を見なさい!」

 

虎豹騎。

 

一瞬で。

 

戻る。

 

「見学者が」

 

「誰であっても」

 

「戦場では」

 

「敵の矢と同じです!」

 

時雨の眉。

 

僅かに上がる。

 

自分も。

 

障害。

 

扱い。

 

悪くない。

 

柳琳の馬。

 

訓練場。

 

大きく回る。

 

時雨の前。

 

止まる。

 

土。

 

僅かに。

 

舞う。

 

柳琳。

 

馬上。

 

時雨を見る。

 

普段。

 

穏やか。

 

今。

 

指揮官。

 

目。

 

鋭い。

 

「時雨」

 

「ああ」

 

「いつから」

 

「見ていましたか」

 

「最初の突撃」

 

柳琳の目が。

 

僅かに。

 

大きくなる。

 

「声を」

 

「かけてくだされば」

 

「訓練中だった」

 

「邪魔になる」

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

服。

 

剣。

 

なし。

 

短剣。

 

なし。

 

本当に。

 

休日。

 

「華琳様から」

 

「連絡は」

 

「受けていました」

 

「時雨が」

 

「見学へ来るかもしれないと」

 

「ああ」

 

「ですが」

 

柳琳の声。

 

少し。

 

柔らかくなる。

 

「本当に」

 

「来るとは思いませんでした」

 

「なぜ」

 

「休日は」

 

「王宮で」

 

「休むと思っていました」

 

「寝た」

 

「どれくらい」

 

「いつもより」

 

「少し」

 

柳琳の眉が。

 

僅かに下がる。

 

指揮官。

 

厳しい顔。

 

一瞬。

 

いつもの。

 

柳琳。

 

「少しでは」

 

「足りません」

 

「華琳も」

 

「同じことを言った」

 

「当然です」

 

柳琳は。

 

馬から降りる。

 

動き。

 

滑らか。

 

鎧。

 

音。

 

小さい。

 

時雨の前。

 

立つ。

 

近い。

 

鎧姿。

 

普段。

 

見慣れない。

 

時雨は。

 

柳琳を。

 

上から下。

 

見る。

 

髪。

 

鎧。

 

剣。

 

弓。

 

槍。

 

胸当て。

 

脚。

 

騎乗用。

 

防具。

 

柳琳の頬へ。

 

僅かな赤み。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「見すぎです」

 

「ああ」

 

柳琳の目が。

 

少し。

 

揺れる。

 

「否定しないのですね」

 

「聞かれた」

 

「どこを」

 

「見ていたのですか」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

「全部」

 

柳琳の頬。

 

さらに。

 

僅かに赤い。

 

周囲。

 

虎豹騎。

 

整列。

 

聞いている。

 

だが。

 

顔。

 

動かさない。

 

精鋭。

 

ただし。

 

耳。

 

ある。

 

「全部とは」

 

柳琳が尋ねる。

 

「いつもと」

 

「違う」

 

「ああ」

 

「鎧が?」

 

「ああ」

 

「それだけですか」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

「目」

 

「声」

 

「立ち方」

 

「馬の乗り方」

 

「指示」

 

「全部」

 

柳琳の目。

 

静かに。

 

揺れる。

 

「興味がある」

 

時雨が言った。

 

虎豹騎。

 

一部。

 

呼吸。

 

僅かに。

 

乱れる。

 

柳琳。

 

固まる。

 

「私に?」

 

「ああ」

 

「虎豹騎に?」

 

「ああ」

 

「どちらですか」

 

「両方」

 

柳琳の頬。

 

明らかに。

 

赤み。

 

増す。

 

だが。

 

指揮官。

 

姿勢。

 

崩さない。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「そのようなことを」

 

「簡単に」

 

「言わないでください」

 

「なぜ」

 

「兵が」

 

「聞いています」

 

時雨は。

 

虎豹騎を見る。

 

全員。

 

正面。

 

見ている。

 

「問題あるか」

 

誰も。

 

答えない。

 

柳琳が。

 

すぐに。

 

低い声。

 

「返事!」

 

虎豹騎。

 

一斉。

 

「ありません!」

 

訓練場。

 

響く。

 

時雨は。

 

僅かに。

 

目を細くする。

 

「いい部隊だな」

 

柳琳の目へ。

 

誇り。

 

浮かぶ。

 

「華琳様から」

 

「預けていただいた」

 

「魏の精鋭です」

 

「どれくらい」

 

「指揮してる」

 

「虎豹騎が」

 

「正式に再編されてからです」

 

「前は」

 

「医療と」

 

「後方支援を」

 

「中心にしていました」

 

「ああ」

 

「ですが」

 

柳琳は。

 

虎豹騎を見る。

 

「負傷者を」

 

「減らすためには」

 

「戦場へ入る前から」

 

「兵を変える必要があると」

 

「思いました」

 

「だから」

 

「指揮官に?」

 

「華琳様から」

 

「命じられました」

 

「ああ」

 

「私自身も」

 

「望みました」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

いつもの。

 

穏やかさ。

 

ある。

 

だが。

 

その奥。

 

鋭さ。

 

意志。

 

「なぜ」

 

「兵を」

 

「死なせたくないからです」

 

「それなら」

 

「医療でもできる」

 

「治療は」

 

「傷ついた後です」

 

柳琳の声。

 

静か。

 

強い。

 

「私は」

 

「傷つく前に」

 

「守りたいと思いました」

 

「それに」

 

「虎豹騎は」

 

「危険な任務へ」

 

「出ることが多い部隊です」

 

「誰かが」

 

「命を」

 

「大切に扱わなければ」

 

「精鋭という言葉だけで」

 

「使い潰されます」

 

時雨の目が。

 

僅かに。

 

鋭くなる。

 

使い潰す。

 

精鋭。

 

便利。

 

強い。

 

だから。

 

危険へ。

 

送り続ける。

 

よくある。

 

強い部隊ほど。

 

休めない。

 

補充。

 

追いつかない。

 

最後。

 

名前だけ。

 

残る。

 

時雨は。

 

そういう軍を。

 

いくつも見た。

 

「柳琳は」

 

時雨が言う。

 

「使い潰さない?」

 

「はい」

 

「必要なら」

 

「危険へ出す?」

 

「出します」

 

柳琳は。

 

迷わない。

 

「虎豹騎は」

 

「危険を避けるための部隊ではありません」

 

「危険の中で」

 

「生きて帰るための部隊です」

 

時雨の口元。

 

ほんの僅かに。

 

動く。

 

笑み。

 

近い。

 

柳琳は。

 

気づく。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「今」

 

「笑いましたか」

 

「分からない」

 

「笑いました」

 

虎豹騎の一人。

 

思わず。

 

小さく。

 

口元。

 

動く。

 

柳琳の目。

 

すぐに。

 

そちらへ。

 

兵。

 

真顔。

 

戻る。

 

時雨は。

 

訓練場を見る。

 

「続けろ」

 

柳琳が。

 

少し。

 

驚く。

 

「見ているのですか」

 

「ああ」

 

「休日でしょう」

 

「見学」

 

「口を出さない」

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

柳琳は。

 

少し考える。

 

「では」

 

「見ていてください」

 

声。

 

柔らかい。

 

「ただし」

 

「何だ」

 

「訓練場の中へ」

 

「勝手に入らないでください」

 

「ああ」

 

「模擬戦を」

 

「申し込まない」

 

「ああ」

 

「兵へ」

 

「個別に」

 

「策を教えない」

 

時雨は。

 

僅かに。

 

黙る。

 

柳琳の目。

 

鋭くなる。

 

「時雨」

 

「分かった」

 

「今」

 

「考えましたね」

 

「ああ」

 

柳琳は。

 

小さく。

 

息を吐く。

 

「華琳様の」

 

「ご心配が」

 

「よく分かります」

 

---

 

訓練。

 

再開。

 

時雨は。

 

柵の外。

 

ではなく。

 

柳琳が指定した。

 

指揮台の横。

 

座る。

 

椅子。

 

用意。

 

休日。

 

見学。

 

だが。

 

目。

 

軍議。

 

同じ。

 

虎豹騎。

 

次。

 

夜襲訓練。

 

昼。

 

だが。

 

視界を制限。

 

布。

 

盾。

 

煙。

 

使う。

 

兵。

 

十騎ずつ。

 

小隊。

 

音。

 

立てない。

 

馬蹄。

 

布。

 

巻く。

 

合図。

 

笛。

 

一度。

 

停止。

 

二度。

 

進む。

 

三度。

 

散開。

 

柳琳は。

 

指揮台。

 

時雨の少し前。

 

立つ。

 

背筋。

 

真っ直ぐ。

 

手。

 

腰。

 

剣。

 

「第一隊」

 

「林へ」

 

「第二隊」

 

「右から」

 

「第三隊」

 

「待機」

 

声。

 

小さい。

 

だが。

 

届く。

 

虎豹騎。

 

動く。

 

模擬敵。

 

柵。

 

陣。

 

見張り。

 

第一隊。

 

林。

 

消える。

 

第二隊。

 

遠回り。

 

第三隊。

 

動かない。

 

時雨は。

 

柳琳の指を見る。

 

僅か。

 

動く。

 

合図。

 

弓。

 

一射。

 

見張り役の。

 

足元。

 

敵。

 

そちらへ。

 

注意。

 

第一隊。

 

背後。

 

入る。

 

第二隊。

 

物資。

 

奪う。

 

第三隊。

 

退路。

 

確保。

 

無駄。

 

少ない。

 

だが。

 

時雨の目。

 

一箇所。

 

止まる。

 

第一隊。

 

戻り。

 

遅い。

 

模擬敵。

 

追う。

 

第三隊。

 

待機。

 

柳琳。

 

まだ。

 

動かさない。

 

時雨は。

 

口を開きそうになる。

 

止める。

 

約束。

 

口を出さない。

 

柳琳。

 

自分で。

 

見る。

 

第一隊。

 

一騎。

 

馬。

 

足。

 

僅かに。

 

乱れる。

 

柳琳の目。

 

そこへ。

 

「第三隊!」

 

「半数」

 

「救援!」

 

「残りは」

 

「退路を維持!」

 

五騎。

 

動く。

 

敵。

 

牽制。

 

第一隊。

 

戻る。

 

足を乱した馬。

 

速度。

 

落ちる。

 

柳琳。

 

指揮台から。

 

降りる。

 

自分の馬。

 

乗る。

 

時雨の眉が。

 

動く。

 

指揮官。

 

出る。

 

柳琳。

 

五騎へ合流。

 

敵役。

 

正面。

 

柳琳。

 

矢。

 

二射。

 

左右。

 

道。

 

開く。

 

足を痛めた馬。

 

横へ。

 

自分の馬。

 

寄せる。

 

騎手へ。

 

「乗り換えなさい!」

 

「ですが!」

 

「命令です!」

 

兵。

 

柳琳の馬へ。

 

移る。

 

柳琳自身。

 

痛めた馬。

 

乗る。

 

手綱。

 

優しく。

 

速度。

 

抑える。

 

退路。

 

戻る。

 

模擬敵。

 

追う。

 

第三隊。

 

盾。

 

弓。

 

止める。

 

全員。

 

帰還。

 

柳琳。

 

最後。

 

戻る。

 

時雨は。

 

立ち上がっていた。

 

無意識。

 

柳琳が。

 

馬から降りる。

 

痛めた馬。

 

脚。

 

見る。

 

「冷やしてください」

 

厩務兵。

 

すぐに。

 

動く。

 

騎手。

 

膝をつく。

 

「申し訳ありません」

 

柳琳は。

 

兵を見る。

 

「何が」

 

「私が」

 

「馬の異常へ」

 

「気づくのが遅れました」

 

「敵地であれば」

 

「隊を危険へ」

 

「晒していました」

 

柳琳は。

 

兵の肩へ。

 

手を置く。

 

「気づいた時」

 

「どうしましたか」

 

「速度を落としました」

 

「隣の騎兵へ」

 

「合図を出しました」

 

「はい」

 

「なら」

 

「正しい判断です」

 

「異常を」

 

「隠して走り続ける方が」

 

「危険です」

 

「ですが」

 

「訓練は」

 

「失敗しました」

 

柳琳の目。

 

鋭い。

 

「失敗を」

 

「隠す兵は」

 

「虎豹騎に要りません」

 

兵の顔。

 

固くなる。

 

「ですが」

 

柳琳は続ける。

 

「失敗から」

 

「戻る道を」

 

「選べる兵は」

 

「必要です」

 

兵の目。

 

僅かに。

 

揺れる。

 

「次は」

 

「もっと早く」

 

「馬の違和感へ」

 

「気づきなさい」

 

「承知しました!」

 

柳琳は。

 

頷く。

 

「下がって」

 

「馬の手当てを」

 

「手伝いなさい」

 

「はい!」

 

兵。

 

走る。

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

「自分の馬を」

 

「渡したな」

 

柳琳が。

 

時雨へ向く。

 

「ああ、ではなく」

 

「はい」

 

時雨は。

 

少し。

 

目を細くする。

 

柳琳は。

 

僅かに笑う。

 

「時雨以外は」

 

「ああを」

 

「返事に使いません」

 

「ああ」

 

柳琳の笑み。

 

少し。

 

深くなる。

 

「なぜ」

 

「自分が」

 

「痛めた馬へ乗った」

 

「速度を」

 

「落とす必要があったからです」

 

「別の兵へ」

 

「任せてもよかった」

 

「私が」

 

「一番」

 

「馬の状態を」

 

「知っていました」

 

「指揮官が」

 

「最後に残る?」

 

「必要なら」

 

「残ります」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

鋭い。

 

でも。

 

無謀ではない。

 

救う。

 

だが。

 

全体。

 

崩さない。

 

第三隊。

 

半数だけ。

 

救援。

 

半数。

 

退路。

 

自分。

 

出る。

 

指揮。

 

誰かへ。

 

渡していた。

 

「副官は」

 

「誰だ」

 

柳琳が。

 

一人の女騎兵へ。

 

目を向ける。

 

「夏侯真です」

 

女騎兵。

 

前へ。

 

「張燕将軍」

 

「虎豹騎副官」

 

「夏侯真です」

 

時雨は。

 

頷く。

 

「ああ」

 

夏侯真。

 

少し。

 

目。

 

動く。

 

時雨の返事。

 

聞き慣れない。

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

「私が」

 

「前へ出る時は」

 

「彼女が」

 

「全体を指揮します」

 

「信頼してる」

 

「はい」

 

「どこまで」

 

「私が」

 

「戻らなくても」

 

「虎豹騎を」

 

「帰還させられる程度には」

 

時雨の目が。

 

鋭くなる。

 

「柳琳」

 

「何でしょう」

 

「自分が」

 

「戻らない前提で」

 

「作ってるのか」

 

柳琳は。

 

静かに。

 

時雨を見る。

 

「部隊は」

 

「指揮官一人のものではありません」

 

「ああ」

 

「私が」

 

「倒れた時に」

 

「全てが止まる部隊は」

 

「精鋭ではありません」

 

時雨の顔。

 

僅かに。

 

硬くなる。

 

自分。

 

何度も。

 

同じ。

 

考えた。

 

黒狼隊。

 

燕。

 

魏。

 

自分が死んでも。

 

動く。

 

それを。

 

作ろうとした。

 

だが。

 

皆。

 

怒った。

 

自分を。

 

数えろ。

 

戻れ。

 

言われた。

 

柳琳も。

 

似たこと。

 

言う。

 

「柳琳」

 

「何でしょう」

 

「それを」

 

「俺が言ったら」

 

「怒るだろ」

 

柳琳の目。

 

僅かに。

 

揺れる。

 

「はい」

 

「自分は」

 

「言うのか」

 

柳琳は。

 

すぐに。

 

答えない。

 

虎豹騎。

 

周囲。

 

静か。

 

指揮官。

 

兵の前。

 

私情。

 

見せすぎない。

 

それでも。

 

時雨の問い。

 

逃げない。

 

「私は」

 

柳琳が答える。

 

「自分が」

 

「戻らなくてよいとは」

 

「言っていません」

 

「ああ」

 

「戻れない場合に」

 

「備えているだけです」

 

「同じだ」

 

「違います」

 

柳琳の声。

 

強い。

 

「私は」

 

「戻るために」

 

「訓練しています」

 

「兵を」

 

「帰すために」

 

「自分も帰ります」

 

「時雨は」

 

柳琳の目。

 

普段の。

 

優しさ。

 

戻る。

 

「時々」

 

「自分が戻らない方を」

 

「先に選びます」

 

時雨は。

 

黙る。

 

「同じではありません」

 

柳琳が。

 

もう一度言う。

 

「私は」

 

「時雨にも」

 

「帰ってきてほしいです」

 

「私も」

 

「帰ります」

 

「約束できますか」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

鎧。

 

汗。

 

髪。

 

少し乱れ。

 

目。

 

真っ直ぐ。

 

「できる範囲で」

 

柳琳の眉が。

 

僅かに下がる。

 

「時雨」

 

「ああ」

 

「その答えは」

 

「好きではありません」

 

「ああ」

 

「分かっていますか」

 

「ああ」

 

柳琳は。

 

小さく息を吐く。

 

指揮官。

 

だが。

 

今。

 

いつもの。

 

柳琳。

 

「休日に」

 

「説教をするつもりは」

 

「なかったのですが」

 

「訓練中だ」

 

「時雨は休日です」

 

「ああ」

 

「私は」

 

「仕事です」

 

「ああ」

 

「なら」

 

柳琳は。

 

僅かに笑う。

 

「時雨は」

 

「私の言うことを」

 

「聞いてください」

 

「なぜ」

 

「休日だからです」

 

「理由になってない」

 

「華琳様と」

 

「同じことを言っていますね」

 

「ああ」

 

---

 

昼前。

 

虎豹騎。

 

一度。

 

休憩。

 

馬。

 

水。

 

兵。

 

食事。

 

柳琳も。

 

鎧の一部を。

 

外す。

 

肩。

 

胸。

 

少し。

 

軽くなる。

 

時雨は。

 

訓練場の端。

 

木陰。

 

座る。

 

昼食。

 

持っていない。

 

柳琳が。

 

気づく。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「昼食は」

 

「持ってきましたか」

 

「ない」

 

柳琳の目。

 

僅かに。

 

険しくなる。

 

「休日に」

 

「食事を抜くつもりですか」

 

「戻ってから」

 

「遅くなります」

 

「問題ない」

 

「あります」

 

柳琳は。

 

虎豹騎の食事係へ。

 

合図。

 

器。

 

一つ。

 

追加。

 

兵と同じ。

 

麦飯。

 

干し肉。

 

野菜。

 

薄い汁。

 

豪華ではない。

 

だが。

 

量。

 

十分。

 

時雨の前へ。

 

置く。

 

「食べてください」

 

「ああ」

 

柳琳も。

 

隣へ座る。

 

鎧。

 

外しきらない。

 

片膝。

 

立てる。

 

普段の。

 

上品な座り方。

 

違う。

 

軍人。

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

「何でしょう」

 

「座り方」

 

「いつもと違う」

 

「鎧ですから」

 

「動きにくい」

 

「ああ」

 

「そんなに」

 

「気になりますか」

 

「ああ」

 

柳琳の頬。

 

僅かに。

 

赤い。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「今日は」

 

「私を」

 

「よく見ますね」

 

「ああ」

 

「なぜですか」

 

「知らなかった」

 

「何を」

 

「柳琳が」

 

「こういう顔をする」

 

柳琳の目。

 

静かに。

 

揺れる。

 

「どのような顔でしょう」

 

「厳しい」

 

「ああ」

 

「怖い?」

 

「違う」

 

「なら」

 

「綺麗だ」

 

柳琳の手。

 

止まる。

 

器。

 

持ったまま。

 

虎豹騎。

 

周囲。

 

食事中。

 

全員。

 

聞いていないふり。

 

だが。

 

静か。

 

なりすぎる。

 

柳琳の頬。

 

ゆっくり。

 

赤くなる。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「今」

 

「兵が」

 

「周りにいます」

 

「ああ」

 

「簡単に」

 

「言わないでください」

 

「なぜ」

 

「私が」

 

「困ります」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

「嫌か」

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

嫌。

 

ではない。

 

むしろ。

 

嬉しい。

 

普段の。

 

柔らかい自分。

 

だけではない。

 

指揮官。

 

鎧。

 

厳しい声。

 

その姿を。

 

時雨が。

 

興味。

 

持った。

 

綺麗。

 

言った。

 

「嫌ではありません」

 

柳琳が答える。

 

時雨は。

 

頷く。

 

「ああ」

 

「ですが」

 

柳琳は。

 

少し。

 

声を落とす。

 

「二人の時に」

 

「言ってください」

 

時雨の眉が。

 

僅かに動く。

 

「二人なら」

 

「いいのか」

 

柳琳の頬。

 

さらに。

 

赤い。

 

「今は」

 

「食事をしてください」

 

答え。

 

逃げる。

 

時雨は。

 

麦飯。

 

食べる。

 

柳琳も。

 

食事へ戻る。

 

数口。

 

沈黙。

 

風。

 

木。

 

馬。

 

鼻を鳴らす。

 

虎豹騎。

 

兵。

 

時雨を。

 

時折。

 

見ている。

 

精鋭。

 

指揮官。

 

柳琳。

 

普段。

 

厳しい。

 

だが。

 

時雨の前。

 

少し。

 

違う。

 

甘い。

 

兵たち。

 

皆。

 

知っている。

 

指揮官が。

 

時雨へ。

 

特別。

 

心配。

 

すること。

 

今日。

 

さらに。

 

理解した。

 

「柳琳」

 

時雨が呼ぶ。

 

「何でしょう」

 

「虎豹騎は」

 

「何人」

 

「現在」

 

「五百」

 

「全て」

 

「同じ訓練?」

 

「いいえ」

 

柳琳は。

 

食事を置き。

 

説明。

 

始める。

 

「第一隊」

 

「突撃」

 

「第二隊」

 

「斥候と夜襲」

 

「第三隊」

 

「護衛と救出」

 

「第四隊」

 

「弓騎兵」

 

「第五隊」

 

「予備と補充兵の育成」

 

「今」

 

「見たのは」

 

「第一から第三の混成訓練です」

 

「柳琳は」

 

「全部」

 

「指揮できる?」

 

「はい」

 

「弓も」

 

「槍も」

 

「剣も?」

 

「はい」

 

「見たい」

 

柳琳の目。

 

僅かに。

 

明るくなる。

 

「何を」

 

「全部」

 

柳琳は。

 

少し。

 

笑う。

 

「休日なのに?」

 

「ああ」

 

「興味津々ですね」

 

「ああ」

 

「そこまで」

 

「真っ直ぐ言われると」

 

柳琳は。

 

視線。

 

少し。

 

逸らす。

 

「困ります」

 

「嫌ではない?」

 

「嫌ではありません」

 

「ああ」

 

時雨は。

 

食事。

 

続ける。

 

柳琳は。

 

時雨の横顔を見る。

 

いつも。

 

自分が。

 

時雨を見る。

 

傷。

 

疲れ。

 

無理。

 

今日は。

 

時雨が。

 

自分を見る。

 

指揮。

 

武。

 

兵。

 

知らない姿。

 

興味。

 

向ける。

 

胸の奥。

 

温かい。

 

「午後」

 

柳琳が言う。

 

「私と」

 

「虎豹騎の」

 

「個人訓練を」

 

「見ますか」

 

時雨の目が。

 

僅かに。

 

明るくなる。

 

「ああ」

 

「ただし」

 

「口を出さない」

 

「ああ」

 

「勝負を申し込まない」

 

時雨。

 

少し。

 

黙る。

 

柳琳の目。

 

鋭くなる。

 

「時雨」

 

「ああ」

 

「今」

 

「考えましたね」

 

「ああ」

 

「申し込まないでください」

 

「分かった」

 

柳琳は。

 

小さく笑う。

 

「本当に」

 

「華琳様のご心配通りです」

 

---

 

午後。

 

個人訓練。

 

柳琳。

 

まず。

 

弓。

 

馬上。

 

動く標的。

 

虎豹騎。

 

次々。

 

射る。

 

柳琳。

 

最後。

 

出る。

 

時雨。

 

木陰。

 

立つ。

 

柳琳。

 

葦毛の馬。

 

乗る。

 

弓。

 

持つ。

 

開始。

 

馬。

 

走る。

 

標的。

 

三つ。

 

一つ。

 

高い。

 

一つ。

 

低い。

 

一つ。

 

後方。

 

柳琳。

 

一射。

 

高い標的。

 

中央。

 

二射。

 

低い標的。

 

馬の脚。

 

位置。

 

三射。

 

身体を。

 

振り返る。

 

後方。

 

喉。

 

全部。

 

命中。

 

時雨の目。

 

細くなる。

 

「秋蘭より」

 

「遅い」

 

柳琳が。

 

馬から降りながら言う。

 

「ですが」

 

「救出や護衛では」

 

「十分です」

 

「正確」

 

「ああ」

 

「秋蘭ほどではありません」

 

「比べてない」

 

柳琳が。

 

時雨を見る。

 

「なら」

 

「どうですか」

 

「綺麗」

 

柳琳の頬。

 

また。

 

赤くなる。

 

「射が?」

 

「ああ」

 

一瞬。

 

少し。

 

残念そう。

 

時雨は。

 

続ける。

 

「柳琳も」

 

柳琳の目。

 

大きくなる。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「二人の時にと」

 

「言いました」

 

時雨は。

 

周囲を見る。

 

虎豹騎。

 

いる。

 

「二人じゃないな」

 

「はい」

 

「後で言う」

 

柳琳の顔。

 

完全に。

 

困る。

 

兵たち。

 

聞いていないふり。

 

限界。

 

何人か。

 

口元。

 

僅かに。

 

動く。

 

柳琳。

 

すぐに。

 

指揮官の目。

 

「次!」

 

兵。

 

一斉。

 

姿勢。

 

正す。

 

---

 

剣。

 

柳琳。

 

細身。

 

長剣。

 

相手。

 

夏侯真。

 

虎豹騎副官。

 

木剣。

 

ではない。

 

刃。

 

潰してある。

 

訓練剣。

 

二人。

 

構える。

 

柳琳。

 

普段。

 

剣を。

 

抜く姿。

 

時雨。

 

ほぼ。

 

見たことない。

 

開始。

 

夏侯真。

 

前。

 

速い。

 

柳琳。

 

受ける。

 

正面。

 

力。

 

競わない。

 

刃。

 

滑らせる。

 

夏侯真の手首。

 

狙う。

 

夏侯真。

 

引く。

 

柳琳。

 

踏み込む。

 

一歩。

 

小さい。

 

だが。

 

鋭い。

 

剣先。

 

喉。

 

寸前。

 

夏侯真。

 

身体を。

 

横へ。

 

柳琳の剣。

 

追わない。

 

足。

 

払う。

 

夏侯真。

 

跳ぶ。

 

二人。

 

離れる。

 

時雨。

 

見る。

 

柳琳の剣。

 

殺す。

 

ためだけではない。

 

止める。

 

崩す。

 

動けなくする。

 

腕。

 

脚。

 

武器。

 

狙う。

 

急所。

 

最後。

 

必要なら。

 

入れる。

 

その順。

 

「医者の剣だな」

 

時雨が。

 

小さく言う。

 

柳琳。

 

聞こえる。

 

僅かに。

 

目。

 

時雨へ。

 

動く。

 

夏侯真。

 

その隙。

 

入る。

 

剣。

 

柳琳の肩。

 

柳琳。

 

即座。

 

身体。

 

沈める。

 

避ける。

 

柄。

 

夏侯真の腹。

 

寸止め。

 

夏侯真。

 

止まる。

 

「私の負けです」

 

柳琳は。

 

剣を下ろす。

 

「違います」

 

夏侯真が。

 

顔を上げる。

 

「私が」

 

「時雨へ」

 

「気を取られました」

 

時雨の眉。

 

動く。

 

柳琳は。

 

夏侯真を見る。

 

「戦場なら」

 

「相手の隙でした」

 

「あなたの勝ちです」

 

夏侯真。

 

少し。

 

迷う。

 

「ですが」

 

「指揮官が」

 

「見学者へ」

 

「気を取られるとは」

 

「思いませんでした」

 

虎豹騎。

 

空気。

 

僅かに。

 

変わる。

 

副官。

 

言った。

 

柳琳の頬。

 

ほんの僅かに。

 

赤い。

 

「夏侯真」

 

「はい」

 

「次の訓練」

 

「馬上槍を」

 

「二倍にします」

 

「私だけでしょうか」

 

「全隊です」

 

虎豹騎。

 

一斉。

 

僅かな。

 

絶望。

 

時雨が。

 

口を開く。

 

「八つ当たり」

 

柳琳の目。

 

時雨へ。

 

向く。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「口を出さない約束です」

 

「ああ」

 

「今」

 

「出しました」

 

「ああ」

 

「反省していますか」

 

「してない」

 

虎豹騎。

 

何人か。

 

完全に。

 

笑いを。

 

堪える。

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

数秒。

 

次。

 

小さく息を吐く。

 

「では」

 

「馬上槍は」

 

「通常通りです」

 

夏侯真。

 

頭を下げる。

 

「ありがとうございます」

 

柳琳は。

 

時雨の前へ来る。

 

「私が」

 

「気を取られたのは」

 

「時雨のせいでもあります」

 

「なぜ」

 

「訓練中に」

 

「医者の剣などと」

 

「言うからです」

 

「ああ」

 

「どういう意味ですか」

 

「殺す前に」

 

「止める場所を」

 

「狙ってる」

 

柳琳の目。

 

僅かに。

 

揺れる。

 

「見ていたのですね」

 

「ああ」

 

「全部」

 

「ああ」

 

「興味がある?」

 

「ああ」

 

柳琳の頬。

 

再び。

 

赤み。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「今日は」

 

「その言葉を」

 

「何度も」

 

「言いますね」

 

「事実」

 

「困ります」

 

「嫌ではない?」

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

「嫌ではありません」

 

「ああ」

 

「ですが」

 

柳琳は。

 

少し。

 

声を落とす。

 

「私も」

 

「時雨へ」

 

「興味があります」

 

時雨の眉が。

 

僅かに。

 

上がる。

 

「前から」

 

「はい」

 

「どこに」

 

「全部です」

 

今度。

 

時雨が。

 

僅かに。

 

止まる。

 

柳琳の口元。

 

柔らかく。

 

上がる。

 

「お返しです」

 

「何が」

 

「時雨が」

 

「私へ言ったことです」

 

「ああ」

 

「少し」

 

「困りましたか」

 

「ああ」

 

柳琳の笑み。

 

深くなる。

 

普段の。

 

穏やかな柳琳。

 

だが。

 

鎧。

 

剣。

 

指揮官。

 

両方。

 

ある。

 

時雨は。

 

さらに。

 

興味。

 

強くなる。

 

「柳琳」

 

「何でしょう」

 

「次」

 

「槍?」

 

「はい」

 

「ああ」

 

「見たい」

 

柳琳は。

 

頷く。

 

「では」

 

「最後まで」

 

「見ていてください」

 

---

 

槍。

 

柳琳。

 

長槍。

 

馬上。

 

相手。

 

三騎。

 

一人。

 

三人。

 

実戦形式。

 

時雨の目。

 

明らかに。

 

輝く。

 

柳琳。

 

葦毛。

 

走る。

 

三騎。

 

包囲。

 

正面。

 

一騎。

 

槍。

 

突く。

 

柳琳。

 

自分の槍。

 

絡める。

 

外へ。

 

流す。

 

同時。

 

馬。

 

右。

 

二騎目。

 

横。

 

入る。

 

柳琳。

 

身体。

 

低く。

 

避ける。

 

槍の柄。

 

二騎目の腕。

 

打つ。

 

武器。

 

落ちる。

 

三騎目。

 

後ろ。

 

柳琳。

 

振り向かない。

 

馬の耳。

 

動き。

 

見る。

 

槍。

 

後方へ。

 

突き出す。

 

寸前。

 

三騎目の胸。

 

止まる。

 

一騎目。

 

戻る。

 

柳琳。

 

槍。

 

引く。

 

馬。

 

回る。

 

一騎目の首。

 

寸止め。

 

全て。

 

速い。

 

流れ。

 

切れない。

 

「そこまで!」

 

夏侯真の声。

 

三騎。

 

止まる。

 

柳琳。

 

呼吸。

 

僅かに。

 

速い。

 

だが。

 

姿勢。

 

崩れない。

 

時雨は。

 

気づけば。

 

指揮台から。

 

前へ。

 

一歩。

 

出ていた。

 

柳琳。

 

馬上。

 

時雨を見る。

 

「どうでしたか」

 

「ああ」

 

「何でしょう」

 

「強い」

 

柳琳の目。

 

柔らかい。

 

「華琳様や」

 

「春蘭ほどではありません」

 

「比べてない」

 

「ああ」

 

「柳琳が」

 

「強い」

 

柳琳。

 

馬から降りる。

 

時雨の前。

 

「嬉しいです」

 

声。

 

素直。

 

「医療だけだと」

 

「思ってた」

 

「そうでしょうね」

 

「悪かった」

 

「謝ることではありません」

 

柳琳は。

 

槍を。

 

兵へ渡す。

 

「私は」

 

「医療を」

 

「大切にしています」

 

「ですが」

 

「それだけでは」

 

「守れないものもあります」

 

「ああ」

 

「虎豹騎の兵は」

 

「私が」

 

「治療する前に」

 

「私が」

 

「戦場から」

 

「連れ帰ります」

 

「そのために」

 

「武を学び」

 

「指揮を学びました」

 

時雨は。

 

虎豹騎を見る。

 

五百。

 

精鋭。

 

柳琳。

 

指揮官。

 

いつもの。

 

優しい女。

 

同じ。

 

「柳琳」

 

「何でしょう」

 

「似合ってる」

 

「鎧が?」

 

「ああ」

 

柳琳の頬。

 

僅かに。

 

赤い。

 

「胸当て」

 

「硬そうだな」

 

柳琳の動きが。

 

止まる。

 

周囲。

 

完全に。

 

静か。

 

時雨は。

 

純粋。

 

鎧。

 

構造。

 

見ている。

 

虎豹騎。

 

女性指揮官用。

 

胸部。

 

厚い。

 

動き。

 

制限。

 

少ない。

 

「胸に」

 

「弱いんじゃなかったのか」

 

時雨が続ける。

 

柳琳の顔。

 

一気に。

 

赤くなる。

 

「時雨!」

 

虎豹騎。

 

ついに。

 

何人か。

 

咳。

 

誤魔化す。

 

夏侯真。

 

空を見る。

 

柳琳は。

 

時雨の腕を掴む。

 

「こちらへ」

 

「どこへ」

 

「兵から」

 

「離れます」

 

「なぜ」

 

「いいからです」

 

指揮官の声。

 

だが。

 

甘い。

 

恥ずかしい。

 

時雨は。

 

訓練場の端。

 

小屋の陰へ。

 

連れていかれる。

 

二人。

 

周囲。

 

兵。

 

見えにくい。

 

柳琳は。

 

時雨の腕。

 

離す。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「兵の前で」

 

「胸の話をしないでください」

 

「鎧だ」

 

「同じです」

 

「違う」

 

「私には」

 

「同じです」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

顔。

 

赤い。

 

鎧。

 

胸当て。

 

「嫌だったか」

 

柳琳は。

 

少し。

 

視線。

 

逸らす。

 

「嫌ではありません」

 

「ああ」

 

「ですが」

 

「恥ずかしいです」

 

「ああ」

 

「二人の時に」

 

「聞いてください」

 

「ああ」

 

「今」

 

「二人です」

 

時雨の目が。

 

僅かに。

 

動く。

 

柳琳。

 

自分で言った後。

 

頬。

 

さらに。

 

赤い。

 

時雨は。

 

柳琳の胸当てを見る。

 

「硬い?」

 

柳琳は。

 

一瞬。

 

言葉。

 

失う。

 

「鎧は」

 

「硬いです」

 

「ああ」

 

「中は」

 

時雨が。

 

聞きかける。

 

柳琳の手。

 

時雨の口元へ。

 

そっと。

 

置かれる。

 

「それ以上は」

 

「聞かないでください」

 

時雨は。

 

柳琳の手を見る。

 

柔らかい。

 

普段。

 

傷を診る手。

 

指揮官。

 

槍を握る手。

 

「ああ」

 

柳琳は。

 

手を離す。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「女性の胸へ」

 

「弱いのに」

 

「鎧姿にも」

 

「興味を持つのですね」

 

「ああ」

 

「私だから?」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

「柳琳だから」

 

柳琳の目。

 

僅かに。

 

揺れる。

 

馬上勝負。

 

雪蓮へ。

 

言った。

 

孫策だから。

 

助けた。

 

今。

 

柳琳だから。

 

興味。

 

ある。

 

「そうですか」

 

柳琳は。

 

小さく。

 

微笑む。

 

「なら」

 

「嬉しいです」

 

「でも」

 

「胸当ての中は」

 

「見せません」

 

時雨の眉。

 

僅かに。

 

動く。

 

「見たいとは」

 

「まだ」

 

「言ってません」

 

「これから」

 

「言いそうでした」

 

「ああ」

 

「否定しないのですね」

 

「興味はある」

 

柳琳は。

 

額へ。

 

手を当てる。

 

「本当に」

 

「正直です」

 

「嘘よりいい」

 

「はい」

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

「時雨の」

 

「そういうところは」

 

「嫌いではありません」

 

「ああ」

 

「ですが」

 

柳琳は。

 

時雨へ。

 

一歩。

 

近づく。

 

鎧。

 

胸当て。

 

硬い。

 

時雨の胸へ。

 

僅かに。

 

触れる。

 

「硬いでしょう?」

 

時雨の身体。

 

少し。

 

固まる。

 

「硬い」

 

柳琳の目。

 

僅かに。

 

いたずら。

 

光る。

 

普段。

 

あまり見せない。

 

「中は」

 

「違います」

 

時雨の目。

 

柳琳へ。

 

向く。

 

柳琳の頬。

 

赤い。

 

それでも。

 

逃げない。

 

「柳琳」

 

「何でしょう」

 

「猛攻か」

 

柳琳の目。

 

大きくなる。

 

雪蓮。

 

猛攻。

 

胸。

 

時雨。

 

思い出した。

 

柳琳は。

 

小さく。

 

笑う。

 

「違います」

 

「では」

 

「何だ」

 

「休日の」

 

「お礼です」

 

「何の」

 

「私を」

 

「見てくれたことへの」

 

時雨は。

 

少し。

 

考える。

 

「まだ見たい」

 

柳琳の頬。

 

再び。

 

赤い。

 

「訓練を?」

 

「ああ」

 

僅かに。

 

残念。

 

時雨は続ける。

 

「柳琳も」

 

柳琳の目。

 

柔らかくなる。

 

「では」

 

「最後の訓練まで」

 

「見ていてください」

 

「ああ」

 

---

 

最後。

 

虎豹騎。

 

全隊。

 

整列。

 

五百。

 

馬上。

 

柳琳。

 

先頭。

 

夕方。

 

光。

 

銀の鎧。

 

輝く。

 

時雨。

 

指揮台。

 

隣。

 

華琳。

 

いつの間にか。

 

来ていた。

 

春蘭。

 

秋蘭。

 

桂花。

 

稟。

 

風。

 

栄華。

 

霞。

 

何人か。

 

後ろ。

 

「来たのか」

 

時雨が言う。

 

「ああ、ではなく」

 

「ええ」

 

華琳は。

 

僅かに笑う。

 

「休日のあなたが」

 

「虎豹騎の訓練場から」

 

「一日中戻らないと」

 

「報告を受けたの」

 

「見学」

 

「知っているわ」

 

「口を出していない?」

 

「ああ」

 

柳琳が。

 

馬上から。

 

華琳へ言う。

 

「二度ほど」

 

「出しました」

 

華琳の目が。

 

時雨へ。

 

向く。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「約束は」

 

「口を出さないことでは?」

 

「ああ」

 

「破ったのね」

 

「ああ」

 

「反省は」

 

「してない」

 

華琳は。

 

深く息を吐く。

 

栄華が。

 

扇を開く。

 

「休日まで」

 

「手のかかる方ですわ」

 

霞が笑う。

 

「でも」

 

「楽しそうやん」

 

時雨が見る。

 

「誰が」

 

「時雨が」

 

「そうか」

 

「否定せえへんのやな」

 

「ああ」

 

華琳は。

 

柳琳を見る。

 

鎧。

 

馬。

 

指揮官。

 

「柳琳」

 

「はい」

 

「時雨を」

 

「随分と」

 

「夢中にさせたようね」

 

柳琳の頬。

 

僅かに。

 

赤い。

 

それでも。

 

馬上。

 

堂々。

 

「虎豹騎を」

 

「見ていただいただけです」

 

時雨が言う。

 

「柳琳も」

 

華琳の眉が。

 

僅かに。

 

上がる。

 

栄華の扇。

 

止まる。

 

霞の口元。

 

上がる。

 

柳琳。

 

時雨を見る。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「今は」

 

「華琳様が」

 

「聞いています」

 

「ああ」

 

華琳は。

 

柳琳。

 

時雨。

 

交互。

 

見る。

 

「そう」

 

「柳琳にも」

 

「興味津々なのね」

 

「ああ」

 

華琳の笑み。

 

僅かに。

 

冷える。

 

だが。

 

怒りだけではない。

 

柳琳。

 

虎豹騎。

 

重要。

 

時雨が。

 

認める。

 

それは。

 

華琳にも。

 

嬉しい。

 

「何が」

 

「そこまで」

 

「気に入ったの」

 

華琳が尋ねる。

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

次。

 

虎豹騎。

 

「兵を」

 

「使い潰さない」

 

「でも」

 

「危険から」

 

「逃がさない」

 

「ああ」

 

「柳琳は」

 

「敵も救う」

 

「でも」

 

「必要なら」

 

「自分で」

 

「槍を入れる」

 

「ああ」

 

「優しいだけじゃない」

 

華琳の目。

 

僅かに。

 

柔らかくなる。

 

「ようやく」

 

「気づいたのね」

 

「ああ」

 

「柳琳は」

 

「私が」

 

「虎豹騎を預けた将よ」

 

「弱いはずがないでしょう」

 

柳琳は。

 

馬上。

 

僅かに。

 

頭を下げる。

 

「華琳様」

 

「誇りに思うわ」

 

華琳が言う。

 

「あなたも」

 

「虎豹騎も」

 

柳琳の目。

 

強くなる。

 

「ありがとうございます」

 

虎豹騎。

 

全員。

 

姿勢。

 

正す。

 

華琳は。

 

手を上げる。

 

「訓練を」

 

「続けなさい」

 

「はい!」

 

柳琳。

 

馬を。

 

前へ。

 

出す。

 

最後。

 

全隊。

 

突撃。

 

五百騎。

 

地面。

 

震える。

 

時雨。

 

華琳。

 

皆。

 

見る。

 

柳琳の槍。

 

上がる。

 

「虎豹騎!」

 

声。

 

鋭い。

 

美しい。

 

「我らは」

 

「魏の牙!」

 

兵。

 

応える。

 

「魏の爪!」

 

「敵を裂き!」

 

「味方を守り!」

 

「必ず帰る!」

 

五百。

 

声。

 

一つ。

 

「必ず帰る!」

 

柳琳の槍。

 

前。

 

「前進!」

 

虎豹騎。

 

走る。

 

白銀。

 

黒い馬。

 

土煙。

 

夕日。

 

一つの獣。

 

時雨の目。

 

釘付け。

 

華琳は。

 

その横顔を見る。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「本当に」

 

「気に入ったのね」

 

「ああ」

 

「虎豹騎が?」

 

「ああ」

 

「柳琳が?」

 

「ああ」

 

華琳の眉。

 

僅かに。

 

動く。

 

「私より?」

 

「比べない」

 

「また」

 

「その答え?」

 

「ああ」

 

華琳は。

 

小さく息を吐く。

 

「まあ」

 

「よいわ」

 

「柳琳は」

 

「私の大切な将」

 

「あなたが」

 

「彼女の強さを知ることは」

 

「悪くない」

 

「胸も」

 

華琳の目が。

 

一気に。

 

鋭くなる。

 

「時雨」

 

「鎧の話だ」

 

「今」

 

「絶対に」

 

「鎧だけではなかったでしょう」

 

「ああ」

 

華琳の笑み。

 

冷える。

 

栄華の扇。

 

時雨の肩。

 

軽く。

 

打つ。

 

「休日の最後まで!」

 

「何を話していますの!」

 

霞。

 

腹を抱える。

 

「柳琳」

 

「何したんや?」

 

訓練。

 

終え。

 

戻ってきた柳琳。

 

馬から降りる。

 

霞を見る。

 

「何もしていません」

 

時雨が言う。

 

「胸当てを」

 

「押しつけられた」

 

全員。

 

止まる。

 

柳琳の顔。

 

一気に。

 

赤くなる。

 

「時雨!」

 

華琳の蒼い瞳。

 

柳琳へ。

 

ゆっくり。

 

向く。

 

「柳琳」

 

声。

 

穏やか。

 

だが。

 

危険。

 

「説明を」

 

柳琳は。

 

鎧姿のまま。

 

姿勢を正す。

 

「硬さを」

 

「確認していただいただけです」

 

栄華の扇。

 

止まる。

 

桂花の顔。

 

赤い。

 

春蘭。

 

意味。

 

理解。

 

遅れる。

 

霞。

 

地面へ。

 

しゃがむ。

 

笑う。

 

「何の硬さや!」

 

「鎧です!」

 

柳琳の声。

 

珍しく。

 

大きい。

 

時雨が。

 

頷く。

 

「ああ」

 

華琳は。

 

額を押さえる。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「休日は」

 

「楽しかった?」

 

時雨は。

 

虎豹騎。

 

柳琳。

 

見る。

 

「悪くない」

 

柳琳の目。

 

柔らかくなる。

 

華琳も。

 

少し。

 

笑う。

 

「なら」

 

「よかったわ」

 

「ただし」

 

華琳は。

 

時雨の腕を。

 

掴む。

 

「今夜は」

 

「私の部屋で」

 

「今日見たものを」

 

「最初から」

 

「全部」

 

「説明しなさい」

 

「ああ」

 

「胸当ての件も」

 

「詳しく」

 

「ああ」

 

柳琳が。

 

小さく。

 

手を上げる。

 

「華琳様」

 

「何?」

 

「それは」

 

「できれば」

 

「忘れてください」

 

「無理ね」

 

「なぜですか」

 

「時雨が」

 

「忘れないからよ」

 

時雨が。

 

柳琳を見る。

 

「ああ」

 

柳琳の頬。

 

また。

 

赤い。

 

「時雨まで」

 

「肯定しないでください」

 

栄華が。

 

柳琳を見る。

 

「あなた」

 

「わたくしが」

 

「知らない間に」

 

「随分と」

 

「大胆なことをしましたわね」

 

「違います」

 

「では」

 

「何ですの」

 

「鎧の説明です」

 

「胸で?」

 

「胸当てです!」

 

霞が。

 

また。

 

笑う。

 

春蘭が。

 

ようやく。

 

理解。

 

顔。

 

赤い。

 

「不埒だ!」

 

「違います!」

 

柳琳。

 

虎豹騎の指揮官。

 

五百騎を。

 

一声で動かす。

 

精鋭。

 

だが。

 

魏の将たちに。

 

囲まれ。

 

胸当ての説明を。

 

迫られている。

 

時雨は。

 

その横。

 

少し。

 

楽しそう。

 

華琳は。

 

見逃さない。

 

「時雨」

 

「何だ」

 

「笑っているでしょう」

 

「分からない」

 

「笑っているわ」

 

柳琳も。

 

時雨を見る。

 

「はい」

 

「少し」

 

「笑っています」

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

鎧。

 

頬。

 

赤い。

 

指揮官。

 

普段と。

 

違う。

 

でも。

 

同じ。

 

「柳琳」

 

「何でしょう」

 

「また」

 

「見たい」

 

周囲。

 

一瞬。

 

静か。

 

柳琳の目。

 

柔らかい。

 

「虎豹騎を?」

 

「ああ」

 

「私も?」

 

「ああ」

 

柳琳は。

 

頷く。

 

「いつでも」

 

「来てください」

 

華琳の目が。

 

僅かに。

 

細くなる。

 

「休日に?」

 

「華琳様の」

 

「許可があれば」

 

「なら」

 

華琳は。

 

時雨を見る。

 

「次の休日も」

 

「柳琳の訓練を」

 

「見たい?」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

「見たい」

 

華琳の眉が。

 

動く。

 

「私との休日より?」

 

「比べない」

 

華琳は。

 

深く。

 

息を吐く。

 

「本当に」

 

「その答えが」

 

「好きね」

 

「ああ」

 

「もうよいわ」

 

---

 

帰り道。

 

夕暮れ。

 

時雨。

 

中央。

 

華琳。

 

右。

 

柳琳。

 

左。

 

柳琳は。

 

鎧の一部。

 

外している。

 

それでも。

 

普段着ではない。

 

指揮官。

 

残る。

 

華琳が。

 

時雨へ尋ねる。

 

「休日に」

 

「仕事をしなかった?」

 

「ああ」

 

「訓練へ」

 

「参加していない?」

 

「ああ」

 

「策を」

 

「教えていない?」

 

時雨。

 

僅かに。

 

黙る。

 

柳琳が。

 

すぐに答える。

 

「二度」

 

「口を出しました」

 

華琳の目。

 

時雨へ。

 

「時雨」

 

「ああ」

 

「また」

 

「認めるだけ?」

 

「ああ」

 

「反省は」

 

「してない」

 

華琳は。

 

額を押さえる。

 

柳琳は。

 

小さく笑う。

 

「ですが」

 

「見学だけでした」

 

「いつもよりは」

 

「休めたと思います」

 

「柳琳が」

 

「そう言うなら」

 

華琳は。

 

少し。

 

納得。

 

「それに」

 

柳琳が続ける。

 

「時雨は」

 

「とても」

 

「楽しそうでした」

 

時雨が見る。

 

「そうか」

 

「はい」

 

「目が」

 

「違いました」

 

華琳も。

 

頷く。

 

「私も」

 

「分かったわ」

 

「あなた」

 

「強い部隊を見ると」

 

「子供のような目をするのね」

 

「違う」

 

「どう違うの」

 

「子供じゃない」

 

「そこだけ?」

 

「ああ」

 

柳琳が。

 

声を立てずに。

 

笑う。

 

時雨は。

 

柳琳を見る。

 

「いつもと違うな」

 

「何がですか」

 

「よく笑う」

 

柳琳の目。

 

柔らかくなる。

 

「時雨が」

 

「今日」

 

「いつもより」

 

「多く話してくださるからです」

 

「ああ」

 

「私も」

 

「嬉しいのです」

 

時雨は。

 

少し。

 

黙る。

 

「そうか」

 

「はい」

 

華琳は。

 

二人を見る。

 

少し。

 

嫉妬。

 

だが。

 

悪くない。

 

休日。

 

時雨。

 

戦場ではない。

 

軍議でもない。

 

誰かの。

 

知らなかった姿を知り。

 

興味。

 

持つ。

 

笑う。

 

次。

 

見たいと言う。

 

それは。

 

休み方として。

 

間違いではない。

 

「時雨」

 

華琳が呼ぶ。

 

「何だ」

 

「今日の休日」

 

「合格にしてあげる」

 

「何の」

 

「休むことよ」

 

「見てただけ」

 

「ああ」

 

「それでよいの」

 

華琳は。

 

僅かに笑う。

 

「あなたにとって」

 

「何もしない休日は」

 

「まだ難しい」

 

「なら」

 

「好きなものを」

 

「仕事にせず」

 

「見る」

 

「それも」

 

「休みでしょう」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

「ああ」

 

柳琳も。

 

頷く。

 

「次は」

 

「馬へ乗らず」

 

「兵へ指示も出さず」

 

「見ていてください」

 

「ああ」

 

「その代わり」

 

柳琳は。

 

時雨を見る。

 

「訓練後」

 

「少し」

 

「二人で話しましょう」

 

華琳の目が。

 

僅かに。

 

鋭くなる。

 

「柳琳」

 

「はい」

 

「二人で?」

 

柳琳の頬。

 

少し。

 

赤い。

 

だが。

 

退かない。

 

「虎豹騎について」

 

「時雨が」

 

「聞きたいことが」

 

「多いようですので」

 

時雨が頷く。

 

「ああ」

 

「胸当てのことも?」

 

華琳が尋ねる。

 

柳琳の顔。

 

一気に。

 

赤い。

 

「華琳様!」

 

時雨は。

 

少し考える。

 

「聞きたい」

 

柳琳が。

 

時雨を見る。

 

華琳の笑み。

 

冷える。

 

後ろ。

 

霞。

 

再び。

 

笑う。

 

栄華の扇。

 

時雨の肩。

 

軽く。

 

飛ぶ。

 

「時雨!」

 

「何だ」

 

「少しは!」

 

「言葉を!」

 

「選んでくださいませ!」

 

「選んだ」

 

「選んでいません!」

 

夕暮れ。

 

許昌への道。

 

笑い。

 

怒声。

 

馬。

 

虎豹騎。

 

遠く。

 

訓練を終え。

 

厩舎へ戻る。

 

柳琳。

 

普段。

 

穏やか。

 

医療。

 

民。

 

優しい。

 

だが。

 

虎豹騎の前。

 

違う。

 

鋭い。

 

厳しい。

 

迷わない。

 

必要なら。

 

自ら。

 

最も危険な場所へ入る。

 

兵を。

 

使い潰さない。

 

甘やかさない。

 

失敗を。

 

隠させない。

 

救う。

 

倒す。

 

帰す。

 

全て。

 

同時に。

 

行う。

 

時雨は。

 

その姿へ。

 

強く。

 

惹かれた。

 

恋か。

 

尊敬か。

 

軍人としての興味か。

 

まだ。

 

分からない。

 

ただ。

 

もっと。

 

見たい。

 

知りたい。

 

そう。

 

思った。

 

柳琳も。

 

時雨に。

 

見られたことを。

 

嬉しく思った。

 

優しいだけの女ではない。

 

医官だけではない。

 

虎豹騎を率いる将。

 

その姿を。

 

時雨が。

 

綺麗だと。

 

強いと。

 

認めた。

 

胸当ての件は。

 

余計だった。

 

だが。

 

それも。

 

柳琳にとって。

 

完全に。

 

嫌なものではなかった。

 

休日。

 

時雨は。

 

仕事をしなかった。

 

剣も。

 

振らなかった。

 

兵も。

 

動かさなかった。

 

ただ。

 

柳琳と虎豹騎を。

 

見た。

 

知らなかったものを。

 

知った。

 

興味を持った。

 

次。

 

また見たいと。

 

思った。

 

それは。

 

時雨にとって。

 

確かに。

 

休日だった。

 

そして。

 

翌日。

 

虎豹騎の兵たちの間で。

 

一つの噂が。

 

静かに広がった。

 

張燕将軍は。

 

柳琳将軍の訓練を。

 

一日中。

 

目を輝かせて。

 

見ていた。

 

柳琳将軍は。

 

張燕将軍へ。

 

胸当てを。

 

自ら押しつけた。

 

後半は。

 

正しくない。

 

だが。

 

噂とは。

 

そういうものだった。

 

その噂を聞いた柳琳が。

 

普段の穏やかな笑みのまま。

 

虎豹騎全隊へ。

 

追加訓練を命じたこと。

 

そして。

 

追加訓練の内容が。

 

規律ではなく。

 

噂を広めた者を探すための。

 

無言行軍だったことを。

 

時雨は。

 

まだ。

 

知らなかった。




感想、評価、お気に入りよろしくお願い致します!

次の作品の主人公とルートは誰がいい?

  • 高順呂布ルート(ヒロイン恋、霞)
  • 朱霊曹操ルート(ヒロイン華琳、柳琳)
  • 周倉関羽ルート(ヒロイン愛紗)
  • 孫瑜孫権ルート(ヒロイン蓮華、粋怜)
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