現れた水色の剣士の正体を訝しみながらも、怪我をしているタツヤデモートと司波深雪に対して向かうその攻撃を防ぐ。
「その剣士は壬生先輩だ!気をつけろ!!」
その言葉に動揺する。明らかに完全に違う人物にしか見えなかったからだ。
エイドス改変での魔法をアキラは彼女に向けなかったが、それでもここまでの変化ないし、「変身」とでも言うべきものは異常にすぎる。
彼女の情報領域をここまで弄り、違うものにするなど……原作でのパラサイト憑依を想起するも……。
(ここまでの変化あり得んのか?)
魔法科世界はファンタジックなラノベと違い、現代地球の延長線上の「間違った未来」「誰かが選択を誤った世界」とでもいうべきSFワールドだ。
そんな中、外見だけでなく能力値すら変えるほどの術など……。
(そういう「超常的存在」がいれば別だが、そんなものは、いないからな)
世界を思いのままにするという術が齎す矛盾を解消するために物理法則が
純粋な精神生命体が様々な手段で人間を改造したり、改造の道具に精神生命体が使われたりと……そんなことは当たり前だが。
この世界には肉体を持った『神』もなく、無数の矛盾を抱えた『在る』というカタチより完全なる矛盾の解消である『無』という滅びを望む『魔族』もいない。
(じゃあこれはなんなんだ?)
疑問を挟みながらも、剣戟は絶え間なく続きそれに対抗するためにアキラも戦わざるをえない。
「アキラ君!!」
言葉のあとには、エイドスの改変ーーー吹き飛ばしで壬生が倒れた。
剣士ゆえの体幹なのか、強力な情報領域ゆえか足は残ったが……。
「悪く思わないでくださいよ!!」
その一瞬に相手への接触。腕を取り電流を走らせる。
通常の術が通らないのではないかと思う「分厚い」エイドスではあったが、効かせることを目論んだアキラのそれが壬生の神経を麻痺させた。
少々、危険な試みではあるが、無力化するには仕方なく苦鳴を上げたあとには昏倒する。
現代医術が彼女に後遺症を残さないでくれることを祈っていると。
「俺が拘束する。お前はーーー休んでいてくれっ……!!」
「ーーー頼みます」
ボロボロの風体の桐原は何か身体を拘束する系統の術式で倒れ伏して、それでもまだ元の姿に戻らない壬生紗耶香を拘束した。
恐らくだが想い人にかなり強烈なことをしたアキラを罵りたいのかもしれないが、それを指摘せずに少し離れてから。
「助かったよ美月ありがとう」
「いいえ、アキラ君の手助け出来たならば嬉しいです」
頬を赤らめる美月に感謝しながらも、状況自体はまだ終わっていないのか、何かの圧を感じる。
「アキラ気付いているか?」
「上手く言えないが、何か巨大なものの「存在感」とでも言うべきものがまだこの場にある。ここで盛大に大人数が魔法戦とかやったことの影響じゃないよな?」
近づいてきたタツヤデモートに確認をする。頷く様子。
「壬生先輩をあんな姿とーーー能力値に改造した人間が資料室にいた。そいつらは……」
「まだいるのか?」
能力値に改造した。という辺りで言い淀んだタツヤデモートの心は魔法を深く識っているものだからこそのあり得なさだろう。
魔法師の持っている本来的な
あるいは……。
「魔法を使って他者を望んだ姿と能力値に変化・進化させるそんな方法があるのか?」
「ーーー不可能だ。確かにある程度は出来たとしても永続的な、あるいは不可逆の変化は本当に多くの機材に多くの資金、そしてそれを行う研究者や術者の多大なまでの実践によってなされる大改造手術があってこそなんだ……バッタオーグをショッカーが作るにも多くの失敗などがあったようにな…」
あるいは、自分が実の母親に受けた改造手術の意義や意味を無為にするようなものに納得がいかない「感情」を抱きつつあるのかもしれない。
俯き気味に暗い顔をするタツヤデモートにそう考えた時に、ふと思う。
(考えてみれば、コイツこそが聖域の召喚実験で魔王スウェーデンボリーと接触して強大なチカラと「鋏」を得て多くのドラゴン種族を殺したケシオン・ヴァンパイアみたいなもんだよな)
もっとも第三部や第四部の内容、ぼかしていた情報は劣等生のweb連載時点では秋田禎信氏の頭の中だけにあったので、そこまでのリンクではない。
と、ムダごとを考えていると……。
「やはり情報通りか」
「私たちと同じく接触したものということですね」
何かが「撓む」としか言えない音と共に現れたのは美女が2人。
一方は多くのパールのような装飾品があしらわれたドレスを着た黒髪の美女。
もう一方は金髪の美女。フィットネスジムの女性トレーナーを思わせる身体を普段着……と言ってもジーンズに随分とピッチリしたシャツとジャケットに包んでいる。
(似ている……いやビジュアルは違うのだが、何か既視感を覚える……)
行き過ぎたコスプレイヤーにしても、あまりにも原作解釈しすぎであると思うも、そういう領域ではあるまい。
「今日のところはお暇させてもらおう。少年の真価を知るには、このステージは狭すぎるからな」
「そのようね。私が『処置』したその子を倒したアナタには、ご褒美をあげましょう」
いらないです。などと言いたいが受け取り拒否することも怖いので、自分の足元に投げ込まれた(かなり速い)ものは特化型のストレージらしき器物……。
それに目を取られた隙に、2人は消えていた。
「一体なんだったんだ……」
タツヤデモートのらしくない呆然としたような嘆き。そして壬生が元のポニーテール剣道女子の姿に変じているのを見て桐原は涙を流している様子。
とりあえず学内は一件落着となった。
学外のことが待っている。
・
・
・
保健室に運び込まれた壬生紗耶香が意識を取り戻すと同時に尋問ーーーは言い過ぎだとしても、少々の事情聴取が成される。
原作通りの展開。
そして異物たるアキラは置物として地蔵マリオよろしくなりたかった。
のだが……。
「石田君との戦いは……全中での大久保さんとの戦いを思い出したわ。なんでなのかしら?」
「……別に俺に剣の心得なんてありゃしませんよ」
「そうね」
「ただ1つ言えることはあります。何かの道を極めるということは一人じゃ成り立たないことですから、相対するものが、双璧がいてこそそのチカラの限りを出しきれるーーー薫先輩言っていましたよ」
『誰もが自分を恐れる中で、壬生さんだけが常に立ち向かってきた。それが魔法使いだからかどうかは分からないけど、戦うたびに強くなり思いもよらない打ち合いが出来たーーーあの戦いの充実、誰にも共感できないわね』
他者のセリフを吐き出した後に、保健室には驚愕の沈黙が落ちていた。
「刻苦して腕を、技を、力を磨いた達人ならば、そう考える。そしてまだまだ成長する相手を、成長の極点に達した好敵手を倒してこそーーー最強の座に座ることが出来る。そういうもんでしょ?俺やアナタみたいなのって」
アキラも全国区のアスリートとしての価値観で言っておいた。
随分とクサいことを言ったわけだが。
「剣士・薫の心を借りてお前は戦ったわけか?」
「そんな所です。まぁーーーーーそういうことです」
十文字会頭の質問に余計なことを言おうとしたのを自重してから言葉を閉じた。
ーーー自分は、そういった道から降りざるを得なかったからーーー
サッカーの世界からアキラは降りたことをシニカルに語ろうとしたのを止めると。
「壬生、怪我が治ってからでいいーーー私に、怨敵エリカを倒すためにも、私と剣で打ち合ってくれ!!私という剣士じゃ大久保さんみたいな全国区には届かないかもしれないが、それでもーーー何かを掴みたいんだ……石田君が一科生と戦い、お前と戦うことで成長していけたように……」
渡辺委員長に起こったのは、どんな心境の変化だったのかは分からない。怨敵が何故エリカなのかも分からないが、まぁ少しだけの変化が齎されたことで良しとしておくのだった。
「疲れた顔しているワネ」
「そりゃ、あれだけ切った張ったの乱痴気騒ぎじゃな」
何で俺みたいなルーキーが、あんな事態に立ち向かったのか意味不明だ。こちらの顔を覗き込んでくるアンジェリーナの笑顔に返しながら、この後の
いるのは銃器を持った一般人と少しばかり特異な魔法を持った人と弱い能力を持った連中ばかりだ。
(タツヤデモートが誰かを殺そうと思って、そして殺しに行ったなら、まぁ無事にやりとげるだろうさ。気持ちのいい話ではないが、俺に止められることでもないしな)
疲れたので、もう後は野となれ山となれという気持ちで、クロエ・ルメールボイスの養護教諭を保健室に入れた後にーーーー。
「か、会頭!!会長も委員長も!!もう全員いるからいいんだけどーーー」
部屋に飛び込んできたのは服部副会長だ。困惑が形を作ったような顔をしている。
「その、船が、いや船ではないはずなんですが、とにかく空からやってきてーーー」
泡を食った様子で言葉もまとまっていなかった。
どうにもこの人が、ここまで動転していると何だか変な気分になる。
まぁキャラが違いすぎるような気がするのだが。
「と、とにかく空を見てご確認ください!!お願いします!!!」
色んな意味で魔法師らしい魔法師というイメージが定着している(残念系)美男子が、すっかり動転したその様はそこそこ見物ではあったのだが。 どうもそういった状況ではなさそうだと察して、アンジェリーナと顔を見合わせた。
そしてタンゲサンなボイスの養護教諭は、出番を、