魔法科高校登校2日目を終えて自宅に戻った達也は、諸々のことを調べてからーーーー少しだけ考える。
(コイツの経歴にはなんのおかしな所もない。まっさらにシロすぎる)
調べていたのは自分と同じく第一高校所属の2科生、1−Fの「石田アキラ」という同級生の事であった。
アンジェリーナという深雪のクラスメイトとの彼の会話を又聞きした限りでは、どうやら彼の魔法師としての活動は、まだ半年にも満たない。こんなやつが入学出来るとは第一高校のレベルが知れる。
ーーーなどと自分を棚に上げて調べた個人情報を頭の中で廃棄するのであった。
(こんな平凡な人間を気にかけるとは、俺もまだまだだな)
友人たちと一緒に又聞きしていただけに何かの偏向を受けて少々、神経質になりすぎていたのかもしれない。
そうして、妹がCADの調整をねだってくるのを受けて地下室へと向かうのだった……。
(などと、インモラル
心中でのみ夜中の司波家(両親不在)を想像しながら明日3日目のことを考える。
(3日目に関しては森崎刃傷事件を受けて、いや…その前から注目されていたことなど云々を含めて司波達也ことタツヤデモートは司波深雪と共に生徒会室に呼び出される)
そうして色々あって風紀委員会入りとなる。
(俺はどちらにも何も関与していないし、面識もないーーーだが……)
原作よりもフライングで登場したアンジェリーナが色々な意味でイレギュラーだ。
『See You Again!』などと別れ際に言ってきた彼女を思い出して苦虫を噛み潰す思いだ。彼女と関われば関わるほど俺の魔法大学付属を退学するという夢から遠ざかる。
俺の退学ロードは成績不良でもいいが、一番いいのは現一高の権力者から。
『お前もう船降りろ』
と言われることだ。だが、これはかなりリスクが高い。
とはいえ、これならば家族に波風を立たせずに退学出来るかもしれない。
(先のことなど考えても仕方ない……どうせワーストワンだからな!)
直近のことを考えるに俺が生徒会に呼ばれる可能性は低い。しかし、アンジェリーナが呼ばれる可能性は高い。彼女は留学生身分を偽装した際にも生徒会に所属したのだから。
明日は殆ど何も出来ない。というか原作キャラと関わりを絶ちすぎたせいか予測不可能だ。
(仮にお呼ばれしたとしても何を言われるのか。本当に船降りろだったらすごく助かるんだけどな)
明日は出たとこ勝負としか言えない。一番いいのは俺が呼ばれず、原作キャラ3人以上が生徒会に行くことだろう。
そうして考える内に睡魔が襲い……眠りへと就くのだった。
ーーー翌日。
あのタツヤデモートと死喰い人の一派の登校時間など知らない。というか分からないが、校門前にいるだろうバツイチを中の人に持つ女を避ける。
そこまで神経質にならなくてもいいかもしれないが、それでも万が一を考える。
そして何よりアンジェリーナとも接触しなければ最善。
自然体を装い、目からは殺気を殺して普通を演じつつ昇降口まで盗塁を試みる俊足ランナーの心で、見事に2科生の下駄箱まで到達。
よし、と思った瞬間。
オレンジ色のチョココロネロリがいやがった!!何だか何かをキョロキョロと探している様子。
F組の下駄箱付近で何かを探していたのだが、俺がF組の下駄履き付近に来た時点で。
「あの!1F組の生徒さんですか!?」
「はい、そうですけど……どうしたんですか?」
チョココロネロリこと中条あずさの言葉を聞いて確信する。
「石田アキラ君を見ませんでしたか?」
その言葉を聞いて。
「石田くんならば、さっき体育館みたいなところ、名称わかりませんが、そういうところに歩いていくのを見ましたよ」
「そうですか! ありがとうございます!!!」
こちらに一礼をしてから走っていくロリを見送ってから彼女とは反対方向に向けた顔は。
ーーー計画通りーーー
超悪人顔となっていたのだった。
いや、別に何か計画していたわけではないのだが、中条あずさというキャラの行動で、生徒会が俺に干渉してくるのが理解できた。
(楽観的に考えるならば、俺に退学勧告でも出してくれると考えるが……いや、それに賭けよう! むしろ!! そういう風に仕向ければよいのだ!!)
だが、それはそれでリスクが高いような気がする。
(まずは
様々な受講の予約をしつつ、端末を動かしていた時に一件のメールが入った。
予想通りというか予想外というか……。
(タツヤデモートたちだけを呼んでおけよ)
そう内心でのみ悪態を突きつつ、送信されたメールに返信をする。
ーーー突然のメール失礼します。第一高校生徒会のものですが、石田君のアドレスで間違いないでしょうか?
誰が書いた文面だろうか?予想をしつつも特に答えを出さずに返信する。
ーーーはい、そうです。石田アキラです。
ーーー本日の昼食。よろしければ生徒会室にて一緒に食べませんか? 少しお話したいこともありますので
ーーーすみません。友人と昼食を取ることになってますので、お断りします。
予想通りに最後の方でそんな事を書かれるも、断ることにした。そもそも、何故に俺が呼び出されるのだ。
(一番あり得そうなのは、アンジェリーナ・クドウ・シールズ「に」引っ付いているおじゃま虫たる俺を排除することを目論んでいる)
容疑者は百山校長だろう。そう考えると想定されている「提案」は渡りに船だが、それでも違う可能性を吟じつつも、ようやく始まった2科生の実習授業をこなしていくのだった。
なんだかどよめきがスゴイな。何かあったのかなー。とか思いつつ、何だか表情を呆けている出席番号が次の人間に譲るのだった。
(あいうえお順で石田が最初になっているのはアレだよな)
G組との合同授業は恙無く終わり、昼休み。
今日もお袋の弁当ーーーはないわけで、途中で入った軽食屋の一番安い弁当を持ち教室を出ようとした時にーーー。
「あっ、石田kーーー」
「アキラアアア!!! さぁ今日こそレッツランチよ!!!」
窓際の席ではなく廊下側の席にいた出席番号一番は、教室の戸が開けられると同時に、見えてきた顔に顔を顰める。
「昼飯にそこまで気合い入れる必要あるのか?」
「イイから!! アナタも生徒会に
「いや、俺はーーー」
もはや説得など聞かんと言わんばかりに自分を連れて行こうと引っ付くアンジェリーナに諦めて、腕を取られることになるのだった。
クラスメイトが何かを言いかけたような気もするが、いまはとりあえずいっぱいいっぱいなので置いておく。
仮に何かのお誘いなのだとしても、俺は当たり前のごとく退学へのカウントダウンを刻んでいるのだ。コ◯ン映画の封切りよろしく俺がここからいなくなるのは近いだろうから俺のことなど構わずにいてくれ。
そんな気持ちでいなければ、この居た堪れない環境で己を保てそうになかったのだ。
・
・
・
一足早く生徒会室に辿り着いていた司波兄妹は、そのやり取りを外から聞いていた。
『なんで無理矢理引っ張るんだよ!?』
『エスケープするからよ! そもそも断る理由にフレンドとランチなんてウソじゃない!!』
『違う!君には分からないだろうが、俺にはいるんだとてつもなく大事な親友ーーー』
なんで生徒会室の扉前で言い合っているのか分からぬが。
「ーーーエア友達のトモくんがな!!!」
「げふっ!!!」
門扉が自動開閉されると同時に放たれた言葉が渡辺風紀委員長を悶絶させた。
「ようこそ、アンジェリーナさん、石田アキラくん」
「ドウモ、アキラを連れてきましたヨ!」
「一度は断りましたがーーー頼まれたのかよ……」
何か申し訳でも申そうかとした石田は言葉を切ってからアンジェリーナを半眼で見ている。
そうしてから司波兄妹が来た時と同じくここにいる面子を紹介するのだが……。
「そちらの男子は?」「ソウ言えばワタシも知らないわ」
「1−Eの司波達也です。こちらの総代、司波深雪の兄に当たります。どうぞよろしく」
その言葉にめいめいに答える2人。空いている席に座る様子だ。
(興味を持たれすぎるのもアレだが、何も聞かれないと、それはそれで寂しいな)
同い年の兄妹の理由とか、どうしてここにいるのか、とか何でもいいから疑問で興味を持ってもらいたかったとは思うのであった。
そして……。
(なぜ、中条先輩は親の仇でも見るかのように石田を睨んでいるんだ)
理由は分からないが、あえて問わずに昼食は始まる。
そうして昼食は始まったのだが……。
「石田君ーーーそれだけか?」
「昼食の量をおっしゃっているならば、これだけです。お腹いっぱいなんですよ」
絆創膏だらけの指で石田の昼食を示した渡辺摩利からすれば「小さめのおにぎり2つ」に「唐揚げ2」で昼食を終えた石田は平均的な男子高校生の食事量を想定すれば少なすぎた。
「サーバーを稼働させましょうか?」
「いえ、ですからこれで『たくさん』なんですよ。俺が目に見えて痩せているように見えますか?」
この手のやり取りは毎度あったと思われる市原鈴音とのやり取りで、明らかにげんなりしている石田だった。
達也ほど何か話題があるわけでもない石田アキラは緑茶を飲みながらタブレットで何かを読んでいる様子だ。
(こいつは何のために呼ばれたんだか……)
その達也の心中の声が聞かれていれば。
それは俺が聞きたいことだ。
と返されただろう。
そして昼食が終わると同時に本題が始まるーーー。
・
・
・
原作通りの展開に異物がいるとはいえ、とりあえず何事もなく進んでいく入学時の成績優秀者への生徒会入りの打診。
この中では誰よりも成績不良なアキラとしては、なんでここに俺が呼ばれたんだか、と思いながら話の推移を見ていく。
原作とは違い、アンジェリーナ・クドウ・シールズも新入生としているせいか、彼女にも誘いが来た。
入学式時点で何かはあったのだろう。あったと覚えているのだが……。
「エエト、ドーしたらいいカシラ?」
「何で俺に聞くんだよ?君が決めるべきことだろ」
「ダッテ……」
「やったことがないとしても、ここにいる人たちならば君を雑には扱わない。何より君の故郷のフロンティアスピリッツというのは、こういう時に発揮されるべきものだ」
その言葉に気付かされたのか戸惑って不安がっていたアンジェリーナ・クドウ・シールズは、そのオーダーを受諾したのだった。
そして予想通りに、原作通りに兄貴の生徒会入りを願う司波深雪。アンジェリーナも何かを言おうとしたが、200という数字を端末に出して見せると、「うぐっ!」と黙ることになる。
どうやら俺を入れようとしていたらしい。そりゃ無茶だろ。なんの取り柄もない人間が入れる場所じゃない。
そうして、原作通りにタツヤデモートの風紀委員会入りにまで話が進み、ここに俺がいる意味あるのか?とか思い、清須会議における池田恒興の気分を味わいながらどうしたものかと思い、こそっ、と退室しようとしたのだが……。
「ちょっと待って! 話が長くなりすぎて放っておいたのは申し訳ないけど、石田君にも話があるから」
「もう昼休み終わりそうですが?」
そもそも、原作でもアレコレと話してる内に時間が差し迫っていたのだが、俺にまで話を持って行くには少々時間が無かった。
七草真由美の言葉に返すと。
「あとで……放課後にもう一度来てくれますか?」
「ちなみに何を言ってもらえると思う?」
どういうつもりなのかは分からないが、司波達也をやり込めてご機嫌らしくニヤニヤ笑う渡辺委員長の言葉にーーー。
「退学勧告ですね。俺のような成績不良者は、いずれ辛くなるから生徒会で引導を渡してくれるんだと思っています」
言葉通りに権限が強く大統領型の生徒自治が出来るならば、どこぞのドナルドよろしく。
と俺に告げてくれるはずだと思っていたのだが。
「そんなこと生徒の身分で出来るわけ無いでしょ!!!!!!」
「それ、さっきの生徒会の権限の説明と矛盾してませんか?」
絶叫しながら否定する真由美を置いて退室するアキラの背中を見てくる司波達也は、石田アキラという男がさっぱり分からなくなるも、やる気のない奴なのだと少しだけ軽蔑するのだった。
そう、そんな結論を出してから二十分後に……始まった実習授業にてその結論が非常に浅いものなのだと気付かされる。
やる気と実力はイコールではない。
例え本人にやる気が無くても出来るやつはコンスタントに結果を出すのだと……。
二科生としては驚異的な数値を叩き出したFクラスの生徒の名前がレコードタイムとして壁面モニターに表示されており……。
その名前は「石田アキラ」と表示されているのだった……。