放課後、本来ならばとっとと帰って大相撲の夏場所の取り組みでも見ているべきだが、呼び出された以上は仕方あるまい。
手短に話して要件を済まそうという気がないのかな。口頭でなければダメなのか?書面では無理なのか?
まぁ色々と言いたいことはあるが、クラスメイトたちに生徒会に呼び出されていると言って、何か話をしたがっていた同級生たちに申し訳なく思いながら、再び生徒会室へと向かったらーーー。
やんやんやの状況であった。二科生2人目が入ってきたことに目が向けられるも噛みついているのは司波達也の風紀委員会入りへの是非であり、俺の方からはすぐさま目を離すはダリル・ローレンツ服部副会長である。
そこからはごちゃごちゃと言い合って、最後には決闘で是非を問うという原作通りのパターンとなる。
結果として。
「アキラもいくワよ!」
自分に対する「話」というのは少し延びて、演習場での服部ダリルと司波フレミングとの対決を見てからとなるしかなかった。
結果だけ申せば、原作通り。前のめりに倒れ伏した服部副会長と、当然のことと思っている闇の帝王様とがいるのだった。
本当に俺ってば置物だなと感じていると。
「石田くんはあまり感心していませんね」
「まぁスゴイことなんだろうなーとは思いますよ。何がスゴイのかは申し訳ありませんが知識が足りないので関心するほどのことが出来ないんですよ」
市原鈴音が自分の態度を怪訝に思ったらしく、そんなことを申してきた。
司波達也デモートをヨイショ!するほどの知識を持っていないので特に何も言わずにお地蔵さんのごとくなっていたのだ。
モノを知らないやつに持ち上げられても、あの闇の帝王様は、そいつを小馬鹿にするような人間なので特に何も言わないでおいた。
それだけだ。
ともあれその一件でとりあえずお開きとなったが……。
「すみません会長、ちょっと今日は」
「体調悪い?」
「まぁそんなところです」
予想外に原作よりも服部副会長の『酔い』は酷かったらしく生徒会室へと戻ることは不可能だったようだ。
今日は帰る様子のダリル服部を見送ってから、移動を開始する。
「それじゃ石田くん、長々と待たせてごめんなさいね」
「口頭でなければ伝えられないことなんですかね?それが知りたいです」
「不効率、不合理だと思っているのは分かるんだけど、ともあれ生徒会室に来てくれる?」
何を言われるのかは分からないが、面倒だ。退学したい。と思うだけだった。
風紀委員会に行く司波達也と渡辺摩利。
それとは違う形で生徒会室へと赴くと。
「十文字君」
「ああ、七草。ーーー彼がそうだな」
「ええ」
「石田アキラ君だな。俺は十文字克人、この学校で部活連という組織の頭を張っている。以後よろしく」
「どうも」
さっさとあんたらと関わり合いになりたくない所に行きたい石田アキラです。などとは言えないのでお座なりに返しておきながら、このヒトも出張るとは何なのやらと思っておくのだった。
着席して対面に先輩方と司波深雪になるのだが。
(なんで君もコッチなんだよ)
アンジェリーナ・クドウ・シールズも何故か自分の方に座るのだった。
「さっそくで悪いのだけど、実は……アナタのことが不思議でならないのよ」
「意味不明なんですけど」
「直裁に言えばだ。お前が何故……この学校を受験してそしてーーー受かったのはまぁ実力なのだろうな。そこは置いておこう。だが、そういった諸々のことを知りたい」
なんとなく何かを言い淀んでいることは理解したので、とりあえず自分の受験した経緯。いつ頃からサイオン操作の適正が出てきたのかを資料を含めて説明する。
ちゃんと保存しておいて良かった中学時代の職業適性検査用紙♪などと頭の中で嬉しく思いながら口を開いておくのだった。
凡そ5分の説明の後に……
「つまり君は中学の担任教師が、反魔法主義団体の一員とみなされることを危惧して、ここを受けたというのか?」
「そうですね。だからはっきり言って合格するだなんて思ってもみなかった。こう言ってはなんですがーーー合格してココに入学したいという気持ちもありませんでしたから」
十文字克人の少しだけ戸惑った声に答えると少しだけ全員がざわつく。
「2ヶ月も無い期間の内にとりあえず受験要項にあたる基礎的な魔法の使用だけに専念して覚えて、座学に関しても本当に詰め込みでとりあえず「まずまず」で済むだろうという魔法大学付属を受験するだけの人間になれただろうということで送り出されたんですよ」
「ソレ、スゴイワよアキラ!!」
「全然スゴイことじゃないだろ。ただ単にやっつけ仕事で体裁を整えただけだよ」
なんで俺みたいなのが受かるんだろうと思いつつ、入学辞退の用紙が無かったのが非常に残念だった。
両親は許してくれなかったかもしれないが、それでも選択肢は欲しかった。
「要するにみなさんは俺がそういう団体の人間だと疑っているんですね?」
「いや、そういうわけじゃない……そうね。そういう考えはあったわ。けど、まぁそういうわけじゃないのは理解できたわ」
そう言うからには俺の身辺調査や思想調査なスパイじみたことを家の人間にやらせたのだろうと心のなかで冷たく言いながら会長に呆れるのだった。
「それにしても、何でこんなにもアナタの学区では受験者がいなかったのかしらね?」
「俺も卒業間際にちょいとそういう辞退者に聞いたんですが、なんでも夏休みに「雪女」が自分たちの自信を砕いていったから、魔法師としてやっていける気持ちがなくなったそうですよ」
どっからかやってきた自分たちと同い年の魔法師の卵とやらにあらゆる面で勝てなかったから、自信を喪失したーーーなどと聞いた。
そして、この話を出した時に司波深雪総代の顔が緊張するのが分かった。
「ち、ちなみに石田君はどこの住みなんですか?」
「K市だ。まさか23区に住んでいなければ東京都民じゃないなんて昔の感覚でいるわけじゃないだろうな?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!ここだって八王子市なんですよ!!!ーーー……すみません会長、多分犯人は私です」
そうして犯人の自供によると、魔法関連ではないが、家の習い事で知り合った他区の生徒……同時に魔法師の公立塾通いに誘われて赴いた先でレベルの違いーーーレベチを見せつけてしまったとのことだ。
色々な意味でとばっちりであると思いつつ、嘆息しながら話は終わりではないかと立ち上がろうとしたが……。
「あの石田君は、何故今日の昇降口で私を騙したんですか?」
やはりその事を言われるかと思いながら口を開く。
「知らない人でしたし、何を言われるか分かったもんじゃなかったし、何より高校生にしちゃ、ちっちゃいので「エスター」かと思ったんですよ」
「誰がイザベル・ファーマンですか!?」
「魔法で身長とかを誤魔化して、あるいは成長ホルモンとかを抑制しているシリアルキラーなのではないかと警戒していました」
その言葉に少しだけ誰もが笑うも……。
「一応言っておくが、そのようなことは魔法では出来ないぞ。ある程度は人の目を誤魔化す幻術のようなものはあるがな」
「そうなんですか」
十文字克人が少しだけ訂正をするのだった。
克人としてはもう少し「突っ込んだ」話をしたかった感はあるが、疑問をソレ以上言えずその日は終わるのだった。
石田アキラの下校に合わせてアンジェリーナも出ようとしたが。
「君は今日から生徒会役員共!」
「ウワーン!! そうだったわ!!」
言葉はあまりにも無情に現実を突きつけるのだった。
その後、20分ほど経った頃にーーー。生徒会室に来客が訪れる。
「真由美ぃいい!!! 石田アキラはまだいるか!?」
「ど、どうしたの!?摩利!! そんなに急いで!!」
生徒会の業務を後輩に教えていた時に、風紀委員会からやってきたらしき委員長と、新・風紀委員に内定した司波達也が勢いよく室内に入ってきたのだった。
正確に言えば勢いよく入ってきたのは摩利だけだったが、ともあれ要件を見せるように達也は今日の2科の実習授業でのことを端末に表示する。
「俺の所属するE組は石田のいるF組と合同授業にはなりませんでしたが、スコアレコードは記録されていました。実習の内容は単調なものですがーーー」
そして内容の説明を受けつつ、その日のレコードを見ると……。
「ーーーーーー」
仮に真由美や摩利、そして深雪やアンジェリーナがやるとなれば……これの近似値が出せる最大速度だろうと言えるものがあった。
これーーー即ち今日の2科の実習授業でマックスタイムを出したのは。
ーーー1-F 石田アキラーーー
その名前が端末に表示されているのだった。