閃刀姫のヒーローアカデミア   作:スノアキ

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中々時間が取れませんでした。あと普通に難産。


#12 林間合宿・下

 林間合宿2日目。今日の個性伸ばし訓練を終えた私たちは、峰田君がB組女子のお風呂を覗くのを阻止した後、部屋でくつろいでいた。

 峰田君の所業やら性根やらについてあれこれ言っていると、ドアを誰かがノックした。

 

「拳藤だけど、ちょっといいかな?」

 

 おや。B組の拳藤さんだ。

 八百万さんがドアを開けると、拳藤さんだけでなくB組の女子が数名。名前は確か、小大さんと塩崎さん、それから柳さんだったかな? 峰田君の件でお礼にお菓子を持ってきてくれたそうだ。もともとA組が迷惑をかけたと八百万さんがしきりに遠慮するので、芦戸さんが代わりに受け取った。尚も気が咎めた様子の八百万さんに、葉隠さんが女子会を開いて皆で食べようと提案する。いいんじゃないだろうか、合宿というより修学旅行っぽいけど。

 そんなわけで、飲み物や追加のお菓子を用意し車座に。女子会では何をするのか、と尋ねる八百万さんに、女子が集まって食べながら話せば女子会、と答える芦戸さん。だが、それに葉隠さんがチッチッチッと(わざわざ口で言って)待ったをかける。

 

「女子会といえば恋バナでしょうがー!」

 

 恋バナかあ……なるほど。ますます修学旅行感はあるけど話題としては良いと思う。

 

「それじゃ早速、付き合ってる人がいる人ー!」

 

 葉隠さんが話題を振る。が、誰も名乗り出ない。

 

「……え、誰もいないの!?」

 

 愕然とした様子の葉隠さんの言葉を受けて、拳藤さんが苦笑いする。

 

「中学のときは受験勉強でそれどころじゃなかったけど、雄英に入ったら入ったでそれどころじゃないもんなー」

 

 彼女の言う通りだろう。私はまあそもそも自主トレやらおじいちゃんとの鍛錬やらであんまり中学のクラスメイトとの関わりはなかったが、他の皆も受験勉強や体力づくりはしていただろうし。

 

「でも恋バナしたい! キュンキュンしたいよー! 片思いしてる人もいないのー!?」

 

「好きな人……っ!」

 

「あら? どうしたのお茶子ちゃん」

 

「あー! もしかして好きな人いるの!?」

 

 梅雨ちゃんと葉隠さんの声に麗日さんの様子を見ると、顔が真っ赤に染まっていた。

 

「おっおらんよ!? おるわけないしっ」

 

 その否定の仕方はかなり怪しいと思う。葉隠さんと芦戸さんもそう思ったようで、麗日さんに根掘り葉掘り聞こうとする。

 

「ほんまそういうんと違うから! なんというか、そういう話が久しぶりすぎて動悸が……」

 

 本当かなあ。まあ二人は納得したようなので、私もわざわざ掘り下げたりはしない。

 本題に戻ると、片思いをしている人もいないらしい。部外者に聞かれる心配なく恋バナできるせっかくの機会だったが、このままお流れかと思われたその時葉隠さんが提案した。

 

「妄想でキュンキュンしようよ! っていうか想像? A組とB組の中で、彼氏にするならーみたいな!」

 

 確かに、そういうのも恋バナなのかもしれない。耳郎さんと上鳴君は仲が良い様子ですけど、と八百万さんが話題を振った。

 

上鳴(アイツ)はしゃべりやすいけどさ、チャラいじゃん。絶対浮気する」

 

「そうかしら? 上鳴ちゃんは付き合ったら意外と一筋になりそう」

 

「それはちょっとわかる」

 

「え、梅雨ちゃんと楼善ちゃん上鳴くんがタイプなん!?」

 

「それは全然」

 

「いいえ、全然。でも上鳴ちゃんは女の子に優しいでしょ?」

 

「女好きっていうだけじゃない?」

 

「「「「……峰田(君、くん、ちゃん)よりはマシだけど」」」」

 

 女子の心が一つになった瞬間だった。

 

 その後も様々な男子が想像の俎上に上げられていく。

 物間君は小大さん曰く「物間は物間」。轟君は父がエンデヴァーであることがネックに。飯田君は真面目すぎて疲れそう、と。否めない。緑谷君はいい人だけどヒーローオタクすぎる点が受け入れられず。まあ……ヒーローの握手会にデートで行くのは違うだろうな、経験ないけど。爆豪君は性格でアウト。青山君、切島君、常闇君はノリに合わせられなさそう。で、続いて名前が上がったのが瀬呂君。

 

「瀬呂は……峰田とか上鳴とか、あのへんと仲良いのが気になるかも」

 

 耳郎さんの言葉に、確かにと頷く。あの二人のようにあからさまに女子に興味がある様子は見せないが、馬が合っているのは分かる。

 

「まあでもそれぐらいしか悪いとこないかも?」

 

 成績悪いのは私も一緒だし、と呟く芦戸さん。そういえば、夏休みの八百万さん主催の勉強会でも参加を申し出ていた。なんとなく要領が良いというか、小器用なイメージがあったけど。そういえば手先は割と器用なんだっけ? 学級委員を決める時に投票箱や用紙をささっと作っていたし。あとは人柄で言うと、今日は助けてもらったうえに気も遣ってくれたな。

 

「そうだね。人柄も良いし、器用だし」

 

「意外なところから高評価! 何々聞かせて聞かせて!」

 

 葉隠さんが興味津々と言った様子で聞いてくる。

 

「別にそういうわけじゃ……思ったことを言っただけで」

 

「……! 葉隠、これウラメシいやつだよ。今は触れないでおこう」

 

「……え!? そういうこと!?」

 

 何を勝手に納得しているんだ。

 

「本当に違うんだけど……」

 

「まあまあ、その場のノリだから……」

 

 若干不満げでいると、拳藤さんに諌められた。麗日さんにはあっさり納得して引き下がったのに……具体的な名前を出さなかったからか?

 

 その後も恋バナは続く。普通にいい人だよね、の一言で議論が終了した尾白君が何気に一番不憫かもしれなかった。

 

 

 合宿3日目。個性伸ばし訓練は今日も続く。

 まだ『ウィドウアンカー』で換装状態の自分を牽引はできない。個性は身体機能、一朝一夕で大きく伸びるようなものではないから仕方がない。

 特筆するべきこともなく訓練は終わり、皆で夕飯を調理して食事。今日の夜は肝試しが控えており、自然と話題はそのことで持ち切りになる。私はそんなに怖いものが得意ではないけど、大声を出して驚くこともないので……まあ、肝試しに向かないというか、面白いことにはならないタイプだ。

 耳郎さんは気が重そうにしていたり、反対にB組の柳さんはイキイキとした様子だったり。肝試し、夏の定番イベントではあるけど人によって反応は分かれる様子。キャンプファイヤーとかでも良かったのでは……いやでも同級生皆でキャンプファイヤーというのもいささか味気ないか。

 

 食事の片付けを終え、いよいよ肝試しの時間。残念ながら、補習組の4人は相澤先生に連行されていったが……。

 プッシーキャッツの4名の説明するところによれば、肝試しはA組B組による対抗戦。先攻のB組はすでにスタンバイ済み、くじ引きで決定したペアでルートの折り返し地点にあるおふだを取って戻ってくるのが目標。

 私は8組目、緑谷君とペアになった。3分毎に一組ずつ出発、私は緑谷君と順番が来るのを待っていたのだが。

 

「なにこの焦げ臭いの──」

 

「黒煙……?」

 

 マンダレイとピクシーボブが、違和感を口にした直後。

 

「飼い猫ちゃんは邪魔ね」

 

 ピクシーボブの身体がふわりと浮いて。現れた長髪の男が持つ鉄柱の先に、したたかに打ち付けられた。

 

「ご機嫌よろしゅう雄英高校──我ら(ヴィラン)連合開闢行動隊」

 

 いくつも刃物を携えた、爬虫類じみた風貌の男が歌うように名乗る。

 敵連合……USJを襲撃した奴らの名前!

 

「皆行って! 良い!? 決して戦闘はしないこと! 委員長引率!」

 

 マンダレイと虎が前に出て、私たちに撤退を促す。

 

「承知しました! 皆行こう!」

 

「……飯田くん、先行ってて」

 

「緑谷くん!? 何を言ってる!」

 

「緑谷!」

 

 緑谷君が、一人集団を離れる。

 

「……行こう! 緑谷くんには何か考えがあるようだ!」

 

 飯田君が改めて先導する。心配ではあるが、委員長の判断に従うことにしよう。

 宿泊所へ向かって走る。その途中、峰田君が呟いた。

 

「なあ、オイラたち、肝試しの途中だったよな……皆、二人ずつで森の中だよな……? B組の奴らも……」

 

「……心配だけど、どうにもできない。私たちはまだ、ただの学生」

 

「そうだけどよお……」

 

「……急ごう。マンダレイがすでにテレパスで伝えているとは思うが、先生方に状況を報告しなければ」

 

 少しして私たちが宿泊所に辿り着いた時、相澤先生はヴィランらしき男と交戦中だった。

 

「生徒が大事か? ヒーロー。守りきれるといいな……また会おうぜ」

 

 ヴィランはそんな言葉を残して、泥のようなものに姿を変えた。

 

「先生今のは……」

 

「……中入っとけ。すぐ戻る」

 

 相澤先生は、苦虫を噛みつぶしたような顔でそう言って駆け出した。

 宿泊所の中に入り、ひとまず腰を落ち着ける。飯田君はB組のブラド先生に報告する、と駆け足で歩いていった。

 尾白君、峰田君、口田君。誰も何も言わない、重苦しい沈黙が流れた。それから、ほんの数分して。

 

【A組B組総員! プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて、戦闘を許可する!】

 

 頭の中に声が響いた。マンダレイのテレパス……相澤先生と合流したのだろうか。いや、戻ると言ってたはず……。

 

「こ、これで何も抵抗できないってことは──」

 

 峰田君が僅かに安心した、その直後。

 

【敵の狙い一つ判明! 生徒の()()()()()! なるべく戦闘を避けて、単独では動かないこと!】

 

 続くテレパスに、私たちは一瞬思考が止まった。

 

「かっちゃ……て、爆豪……? なんでヴィランが爆豪狙うんだよ……!」

 

 再び顔を青ざめさせる峰田君。と、そこへ飯田君がブラド先生への報告を終えて戻ってきた。

 

「飯田君、今の……」

 

「ああ、俺も聞いた。ブラド先生はここで待機、と。皆、向こうの部屋へ」

 

「爆豪狙われてんだろ!? 何もせずにじっと待ってろって言われてもよォ!」

 

 峰田君が飯田君の脚に縋り付く。飯田君は俯いて答えた。

 

「気持ちは……痛いほど分かる。俺もブラド先生に頼んだ……だが、やはり許可は出なかった。今はただ、信じて待つしかない」

 

 峰田君……いや、この場の皆が。拳を握りしめて、何も出来ない現実をどうにか呑み込もうとしていた。

 

 その後。一度、相澤先生が戦っていたのと同じヴィランが襲撃してきたが、即座にブラド先生と戻ってきた相澤先生に制圧され、またも泥のように崩れた。

 特筆するようなことはなく……切島君や上鳴君、諦めきれない飯田君、峰田君の頼みも棄却され。私たちは宿泊所でじっと待ったまま、今回の事件の終わりを迎えた。

 

 事件の被害について。

 プロヒーロー6名の内、1名が頭を撃たれ重体。1名が行方不明。

 生徒40名の内、ガスによって意識不明の重体15名。重軽傷者11名。……行方不明者、1名。爆豪勝己。

 

 怪我の無かった私は家に帰された。警察の方が運転する車の中で、ぼんやりとニュースサイトを眺める。『雄英大失態』とか、早くもそんな言葉が並んでいた。

 

「「楼善!」」

 

「おかえりなさい……!」

 

 家に着くと、すぐに兄、父、母が出迎えてくれた。

 

「じいちゃんは仕事だけど、さっきからひっきりなしに連絡してきてるよ」

 

 笑ってそう言う兄さん。お父さんとお母さんも、私が無事に戻ってきたことを喜んでいる。当たり前だ。当たり前だけど、今はそれを受け取る気分にはなれなかった。

 

「……ごめん、眠いから寝かせて」

 

「あ、うん……」

 

 手早く寝巻きに着替えて、ベッドに倒れ込む。……まただ、と思った。USJの時も、今回も。危険ではあっても、他の皆よりは安全な場所で。ただ事態が終息するのを待つだけだった。それが当たり前の判断で、ヒーローの言う事に従っただけなのだとしても。

 

(……何か、できることがあったんじゃないのかな)

 

 その考えが、頭から離れない。爆豪君とは別に親しくはないし、なんなら入試の成績のことでずっと目をつけられている気がするけど。それでもクラスメイトだし、嫌いな相手でもなかった。断じて、ヴィランに危害を加えられていいとは思わない。

 

 けれど。今回、何かできることがあったとすれば。それはマンダレイの、あるいはブラド先生の命令を無視してヴィランと戦うなり、目的を探るなりすることだ。私自身にも身の危険が及ぶし……そうでなくても、免許を持たない学生の身でそんなことをすればヒーローへの道は閉ざされる。あの時……いや、今でさえ。私に、その覚悟はあるだろうか。

 

 答えは出ないまま、夜を明かし。ぐるぐると思考を堂々巡りさせる間も、時間は進む。考え続けることが辛くなってきた頃、芦戸さんから連絡が届いた。皆で入院している面々のお見舞いに行かないか、と。皆と話せば、少しは楽になるだろうかと、私は了承して、だから。

 

「じゃあ今度は救けよう」

 

 切島君の放った言葉に、心臓を掴まれたような心地になった。

 

「プロに任せるべき案件だ! 生徒(俺たち)の出ていい舞台では──」

 

「──ここで動けなきゃ俺ァ──」

 

「──これは感情で動いていい話じゃ──」

 

「──ルールを破るというのならその行為は──」

 

 皆の言葉が、次々に脳内を埋めていく。救けるにしろ、それを止めるにしろ、皆は概ね自分の立場を決めていた。迷っているのは私だけだった。

 

「分からないよ」

 

 知らず。口から、言葉がこぼれていた。

 

「……閃機?」

 

「そんな風に……悔しさに正直に、救けに行こうって言えるのも。悔しさを割り切って、それはダメだって言えるのも。私には出来ない」

 

 少しの間、静寂が場を包んで。口を開いたのは、瀬呂君だった。

 

「や……閃機はなんもおかしくねえよ。つか、俺も全然迷ってる……決められねえよ、こんなん。悔しくて救けに行きたいってのも、ヒーローに任せた方が良いってのも、両方あるし……普通だよ、そりゃ」

 

「……私、は……」

 

 何を言おうとしているのか、自分でも分からないまま口を開いては閉じて。そうしていると、ノックの音とともにお医者さんの声が聞こえた。

 

「お話中ごめんね、緑谷君の診察時間なんだけど」

 

「あー、すんません! 行こうぜ、葉隠とか耳郎の方も気になっし……」

 

 そうして、私たちは緑谷君の病室を離れた。それから葉隠さん、耳郎さん、八百万さんの病室を訪れて。解散しよう、という段になって……瀬呂君が声をかけてきた。

 

「閃機、このあと予定ある? さっきの話、もうちょい話したそうだったからさ……や、別に無理強いはしねーけど」

 

「……ありがとう。そうだね、少し話したい……一人で考えても、多分何も変わらないし」

 

 瀬呂君にそう返す。適当な飯屋探すわ、と瀬呂君がスマホを取り出す。と、そこへ障子君がやってきた。

 

「横からすまない。話が聞こえてしまってな……瀬呂の提案に乗っかる形で悪いが、よければ俺も相談相手になろう。入試の時の借りを返したい」

 

「俺は良いけど」

 

「私も問題ない。……なんだか、結構心配させちゃったみたいだね」

 

 暖かいやら気恥ずかしいやら。

 ファミレスへ向かった私たちは、ドリンクバーとポテトだけ注文して話し始めた。

 ……さて。改めて自分の内心を他人に伝えるとなれば、何が私の中で膿んでいるのかを掴まねば。それは、あの時動かなかったこと……では、ないように思う。むしろ、“動くべきだったか否か、助けに行くべきか否かを悩んでいる今”が、悩みの本体なのでは。

 

「さっき、迷ってるというか、決められないというか、そういう風なことを私は言ったけど……多分自分の中で一番引っかかってるのは、迷ってること自体なんだと思う」

 

「おお……」

 

「瀬呂? どうした」

 

「ああいや、さっきは結構感情出てるっつうか、あんま落ち着いてなさそうな感じだったから……もう大分自己分析終わってそうでちょっと驚いたわ」

 

「他人に話そうと思ったらなんか……するりと」

 

「あー、あるよなそういうこと」

 

「それだけでもこの場の意義はあったようだな。迷っていること自体が引っかかり、か……」

 

「うん。切島君は、自分の主義に則って助けに行くことを選ぼうとしてる。飯田君は規範と、それに従おうとする意識に則って、切島君を止めようとしてた。障子君は……」

 

「感情で動くべきではない、というのも本心ではあるが……友人の身に危険が及ぶことを止めたかった、というのもあるな」

 

「けど、閃機は──まあ俺もだけど──どっちを選ぶことも出来ない、と」

 

「……私には、三人のようにどちらかを選ぶのに十分な理由が無かった。爆豪君のことを、助けられるのならそうしたい……けど、それが危険で、非正規な手順だったら。私は自分のことと爆豪君のことを天秤にかけて、ずっと揺れてる」

 

「んー……そう言っちゃうと我が身可愛さみたいな感じ出るけど、実際そりゃ迷うっしょ。もちろん、ヒーローがヴィラン怖いから救助行きませんなんて言うわけにはいかねえよ。けど、俺ら学生よ?」

 

「瀬呂の言う通りだ。自己犠牲の精神は、古くから英雄的とされる得難い資質ではあるが……危ういのも間違いない」

 

「うん……そうだとは、思う。思うけど、納得しきれないというか……」

 

「納得できないのなら、それだけ閃機が爆豪のことを心配しているということだろう。飯田も言っていたが、プロに任せるのが俺たちの今するべきことだと思う」

 

「今障子が良いこと言った。そーなのよ、俺ら心配なのよ爆豪のこと。だから切島と轟がああいうこと言い出したのも正直分かるし」

 

 ふっ、と。二人のその言葉に、随分頭がすっきりした気がした。後から理由をくっつけただけかもしれないけれど、それでも腑には落ちた。

 

「……そっか。助けに行く選択肢を捨てられなかったのは、それだけ心配だから、か。単純だけど、うん。納得はできるかも」

 

「お……何、お悩み解消?」

 

「そうだね、解消。二人ともありがとう」

 

「力になれたなら何よりだ。状況がこうでなければ、このまま夕飯にしたいところだったが……和気藹々と食事、という流れでもないしな。ポテト(これ)だけ片付けて解散するとしよう」

 

「だなー。ま、なんか安心したわ……閃機いつもこう、淡々としてる印象あっから。ふつーに悩んだりすんだなって思って、親近感」

 

 瀬呂君の中での印象、そんな感じだったのか。まあ、確かにそうなるか……。

 

「今にして思うと、入試の時の閃機は中々珍しい様子だったんだな」

 

「まあ、雄英の入試だし。多少は力むよ」

 

「何、どんな感じだったん?」

 

 と、和気藹々とはいかずともそれなりに穏やかに過ごし。私たちは解散して帰路に着いた。

 

 その夜。

 

「楼善! テレビ、テレビに……!」

 

「? 兄さん、どうし──」

 

 後に、神野の悪夢と呼ばれる事件を。画面越しに、私は見た。




ジェットコースターみたいな日。
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