ある蜘蛛男の憂鬱   作:Lemony226

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第二章

  

 文芸部での一件から数日間、僕の放課後の居場所は固定されることになった。この部屋は意外に広く、ひび割れこそ目立つものの二人だけというのは少し気まずさを感じさせてくる。しかも同級生の女子と二人きりってのが尚更だ。

 

 この15年余りの人生において女性との関わりが薄い僕にとってこの状況は居心地の悪さと涼やかな安堵感を同時に与えてくる場所で、それ故入ったことを後悔することにはならなそうだな、などと呑気なことを考えていると...

 

 

「これからこの部屋が___ってあら?おっかしいわねぇ男子生徒なんていたかしら?」

「おい何を一人でブツブツ言ってるんだお前は」

 

 二人の生徒がやってきた。一人はあの涼宮ハルヒ。しばらくおとなしくしているかと思ったらこれだ。一体何をしにきたっていうんだ。もう一人は...って、この前玉砕してた男子生徒じゃないか。まさかあの後進展あったのか!?見逃しちまったぞ...

 

 

「って糸紡と、...そっちのは」

「僕の事を知ってるのか?」

「知ってるも何もクラスメイトじゃないか」

 うーんこの聖人。玉砕男子とか言ってごめんね。

 それに、というと彼は今の僕にとって最悪に近い言の葉を紡ぎやがったのだ。

「こっちの涼宮が偶にお前を話題に出すからな。どうにも何かを感じるんだとかで」

 

 今なんて言った?涼宮氏が僕のことを話題にだって?これにはずいぶんな厄介案件が舞い込んできた事を実感してしまう。

 

 

「あんたもいるんなら都合が良いわね。それじゃ、改めてここに宣言するわ」

 

 Ms.涼宮はこの場にいる全員が嫌でも耳の中に叩き込まれるような声で言い放った。

 

「今日現時刻を持って、この部屋を我々の部活とするわ!」

 

 頭が痛い。

 

 

 

 △▼△

 

 

 

 ここからのやりとりをセリフ主体で説明するのは億劫なのでかいつまんで解説しよう。

 

 誰も逆らえない流れのまま涼宮さんは“世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団”ことSOS団なる組織を開設した。いくら自己主張の弱い長門さんとはいえこの横柄さには苦言を呈すかと思いきや、今日の会話ログに残ったのは全て5文字に収まるような同意を示す言葉だけであった。連れられてきた男子生徒__以降キョン__はところどころボヤいていたがそれが涼宮氏に届くことはなかった。

 

 その後気づいたらなんとも愛くるしい先輩女生徒が追加加入(拉致とも言う)し、翌日からの参加と破った際の罰を宣告され今日という日は終わりを告げたのであった。

 

 そういや朝比奈さんなる不憫な先輩は書道部に入っていたらしいが、急遽強制された拉致による転部をあっさり受け入れたいたのが不思議でならなかった。微弱だが、涼宮氏や長門部長に感じるそれがあるような気もしないでもなかったような。

 

 部活が終わってからは早いもので、気がついたときには既に自分の部屋でぼーっとしていた。

 

 無為徒食な時間は送るべきじゃないのでここいらで僕のスタンスを説明するパートとしよう。はっきり言って、スパイダーマンとしての“僕”と北高一年生糸紡繋としての“僕”は別人のようなものだ。方や自己犠牲精神の塊で、もう一方は事なかれ主義のクソ陰キャ。つまり何が言いたいのかと言うとだな、

 

 「憂鬱だ...」

 

 スパイダーマン業をやってるときならまだしも平和な学生生活を送りたい僕としてはこんな厄ネタ臭のプンプンする部活(と呼べるのだろうか)に所属したいとは口が裂けても言えないが、ここで自分だけ逃げるのは長門部長に不義理なので残るしかないのだろう。

 

 それに涼宮氏や長門部長、あと多少だが朝比奈先輩に感じる異質な『何か』を解明するまでは除隊する気などとうに失せていたというのもある。

 

 何はともあれ僕には力があり、それは大義のためのものなのだ。

 

 

 

 △▼△

 

 SOS団に入ったからといってそこまで生活リズムが変わるわけではなかった。キョンの友人二名から涼宮氏との関係を疑われることは一度あったが、ほんとうにその程度だ。彼いわく中学時代の涼宮氏は相当荒んでおりグラウンドに落書きをしたんだとか。彼も言っていたが高校でそんなことやりだしたら最悪の場合退学すらありえてしまう。せめて長門部長や朝比奈先輩、キョン達が被害を被ることはないよう気をつけていこう。

 

 

 ただ一つ気づいたことがある。クラスの中心的人物でありトレードマークとも言える存在、朝倉涼子さんについてだ。これはもうほぼ間違いないが、彼女も長門部長と同じクチなのだろう。どういう出自かはわからないが常人ではないことだけは明言できる。とはいえ今直ぐ誰かに危害が及ぶことはない...と信じたい。

 

 そんなことを放課後の文芸室でぼんやりと考えていると、どうやらラブストーリーは突然にラブ抜きのようなことは突発的に起こるらしい。

 

 「コンピュータも欲しいところね」

 

 誰のセリフなのかは言うまでもないだろう。ただでさえSOS団設立から文芸部室にはハンガーラックやラジカセ、冷蔵庫に無数の食器など軽い兵糧攻め程度には耐えられそうなほど物が増えたというのに我らが団長はそんなことを言い出した。

 

 涼宮団長はキョンに向かって調達に行くわよと言うが、当然だがキョンは異議を唱える。だが団長はそんなこと意に介さずついてきなさい、と僕らに言ってコンピュータ研究部室へ向かった。

 

 

「糸紡、これ持ってて」

 

「このインスタントカメラとコンピュータになんの関係が?」

 

「今から作戦を伝えるわ。良い?聞いてなかったじゃすまないわよ。タイミングが大事なんだから」

 

 そう言いキョンの身をかがませて作戦なるものを伝えるが、

 

「あぁん? そんな無茶苦茶な」

 

「良いのよ」

 

 一体何を言われたのだろうか。僕は不思議そうな目でキョンを見るが彼は苦笑しながら視線を返してくるだけだった。

 

 時代は暇を許してはくれず、涼宮団長は「こんちわー!パソコン一式いただきにきました!!」と部室に侵入するのであった。

 

 

「部長は誰?」

 不敵な笑みを浮かべつつ部室を見回しながら言い、部内の一人が起立とともに答えた。

 

「僕だけど、何の用かい?」

 

「用なら言ったでしょ?パソコンちょうだい」

 

 至極当然だがコンピュター研究部部長は気味の悪い珍獣でも見たかのような視線を向けてくる。

 

「ダメダメ。ここのパソコンは部費だけじゃなくメンバーの私費もだして揃えたんだ。どこの馬の骨とも知れない集団にそうホイホイ上げられるほど潤沢じゃないんだ。てか、そもそも誰なんだ君たちは」

 

「SOS団団長、涼宮ハルヒ。後ろの3人はあたしの部下1~3よ」

 部下扱いだったとは驚きだ。

 

「SOS団の名において命じます。四の五の言わずに一台よこしなさい」

 

「ダメなもんはダメだ。そんなに欲しいなら自分たちで買えばいいだろ」

 

「そこまで言うんならこっちにも考えってもんがあるわよ」

 

 ここで僕の感覚____第六感とでも言おうか____今日一番の反応を示す。つまり何かマズイことが起きるってわけだ。

 

 

 団長は朝比奈先輩の背を押してコンピュター部部長のところへ向かったかと思えばいきなりそいつの手首を握ろうと手を伸ばした。

 

 この後の展開が読めてしまった僕としては、長門部長のいる場で面倒事を起こすわけにはいかないと行動に出た。

 

 自身の右手首から机の下を通るようにウェブを放つ。

 

Thwip!

 

 他の人に見えないようコンピ研部長の足を引っ張り転倒させることで涼宮団長の魔の手から逃したのだ。周りから見れば突如迫った涼宮団長に驚いて転んだように見えるだろう。我ながらうまくやったものだ。

 

「あーなるほど。だから僕にカメラを持たせたわけですね...」

 

「そういうことだ。運よく失敗してくれがな」

 

 と返してくれたのはキョン。

 

「キ、、キミ!!今僕に何をさせようとした!!」

 

 事態を察したコンピ県研部長は顔を紅潮させ涼宮団長へ怒号を飛ばす。

 

「あちゃー失敗しちゃったかぁ。それなりに良い作戦だと思ったんだけどな~」

 

 ほぼ犯罪行為だがそんなものは団長には関係ないのだろう。怒号を軽く流すと、

 

「ま、他に手はあるしね」

 

 まだ何か策を弄しているというのか。これ以上コンピ研悪質ハメ技作戦に共謀するわけにはいかないので提案をするとしよう。

 

「コンピュター研究部のものほどとは言えませんが、ある程度の性能のものなら僕が調達できますよ。これ以上やったらSOS団自体存続の危機になりますし」

 

 タイミングがなくて言えてなかったが、何を隠そう僕はガジェオタ故に修理した後放置してる中古ラップトップがいくらでも物置に眠っているのだ。

 

「それが妥協点かしらね。良いわ、今日はそれで良しとしましょう」だが、と団長は続ける。

 

「これで終わったと思ったら大間違いよ!」

 

 なぜ典型的な敵役の逃げゼリフを言うのだろうか...

 

 

 何はともあれ哀れな犠牲者を産まずに住んだのは僥倖と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





結構書いた気がするけど原作一巻にすら満たないというね。

ちなみに作者の推しは...
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