オールマイトを曇らせたい一心で書き上げた。アンデッドアンラックのビリーをヒロアカに放り込んでみました。アンデッドアンラック知らなくても読めますが、ネタバレあります。

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※本作はアンデッドアンラックの重大なネタバレを含みます。まだ未履修かつ今後履修予定の方は読まないほうがいいかと思います。アンデラ面白いので全人類読んでほしい。もしくはアニメみて
※アンデッドアンラック未履修の人にもわかるように書いたつもりです。ネタバレOK派の人は読めるかなと思います



個性「不公平」

【オールマイトから見たビリーという友人】

 

 

「私はあなたの為になりたくてここにいるんだ、オールマイト!」

「私は世の中の為に…ここにいるべきじゃないんだ。ナイトアイ」

 

絞り出すように声を震わせたサーナイトアイに対し、オールマイトは静かに答えた。

 

「…ッ!このままいけばあなたは敵と対峙し、言い表せようもない程…凄惨な死を迎える!!」

 

己のサイドキックの持つ個性は予知。未来を知る彼がそう言うのならば、きっとそうなるのだろう。そうと分かりながらも足を止める事はできなかった。

平和の象徴の不在は、人々の心に不安の種を植え付ける。また争いの時代がやってくる。それだけは、避けなければならない。

 

言葉をなくして立ち竦むサイドキックを背に、病院の長い廊下を進む。壁にすがりつくようにして幾分か進んだその先。

曲がり角に見知った男が凭れていた。

 

「よう。満身創痍だな相棒」

「…君も私を止めるかい、ビリー」

 

サングラスをかけた男──ビリー=アルフレッドは戯けたように肩をすくめた。

 

「ボクが君の無茶を止めたことが一度でもあったかい」

 

それもそうだな、と息を吐く。震える足で立つ私を、長年もう一人のサイドキックとして支えてくれた彼は仕方なさそうな様子で眺めていた。

 

「弱者を守り強者は苦しむ、そういう世界であるべきだ。そうじゃないと不公平(アンフェア)だからね。そして君はボクが知る限り一番強いやつだ」

「そうだ、だから私は平和の象徴としてみんなに安心を与えなければ…」

「が、今日くらいはベッドの上にいるべきだな。まともに立てちゃいないじゃないか」

「ダメだ、もう何日も姿を見せられていない。これ以上は…」

「おいおい、有能なサイドキックの存在を忘れられちゃ困るな。もう一日でも一週間でも誤魔化すくらいはやってやるさ。いいからお寝んねしてな」

 

こちらのことなど見えていないはずの盲いたアンバーの瞳にじっと見咎められる。ビリーとはアメリカに留学していた時から二十年以上の付き合いになるが、昔から彼のこの目には弱い。

 

今回も折れてはくれないだろうなと思いつつも、説得を試みて口を開いた。

 

 

 

 

 

【緑谷から見たビリーというヒーロー】

 

 

「キミがオールマイトの後継者かい」

「へぁッ!?な、な、何のことですかッ!?!」

「あっはっは、誤魔化すの下手だね〜。ダメだよもうちょっと腹芸も覚えなきゃ」

 

憧れのヒーロー、オールマイトとの出会いから数日。今日も今日とて海岸の掃除に勤しんでいたところ、唐突に声を書けられた。秘密であるはずの事実を突きつけられ、冷や汗をかきながら振り返った先。

そこにいた男の姿に思わず目を見開く。

 

「弾丸ヒーロー、アンビリーバブル!?オールマイトとはアメリカからの付き合いで長年サイドキックを勤め上げた相棒…!個性は絶対に外れない銃弾。特技の早打ちで、被害を出す前に敵を素早く確保する超武闘派ヒーロー…!確か、好きなものはコーヒーにマンゴー。渋い見た目とは裏腹にスイーツ好きという噂もある。おっちょこちょいな一面もあって、ファンからギャップ萌えで根強い人気を誇っている。戦闘スタイルは確かぶつぶつぶつ…」

「ん?エ、何?緑谷くん?」

「遠距離だけかと思わせておいて近接戦闘でもそこいらのヒーローに引けを取らない実力…流石はオールマイトの相棒と呼ばれるだけのことはあるぶつぶつぶつ…」

「んー…、無視されるとさっすがに寂しいナー?おーい」

 

ヒラヒラ、と目の前で手を振られようやく我に帰る。いつものよくない癖が出てしまったらしい。

 

「はっ!すみません憧れのヒーローに会えて舞い上がっちゃって!あ、あの、握手してもらってもいいですか!?!」

「ああ、よかった聞こえてた。おじさん存在を無視されてるのかと思って悲しくなっちゃってたよ。はい、握手ね」

 

血豆で固いカサついた手を両手で握りしめる。今日は手洗えない…!

 

「知ってるみたいだけど、ボクはビリー。俊典からキミのことを聞いたんで、ちょっと様子を見にきたのさ」

「えと…オールマイトはなんて…」

 

どこまで事情が知られているんだろうか。ワンフォーオールのこと、そしてオールマイトの限界が近いってことは限られた人しか知らないと聞いている。不用意なことをいうわけにはいかない。

彼はサーナイトアイが独立した後も、オールマイトのサイドキックとして在り続けた。事情を知らないということはないだろうけど、警戒するに越したことはない──

 

そんな僕の見え透いた警戒心に、彼は微笑ましいものを見るような様子で頰を緩めた。

 

「有望な後継者を見つけて育成中、ってね。平和の象徴への道のりは険しいぞ〜」

 

ぽん、とその掌が頭に乗って柔く髪を掻き撫ぜられた。随分優しげな目を向けられて、思わず息を呑む。まるで母さんが僕を見る時みたいな眼差しだった。

 

「俊典も忙しいからな。彼奴がこれない時はボクが代わりに訓練をつけるって話になってる」

「そうなんですね、ありがたいです…!」

 

ビリーさんとの訓練はオールマイトとするそれとは少し毛色が違った。

イメージトレーニングだったり、効率的な体の動かし方だったり。体づくりは俊典に任せる、ボクはそれ以外の担当だねと彼は言っていた。

 

「元々自分のものではない個性を使う時、大切なのはイメージだ。この個性では何ができるのか、体にどこまで負担がかかるのか。出力はどうやってあげて、MAXはどこか。最小限の力は。イメージ出来ないことには使うこともできない」

 

特にこの「個性を使用する感覚」についての話は、のちのちOFAを使い熟して行く上でかなり役だった。無個性の僕にはそもそも個性というものがあまりにも遠い存在だったから。

あまり身体に負担をかけることなくじっくり個性に向き合えたのは、ビリーさんとの訓練のおかげだと思っている。

 

しかし疑問がひとつ。

 

なぜビリーさんは「自分のものではない個性」を使用する感覚を知っていたのだろうか。

 

訓練中に抱いた些細な疑問は、忙しい日々の中に埋れて行き。聞くことのできないままに忘れ去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

【サーナイトアイから見たビリーという同志】

 

 

霞んだ視界の中に、男の影が揺らめいた。

 

「…ああ。誰かと思えば…」

「ボクでがっかりしたかい?心配しなくてもオールマイトも来るよ。一足早かっただけさ」

 

サングラス越しに昏い瞳がこちらを向いた。草臥れたスーツを肩にかけて、ビリーはベッドサイドに腰掛ける。飄々とした態度に見えるが、同僚として接してきた経験から、彼が随分と悲しんでいるのが伝わってきた。己に繋がれた心電図は、随分と弱々しく音を立てている。

 

「言わなくても、わかっているだろうが…あの人を、頼む」

「おいおい、気弱なこというなよ。ボク達二人揃ってオールマイトのサイドキックだろ。一人であの暴走機関車止められるかよ」

「ふ…」

 

こんなことを言っているが、オールマイトと貴方が一緒になって暴走し始めたときのほうが手がつけられなかった。なんて懐かしい過去を振り返りつつ。口を開く余力もなくして黙り込んでいると、そっと手をとられた。握り込まれた拳が持ち上げられて、彼の額に導かれる。

 

祈るような姿勢で。ビリーは静かに喉を震わせた。

 

「…任せてくれ。絶対に未来を変えてみせる」

「……」

「平和のためにあんなに尽力したやつが凄惨な死を迎えるだなんて…そんなのは不公平だ」

 

固く閉じられていた瞼がゆっくりと開かれ、決意を込めた眼差しがこちらを向く。

 

「だから。ボクが何とかするから、安心してほしい」

 

彼は他愛もない嘘をつく事はあるけれど。大事なことで嘘をつくような男ではない。

そう信じられるだけの信頼を、同僚として。たった二人のオールマイトのサイドキックとして築いてきた。だから、彼はきっとその言葉を叶えてくれる。

 

静かに病室を去って行くビリーの背を視界に収め、安堵の息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

【ヒーロー達から見たビリーという裏切り者】

 

 

敵連合及び頂上解放戦線対策本部

 

警察、ヒーロー、公安が一堂に会して作戦の最終調整を行っていたその場に。突如として扉を大きく開け放つ音が響いた。視線が集まった先ではオールマイトのサイドキックにしてNo3ヒーロー、アンビリーバブルが一人の少女を腕に抱き上げて立っていた。扉を蹴り開けたと思われる足が、ゆっくりと地面に降り立つ。

 

「ああ、ビリーか。随分と遅かったね。…それにしてもなぜ壊理少女をここに?」

「んー…。あぁ、うん」

 

彼にしては珍しく、歯切れが悪い。なぜか走る悪い予感にオールマイトは口が乾いて行くのを感じた。その中で、周囲のヒーローはあることに気がつく。眠る少女を抱え上げたビリーの着るシャツに、赤い血がついている。彼の物ではない、返り血と思われる鮮血。

 

コツコツと皮靴の音を立てて巨大なモニターに近づいた彼は、空いた片手でコンソールに手を伸ばし何やら操作し始める。

 

「ヒーロー、アンビリーバブル。勝手な行動をされては困ります。いまは最終決戦前の重要な会議中でして──」

 

場を取り仕切っていた警官が彼に近づく。いくらヒーローといえども、日本ないしは世界の滅亡がかかっているこの重要な局面で勝手な真似をする事は許されない。警官の手がビリーの肩にかかり、力を込めたところで。

 

パン

 

乾いた音が響いた。

 

「なッ…!」

 

その場にいた全員が息を飲む声と、どさり、と警官が足を押さえて地面に倒れ込み。痛みに絶叫する声が会議室に響き渡る。

 

「ビリー!何を…何をしているッ!!!!!」

「随分と楽観的な作戦だ。いや、悲観的というべきか」

 

常の朗らかさを殴り捨て、冷たい声でビリーは吐き捨てた。

 

「作戦の主力はほぼ学生。まだプロヒーローでもない子供に世界の命運を任せるだなんて、…ここにいるやつ全員頭がおかしいのか?」

 

周囲を殺気立ったヒーローに囲まれ、警察官に銃を向けられ。それでも彼は平然と画面に向き合っている。

 

「伝達!雄英高校で根津校長及びイレイザーヘッドがアンビリーバブルの襲撃を受け負傷との知らせが…ッ!」

 

開きっぱなしになっていたドアから一人の警官が駆け込んでくる。伝えられた内容に、誰もが驚愕の眼差しで男を見つめた。

長年、平和の象徴の右腕として彼を支え続けたヒーローの、突然の凶行。固まって動けない者、怒りをあらわにするもの、そして即座に制圧にかかる者。

 

それぞれ異なる反応を示す中で、その場に共通していたこと──誰の個性も発動できていない。

 

「〜ッ!?これはイレイザーヘッドの…!」

 

「こんなお粗末な作戦では、到底AFOに勝つことなど不可能…誰も彼も犬死にするだけだ。群訝山荘の時のようにな」

 

その言葉に、空気が凍った。

ビリーは操られているのでは、洗脳されているのでは。冷静にそんな分析をしていたヒーロー達の思考が、一瞬のうちに激情に駆られた。

あの場所でどれだけのヒーローが人々を守るために必死に戦いを挑み、死んで行ったか。まだ誰の記憶にも新しい傷を、男はくだらないことのように吐き捨てた。

 

「キ、貴様っ…!」

「ビリーッ、君は、一体何をしている!何が目的なんだッ」

 

飛びかかってくるヒーローの個性を抹消し、不可視の壁を間に築いた男はサングラスを外し、前髪を掻き上げた。常の優しい瞳はそこにはなく、ただ冷徹な眼差しがヒタリとかつての相棒を見つめている。

盲目であるはずのその目は、しっかりと光を目に映していた。

 

「沈む船に乗り続ける気はない。それだけの話だ」

 

コンソールを操作する手が止まると同時に、画面が切り替わりモニターに室内の様子が映し出される。見下ろすカメラをひたりと見据え、一拍。

 

「オールフォーワン。どこにいるかも連絡先も知らないから、全国放送で失礼するよ」

 

「取引をしよう。この少女の個性は『巻き戻し』。肉体を損傷している君には喉から手が出るほど欲しい個性だろう?」

 

「場所は群訝山荘 の跡地──明日の朝までは待つ」

 

「俺もいい加減、この落ちぶれた平和の象徴のお守りに飽きてね。勝ち馬に乗りたくなった」

 

「取引の条件は俺の身の安全の保証。安いものだろう?」

 

「いい返事を期待しているよ」

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

まるで嵐が過ぎ去ったかのような様子の会議室で、誰もがうなだれていた。ただでさえ危機的な状況がさらに地をはうことになるとは、誰も予想できていなかった。

 

「アンビリーバブルの個性は、必中のはずでは…」

「イレイザーヘッドの抹消だけじゃない。奴はいくつ個性を使っていた…!?」

「ワープまで使えるとなると後を追うこともできん」

「クソっ!このまま巻き戻しの個性がAFOの手に渡ればそれこそ終わりだ…!」

「直ちに群訝山荘にヒーローを派遣しますか」

「奴とAFOの相手をできるヒーローがどこにいる…!死柄木弔のことだって──」

 

信じるべき仲間に裏切られた面々の反応はひどいものだった。誰もがパニックに陥っている。

その中で、かつての平和の象徴は、深く、深く項垂れていた。

 

「そんな、ビリー…、どうして、」

 

脳裏によぎるのは去って行く直前の、あの冷たい眼差し。

 

『お前が守ってきたのは随分とくだらない仮初めの平和だったらしいな。…俺はお前とは違う。正義などという漠然とした動機では動かない』

 

「一緒に平和な世界を守ろうと、約束、したじゃないか…」

 

かつてないほどに顔面を蒼白にして声を震わせるオールマイトの姿に、周囲はどう思ったか。

それはかつてない怒り。AFOに対するものとはまた異なる、嫌悪感。

 

ヒーローとしてあるべきはずの男が。平和の象徴の相棒が。最悪のタイミングで最悪の裏切りをした。

 

全国放送を通して発信されたその事実は、民衆にも絶望より「怒り」を与えた。それは裏返せば国民からオールマイトへの愛の証左だった。誰よりも人々のために働いてきた我々のヒーローを、親友たる男が裏切った。許しがたい蛮行だった。

 

 

ヒーローと国民と。何千万人からの憎悪を一身に受けた男は、ひそりと。寂しげに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

【AFOから見たビリーという想定外】

 

 

「ふ、ふふふふ」

 

AFOは数えきれないほどの個性を持っているが、そのうちの一つに嘘を見抜くという者がある。自信への敵意を見抜くそれは昔から随分と重宝したものだ。

 

その個性が告げている。彼は嘘を言っていない。本心から、オールマイトを見限ったのだと。

 

「ああ、なんて哀れなんだオールマイト!!!信じるべき相棒に裏切られ、今や振るう力もなく!どうしようもなく無力なヒーロー!!」

 

正直、あの少女の個性に関してはすでに個性因子を入手しているため、取引に応じる必要はない。それでも行かないという選択肢はなかった。

たとえこれが罠であろうと正面から叩き潰せるだけの力がAFOにはあり、魂を震わせる愉悦がそこにあるからだ。

 

「それじゃあ招待に応じるとしようか」

 

日本はすでに沈みかけている。

平和の象徴もすでにない。

 

 

「ビリー=アルフレッド。つまらないヒーローと思っていたのに、とんだダークホースがいたものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ビリーから見た、オールマイトという友人について】

 

 

 

 

世界というものはどこまでも不公平にできている。

強い個性、弱い個性。お金持ちか貧乏か。健康か不健康か。

生まれた時点から個人の努力では覆しようもない差というものがあり、弱いものはいつだって不幸な目にあう。そんな不公平は許されるべきじゃあない。そう思って生きてきた。

 

アメリカでまだ傭兵をやっていた頃。雇われた先が随分キナ臭いところだった。子供を食い物にして利益を得るようなクソみたいな企業。ボクは弱者を虐げるのが一等嫌いだった。だから景気よくぶっ潰してやろうかと意気込んで…そこで出会ったのが俊典だった。

 

正義というものを形にしたらこの男になるんだろう。そう思わせるほど真っ直ぐで、優しくて、何よりも強いやつだった。

友人としても気のいいやつで、ボクたちはすぐに意気投合した。

 

「皆が笑って過ごせる世の中にしたいんだ」

「ああ、そりゃあ…最高の夢だな」

 

事故で最愛の妻と娘を亡くし、それでも生きる気力を失わなかったのはこの男がいたからだ。彼が作る平和な世界を見たいと、そう思ってしまったから。

 

いつか。いつか完全に平和だと思える日がきたのなら。心の底から疎んでいる自分の本当の個性を明かそう。

 

それまではただ傭兵生活の中で培った銃の腕を個性と偽り、平気な顔であいつのそばに居座った。

 

オールマイトには他にもう一人、サイドキックがいた。サーナイトアイ。堅物かと思いきやユーモアを重視する愉快なやつだ。二人してオールマイトに振り回されつつ、平和のために、巨悪を討つために奔走する日々。大変だったけれど、充実していた。

 

そんな彼に託されたんだ。オールマイトを死なせるなと。

 

弱者を守り強者は苦しむべきだ、そういう世界でいいはずだ。強いやつは耐えればいい。そうでなければ不公平だ。

 

けれど──あいつほど平和のために苦しんだやつが他にいるか?救えなかった一人のために涙を流して、けれどそれを決して表には出さず。完璧無比のヒーローとして常に笑顔でずっと。ずっと。ずっと人を救い続けてきた。

 

報われるべきだ。

救われるべきだ。

解放されるべきだ。

 

そうでなければ──それこそ不公平だ。

 

 

◇◆◇◆

 

 

長い長い戦いが終わった。地面に寝そべって空を見上げる。

おびき寄せたAFOは罠を悟ると同時に死柄木弔含め全軍をぶつけてきたわけだけれど、却って都合がよかった。

 

僕の本当の個性は『不公平』(アンフェア)

自分を嫌う相手の個性を使用できる個性。

 

銃弾が必中するなんていうのはただの自前の射撃能力だ。よくもまあ、長い間ごまかせたものだと自分でも思う。

本当は一生使うつもりなんてなかった個性だった。人に嫌われるのって難しいからね。

 

けれど戦うべきではない子どもたちに命をかけさせて、世界の命運を預けて。そして相棒が死に向かう未来を迎えるくらいなら。僕だけが嫌われて一人で戦うほうがよっぽどいい。

 

僕は結局いくつの個性を使ったんだろう。

根津校長からコピーしたハイスペックがないとキャパオーバーになるところだったな。嫌われるためとはいえ、暴行したのは本当に申し訳ない。怪我、すぐなおるといいけれど。

 

「…!……っ!」

 

足を撃った警官も無事だろうか。太い血管と神経は外した筈だけれど、後遺症が残らないといいな。

 

「…リー!ビリー!!!」

「俊典…?」

 

薄くなる意識が、聞きなれた声に引き戻される。いつの間にかとじていた目を開くと、友人に抱き起こされていた。

 

「は、交渉決裂して結局こうなっちまった…まぁお前らからしたら敵が共倒れで万々歳ってとこか」

「いいや、君は敵じゃない。私のサイドキックで、誰より優しい…ヒーローだ」

「…このお人好しが。あの流れでどうしてそうなる…ハァ、いい、反論も疲れる」

 

久しぶりに、彼の顔をまじまじと見た。お互い歳をとったのもあるが、何よりコイツはやつれた。胃がないなら当然だろうが。

 

試しに巻き戻しの個性を使えないかと、俊典の胸に拳を当てる。しかし個性が発動できる気配はない。

 

「あの子は結局、僕のことを嫌ってはくれなかったか…」

 

ナイトアイたちが助けた小さな少女。ただ甘いものを一緒に食べたり、何度か遊んだだけだったのに。彼女の個性を使えたことは一度もなかった。

 

「…君はどうしてこんなことを」

「さぁてね。とびきり悪いことがしたくなっちまったのさ」

 

口を割る気がないのを察してか、それ以上は何も聞かれなかった。

 

視界が暗く霞んでいく。もともと見えなかった目だ。コピーした個性で見えるようにしていたが、この暗闇のほうが馴染み深い。

 

懐かしい黒に身を委ねながら、僕から流れる血で赤く染まった相棒に微笑みかける。

 

「幸せになれよ俊典。ゆっくり寝て、美味しいもの食べて…」

「…うん」

 

「それで、やっと公平ってやつだ…」

 




最近アンデッドアンラック履修して、ビリおじがあまりにも’’’’’’癖’’’’’’’’’だったので衝動的に書きました。長編の方を放置していて申し訳ないです(まだしばらく無理そう)

壊理ちゃんのポジション=タチアナのイメージで執筆
文中には書けなかったけど、交流があって懐かれた=最後まで嫌いになってくれず壊理の個性派使用できなかった。同じ理由でOFAも使用できなかった

AFOって大量に個性持ってるやろ受けど、流石に数千万とかはないかなーと思ったので個性の数でゴリ押し勝利したことにします(雑)

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