機動戦士ガンダム00のネームドモブに転生した主人公の日記的な作品です。久々に文章を書いたので、雑な所はお目こぼしいただけると幸いです。
○月×日
今日から日記を書くことにした。
日記というより、心に溜まった他人に言えない事を書き留めるメモみたいなもんだが。
正直、これを書くつもりは最初はなかった。こんな事を書いて誰かに見つかったら、どう誤魔化せばいいのかわかんねえし。
ただ、最近同じ部隊の同僚や上官からも、悩み事があるなら言えよと頻繁に言われるようになった。どうやらもう誤魔化せないくらい顔に出ているらしい。
こうなったら何処かに吐き出した方がいいと思い、ノートに心境を綴ろうと思った次第だ。
……自分しか読まないのに説明文を書くのって、なんか痛い奴みたいじゃないか?
まぁ消すのもめんどくせえし、それはさておこう。俺の悩みは、この世界の未来を知っている事だ。
なんで知ってるかって? 何故なら俺はネット小説でよくある転生者だからだ。まあ、最近までは特に前世の記憶はなかったんだが。
そんな俺がMSパイロットになったのは、子供の頃に基地の見学イベントでリアルドを見た事がきっかけだった。
リアルドが轟音を響かせながら空を飛ぶ勇姿、ライフルを構えて直立する姿にカッコいいって思った。
俺もリアルドに乗りたい。それがMSパイロットになる事を夢見たきっかけだった。
適性審査は無事クリア。血反吐を吐くようなきつい訓練を受け、念願叶ってMSパイロットとなった。
そして赴任先のエルメンドルフ基地でMSを受領した時、リアルドじゃない事に少し残念な気持ちもあったが、それでも
それから色々あった。対領空侵犯措置の任務に就いたり。フラッグを自在に操るトップガンに一悶着つけたり。
色々あったが、フラッグで空を自由自在に駆ける事が、何もかもから解放されたような気がして、夢のように幸せだった。
────あの事件が起きるまでは。
人類革新連盟の軌道エレベーターで行われた式典を、テロリストがMSで襲撃する事件が起きた。しかし被害が出る寸前でテロは防がれた。偶然その場に居合わせたテレビクルーによれば、テロリストのMSを撃墜したのは
その後、速報で世界に発せられたソレスタルビーイングという組織の声明。モノクルを着けた男が、世界中のありとあらゆる戦争行為に対し、彼らが保有する兵器“ガンダム”が武力介入すると宣った。
周りの奴等は戸惑うだけだったが、俺は男のことを知っていた。名前はイオリア・シュヘンベルグ。記録上では数百年前に死んだ人物だ。実際はコールドスリープされていて、
なんでこんな事を知っているんだ? と思う間もなく、様々な事が脳裏に蘇った。
ガンダム。GNドライブ。プトレマイオス。チーム・トリニティ。地球連邦。アロウズ。カタロン。ELS。
濁流のように押し寄せた記憶によって、俺は気絶した。
目が覚めた時、俺はこの状況が夢なのか現実なのか訳がわからなくなっていた。
だってそうだろ? ある日突然前世の事を思い出して、今まで生きていた現実が、前世では創作として描かれていたら、正気でいられる訳がない。
前世じゃあ二次創作含めて転生ものの小説を読んだ事はあるが、あれは娯楽として他人事で済ませていられるから楽しめてたんだと自覚したよ。
その後、俺は毎日ストレスで吐いた。
だってそうだろう。前世で見た機動戦士ガンダム00のストーリーの通りに事が進むなら、俺は死ぬからだ。
俺が転生したキャラクターは、名前や台詞こそあるがモブだ。
タクラマカン砂漠で行われた三大国家群合同軍事演習に参加し、ガンダムに撃ち落とされて呆気なく死ぬキャラ。
そんな男に俺は転生した。
最悪な運命だ。
本当に、最悪だ……。
○月△日
変な話だ。MSパイロットを辞めれば、俺はガンダムにやられずに済むだろう。これから起きる世界規模の騒乱に関与する事はなくなるんだ。死ななくて済むんだ。
なのに、俺は辞表を出せずにいる。
とりあえず医官にカウンセリングを頼もう。それで診断書をもらって、それを理由に辞表を出そう。うん、それがいい。
◯月□日
なんでだ。なんでなんだ?
気づいたら俺は医官に作ってもらった書類を破いていた。軍を辞めるのに必要な書類だっていうのに、俺はそれを破っていたんだ。
これが今生の俺の意思だとでも言うのか?
このまま軍に所属していたら死ぬのがわかってるのに? 冗談じゃない。そんなの、誰が望むんだよ畜生。
……ああ、でも。
◯月☆月
…………空を飛びたい。
●月×日
今日、フラッグで空を飛んだ。
ブランク明けの軽い訓練飛行だったが、それでも心は弾んだ。
自由だ。空を飛んでいると、何もかもから解放された気がする。そうだ。俺が飛ぶのは、俺が飛びたいからだ。原作とか、関係ない。
ああ、そうか。そういう事なんだな。
俺はもう、フラッグから降りられないんだな。
……自分で自分を決められるたった1つの部品。
そこが、自分は
●月△日
腹を括るしかねえか。
俺は死にたくない。アニメで見たような、あんな風にあっさり殺られたくはない。
でも、今まで必死に訓練を受けて夢が叶ったのに、死ぬかもしれないからって理由でフラッグを降りる俺はダセえと思う。
外伝系の設定は知らないし、アニメの記憶も結構歯抜けになってる。でも、自分が転生したキャラが死んだ理由は印象に残ってるから、なんとか死亡フラグを乗り越えられるかもしれない。
それに『生きる為に戦え』と、
その通りだ。例え矛盾を抱えていたとしても、俺自身がこの世界で存在する為に。
俺はこの世界で生きる為に戦う。
●月□日
アザディスタンという国で、保守派の大物が行方知れずになった事をきっかけに内乱が起こったらしい。ユニオンの部隊が事態解決の為に動員されたというニュースを見た時、ガンダムエクシアが非武装で王宮前の広場に降り立ったのが脳裏をよぎった。
ということは、ソレスタルビーイングのガンダムを捕獲する為の合同演習の時期が近づいているはずだ。
もっと厳しく、訓練をしないとな。
●月★日
転属命令がきた。
上官の話を聞く限り、どうやら原作通りにオーバーフラッグス隊に配属されるようだ。オーバーフラッグに乗れる事を喜ぶべきか。はたまた死亡フラグが立ちつつある事を嘆くべきか。
これまでの愛機ともお別れだ。名残惜しいな……。
あばよ、相棒。
叶うなら、また会えたらいいな。
●月☓日
やっべえ。やっちまった……。
俺は無事(?)オーバーフラッグス隊に編入された。
その後、ガンダム鹵獲作戦もとい合同演習に参加する為、西太平洋に派遣される空母の格納庫で、俺のオーバーフラッグを眺めていたら「あのガンダムにどこまで対抗できるやら」とか言ってる声が聞こえた。
正直、気持ちはわかる。ガンダムとやるなら、せめて擬似太陽炉を搭載してる機体で戦いたい。
でも、現時点で自分達は演習に参加する他の部隊よりも、ずっと良い機体を与えられているんだ。それなのに意識が低くてどうするんだと思った。
言い方が悪かったのか、そいつと言い争いになったよ。
眼鏡のパイロットが止めようとするが、熱くなった俺達は取っ組み合いになる寸前だった。そこへ現れた上官にまで俺は言いがかりをつけてしまい、結果として俺は彼らと因縁が出来てしまった。
……死亡フラグ、乗り越えられるよな? よな?
▲月■日
いよいよタクラマカン砂漠で合同演習が行われる。
お偉方にとってはガンダムの鹵獲、現場にとっては実戦を意識した演習。
そして俺にとっては、運命を超えられるかどうかの分水嶺。
死ぬ気はないが、万が一に備えて法務官に、俺が生きて戻らなかったら日記の類は全て焼却処分するよう伝えておいた。
死ぬ気で訓練をこなした。シミュレーションで最上級の難易度に何度も挑んだ。
万事上手くいった訳じゃない。というか上手くいってる手応えは全然ない。
でも俺に出来る事は全てやった。あとは俺が運命を乗り越えるだけだ。
生きて、この日記の続きを書く。書ける事を祈る。