チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
やっと元通りの生活に戻れたとほっとしている、元アラフィフ主婦、実は転生者の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。9歳だけど永遠のアラフィフ! 剣術とか魔法とかの訓練時間は増えましたが、スケジュールを詰めれば問題ないと気付きました。
ていうかね!? 元のスケジュールがキッツいのに、更に詰めたんだよ! 朝起きて朝食、農園とか鍛冶場とか木工場で仕事、食材の納品、場合によっては食材加工、暇を見てご飯(これが私の昼食)、読書、勉強のおさらい、剣術と魔法の訓練、風呂、夕食。
あーーーー! 死ぬ! これを繰り返してたら、絶対に倒れる! ブラックか、この世界は! と、叫びたいところだけど、このくらい予定を詰められても最近は平気になってきた。慣れって怖いね。
近頃はスケジュールが詰まってるから、朝は早くなった。私が起きて食堂に行ってもアーサーとスカーレットはいない。まだ寝てるんだよね。自分だけ早いんかい! と言いたいけど、二人は夜遅くまで仕事をしてるって聞いたから何も言えない。とほほ。
でもひとつだけ良いことがあった。朝はたくさんは食べたくないっていう、私の願いがかなったのである! トースト一枚だけとはいかなかったけど、サンドイッチちょびっと、お茶という食事になった。やった! こういうのでいいんだよこういうので。というやつだ。
朝早くに農園に向かう私についてきたのは、今日はジャスミンだ。昨日までこっちを見ては歯軋りしてるとこを見かけてたけど、今日は念願叶ったという上機嫌な顔をしてる。毎回、メイプルとどんな争いをしてるんだか。ていうか、昨日の仕事はどーしたんか! ちゃんとやってるんだろうな!?
話は飛ぶけど、アシュフォード家には執事もいるし、もちろんそれを統括する家令もいる。でも彼らは飯テロ……もとい、新作飯の時に厨房には集まらない。屋敷では働いてる姿は見かけるし、私にも礼を尽くしてくれる。でも何だろ……こう、ちょっと距離があるっていうか? メイドと一緒に厨房に駆け込まれると、確かに人数的に困るんだけど、何でだろ。
という疑問を、こないだメイプルにぶつけてみた。ジャスミン相手だと話が変なところに飛んでいくからである。ややこしいのはめんどくさいって理由でスルーしてたんだけど、さすがにここまで徹底してると違和感しかない。逆に下働きっていうの? テオとかは平気で話しかけてくるし、新作飯をねだるのに。
そしたら意外な答えが返ってきた。執事長とも言える家令がめちゃくちゃ厳しいのと、アーサーの命令で執事たちは私にあんまし近づかないようにと言われてるらしい。……おい。娘可愛さに男近づけないってどゆこと!? だって他の使用人は近づいてくるし! って思ったら、屋敷内で働いてる執事たちはそれなりに身分が高く、下手すると私みたいなのと結婚しても釣り合うらしい。……あ、そりゃヤバいわ。娘ラブなアーサーが口を酸っぱくして近づくなとか言うわけだ。執事な人たちに料理をすぐに食べてもらえないのは、ちょっち寂しいけどね。
私自身はアーサーが心配するような目で見られることなんかないと思ってるけど、この容姿だからなあ……。リディアな私って、スカーレットに似てるから見た目が可愛くて綺麗系。可愛いと綺麗をどっちも満たしている容姿なんだよね。でももしかしたら言い寄ってくるのって転生前世界日本の私の息子娘と近い年か、それよりもっと年下な子だよね? そんな子に色目使われても正直何とも思わないというか、まったくそんなこと思えない。
まあでも、私の態度が変わったことで執事たちに力尽くで何かされるのも嫌だしめんどくさいので、それ以上は追求しなかった。ていうか、彼らもウマ飯はこっそり別室で食ってるらしいし。だったら私に要求しても同じじゃね!? とは思うけど! ていうか、ウマ飯以外の興味をアーサーに心配されるとかびっくりだよ!
って考えてる間に、私は農園に辿り着いた。今日も乳しぼりと肉運び……んーー? あれ、ホレスか? 背の高い草の向こうでホレスが何かしてるように見える。私はジャスミンにそっと馬車をとめるように合図し、こっそりとホレスに近づいた。ジャスミンは足音を簡単に消すんだけど(諜報&暗殺係だから)、私はそうはいかない。なので足元に平たい結界を出して草の間を滑らせることにした。これなら足音は立たない! 私えらい!
ホレスはのんびりと肉タライ、しかも内臓の入ったタライに向かって何かしてる。……んー!?!? 水魔法!? しかもふんふんと鼻歌!? 私はその場にしゃがんでいるホレスの後ろから手元を覗いて、ピキッと顔を強ばらせた。
「おい、ホレス! 何で、ホルモン洗ってるか言え!」
「え!? はっ!? お嬢様!? 何でここにおられるんか!」
「ホルモン! どーして洗ってるのか!」
振り返ったホレスがパニックを起こしてるのを無視して、私は腰に手を当ててふんぞり返った。慌ててたホレスが私の少し後ろに控えているジャスミンを見たのか、真っ青になる。……あー。ジャスミンって、私がキレると同時にキレるんだよね。しかも私が止めてるからいいけど、下手すると勝手に攻撃したりする。多分だけど、今はもの凄い目でホレスを睨んでるんだと思う。
「いやはや、参ったのう。まさか見つかるとは」
「そーいえば今日は先触れ出してなかったな! だからバレたんだろうが! というか、事情を説明しろ!」
私はキレたままホレスに命令した。仕方なさそうにホレスがホルモン入りのタライを抱えて小屋に案内してくれた。
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https://note.com/yoshiho_lo/n/nf01eab009110