ハイスクールD×D 特進教室のブレイダー   作:ogachan

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遅くなりました~
第1話です


第1話

 時の流れは速いものであれから約10年ほどが経過していた

 ヴァチカンへ渡り、修練を積み、経験を重ねた

 今の私は若い戦士の中でも最強格、教会全体で見ても上から数えたほうが早い指折りの実力者へと成長していた

 今の自分に不満はない。身を守れるだけの力を身に着け、剣の錬成技術も磨き上げた。今の自分があの邪龍にどれだけ太刀打ちできるものか試し斬りしたいという思いもある

 ただ、私の心はどこか晴れなかった

 それは多分、周囲から望まれる英雄としての在り方に私自身の意志が介在しておらず、辟易としているからだろう

 別に英雄なんて目指していない、偉業なんて成し遂げられずとも構わない。ただ自分と近くの人々を守れればそれで充分だ

 なのに多くの者が私のことを『英雄になるべくして生まれた存在』というある種のレッテル越しに見ていた。私のことを直接に見ようとしていない、どこか異質な存在として捉えている

 それはきっと家族も例外ではない。信仰心に厚いがゆえの弊害なのだろう

 ストラーダ猊下も思い悩んでいた時期はあったそうだ。けれど、すでに乗り越えられたようでちゃんと折り合いをつけているとのこと

 では私は何を望んでいるのか、何を求めているのか。答えはまだ見つかっていない

 だけど、こんな私にも素直になれる、心を開ける時間はあるもので――

 

「エリカさん」

「アーシア」

 

 アーシア・アルジェント――癒やしの聖女として教会に多大な貢献をしている少女シスター

 ストラーダ猊下が理解者ならば、彼女は友達だ

 私達はどこか似ている、きっと同じ悩みを抱えているのだろう。それはアーシアも感じ取っているはずだ

 

「また任務ですか?」

「まあね、教会も人使い荒いよ~荒事じゃないだけマシだけど」

「危ない任務ではなくても気をつけてくださいね? お怪我はしないに越したことはないんですから」

「うん、ありがとう。今度また2人でお出かけしましょうね」

「はい」

 

 こんな何気ない日常がこれから先も続くのだと私は思っていた

 アーシアに異端の烙印が押されるまでは……

 

 

 

***

 

 

 

「納得できない……どうしてアーシアが」

「エリカ……」

 

 それはいつものように任務から帰ってきてのことだった

 私が不在の間にとある事件が起きた

 聞くところによれば、アーシアが負傷した悪魔と遭遇したそうだ

 それ自体は特別問題ではないが、彼女はこの悪魔の傷を治癒してしまったとのこと

 基本的に治癒の力は信者にしか作用しない、とされている

 だが例外はある。今回は悪い方向に作用してしまったが

 きっと今の私は戦場での超然とした英雄からかけ離れた年頃の少女でしかないだろう

 イリナもアーシアとは私を交えて親交があっただけに少なからずショックを受けているようだが、姉らしく振る舞える余裕が今の私にはなかった

 

「少し気になることがある」

「何よ、ゼノヴィア。今は正論なんて聞きたくないんだけど」

 

 ゼノヴィア――今代のデュランダルの所有者。私と双璧を成すストラーダ猊下の継承者

 彼女がデュランダルという武器を受け継いだなら、私は英雄としての精神性を受け継いだ

 

「絶対的な正しさなどない。極論だが我々は自力で判断できないから主に判決を委ねているに過ぎない。だから全てを主に任せている内は半人前だ」

「「!」」

「猊下の教えの中でもお前はこれを特に気に入っていたな」

 

 そう、その言葉はこれまで何度も私に前を向かせてくれたストラーダ猊下の教えだ

 

(胸に刻んでいたはずなのにな……)

 

「ごめん、切り替えるわ。ちょっと殴っ――っ痛ぁ! まだ最後まで言ってないじゃない!」

「別に問題ないだろう。早い遅いだけの差だ」

「こういうのは最後まで言わせるものよ!」

「戦場では素早いくせに、お前も変なところで変わり者だな」

「あんたにだけは言われたくないわよ……」

 

 言葉とは裏腹に差し出される手を掴む。そこに迷いはなかった

 同じ背中を追いかけてきた者同士、通じ合うものがあったのだ

 

 

 

***

 

 

 

「それで? 聖剣使いが3人も揃って何用か?」

「恐れながら申し上げます。件のシスター、アーシア・アルジェントの刑を決定する前に我々の話しを聞いていただきたく馳せ参じました」

 

 あれから私達は一縷の望みを賭けて教会の上役たちに直談判していた

 それはこのままアーシアを魔女として処罰させるわけにいかないからだ。感情的にも、戦略的にも

 

「なにかと思えばそんなことか。いかに聖剣使いであろうと一介の戦士に過ぎない貴様らが意見できることではない」

「そのようなことに時間を割く余裕はない。下がりなさい」

「意見があるのであれば正規の手順を踏みなさい」

 

 聞こえてくるのは否定の意。しかし、私達の意思もまた変わらないのは言うまでもない

 

「それでは間に合わないと考えてこの場を選びました。どうか」

「「……」」

 

 それぞれの剣を首筋に当てることで揺るぎない決意を示す

 

「3人とも剣を下ろしなさい」

 

 振り向くと背後にはストラーダ猊下の姿があった

 

「ストラーダ猊下、いつお戻りに?」

「つい先ほどです。アーシア・アルジェントの話しなら耳にしております。それゆえに急いで戻ってきました」

「なんと、たかだか一介の元シスターのためになぜ」

「お言葉ですがそれはただの立ち位置です。彼女自身が救ってきた命、積み重ねた貢献はすでに一介のシスターの枠組みを優に超えているのですよ。それをたった一度の過ちで、何ら与えずに処分するのはいささか傲慢ではないでしょうか」

「だとしても件の魔女は悪魔の傷を癒やした。これは立派な利敵行為では?」

「アーシア・アルジェントは戦士ではありません。悪魔を見分ける術も持たず、見たのも初めてだったはずです。加えて彼女にとって治療行為はもはや日常の一部、負傷者を目にすれば条件反射で動くでしょう」

 

(さすが猊下。他の上役たちとは視点が違う)

 

「だから仕方なかったと見逃せと?」

「まさか、私もそこまで申しはしませんとも。情状酌量の余地はあるでしょうがそれとこれはまた別ですから。ただ――」

「ただ、なんですかな?」

「今回の事件の責任をすべて彼女ひとりに押し付けるのであればそれには私も異を唱えますがね」

 

(そう。ゼノヴィアの指摘で気付いたが今回の一件で名前が挙がっていたのがアーシアだけだった。他にも処分に値する人物がいたのにも関わらずだ)

 

「探せばいくらでも穴は出てくるでしょう。さて、若き戦士たちよ。何を疑い、何を願う?」

 

 ようやく私達のターンが訪れた

 

 

 

***

 

 

 

「猊下、先程はありがとうございました。それから猊下を通さずに無茶な真似をして申し訳ありませんでした」

「「申し訳ありません」」

 

 時は移り、ストラーダ猊下の執務室

 

「気にしなくて良い、と言えば嘘になるがまずは頭を上げなさい」

「「「はい」」」

 

(内心、軽いげんこつの一発は覚悟してたけどこの分なら大丈夫かな……?)

 

「隠棲の場となる明確な追放先を用意してほしいとは、なかなか思い切った提案だった」

「難しいのでしょうか……」

「そうだな、何しろ前例がない。だが必要な措置とも言えるのもまた事実だ」

 

 そう、いまは昔とは時代が違う。現代の悪魔には悪魔の駒(イーヴィル・ピース)というある種の戦略兵器がある

 ここでアーシアを追放するのは戦略的には悪手でしかない

 所有権を含め、すべてを放棄するのだから後になってアーシアの身に何があってもなんら責任を追うことはない。逆に言えば彼女の身柄を奪われても何も言えない

 

「よし、君たち3人に特別任務を与えよう。日本、駒王町にある機能停止中の教会を追放者たちの受け皿として立て直せ」

「その任務にアーシアを同行させることは?」

「許可するとも。膿を出すには時間がかかる、とはいえそれを待てる猶予もない」

「町を拠点としている悪魔陣営にはどのように?」

「遺恨が残らないようにすることを最優先に、そこから先は現場の判断だ」

「わかりました」

 

 アーシアの未来は私達の双肩にかかっているようだ

 

(この任務ばかりは全力でいかないとね)




原作見てて不思議なのがアーシアだけ処罰されてるところと、転生制度を知りながら放逐って教会は何考えてるの? な点でした
本作では教会陣営にスポット当てて書いていきます
それではまた次回
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