無銘の暗殺者   作:悪平等な人外

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駄文。
見切りだから、ネタが………



逃亡と疑念

周囲から迫る無数の黄金。

金色の波紋から出現したその宝具は、大気を鋭く引き裂き、アサシンの全身へと容赦なく襲いかかった。

並のサーヴァントであれば、碌な回避も出来ずに肉を貫かれ、骨を砕かれていただろう。

だが、彼女はAランクの敏捷を持ち、かつて常軌を逸した鍛錬の果てに、技術を極限まで突き詰めた暗殺者だ。

 

「ッ……!」

 

鋭い呼気とともに、アサシンは首筋に突きつけていたナイフを瞬時に引くと、コマのように鋭く身体を反転させた。

風を切り裂く武具の軌道を、ミリ単位の肉体制御で見切り、躱す。

衣服の端が掠れ、火花が散るような金属音が周囲に鳴り響いた。

バックステップを数回、音もなく跳躍し、彼女は少女から十数メートル離れたビルの壁面へと張り付くように着地する。

その漆黒の瞳が捉えたのは、先ほどまで自分が刃を突きつけていた褐色肌の少女──ティーネ・チェルクの姿。

そして、その背後の空間から、陽炎のように滲み出てきた圧倒的なる黄金の輝き。

──王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

この世のありとあらゆる財宝を収めているという宝物庫から、古今現在のありとあらゆる伝説の原典を取り出す宝具。

その黄金の砲門が少女を守るように周囲に展開されていた。

 

(ティーネ・チェルク……! 英雄王ギルガメッシュの、マスター!)

 

前世の記憶──原作の知識が、彼女の脳内に冷や水を浴びせるように鮮明な警告を叩きつける。

完全に失念していた。

このスノーフィールドにおいて、この土地を護ろうとする例外の魔術師の存在を。

彼女は民を犠牲にする外道ではない。

むしろ、この土地を汚す新参の魔術師たちを排除しようとする、この地の先住民族の長なのだから。

 

「ふん。(オレ)の財を躱すか。雑種の分際で、なかなかに素早い身のこなしだ」

 

黄金の光と共に現れたのは、太陽の如き輝きを放つ、金髪紅眼の王。

人類最古の英雄王、ギルガメッシュ。

その真紅の双眸は、ビルの壁面に潜むアサシンを、まるで不快な虫でも見るかのように冷酷に見下ろしていた。

 

「ギ、ギルガメッシュ様……!」

 

怯え、しかし己のサーヴァントの降臨に安堵の表情を浮かべるティーネ。

ギルガメッシュは彼女を一瞥することすらせず、ただアサシンへとその圧倒的なプレッシャーを向け続ける。

 

「我が財を狙う盗人風情が、(オレ)の臣下に刃を向けるとはな、雑種。その身の程知らずな蛮行、万死に値すると知れ」

 

ギルガメッシュの背後の空間に黄金の波紋が生じ始めた。

そこから覗くのは、神話の時代に集められた、人類の智の原典たる宝具の数々。

一本一本が、一撃でこの身を消し飛ばすほどの魔力を秘めた、死の雨の準備が整いつつあった。

アサシンの胸の内に、冷や汗が流れる。

令呪の軛から解放され、自由を手にしたはずの身。

しかし、今目の前にいるのは、この歪んだ聖杯戦争における規格外の頂点の一角。

しかも、常ならばあるはずの慢心もエルキドゥの存在によってないものに等しい。

慢心した状態であっても、大英雄(ヘラクレス)騎士王(アーサー王)などのトップクラスのサーヴァントを一方的に打ちのめすことができるほどの戦闘力。

真正面から戦えば、宝具の物量だけで消し炭にされるのは明白だった。

だが、暗殺者としての冷徹な計算が、同時にひとつの解答を導き出す。

 

(戦う必要はない。私の目的は、この王と覇を競うことではないのだから)

 

「……失礼を」

 

アサシンの口から漏れたのは、鈴を転がすような、しかし感情の起伏が全くない静かな声だった。

 

「私は、民を害する外道を狩る者。そこの少女もまた無辜の民であるなら……私の刃が向く対象ではない。誤認による無礼、平に容赦を」

 

「命乞いか? 耳障りだ。仮に(オレ)の配下に手を出したことは抜きにしたとしても、貴様が(オレ)の財を狙う雑種である以上──見逃す道理など、万に一つもない」

 

「私は、聖杯を求めない」

 

「──何?」

 

「我が神は杯を持たない──故に、私も聖杯を求めぬ」

 

「ほお、聖杯を求めぬか。………ふ、貴様こそが一番聖杯が欲しいのではないか?」

 

「……?………既に我が願いは果たされた。故に、この身に願いはない」

 

「ふっ、ふははははは。よもや己の願望にすら気づいていないとはな………(オレ)には分かるぞ、お前が願望機に望まねば叶わぬほど、身の程に余る願望を抱いているとな」

 

「何を言っている?」

 

(どういうことだ?私の願いは既に成就したはず。………だが、あの英雄王が私に願いがあると言っている。自覚していないだけで、この身は何かを願っていると?)

 

「身の程に余る願望を抱きながらもなお諦めきれぬか。そして、それを自覚していないときた。これを笑わずにはいられるか。──よい、よいぞ。奴以外には碌な雑種しか呼ばれぬと思っていたが、中々に面白き者もおるではないか。」

 

ギルガメッシュはクックッと喉を鳴らし、愉悦に満ちた笑みを深めていく。

その真紅の双眸は、アサシンの魂の深奥に眠る願望を完全に透視しているかのようだった。

 

「己の正体すら見失ったか、哀れな道化よ。だがな、無自覚な飢餓ほど美しく狂おしいものは他にない。その頑なな無表情の裏で、いつまでその偽りの無欲を気取っていられるか、(オレ)が見届けてやろう」

 

背後に浮かんでいた無数の黄金の波紋が、その言葉とともに、水面が静まるようにすうっと消えていく。

 

「喜べアサシン、貴様を(オレ)の傍に置いてやろう。(オレ)のために生き、(オレ)のために生きるのだ。この世でこれ程の幸福はあるまい」

 

「……何を?」

 

アサシンの端正な無表情が、今度こそ明確に凍りついた。

傍に置く? (オレ)のために生きる?

その言葉が意味する凄絶な支配のニュアンスに、前世の男子高校生としての記憶が真っ先に悲鳴を上げる。

 

(不味い、完全に不味い。原作の知識が、私の防衛本能が全力で警鐘を鳴らしている。あの王のお気に入りになるということが、どれほど不条理で、どれほど地獄かを!)

 

暗殺者としての厳格な思考すらも、この予想だにしない超展開には停止しかけていた。

傲岸不遜にして唯我独尊。

人類最古の英雄王たるギルガメッシュが示す傍に置くという言葉は、対等な臣下としての勧誘ではない。

己の庭に咲いた、少し珍しい玩具をコレクションに加えるという、絶対的な支配の宣言。

 

「……断る」

 

アサシンはビルの壁面に張り付いたまま、低く、しかし明確な拒絶の意志を口にした。

 

「この身は神に捧げるもの。たとえ何者であろうと降ることはない。」

 

「ふははははは! 誰が許可を求めた? 勘違いするなよ雑種」

 

ギルガメッシュは可笑しそうに肩を揺らし、その真紅の瞳に愉悦の光をぎらつかせた。

 

(オレ)が良しとしたのだ。貴様の意思など、一粒の砂の羽ばたきほどの価値もない。拒絶したければするが良い、足掻きたければ足掻くが良い。その果てに己の身の程を知るのもまた、興としては悪くない」

 

ギルガメッシュの背後の空間に黄金の波紋が生じ始めた。

その砲門から覗く幾つもの宝具がアサシンを照準する。

 

(……逃げる。これ以上、この王のペースに巻き込まれるわけにはいかない)

 

アサシンは即座に判断した。

今、この場でギルガメッシュと戦うのは自殺行為だ。

油断のない今のギルガメッシュは、戦闘中に不意を突くでもなければ倒すのは到底不可能。

故に残された手段は逃げることのみ。

その逃げることすら、今のギルガメッシュを相手には難しいだろう。

全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)と称された彼の王の瞳はこの世界のありとあらゆるものを見抜く。

たとえ最高ランクの気配遮断であっても、何ら効果を示さないだろう。

であるならば、物を言うのは単純な戦闘技術のみ。

 

(いかに攻撃を凌ぎ、逃げ切るか──!)

 

黄金の波紋から放たれた数条の光。

それは先ほどのような面制圧の面転回ではなく、アサシンの退路を正確に、かつ冷酷に穿つピンポイントの狙撃だった。

音速を超える宝具の風圧が、ビルのコンクリートをバターのように容易く抉る。

 

「っ……!」

 

アサシンは壁面を蹴り、重力を無視した速度で垂直に駆け上がった。

直後、彼女がいた場所には三本の呪槍が突き刺さり、爆発的な魔力の余波でビルの一角が吹き飛ぶ。

身を翻しながら、アサシンは懐から幾数もの投擲短剣──暗殺技術を極限まで高めた彼女の、文字通りの手足の延長たる暗殺具を放った。

狙うはギルガメッシュ本人ではない。

彼が従える宝具の軌道、その僅かな隙間だ。

カツン、と硬質な音が連鎖する。

放たれた短剣はギルガメッシュに届く前に、自動防御の宝具に弾かれた──いや、アサシンはそれを最初から予期していた。

弾かれた短剣の軌道、火花の散る位置、それらすべてを計算に組み込み、自らの放つ魔力の残滓を欺くデコイとして利用したのだ。

最高ランクの気配遮断すら見通す、あの真紅の双眸。

ならば、隠すのではない。認識の焦点を一瞬だけずらす。

そして本命の一撃を──

ティーネの影が揺らぎだし、その形を変え、起伏する。

それはただの影ではない。

彼女が生前、常軌を逸した修行の果てに辿り着いた暗殺術。

影を媒介とし、己の存在を希薄化し、気配を消し、そして影そのものを武器と化す絶技。

 

──黙想影葬(ザバーニーヤ)

 

歴代の山の翁の一人である影剝のハサンが編み出した、影を自在に操る秘奥。

本来の使い手である影剝のハサンは半径数kmの影を支配できるが、

アサシンが扱えるのは十数mほど──しかし、それでも十分に脅威となる。

影に潜ることも可能で、陰に潜っている間、気配遮断と敏捷のランクは倍化する。

影は彼女の肉体の延長であり、もう一つの神経であり、もう一つの手足だった。

 

「ほう、小細工を」

 

ギルガメッシュが不敵に目を細めたその刹那、彼のマスターであるティーネを狙い、その足元から伸びた影の手が瞬時に搔き消された。

 

「ふん、影を介した奇襲か。(オレ)を前にしてこのような真似が通用すると思ったか?」

 

ギルガメッシュが傲然と言い放つと同時に、黄金の波紋より、光輝く光球が現れ周囲を照らし出す。

ビルにより所々に出来ていた影が全て消え、辺りが明るく照らされる。

影の手を伸ばした瞬間には既に影に潜伏し、逃亡に移行したアサシンだったが、照らし出された光は、影という潜伏の領域そのものを根こそぎ奪い去った。

影に潜むことで引き上げられていた敏捷と気配遮断の倍化が、一瞬にして剥がれ落ちる。

しかし、彼女の思考はコンマ一秒の遅滞もなく次の行動へと移行していた。

 

(最初から、奇襲が成功するなどとは思っていない!)

 

影の手を放ったのは、ティーネを害するためではない。

ギルガメッシュの注意と、彼の持つ圧倒的な知覚能力の焦点をマスターの防衛へと強制的に誘導するための布石。

そして、闇を照らし出す光の宝具が展開されることすらも──

 

「そこか、雑種」

 

冷酷な宣告とともに、ビルの上空から降り注ぐ黄金の雨。

光に晒され、もはや隠れ潜む場所のないアサシンに向かって、数片の宝具が音速を超えて襲いかかる。

だが、光が生まれたということは、同時にどこかに強烈な影が生じたということでもある。

アサシンは迫り来る死の光線を、空中での常軌を逸した肉体捻転のみで回避した。

空を切る剣風、頬を掠める槍の圧力が肌を削るが、彼女の顔色一つ変わらない。

 

「な……ッ!?」

 

地上で身を潜めていたティーネが息を飲んだ。

アサシンが着地したのは、逃げるための路地裏でも、遠くのビル群でもなかった。

それは、ギルガメッシュが放った光の宝具が作り出した、最も濃密なビルの影の境界線。

光が強ければ強いほど、その直下に落ちる影は濃く、深くなる。

全天を照らす太陽の如き宝具により生じたビルの隙間のほんの一筋の影に、アサシンは吸い込まれるように飛び込んだ。

 

「常闇に沈め、黙想影葬(ザバーニーヤ)──!」

 

二度目の潜影。

光によって影を消されたのではない。

強大な光を利用して逃げ道となる影を自ら創り出させたのだ。

 

「……ほう?」

 

ギルガメッシュの口端が、かすかに吊り上がった。

己の攻撃、己の展開した宝具の性質、その全てを逆手に取った暗殺者の機敏。

全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)を持っていようと、対象がその瞬間に取る最適解を物理的に防ぐには、ほんの僅かな発動の手間が生じる。

アサシンはその刹那の隙間を、極限まで磨き上げられた技で穿ってみせたのだ。

影に潜った瞬間、跳ね上がる敏捷。

十数メートルの範囲しか干渉できない影の能力を、彼女は攻撃ではなく超長距離の跳躍と位相移動の足場としてのみ全開放した。

ビルの影から、遥か数ブロック先の路地裏の影へ。

影から影へと弾丸のように跳躍し、都市の闇の中へとその存在を高速で溶かしていく。

しかし──

 

「言ったであろう?雑種。(オレ)の前でそのような真似が通用すると思うなと」

 

アサシンの背筋に極寒の戦慄が走る。

影へと潜影し、そこからさらに闇の深みへ逃走を図ろうとした彼女の脚を、目にも留まらぬ速度で迫った鎖が捕らえかけたのだ。

全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)

暗殺者として磨き上げられた逃走経路の最適解すら、世界の全てを見通す英雄王の視線にはすでに踏破された過去のように明確に見えている。

アサシンが跳躍する先の空間に、逃げ道を塞ぐように配置された宝具。

完全に読まれていた。

ギルガメッシュの冷酷な嘲笑が耳元に届くかのように響く。

放たれた黄金の鎖──天の鎖(エルキドゥ)が、彼女の足首に絡みつこうとしたその瞬間。

 

──ヒュッ、と。

 

異様な、あまりにも不自然な大気の歪みが起きた。

それはギルガメッシュの宝具の残光でもなければ、アサシン自身の魔力でもない。

暗闇の隙間から滑り込んできた不可視の風の波動が、アサシンに迫っていた拘束宝具の軌道を、ほんの僅か──ミリ単位で逸らしたのだ。

 

「む……?」

 

不意に混ざり込んだ不純物のような魔力の介入に、ギルガメッシュが微かに眉をひそめる。

 

(風の……魔術!?)

 

ドォン!と音を立てて、鎖はアサシンの足首の皮一枚を掠め、ビルの屋上床面を粉砕した。

生じた僅かな衝撃波と大気の乱れ。

アサシンはその暴風を全力で受け止め、己の体重を極限まで殺して風に乗り、さらに宝具を発動した。

 

無想駆体(ザバーニーヤ)

 

それは歴代の山の翁の一人である、輝星のハサンが用いた超高速移動を可能とする絶技。

全身の魔力回路を活性化させるそれは、6秒という限界時間を持つ代わりに、アサシンに尋常ならざる機動力を齎した。

黄金の光が辺りを照らし続ける中、不自然な追い風に背を押されるようにして、アサシンは光の射出範囲の外──完全な暗闇へと滑り込むことに成功した。

 

 

──

 

数キロメートル離れた、スノーフィールド市街の廃ビルの影。

 

「ハァ……ッ、ハァ……ッ……」

 

激しい呼気とともに、アサシンは壁の裏に滑り込み、呼吸と魔力を極限まで抑え込んだ。

追撃はない。

ギルガメッシュが本気で追ってこなかったのか、あるいは介入した謎の魔術に興を削がれたのかは定かではないが、ひとまずはあの恐ろしい王の手から逃亡することに成功したのだった。

しかし、無事だった安堵よりも先に、アサシンの胸中を占めたのは深々とした疑惑と違和感だった。

 

(あの土壇場で私を救った風の魔術……あれは一体……?)

 

前世の知識──原作の記憶が、即座に該当する人物のデータを照合する。

風の魔術を使う魔術師。

風に乗ってきた邪悪な、つい最近、感じた覚えのある魔力から考えるのならば──

 

(……ジェスター・カートゥーレ?)

 

その名が脳裏に浮かんだ瞬間、強烈な不協和音が心臓を締め付けた。

 

(待て。おかしい……。ジェスターは、確かに私の手で葬った筈だ)

 

彼女のマスターであった死徒ジェスター。

彼は数刻前、確かにその手で葬り去った筈だった。

暗殺者としての鋭利な思考と、前世の知識が交錯する。

 

(死徒の生命力は常軌を逸している。だが、直死の魔眼を使い確かに奴を殺した筈だ。

死徒二十七祖の中で真祖の姫である朱い月(アルクェイド)のみが、唯一再生を可能とする直死の魔眼を、死徒二十七祖ですらないジェスターに再生できる筈がない)

 

しかし、風に乗った邪悪な気配がジェスターが生きているという事実を後押しする。

自分を助けたのは善意などではない。ジェスターという男が抱く、狂信的で歪んだ自身への執着。

もし生きているのだとすれば、彼は闇の中から自分を観察し、弄び、己の目的のために利用しようとしていることになる。

 

「………確かめねばならない」

 

無表情の裏で、アサシンは低く呟いた。

一時的とはいえ英雄王ギルガメッシュという絶対的な脅威から脱した矢先、背後に潜むさらなる不気味な影。

闇の中に蠢く異物感を皮膚で感じながら、彼女はその瞳を冷たく光らせ、スノーフィールドの街中へと姿を消した。

 

 

──

 

完全に消え去った影を追いかけることもなく、ギルガメッシュはただ、愉悦に満ちた口端を上げたまま、風に金髪をなびかせていた。

背後に展開されていた無数の宝物庫の門は、すでに穏やかな波紋とともに消え去っていたが、残された圧迫感と圧倒的な存在感は、未だ街の空気を支配したままであった。

 

「ギ、ギルガメッシュ様……。追撃は、なさらないのですか……?」

 

恐る恐る尋ねてくる足元の褐色肌の少女──ティーネに、ギルガメッシュは一度だけ真紅の双眸を向けた。

その瞳に浮かんでいるのは、退屈の破棄、そして極上の興だ。

冷酷なまでの威圧感の奥に、久しく味わっていなかった玩具を見出した愉悦の色が濃密に揺らめいている。

 

「追う必要などなかろう、ティーネ。途中、邪魔が入ったとはいえ、あのアサシンの足掻き、実に愛おしいではないか」

 

瞼を閉じ、ギルガメッシュはクックッと喉を鳴らした。

その声は、街の喧騒に溶け込みながらも、絶対の王者たる気品と邪悪なまでの傲岸さを孕んでいる。

 

「聖杯を求めぬと宣いながら、欲望の檻に囚われている。己に願いはないと思い込みながら、その身には我欲の種が芽吹いておるのだ。本人がそれに気づいておらんというのが、面白い」

 

彼には見えていた。

全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)を通じ、あのアサシンの魂の奥底に横たわる、あまりにもちっぽけで、それでいて強烈な欲望の歪みが。

己を無欲と信じ込む愚者ほど、その本性が暴かれた瞬間の滑稽さは他にない。

 

「今は存分に逃げ惑うがいい、アサシン。奴との決着をつけ、聖杯戦争が終焉に近づいてなお、生きながらえているのならば──それでこそ真に(オレ)が手にする価値がある」

 

友との再会、そして互いの持てる全てをぶつけ合う歓喜の交戦。

その最中にあってなお、あの狂った暗殺者がどのような末路を辿り、どのようにして己の業を抱えて崩れ落ちるのか。

それもまた、この退屈な偽りの聖杯戦争におけるひとつの興であった。

ひとしきり笑い終えたギルガメッシュは笑みを消し、その真紅の眼光を、遥か遠く離れたビルの屋上──先ほど不自然な風の魔術が介入してきた方向へと向けた。

 

「見ているのであろう?雑種。此度は(オレ)が直接手を下すまでもない羽虫だったからこそ見逃すが、次その姿を視界に入れた暁には塵の一つも残らんと思え」

 

その声には、嘲笑すら含まれていない。

ただの害虫を立ち退かせるような、圧倒的な無関心と、それゆえの絶対的な殺意。

王の一言が大気を震わせ、街の奥に潜む不吉な気配を一瞬で撥ね退けた。

 

 

──

 

スノーフィールドのビルの屋上に立つ一つの黒い影。

高層ビルの屋上、太陽の届かぬ影に潜むその男は絶頂に達したかのような恍惚とした表情で、己の胸を強く掻きむしっていた。

ジェスター・カートゥーレ。

アサシンの手によって、細切れにされ、確実な死を与えられたはずの男。

その瞳には邪悪で執拗な生気が滾り、口端からはだらりと淫らな唾液が垂れていた。

 

「あぁ……あぁぁ……! 素晴らしい……なんと素晴らしいんだ、私のアサシン……!」

 

「私の助けがあったとはいえ、あの英雄王と正面から相対して、逃げ切って見せるとは!」

 

男は宙を見上げ、その瞳に先ほどまで圧倒的な存在感を放っていた黄金の輝き──英雄王ギルガメッシュの面影を映した。

その顔から恍惚が失われ、一瞬にして醜悪な嫉妬と憎悪の色が塗りつぶしていく。

 

「……だが、解せないな。許しがたいな」

 

ギルガメッシュがアサシンに向けた、あのかすかな愉悦。

あのアサシンを己の庭の玩具にしようと目論む、王の傲慢な眼光。

ジェスターの指先がビルのコンクリートに深く食い込み、バリバリと削り取っていく。

 

「君を弄び、君の無表情を絶望に染め上げるのは……私だ。君のその清廉な魂を泥に塗れさせ、己の欲望の醜さに泣き叫ばせるのは……この私だけの特権だ!」

 

彼女が自覚していない魂の歪み。

聖杯を求めぬと偽りながら、その奥底で蠢く無自覚な飢餓。

それに最初に気づき、それをじっくりと育てる権利を持っていたのは、マスターである自分なのだ。

それを横から現れただけの存在に奪われるなど、万死に値する侮辱。

 

「彼女を(あい)し!(あい)し!(あい)し!屈服(あい)し!堕落(あい)す!そのことが許されるのはこの世でただ一人。彼女のマスターである私だけなのだ!」

 

風が吹き荒れ、ジェスターの衣服を激しく羽ばたかせる。

彼は嘲笑を浮かべるギルガメッシュの去り際を見下ろし、舌なめずりをした。

 

「それを邪魔する英雄王には退場してもらうしかあるまいなぁ」

 

真の王だろうが、人類最古の英雄だろうが関係ない。

この狂った聖杯戦争という劇場の特等席で、大好きな暗殺者が苦悶し、最後に自分だけのものになる結末を阻む害虫ならば──どのような神話の英雄であろうと、排除の手を打つのみ。

 

「待っていておくれ、私の愛しいアサシン。君が絶望の淵で私を求めるその瞬間まで……私は何度でも、君を影から救い、そして(あい)してあげよう……」

 

男の姿が、揺らぐ影の中へと沈み込み、街の影へと完全に消失した。




宝具に関してはこんな宝具あったらいいな、しか考えてない
18の内残り一つが思いつかない………どうしよ
↓専用の話が欲しいなら感想欄で言って

【  CLASS   】アサシン            
【  マスター  】なし(ジェスター・カルトゥーレ)                 
【   真名   】-(英霊の資質を得る頃には既に名は捨てていた)           
【   性別   】女性                
【 身長・体重 】163㎝/53kg             
【   出典   】Fate/strange Fake、無銘の暗殺者
【   地域   】中東
【   属性   】秩序・悪                           
【 ステータス 】筋力C 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運C 宝具A+

【クラス別スキル】

単独行動:A
 本来はアーチャーのクラススキル。
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 教団で孤立し、一人を好んで任務に望んでいた生前の行動から与えられたスキル。
 Aランクなら、マスターからの魔力供給がなくとも、一週間程度の現界が可能。

気配遮断:A+++
 アサシンのクラススキル。
 自身の気配を消す能力。
 主に隠密行動に長けており、A+ランクであれば、
 発動すればサーヴァントであっても感知はほぼ不可能なレベル。
 ただし、攻撃時には効果が大幅に薄れてしまう。
 潜影時は効果が倍増する。
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【固有スキル】

狂信:A
 特定の何かを周囲の理解を超える程に信仰する事で、
 通常ではありえぬ精神力を身につけるスキル、なのだが、
 アサシンに関しては周囲の勘違いによるもので、無辜の怪物に近いスキル。
 トラウマなどもすぐに克服し、精神操作系の魔術などに強い耐性を得る反面、
 他者から理解されにくくなる。

信仰の加護:B
 一つの宗教に殉じた者のみが持つスキル。
 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
 あるのは信心から生まれる精神・肉体の絶対性のみである。 

■■■入る:D
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■■■行:C+++
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【宝具】

幻想血統(ザバーニーヤ)
ランク:E~A 種別:対人・対軍宝具 レンジ:ー 最大補足:-

 肉体を自在に変質させ、過去に紡がれし18の御業を再現する能力。
 実際は過酷な肉体改造なども行われていたが、
 英霊化にあたり肉体を自在に変質させる形となった。
 オリジナルの御業と比べ威力が上か下かはケースバイケースとなる。

1.妄想心音(ザバーニーヤ)
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:3~9 最大捕捉:1人

 「苦悶を零せ、『妄想心音(ザバーニーヤ)』!」

 『呪腕』と呼ばれたハサンの宝具。
 シャイターンの腕で敵の心臓とリンクした擬似心臓を潰して呪殺する。
 オリジナルが自身の右腕をシャイターンのものに置き換えていたのに対し、
 こちらのは背中に移植して第三の腕としている。
 原作と同じ。

2.空想電脳(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明
 
 敵の頭を爆弾に作り変える。
 原作と同じ。
 
3.夢想髄液(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明
 
 「虚像を晒せ、『夢想髄液(ザバーニーヤ)』!」

 可聴領域を超えた歌声で相手を操る業。オリジナルの業を超えた力を持つ。
 大人数を対象とした場合、脳を揺らし魔術回路を暴走させる等の効果を持つ。
 一人に対象を限定すれば、並のサーヴァントの膝をつかせ、
 人間ならば脳そのものを支配して操る事ができる。
 原作と同じ。

4.狂想閃影(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

「夜影を巡れ、『狂想閃影(ザバーニーヤ)』!」

 髪の毛を自在に伸縮させて操り、相手の捕縛や切断などを行う業。
 実際の使い手は、髪の毛一本一本を糸の如き細さに変質させ数里先から
 誰にも気付かれることなく相手の首を跳ね飛ばす事も可能だったらしい。
 原作と同じ。

5.断想体温(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

 己の皮膚を『魔境の水晶』の如く硬化させ、銃弾をも弾く護りを得る業。
 物理的な攻撃には滅法強い反面、魔力強制排出の様な搦め手への対処は若干苦手。
 原作と同じ。

6.妄想毒身(ザバーニーヤ)
 ランク:C++  種別:対人・対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1人・1~300人

 改良に改良を重ね、本来の使い手である、静謐のハサンを上回っている。
 自己改造によって生み出した一つの臓器によって、体内の毒濃度の調節が可能。
 また、毒を1点に凝縮でき、毒を1点に凝縮した貫手、濃縮し、
 霧化させた毒を散布するといった芸当も可能
 (後者に関しては後の被害を考慮して令呪の強制でもなければ使用しない)


7.瞑想神経(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

 魔力・水・風・電気などのエネルギーの流れを完全知覚する業。
 原作と同じ。

8.非想巡霊(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

 自身の周囲に色の濃い霧を纏いそれを媒介に幽精(ジンニーヤー)を具現化、使役し攻撃を行う業。
 幽精は巨獣や大蛇、美女に男性の巨人など様々な種類が存在する。
 原作と同じ。

9.異想追憶(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

 『煙酔』と呼ばれたハサンの宝具。
 煙を用いて相手を酔わすのみならず、己も世界すらも「酔わせて」すべての境界を消し去り、
 世界へと蕩けさせて攻撃を透過する。
 オリジナルは最大一週間持続するが、彼女は数秒間が限界。
 原作と同じ。

10.無想駆体(ザバーニーヤ)
 ランク:C+ 種別:対人・対軍絶技 レンジ:1~80 最大捕捉:1人・50人

 超・超高速の移動および戦闘機動を可能とする絶技。
 全身の魔術回路を活性化させることで敏捷性、機動力を著しく上昇させる。
 真名解放時には、限界まで超活性化・過剰暴走させた魔術回路の輝きを纏い、
 光の軌跡を残しながら更なる超高速の窮極にまで到達するが、
 解放と同時に反動ダメージを負うだけでなく、限界時間(10秒)以上の使用を行えば、
 暴走しきった魔術回路が破壊されてしまい、彼女の肉体は内側から崩壊して、
 耀く星が如く消え、命果てることになる。
 限界時間が、本来の輝星のハサンよりも短くなっている。他は同等の性能を誇る。

11.聯想絡繰(ザバーニーヤ)
 ランク:C 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1~100人
 
 「命脈(いのち)(くび)れ、『聯想絡繰(ザバーニーヤ)』」

 魔力の糸を神技の域で操作する、暗殺のための絶技。
 肉眼では決して捉えられぬ細さ、鋼をも断ち切る硬度、
 そして生き物のように蠢く柔らかさを自在に変質させる糸を作成し、支配する。
 拘束、切断、果ては肉体の強制操作まで、その用途は多岐にわたる。
 本来の使い手であれば、数百万を超える不可視の糸を同時に、かつ寸分の狂いもなく操作し、
 一夜にして街一つの住民すべてを操り人形で満たしたという。
 彼女の使うそれは、劣化は見られるものの、
 それでも数千を超える糸の操作を同時に可能とする。


12.籌想読心(ザバーニーヤ)
 ランク:C 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

 相手の心を精密に読み解き、数手先の行動を完璧に予測する技。
 その予測の正確性は、未来予知の域にすら達する。
 本来の使い手ならば、数百手先を常に完全に予測し、敵の戦術を無に帰すが、
 アサシンのそれは十数手先までしか予測できない。

13.沈想影葬(ザバーニーヤ)
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1~30人

 「常闇に沈め、『沈想影葬(ザバーニーヤ)』!」

 歴代の山の翁の一人である影剝のハサンが編み出した、影を自在に操る秘奥。
 本来の使い手である影剝のハサンは半径数kmの影を支配できるが、
 アサシンが扱えるのは十数mほど。
 影に潜ることも可能で、陰に潜っている間、気配遮断と敏捷のランクは倍化する。

14.幻想■■(ザバーニーヤ)
 ランク:C 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

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15.沈想■■(ザバーニーヤ)
 ランク:C 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

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16.怨想■■(ザバーニーヤ)
 ランク:E~A+ 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

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17.■想■■(ザバーニーヤ)
 ランク:不明 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明

 詳細不明。

18.冥想■■(ザバーニーヤ)
 ランク:EX 種別:不明 レンジ:不明 最大捕捉:不明
 
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深想■■(ザバーニーヤ)
ランク:A 種別:■■宝具 レンジ:不明 最大補足:不明

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