ごしゅはあっという間に中学生になった。
個性はやっぱり無いし、とげとげはいじめてくるけど、ごしゅの夢はやっぱりヒーローだ。
学校に行くから、離れる時間が多くなったのは寂しいけど、帰ってきたらたくさん構ってくれるから大丈夫。
ごしゅはヒーローのことをノートにまとめ始めて、テレビに知ってるヒーローが出てくると早口でどんなヒーローか教えてくれる。
ほとんど聞き取れないけど、パソコンとか本を使って、たくさん情報を集めてるみたい。
相手のことを知るのは大事だって、リザードンおじちゃんも言ってた!
ボクは、暇な時間は光合成をしたり、ママの家事をお手伝いしている。
お皿を運んだり、芽が出そうなじゃがいものエネルギーを吸い取って、芽が出る速度を遅くしたり。
ママは、ボクがあんまりにも綿毛を散らかすから、よーもーフェルト? ってことを趣味に始めた。
綿を針でちくちくすると、小さいボクができあがったんだよ。すごーい!
時間がかかる作業だけど、のんびりそれを眺めてる時間も好きだ。
ごしゅは、とげとげと同じ学校に行ってるけど、大丈夫なのかな。
帰ってきたら、笑顔でただいまって言ってくれるから、きっと大丈夫なんだと思う。
ごしゅは大っきくなって、身長も伸びた。
ボクを抱きしめるので精一杯だった両腕も、今は片手で足りる。
でも、もさもさの髪は変わらずで、お揃いのままなのが嬉しい。
ごしゅは来年には中学生を卒業して、高校生になるんだって。高校生になったら、べんきょーももっと難しくなるらしい。
ウイの実を食べたポケモンはこんらんしちゃいました。どうして? とか聞かれるのかな。
「メェちゃん、出久の帰り遅いわね〜」
「メェ〜」
「どこかで買い食いでもしてるのかしら」
ママは手元で綿毛を針で刺しながらのんびりしている。この前はにこにこのボクを作ったから、次は寝てるボクを作るらしい。
このために、専用の針とか洗剤を買ったらしくて、ごしゅの凝り性はママ譲りなのかもしれないと思った。
ボクも、なにか集めたり趣味を見つけてみようかな?
「あら、この足音は」
「メェ!」
聞き慣れた扉のノブを捻る音に、ボクは急いで玄関の方へ跳ねた。
いつものお気に入りの赤い靴が見える。
「ただいま、メェちゃん!」
「メェ!」
「おかえりなさーい」
「ただいまー」
ごしゅが帰ってきたら玄関でお迎えするのがボクの日課!
ごしゅの胸に飛び込めば、楽々キャッチしてくれる。
なんだか、今日のごしゅは普段より機嫌が良い。なんでだろう?
「お風呂、入っちゃいなさい。お弁当箱と水筒は出しておいてね〜」
リビングからの声に返事をしたら、ごしゅはかばんを置いてボクとお風呂場に向かっていく。その間もなんだか、やっぱり機嫌が良さそうだ。
でも、鼻歌を歌いそうなルンルンって感じじゃなくて、何か一つ目標が決まった時の、やる気みたいなものを強く感じる。
エスパータイプじゃないのにそうわかるってことは、かなり強い感情をいまのごしゅは持ってるんだ。
「メェちゃん、今日実はね……」
お風呂の中で、ごしゅは今日あったことを話してくれる。
ボクは浅い洗面器のお湯の中で、それを聞くのも日課だ。話してることがよくわかんないことも多いけど、ごしゅとおしゃべりできるならなんでもいいや。
水を吸って重たい体で聞いた一日は、とっても濃くて、そしてごしゅにとって希望の光になる出来事だった。
「明後日、僕はオールマイトの元に行くよ。絶対に、ヒーローになりたいから」
「メェ〜!」
「そしたら、メェちゃんは僕のファン一号だね」
ファンじゃないよ! ボクはごしゅの隣で戦う相棒になるんだ!!
ごしゅは、本格的にヒーローになるために覚悟を決めたみたい。眉がキリッとしてて、とげとげに怯えてた頃とは違うんだぞってわかる。
ボクも、のんびりしてられない。
ごしゅの相棒になるために、鍛えなきゃ!
「──来てくれたのは嬉しいが……その生き物は?」
「メェちゃん!? いつの間について来たの!?」
2日後、ボクはごしゅにこっそりついて行った。
海が近い公園で、いつもテレビで見てた黄色くてムキムキのヒーローがボクを見て首を傾げる。
ごしゅが頑張るなら、ボクも鍛えないと。でも、お家でわざをたくさん撃つわけにも、暴れるわけにもいかない。
だから、ごしゅについて行けばいい場所がわかるかも! って思ったの。
それに、ごしゅと一緒にトレーニングした方がきっと楽しいよ!!
「すいません、ウチで飼ってる子なんですけど……」
「メェ! メェ!」
「お母さんにバレないうちに、早く帰って──」
「メェー! モモモ!!」
「うわっ!?」
ボクは、ごしゅの頭から飛び降りて、葉っぱでマッスルポーズを決めた。ボックスの中でこのポーズをよくやってるポケモンがいたんだ。
ボクもたくさんトレーニングして、レベルを上げて、強くなるんだ!
リザードンおじちゃんは、レベルを上げたら進化したって言ってたから、ボクもきっとレベルをたくさん上げたら進化するんだよ!
そしたら、ボクも頼れるポケモンになれるよね?
「成る程ね。オーケー! 君も強くなりたいんだな!?」
「メメッ!!」
「えっ……!?」
「ならば君もトレーニングに参加するといい! 緑谷少年と共にね!」
「いいんですかオールマイト!? それで!?」
わーい! オールマイトはボクのことわかってくれる良い人だ!
ボクはまだレベルが低いから、わざも「すいとる」くらいしか使えないし、力も強くない。
でも、もっとレベルを上げれば、強いわざも覚えられるし、進化できるかもしれない。
がんばる! ボク、ヒーローの相棒になるためにがんばるよ!
ごしゅはびっくりしてるけど、ボクはもう決めてるもんね!
ごしゅの隣で、ポーズを決めるのはボクだから!
「早速始めようか! ──私考案!! 『目指せアメリカンドリームプラン』を!!!」
*
それから、ボクとごしゅのトレーニング期間が始まった。
公園のゴミばっかりの砂浜を、お掃除するのがトレーニングなんだって。
確かに、ここら辺の海岸は汚れてて、水ポケモンよりダストダスやベトベトンが好きそうな環境だ。
ごしゅが冷蔵庫に縄を結んで引っ張ってもびくともしない。
ボクも、近くにあった鉄パイプを運ぼうとして潰れかけてしまった。
「キッツ……」
「メ……」
「これくらいで死にかけてたらヒーローなんて夢のまた夢だぞ! ほらファイ! オー!!」
想像以上に厳しいトレーニングだ。
ごしゅはこれにプラスして試験の勉強もしなくちゃならない。ハードな日々だ。
これを10ヶ月続ける。そしたら、ヒーローのための一歩が踏み出せる……。
ボクとごしゅは顔を見合わせて、改めて覚悟を決めた。
ヒーローの道は、過酷で長い道のりになりそう。
「ホーラ空き缶詰めただけの袋で止まってちゃ追いつけないぞ!!」
「その綿毛をカチカチのダイヤモンドにする気で挑むんだ!!」
「水に入ると体が重い? ヴィランは場所を選んじゃくれないぜ!!」
ながーい一日。おもーい疲労。
それでもボクらは続けた。やり続けた。
葉っぱが枯れそうになっても、綿がもげそうになっても、ゴミを運び続ける。
でも、やる内にどこか、昨日までの自分とは変わっていくのがわかるんだ。
ボクも、ごしゅも、強くなっていった。
ごしゅはどんどんムキムキになった。触ると硬い。お腹の寝心地がちょっと悪くなった。
ボクは、見た目こそ変わらないけど、使えるわざが増えた感覚があって、成長は確実に感じてる。光合成をする時、取り込む光が多くなったと思う。
海岸は、だんだん綺麗さを取り戻していって、コイキング以外にも、ケイコウオとか、マリルとかがいそうな青さが見えてきた。
でも、現れないポケモンに、ボックスのみんながちょっと恋しくなる。
リザードンおじちゃんだけじゃなく、ミロカロスのお兄ちゃんや、アシレーヌのお姉ちゃんは元気かな。
最近、強くなれたって喜んでたオーダイルのおじさんもバトルしてるのかな。
いろんな憧れのポケモンたちを思い浮かべると、やっぱり、ボクはごしゅがヒーローになった時隣に立ちたかった。
自慢の相棒って呼んでもらいたいんだ。
「頑張ろうね、メェちゃん……!」
「メェ!!」
──メェちゃんの レベルが 上がった!
▼モンメン
進化先:エルフーン
進化条件:たいようのいしを使用して進化