綿毛のボクとヒーローのデク   作:月日は花客

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▼3:しゅぎょーの時間

 

 ごしゅはあっという間に中学生になった。

 

 個性はやっぱり無いし、とげとげはいじめてくるけど、ごしゅの夢はやっぱりヒーローだ。

 学校に行くから、離れる時間が多くなったのは寂しいけど、帰ってきたらたくさん構ってくれるから大丈夫。

 

 ごしゅはヒーローのことをノートにまとめ始めて、テレビに知ってるヒーローが出てくると早口でどんなヒーローか教えてくれる。

 ほとんど聞き取れないけど、パソコンとか本を使って、たくさん情報を集めてるみたい。

 相手のことを知るのは大事だって、リザードンおじちゃんも言ってた!

 

 ボクは、暇な時間は光合成をしたり、ママの家事をお手伝いしている。

 お皿を運んだり、芽が出そうなじゃがいものエネルギーを吸い取って、芽が出る速度を遅くしたり。

 ママは、ボクがあんまりにも綿毛を散らかすから、よーもーフェルト? ってことを趣味に始めた。

 綿を針でちくちくすると、小さいボクができあがったんだよ。すごーい!

 

 時間がかかる作業だけど、のんびりそれを眺めてる時間も好きだ。

 ごしゅは、とげとげと同じ学校に行ってるけど、大丈夫なのかな。

 帰ってきたら、笑顔でただいまって言ってくれるから、きっと大丈夫なんだと思う。

 

 ごしゅは大っきくなって、身長も伸びた。

 ボクを抱きしめるので精一杯だった両腕も、今は片手で足りる。

 でも、もさもさの髪は変わらずで、お揃いのままなのが嬉しい。

 ごしゅは来年には中学生を卒業して、高校生になるんだって。高校生になったら、べんきょーももっと難しくなるらしい。

 ウイの実を食べたポケモンはこんらんしちゃいました。どうして? とか聞かれるのかな。

 

「メェちゃん、出久の帰り遅いわね〜」

「メェ〜」

「どこかで買い食いでもしてるのかしら」

 

 ママは手元で綿毛を針で刺しながらのんびりしている。この前はにこにこのボクを作ったから、次は寝てるボクを作るらしい。

 このために、専用の針とか洗剤を買ったらしくて、ごしゅの凝り性はママ譲りなのかもしれないと思った。

 ボクも、なにか集めたり趣味を見つけてみようかな?

 

「あら、この足音は」

「メェ!」

 

 聞き慣れた扉のノブを捻る音に、ボクは急いで玄関の方へ跳ねた。

 いつものお気に入りの赤い靴が見える。

 

「ただいま、メェちゃん!」

「メェ!」

「おかえりなさーい」

「ただいまー」

 

 ごしゅが帰ってきたら玄関でお迎えするのがボクの日課!

 ごしゅの胸に飛び込めば、楽々キャッチしてくれる。

 なんだか、今日のごしゅは普段より機嫌が良い。なんでだろう?

 

「お風呂、入っちゃいなさい。お弁当箱と水筒は出しておいてね〜」

 

 リビングからの声に返事をしたら、ごしゅはかばんを置いてボクとお風呂場に向かっていく。その間もなんだか、やっぱり機嫌が良さそうだ。

 でも、鼻歌を歌いそうなルンルンって感じじゃなくて、何か一つ目標が決まった時の、やる気みたいなものを強く感じる。

 エスパータイプじゃないのにそうわかるってことは、かなり強い感情をいまのごしゅは持ってるんだ。

 

「メェちゃん、今日実はね……」

 

 お風呂の中で、ごしゅは今日あったことを話してくれる。

 ボクは浅い洗面器のお湯の中で、それを聞くのも日課だ。話してることがよくわかんないことも多いけど、ごしゅとおしゃべりできるならなんでもいいや。

 水を吸って重たい体で聞いた一日は、とっても濃くて、そしてごしゅにとって希望の光になる出来事だった。

 

「明後日、僕はオールマイトの元に行くよ。絶対に、ヒーローになりたいから」

「メェ〜!」

「そしたら、メェちゃんは僕のファン一号だね」

 

 ファンじゃないよ! ボクはごしゅの隣で戦う相棒になるんだ!!

 ごしゅは、本格的にヒーローになるために覚悟を決めたみたい。眉がキリッとしてて、とげとげに怯えてた頃とは違うんだぞってわかる。

 ボクも、のんびりしてられない。

 ごしゅの相棒になるために、鍛えなきゃ!

 

「──来てくれたのは嬉しいが……その生き物は?」

「メェちゃん!? いつの間について来たの!?」

 

 2日後、ボクはごしゅにこっそりついて行った。

 海が近い公園で、いつもテレビで見てた黄色くてムキムキのヒーローがボクを見て首を傾げる。

 ごしゅが頑張るなら、ボクも鍛えないと。でも、お家でわざをたくさん撃つわけにも、暴れるわけにもいかない。

 だから、ごしゅについて行けばいい場所がわかるかも! って思ったの。

 それに、ごしゅと一緒にトレーニングした方がきっと楽しいよ!!

 

「すいません、ウチで飼ってる子なんですけど……」

「メェ! メェ!」

「お母さんにバレないうちに、早く帰って──」

「メェー! モモモ!!」

「うわっ!?」

 

 ボクは、ごしゅの頭から飛び降りて、葉っぱでマッスルポーズを決めた。ボックスの中でこのポーズをよくやってるポケモンがいたんだ。

 ボクもたくさんトレーニングして、レベルを上げて、強くなるんだ!

 リザードンおじちゃんは、レベルを上げたら進化したって言ってたから、ボクもきっとレベルをたくさん上げたら進化するんだよ!

 そしたら、ボクも頼れるポケモンになれるよね?

 

「成る程ね。オーケー! 君も強くなりたいんだな!?」

「メメッ!!」

「えっ……!?」

「ならば君もトレーニングに参加するといい! 緑谷少年と共にね!」

「いいんですかオールマイト!? それで!?」

 

 わーい! オールマイトはボクのことわかってくれる良い人だ!

 ボクはまだレベルが低いから、わざも「すいとる」くらいしか使えないし、力も強くない。

 でも、もっとレベルを上げれば、強いわざも覚えられるし、進化できるかもしれない。

 がんばる! ボク、ヒーローの相棒になるためにがんばるよ!

 

 ごしゅはびっくりしてるけど、ボクはもう決めてるもんね!

 ごしゅの隣で、ポーズを決めるのはボクだから!

 

「早速始めようか! ──私考案!! 『目指せアメリカンドリームプラン』を!!!」

 

 *

 

 それから、ボクとごしゅのトレーニング期間が始まった。

 公園のゴミばっかりの砂浜を、お掃除するのがトレーニングなんだって。

 確かに、ここら辺の海岸は汚れてて、水ポケモンよりダストダスやベトベトンが好きそうな環境だ。

 ごしゅが冷蔵庫に縄を結んで引っ張ってもびくともしない。

 ボクも、近くにあった鉄パイプを運ぼうとして潰れかけてしまった。

 

「キッツ……」

「メ……」

「これくらいで死にかけてたらヒーローなんて夢のまた夢だぞ! ほらファイ! オー!!」

 

 想像以上に厳しいトレーニングだ。

 ごしゅはこれにプラスして試験の勉強もしなくちゃならない。ハードな日々だ。

 これを10ヶ月続ける。そしたら、ヒーローのための一歩が踏み出せる……。

 ボクとごしゅは顔を見合わせて、改めて覚悟を決めた。

 

 ヒーローの道は、過酷で長い道のりになりそう。

 

「ホーラ空き缶詰めただけの袋で止まってちゃ追いつけないぞ!!」

 

「その綿毛をカチカチのダイヤモンドにする気で挑むんだ!!」

 

「水に入ると体が重い? ヴィランは場所を選んじゃくれないぜ!!」

 

 ながーい一日。おもーい疲労。

 それでもボクらは続けた。やり続けた。

 葉っぱが枯れそうになっても、綿がもげそうになっても、ゴミを運び続ける。

 でも、やる内にどこか、昨日までの自分とは変わっていくのがわかるんだ。

 

 ボクも、ごしゅも、強くなっていった。

 ごしゅはどんどんムキムキになった。触ると硬い。お腹の寝心地がちょっと悪くなった。

 ボクは、見た目こそ変わらないけど、使えるわざが増えた感覚があって、成長は確実に感じてる。光合成をする時、取り込む光が多くなったと思う。

 

 海岸は、だんだん綺麗さを取り戻していって、コイキング以外にも、ケイコウオとか、マリルとかがいそうな青さが見えてきた。

 でも、現れないポケモンに、ボックスのみんながちょっと恋しくなる。

 リザードンおじちゃんだけじゃなく、ミロカロスのお兄ちゃんや、アシレーヌのお姉ちゃんは元気かな。

 最近、強くなれたって喜んでたオーダイルのおじさんもバトルしてるのかな。

 

 いろんな憧れのポケモンたちを思い浮かべると、やっぱり、ボクはごしゅがヒーローになった時隣に立ちたかった。

 自慢の相棒って呼んでもらいたいんだ。

 

「頑張ろうね、メェちゃん……!」

「メェ!!」

 

 ──メェちゃんの レベルが 上がった!








▼モンメン
進化先:エルフーン
進化条件:たいようのいしを使用して進化
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