復讐に向かない復讐者の日記   作:ビスマルク

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これにて日記は終わり。
需要あったら銀髪オッドアイ女視点を書くかもしれん


日記 ③

▽月■日

 旅を始めて早一ヵ月。ようやく悪魔の支配領域に足を踏み入れることになった、想像以上にここは混沌としていた。生物は悪魔達によって滅茶苦茶な生態系を築いており見たことのない動植物が山ほど存在する。迂闊に狩って食べる何てことしていたら毒とかで死んでいたかもしれない。毒を無効化できる聖女様がいてくれてよかった。その聖女様はトゥモーが守っている。彼の背中にくっついている聖女様は顔真っ赤だ。なんでも同じ年頃の異性と過ごしたことなどないらしい。そのままトゥモーと仲良くなってくれれば交流もしやすいので助かる。

 少なくても基本無愛想な無表情銀髪オッドアイ女に比べれば遥かにマシだろう。ここ最近味を占めたのか飯を作ってる時につまみ食いしに来る。そんなに食いたいなら作るのを手伝えと言ったら大人しく俺の隣で作り始めた。何考えてるのか本当に分からない。

 

 

◇月◇日

 今日は本当に散々だった。上級悪魔と初めて戦うことになったのだ。上級悪魔はそれぞれ二つ名とか名乗っているがどれがどれなのかまるで分らなくて困る。ただコイツラは基本的に仲間意識など皆無なので殆どの場合が単独行動している。なので戦いは四人対一人で行われたのだが……“欲望”の力というのは本当に凄まじかった。体系化されていない為、能力の発展などは俺達の陣営の方が上だが、多彩さという部分では間違いなく奴の方が上だった。

 周囲の森が更地にされたがなんとか逃げ切ることが出来た。とはいえ逃げている途中でトゥモーと聖女様とはぐれてしまった。俺と銀髪女は川に飛び込んで逃げたからだろう。これからどうしようかとも思ったが奴が二人の居場所は分かると言っているのでそれを頼りに行くしかない。

 問題なのは移動する前にずぶぬれになった身体と服を乾かさなければならないという事だろう。焚火を起こすことには成功したが銀髪女を脱がすのに非常に苦労した。さっさと脱がないと風邪をひくだろうに奴は抵抗しまくったのだ。顔を赤くして風邪の兆候まで出てきているのにだ。

 仕方ないので無理矢理ひん剥いた。力だけなら今の俺の方が上だから仕方ない。抵抗自体弱かった気もするが気のせいとする。

 

 

◇月□日

 何とかトゥモー達と合流することが出来た。別れている間に何かあったのだろうか?二人の距離が明らかに近づいていた。名前呼びになっているし気付かない奴はおかしいだろう。銀髪女が気付いていなかったのは人間関係弱者だから仕方ないとする。奴に関しては雑に扱ってもいいと思う。

 合流してからは上級悪魔について話す。奴を倒すことが出来なければ四大魔王の一角を倒すなど無理だろう。だが俺達には対悪魔戦の経験が足りな過ぎる。才能や能力はあれど経験がなければ咄嗟の時に判断し行動することも出来ないだろう。

 なので下級悪魔や中級悪魔と戦うことを目標とする。噂ではあるが、奴らは自分達の支配領域にある人間の集落をも玩具にしているらしい。そこに向かえば戦うことが出来るだろう。

 …………思い出す。俺の村は元々は天界の支配領域だったが、今は悪魔達の支配領域内にある。この先進んだら、俺は里帰りすることになるかもしれない。その時、俺はこの銀髪女に対する殺意を隠しきれるだろうか。今から覚悟しておくべきだろう。魔王を殺す為には悔しいが銀髪女の力が必要になる。自分の復讐心に他人を巻き込むのは許せない。復讐を果たすのは、魔王を倒した後にすることにした。

 

 

■月☆日

 経験を積み、上級悪魔に挑んだ。それが二日前になる。二日間日記を書けなかったのはその間俺が生死の境を彷徨っていたからだ。聖女……いや、名前で呼んでほしいと言われたのでリザと言おう。彼女の聖法によって回復してもらえなかったら俺は今頃死んでいた。

 俺達が戦った上級悪魔は長年生きてきた個体だったらしい。悪魔に寿命はなく、生きている時間が長いほど強大な悪魔になる。悪魔が位を上げる一番の方法が長生きする事らしい。大体100年生きれば下級悪魔も上級悪魔相当になるとのことだ。もっとも大抵はその前に死ぬし、元々上級悪魔として生まれてきた奴には及ばないらしいが。

 だが、その上級悪魔を俺達は倒すことが出来た。俺が盾になりトゥモーや銀髪女が攻撃を仕掛け、そしてリザが回復し“欲望”能力を防ぐ。それでようやくだった。最後の最後に鼬の最後っ屁とばかりにばかげた威力の技を放ち、他の三人を庇った俺だけがこうしてぶっ倒れたわけだが。

 それでも結果として全員生き残り勝つことが出来た。これは快挙と言えるだろう。これだけで魔王を殺せると判断するのは早計だが、それでも可能性は見えてきた。俺達ならば、勝てるかもしれない。

 

 

■月■日

 銀髪女がずっと看病してきて鬱陶しかった。いや、鬱陶しいというのは少し言い過ぎたが、それでも着替えを手伝おうとして来たりとか面倒くさかった。今俺達がいるのは悪魔の支配領域の中にある廃村だ。奇跡的に残っていた屋根のある家、そこで休息をとっていた。

 廃村を見渡せばそこには記憶にある光景が広がっている。そう、ここは俺の故郷だ。そして今寝ている家は、俺が家族と一緒に住んでいた家だ。

 もう誰もいない。ネズミすらいない廃村の中で銀髪女にずっと看病されている。トゥモーとリザは食材をとってこようと行ってまだ帰ってこない。二人きりというのは、どうにも居心地が悪い。

 だからなのか、それとも生まれ故郷に帰ってきたからなのか、俺はどうかしていたのだろう。銀髪女に思わず聞いてしまった。何故、この旅に参加したのか。魔王を倒しに行くのかと。

 アイツは復讐と答えた。自分の家族を殺したアイツを殺す為と。

 

 頭が沸騰しそうになった。俺の家族を殺したコイツが、自分の為に復讐するのかとそう思って。

 だけどその想いは次の言葉で消えてしまった。

 

「ここの村人を殺したのは、私。私がみんな殺した。家族を人質にされて、強いからって理由で忠誠を確かめるために。でも、その頃には私の家族はもう殺されていた。四肢を切断されて、苦しんで死んでいた。そんなことも知らずに、私は大勢殺した。……地獄に落ちたい。死んでずっと苦しんでいたい。でも、ただ死ぬなんて私は許せない。だから、せめて魔王をちゃんと殺さないと」

 

 アイツは、俺と同じだった。アイツが俺の家族を、故郷を滅ぼしたのは家族の為だった。俺がアイツの立場だったらどうだろう?同じことをしなかったなんて断言出来るだろうか?

 いいや、俺が銀髪女の立場だったら同じことをしていた。家族の為だったら、見ず知らずの人を殺すこともいとわなかったはずだ。

 

 アイツは泣いていた。このことを話していたアイツは大粒の涙を流して、それでも声をあげずに泣いていた。後悔に苛まれて、仕方なかったなんて言い訳も出来ずに。

 気付けばアイツの頭を抱き寄せていた。泣いていいと言えば銀髪女、エナは周囲を憚らずに泣いた。何故こんな事をしたのか自分でも分からない。それでもこうすることが間違いだとは思わなかった。

 

 俺は、どうするべきなのか分からなくなった。復讐を果たすべきか、それとも全てを押し殺してなかったことにすべきなのか。

 父さんなら、こういう時どうしたのだろう。誰も答えを教えてくれはしなかった。

 

 

★月●日

 いよいよ明日、俺達は魔王に挑む。奴の居場所を特定することに成功した。天使様達も一大攻勢を仕掛けて悪魔達を釘付けにしている。ここで俺達が奴を殺すことが出来れば人類にとって大きな一歩になるだろう。勝率は、決して高くはない。1%あればいい方なのだろう。そしてそれが最大限良くみた上での結論だ。それでも学友達が、天使様達が戦っている以上負けることは許されない。

 

 そんな決戦前夜だからだろうか。トゥモーとリザは二人共いつの間にかいなくなっていた。夜のデートに行っていると銀髪女は俺の隣に座って言っていた。何故俺はコイツと二人で星空を見上げているのだろう。夜空は、昔家族と並んでみた時と同じ光景として目の前にある。あの時と違うのは隣に座っている奴だけだ。

 

 どうすればいいのか俺は未だに分からない。俺の故郷について伝えるべきか、憎んでいることを言って責めるべきなのか。それとも何も伝えずこのまま生きることにするのか。どれを選んでも誰かに対して不誠実になるだろう。

 

 復讐をしても誰も戻ってこない。そんなこと分かっている。

 

 そんなこと誰も望んでいない。俺の家族ならきっとそうだろう。

 

 世界を救うためにそんなことするべきではない。ああ、幼い頃に夢見た英雄になれていたならそれを選ぶことにきっと躊躇いなどなかっただろうに。

 

 俺は結局、この日何も伝えられなかった。ただ、全部が終わった後に言いたいことがあるとだけ銀髪女、エナに伝えた。

 

 どんな選択をするのか、それを決めるのは俺自身だ。他の誰にも決めさせない、俺の選択肢。

 

 ただ、隣で顔を赤くしてこちらを見てくる彼女を苦しませたくないと思ったのは確かだった。

 

 

★月★日

 魔王を倒すことに成功した。四人とも生きて帰ってこれたのは奇跡と

 決めた。俺は明日復讐を決行する。もう止められない。認めるのは悔しいが俺は銀髪女が。エナをいつの間にか好きになっていた。アイツが俺の故郷を滅ぼしたのも、仕方ないことだと思う。

 

 だけどそれらを含めた上で俺はアイツを許せない。いや、許したくない。許したいけれど許したくないという二律背反の心情だ。もうぐちゃぐちゃになって苦しい。四大魔王の一角を殺した俺達は英雄と言われている。俺が死んでも残り三人も魔王が残っている。だが、そいつらと戦うだけの気力が俺にはなかった。もう、終わりにしたいという身勝手な想いに支配されている。

 

 もしかしたらこれが魔王が最期にかけたという呪いなのかもしれない。人間関係もぐちゃぐちゃにしてから死ねという、幻覚やら何やらを操ってくる奴にふさわしい能力だろう。

 ……復讐の仕方は、エナが俺にした事をする。簡単に言えば、アイツの大切な人間を殺す。俺が家族を殺されたようにアイツの大事な人間を殺す。誰を殺すか、そんなもの悩む必要もなかった。

 

 俺は……僕は僕を殺す。

 

 エナを呼び出して、その目の前で自分の心臓を貫いて死ぬ。

 

 彼女にとって僕が大切な人間になっていれば、辛いことになるはずだ。その前に僕がどのように生きて来たかのか話すつもりだ。何故こんな事をするかも話す。

 行き当たりばったりの生き方をして来た僕にふさわしい終わり方だと思う。

 

 後悔はないとは言えない。未練も後悔もある。勝手に死んでトゥモーやリザには悪いと思う。謝ったところで何も変わりはしないけれど。

 

 そしてエナ。僕の家族を殺した彼女をこれでようやく憎まないで済むようになると思えば、心が軽くなる。もう二度と彼女を憎みたくはない。

 

 もし、生まれ変わりというものがあるのであれば、彼女ともう一度ちゃんと出会いたい。その時は、ちゃんと好きだと伝えたい。一緒に生きていきたい。なんてこれから彼女の前で死のうとしている奴が言う事じゃないかもしれないけど。

 

 日記帳もこれで最後のページになる。二年半くらい使えたことを嬉しく思う。僕の全てはここに記すことが出来た。

 エナ。僕が愛しく思い、憎く思った君。僕のことを引きずってほしいと憎む心が思う。忘れて幸せになってほしいと愛する心が思う。二つがあって、どうしようもないけれど。どちらも否定しきれない。だからせめて最後に彼女に伝えたいことを最期に書こう。

 

 初めて会った時からここまで来て、僕は君を好きになっていたよ。

 

 ……さて、そろそろ彼女を呼び出した約束の時間だ。死にに行くとしよう。思い返せば色々とあったけど総合的に見れば、きっといい人生だった。

 

 

【魔王を倒したパーティーの戦士:リョウの日記】




作者の同作、『幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった』を読んでる人だったらここまで読めばなんとなく予想がつくと思う。

ヒロインの容姿とか読み直すと面白いかもね!!!!
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