辺境惑星召喚――コロニストたちの異世界漂流記 作:ホゲフガ
## 第2章 第17話:北方より来たるもの
### 1.あと一押しの戦場
パーパルディア皇国北部、防衛拠点アルーニ方面。
リーム王国軍による大規模な浸透戦術と、パーパルディア軍による決死の防衛戦は、泥沼の消耗戦と化していた。
「右翼の塹壕が抜かれた! 予備隊を回せ!」
指揮官たるガイウスの怒号が、絶え間ない砲声の合間を縫って響く。
戦線は、開戦以来最も激しい局面を迎えていた。ガイウス率いるパーパルディア守備隊は、コホートからの火力支援を受けながら、血みどろの白兵戦でなんとかこの一帯の防衛線を維持し続けている。
パンドーラ大魔法公国の魔導妨害が消滅し、コホートの精密爆撃が再開されたことで、パーパルディア軍は息を吹き返したはずだった。だが、リーム王国軍もまた、無尽蔵とも思える大規模な予備戦力をなおも投入し続けていたのである。
リーム軍の前線本営。
大将軍リバルは、硝煙に霞む戦況図を睨みつけ、拳を震わせていた。コホートの再開された空爆によって、彼の部下たちは次々と挽肉に変えられている。だが、多大な犠牲を払って戦線のあちこちに開けた風穴は、確実にパーパルディアの防衛線を物理的に食い破りつつあった。
「……あと一押しだ」
リバルは、血走った目でアルーニの拠点に印をつけた。
「奴らは限界だ。コホートの機械仕掛けの兵器がどれほど強かろうと、地上で押し切る兵力の物量までは覆せまい。空からの爆撃がどれほど正確だろうと、大地を踏みしめ、拠点を占拠するのは生身の人間だ。アルーニの防衛線さえ崩せば、パーパルディア北部は完全に開く。予備の三個師団をすべて投入しろ!」
参謀ケインも、その分析に頷かざるを得なかった。長く続いた血みどろの消耗戦は、確かに、人的資源に勝るリーム王国軍にわずかながら分があるように見えていた。
それは、確かな勝機だった。リーム王国軍が、その恐るべき物量をもって、コホートとパーパルディアの連合軍を軍事的に打ち破る、決定的な瞬間が訪れようとしていたのだ。
だが、その張り詰めた均衡は、誰も予期しない場所から、根底を揺るがされようとしていた。
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### 2.北から来た難民
同じ頃。
パーパルディア戦線から遥か北。リーム王国と、さらに北の大陸最北端に位置するトーパ王国との国境地帯。
冷たい風が吹きすさぶ国境の関所で、リームの守備隊員は、北の街道から押し寄せてくる巨大な「黒い波」を見て息を呑んだ。
「……難民か?」
最初は、そう思われた。だが、その波の数は、通常の国境紛争や局地的な飢饉で発生するそれとは、明らかに桁が違っていた。
「いや、多すぎる。それに、あれは……!」
望遠鏡を覗いた隊長は、信じられないものを見た。
逃げ惑う民間人に混ざって、血まみれの兵士たちがいる。それも、リームの兵ではない。トーパ王国軍の正規兵だ。彼らは誇りであるはずの武器も兜も投げ捨て、ただひたすらに、背後の『何か』から逃れるように南へ向かって足を引きずっていた。
「おい、何があった! トーパで大規模な内乱でも起きたのか!?」
関所に辿り着いたトーパ兵の胸倉を掴み、守備隊長が怒鳴りつける。
泥と血に塗れたその兵士は、恐怖で完全に瞳孔が開いていた。彼はガチガチと歯を鳴らしながら、ひび割れた声で答えた。
「破られた……。世界の、扉が……」
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### 3.扉の崩壊
時を数日遡り、視点はさらに北へと飛ぶ。
グラメウス大陸と、このフェルアデス大陸とを繋ぐ唯一の陸路である巨大な地峡。そこには、太古より北方からの脅威を塞ぐために築かれた、長大で強固な大防壁――《世界の扉》がそびえ立っていた。
「ここを突破されることはない! 我々トーパ王国軍が、この壁を死守する!」
城壁の上で、トーパの将軍が兵士たちを鼓舞する。
彼らの軍備は、典型的な剣と魔法の中近世軍備のそれだった。
フィルアデス大陸南部の国々が、既に魔導蒸気機関と精密な火器を有する時代に足を踏み入れている一方で、トーパ王国の技術水準は、遥かにそれ以前の段階に留まっていた。輝く鎧、鋭い槍、強弓、少数の火縄銃と弩(いしゆみ)、そして魔導士たちの杖。過去幾度となく、魔物がこの地峡を抜けようとしたが、その度にこの壁と精鋭たちによって退けられてきた。
――しかし。今回やって来たのは、魔物の「群れ」ではなかった。
それは、明確な指揮系統を持った『軍隊』だった。
ゴアァァァァァッ!!
大地を揺るがす咆哮と共に、漆黒の地平線を埋め尽くすほどの途方もない軍勢が押し寄せてきた。
醜悪なゴブリンやオークの歩兵部隊が、何万という規模で陣形を組んで前進してくる。その後方からは、魔法を操る上位個体が黒炎を放ち、空を覆うほどの巨大な飛行魔物が急降下してトーパ兵を空高く連れ去る。
バリスタの極太のボルトに四肢を吹き飛ばされた巨大魔獣(トロール)が、瞬時に肉芽を膨らませて再生し、防壁の巨大な鉄門へと体当たりを繰り返す。
「撃て! 魔法兵、障壁を張れッ!」
トーパ兵が矢の雨と火縄銃の弾幕を浴びせるが、圧倒的な物量と異常な再生能力の前には、それは大海に石を投じるようなものだった。
メキ……、メキバキィィィッ!!
巨大魔獣の果てしない体当たりと、上位魔族の攻撃魔法による集中攻撃によって、絶対の自信を持っていた《世界の扉》が、中央から無惨に砕け散った。
「……持ち堪えられません!」
若い兵士の絶望的な悲鳴が、防壁の上に響く。
「あ、ああ……」
瓦礫と共に崩れ落ちる将軍の目に最後に映ったのは、津波のように大陸へと流れ込んでくる、黒い怪物の海だった。昼夜を分かたぬ猛攻の末に、幾世代もの歴史を誇った《世界の扉》は、ついにその一角を崩落させたのである。
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### 4.孤立する城塞都市
《世界の扉》突破の報せは、瞬く間にトーパ王国全土を駆け巡った。
魔王軍は、防壁を破ったその勢いのまま、一気に南下を開始する。最初の標的となったのは、北部の城塞都市トルメスだった。
「門を死守しろ! 女子供を逃がせ!」
トルメスの領主は、血まみれの剣を振るいながら絶叫した。
魔王軍の包囲は迅速だった。トルメスは、孤立無援のまま、防戦を強いられた。各国へ放たれた早馬と伝書鳥は、すべて上空を覆う巨大な飛行魔物によって叩き落とされた。
数日にわたる、凄惨な攻防戦。城壁は瓦礫と化し、通りには、逃げ惑う市民の骸が積み重なっていった。指揮官が討たれ、組織立った抵抗は瓦解し、最後まで踏みとどまった兵士たちも、一人、また一人と、圧倒的な物量の前に飲み込まれていく。
誰も、救援には来なかった。
トルメスは、完全に陥落した。
ある一つの物語(オリジナル)の世界線では、ここで緑衣の近代軍隊が現れ、地球の現代兵器で彼らを救うはずだった。奇跡が起きるはずだった。
しかし、この世界において彼らを救いに来る者は、誰もいなかった。
幾万もの魔物の群れが、防壁を物理的に引き裂き、トルメスの市街地へ雪崩れ込んだ。
「いやぁぁぁっ! 助けて、誰かッ!」
「来るな! ばけも――」
剣戟の音は、やがて肉を裂く音と、咀嚼音、そして断末魔の悲鳴へと変わっていった。
奇跡など起きない。計算された国家間の戦争とは違う、交渉も降伏も一切通用しない『純粋な捕食と破壊』。トルメスは、文字通り地獄の坩堝と化し、誰一人救われることなく血の海に沈んだ。
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### 5.分割される悪意
トルメスを完全に蹂躙した魔王軍は、そこで不可解な動きを見せた。
彼らは全軍で南下を続けたわけではない。
軍勢の約二~三割が、トルメスから南西へ進路を変え、トーパ王国の王都ベルンゲンを完全包囲した。一部の部隊はトルメス周辺に駐留し、後方の補給線(食料としての人間)を確保する。
そして――残る魔王軍の『主力』は、王都を完全に無視し、トーパ王国の領土を真っ二つに引き裂くように、さらに南へと猛烈な速度で進軍を開始したのだ。
彼らの矛先が向かっているのは、パーパルディア北部に全軍を投入し、背後が完全にがら空きとなっている軍事国家。
リーム王国との国境であった。
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### 6.パニックと決断
リーム王国、王都ヒルキガ。王城。
その凶報は、国王バンクスの元へ、息も絶え絶えの伝令によってもたらされた。
「ト、トルメス陥落! トーパ王都ベルンゲン完全包囲!」
「何だと……!?」
「さ、さらに、魔王軍の大部隊が猛烈な速度で南下中! 我が国の北部国境まで、残り数日で到達する見込みです!!」
「馬鹿な……!」
矢継ぎ早にもたらされる報告に、バンクスは玉座から立ち上がり、顔面を蒼白にさせた。
魔王軍が復活し、世界の扉が破られた。それだけでも御伽噺の悪夢だというのに、その軍勢が自国の喉元まで迫っているというのだ。しかも現在のリームは、主力である飛竜騎士団と正規軍のほぼすべてを、パーパルディア侵攻(南)へ振り向けている。北の防衛は、完全にスカスカだった。
「リバルは何をしている! 今すぐパーパルディア戦線の部隊を呼び戻せ! 全力で北へ転進させ、魔物を食い止めるのだ!」
――パーパルディア戦線、リーム軍本営。
ちょうどその頃、大将軍リバルの元には「アルーニ突破まであと一歩」という吉報が届いていた。
「あと少しで突破できる。よし、このまま一気に……!」
リバルが歓喜に拳を握りしめたその時、本国からの緊急魔導通信が飛び込んできた。
『……前進中止。直ちに主力部隊を引き抜き、本国北部国境へ転進せよ』
「な……なぜだ! あと少しなのだぞ! 今、部隊を引き抜かれては突破など叶わん!」
リバルは激昂して魔導通信機に怒鳴りつけた。彼の怒声が天幕を震わせる。しかし、続けて通信手から伝えられた「トーパ陥落」と「魔王軍南下」という絶望的な事実を聞き、彼の表情から、次第に怒りが消え失せていった。
「……魔王、だと? 御伽噺の怪物が、我が国を食いに来ているというのか……!」
傍らに立つ若き参謀ケインが、蒼白な顔で進言した。
「リバル将軍。……ここでパーパルディアの領土を少しばかり取ったところで、背後から魔物の軍勢に本国を押し潰されれば、我々は帰る場所を失います」
リバルは、唇から血が出るほど強く噛みしめ、そして戦況図を叩き割る勢いで太い拳を振り下ろした。
「……全軍へ通達しろ。一部の部隊に遅滞戦闘(しんがり)を任せ、主力は直ちに撤退。北部国境へ全速力で転進する」
その命令が下された瞬間、この長く続いた泥沼の消耗戦の均衡は、誰の予想もしなかった形で、静かに崩れ去った。
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### 7.追わない理由
パーパルディア北部、アルーニ。
死を覚悟していたパーパルディアの防衛部隊は、眼前の敵の攻勢が突如として弱まり、潮が引くように後退していくのを見て困惑していた。
「……どうやら、リーム軍の主力が転進している模様です!」
副官が、興奮気味に報告する。
「追うな」
ガイウスは、即座に、短くそう答えた。
「し、しかし閣下! これほどの好機、背後を突けば――」
「馬鹿を言え。追えば伏兵に食われるだけだ。それに……奴らの撤退速度は異常だ。リーム軍が、勝っている戦場を捨てるほどの『何か』が、北で起きたのだ」
その直後。
皇都の総司令部で情報収集に当たっていたマータルから、魔導通信を通じて緊急通信が入った。
『ガイウス大将……北方から重大な情報が入った』
魔導通信機越しのマータルの声は、かつてなく緊張していた。
『世界の扉が破られた。トーパ王国が、未知の怪物――魔王軍の襲撃を受け、北半分が壊滅状態にある』
「……なるほど。だから奴らは、尻尾を巻いて逃げたのか」
ガイウスは、北の空を見上げながら、忌々しそうに呟いた。
これまで、パーパルディアとコホートを苦しめ続けてきたリーム王国という「敵」が、今や、自分たちよりも遥かに恐ろしい何かに、追われる側へと回っていた。
戦争の構図そのものが、静かに、しかし決定的に、変わり始めていた。
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### 8.未知の変数
グラヴシップ《プロスペリティ》、第一会議室。
パンドーラ大魔法公国との熾烈な情報戦を終えたばかりのタドコロたちは、一息つく間もなく、北部の異常なデータの解析に追われていた。
「リーム軍は、我々の攻撃に耐えかねて逃げたのではありません。完全な自発的撤退です。それも、我々の追撃に対する警戒行動を最小限にしてまで、ひたすらに北へ急いでいます」
キムラが、データパッドをスワイプしながら報告する。
「さらに、パンドーラの妨害が解除され通信網が復活したことで、周辺国を飛び交う断片的な魔導通信の暗号を復元できました」
キムラは、幾つかの単語の断片を、ホログラム上に並べた。
『トーパ』 『世界の扉』 『魔物』。そして――『魔王』。
「……魔王?」
タドコロの扇子が止まった。
「ミウラ。この星に、そんな名前の武装勢力はいたかしら」
「新規勢力だな。データベースには存在しねぇ」
ミウラがホログラムモニターを見上げる。
「戦力規模、不明。技術レベル、不明。指揮系統、不明。……一つだけ確かなのは、十万を超えるリーム軍が、目前の勝利を避けて本国防衛に走るほどの『圧倒的脅威度』だということです」
キムラでさえも、その「魔王軍」の正体をまだ全く掴めていなかった。
会議室に、これまでとは異なる種類の緊張が漂った。
これまでコホートは、相手が何を望んでいるかを分析することで、常に一歩先を行く判断を下してきた。だが今、彼らの前に現れようとしている「敵」は、その手法が通用するかどうかすら、まだ分からない相手だった。
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### 9.最後の通信
トーパ王都、ベルンゲン。
城壁の外を無数の魔物が埋め尽くす中、トーパ王国政府は、残された最後の巨大魔導通信機を使い、狂乱状態で周辺諸国へ救援を要請していた。
『こちらトーパ王国! 魔王軍により王都が完全包囲されている! 頼む、どこの国でもいい、援軍を! 援軍を遣わしてくれェェッ!!』
絶叫のようなSOSが、電波と魔力の波に乗って大陸中へ放たれる。
しかし。
リーム王国は、自国の防衛線を構築するだけで手一杯だった。
パーパルディアは、崩壊した国土の防衛再編で一兵の余裕もない。
マール王国は、コホートに物流を断たれ艦隊を動かせない。
パンドーラ大魔法公国は、通信網を焼かれコホートと休戦した直後だ。
誰も、すぐには動けない。
絶対的な絶望が、ベルンゲンを分厚い雲のように覆っていた。
――そして、その超広域の救援要請の電波は、はるか遠く、極東の海に浮かぶ『日本国』にも届いていた。
東京、霞が関。
日本政府は、外務省の特殊通信施設でその悲痛な要請を傍受・受理していた。直ちに内閣情報調査室が動き、フェルアデス大陸北方での大規模な戦闘の兆候を収集し始める。
「……防衛省の判断は?」
「現状、自衛隊を直ちに海外派遣する状況(法的な根拠と情報)にはありません。まずは、事態の推移を慎重に静観すべきかと」
日本という巨大で法治的な国家は、まだ動かない。
御伽噺の悲劇は、誰の助けも介入も受けないまま、ただその残酷なシナリオを進行させていた。
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### 10.理不尽の行進
トーパ王国を縦断する、黒い軍勢。
黒く染まった軍勢の、さらにその中心。誰も、その全貌を正確に捉えることはできなかった。ただ、他のどの魔物とも一線を画す、途方もなく巨大な影が、そこに佇んでいることだけが、遠目にも分かった。
魔王ノスグーラ。
その巨大で悍ましい姿は、遠目には黒い靄(もや)に包まれたように輪郭が定まらない。
『……南へ、進め』
魔王が発した、たった一言の思念。
それだけで、数万のゴブリンやオークたちが歓喜の咆哮を上げ、大地を削るように歩みを早める。
彼らは、王都ベルンゲンを包囲し、陥落させるだけの力を持っている。にもかかわらず、主力部隊はそれを無視して南下を続けているのだ。
それはつまり、彼らの目的が「都市を一つ二つ落として食い散らかす」ことではなく、「次の国家を、文明ごとすり潰す」という明確な侵略意思を持っていることを示していた。
これまでコホートが相手にしてきた、領土や利権、物流や技術を求める「合理的な敵」とは、明らかに異なる何かが、この北の大地に蠢いていた。
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### 11.世界が変わる
《プロスペリティ》第一会議室。
ホログラムマップの表示が切り替わり、大陸全土の勢力図が投影された。
パーパルディア。リーム。トーパ。
そして、北から巨大な黒い染みのように広がっていく、魔王軍の『推定進軍経路』。
「これまで私たちは、敵が何を欲しがっているかを分析し、それに基づいて最適な行動を選択できた」
タドコロは、扇子を固く握りしめたまま、その黒い染みを見つめていた。
「はい」
キムラが頷く。
「パーパルディア皇国が欲しかったのは、領土でした。
リーム王国は、利権を。
マール王国は、物流を。
パンドーラ大魔法公国は、技術を。
……彼らはすべて、人間の論理と欲で動いていました」
だからこそ、コホートは彼らと戦い、学び、休戦し、脅迫することができた。
「でも、あの連中は違う」
タドコロは、忌々しそうに目を細めた。
「彼らが、何のために南へ進んでいるのか。……何が欲しいのか。私たちには、まだ全く分からない」
利益も、誇りも、技術も関係ない。
ただ純粋な破壊の嵐が、第三文明圏の論理をすべて更地にするためにやって来る。
計算された戦争の時間は終わった。世界が、根底から変わろうとしていた。