雄英高校の闇、伝説の性癖・尊厳破壊ヒーロー『ミッキー』   作:青梅子

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ファーストエンカウント ミッキー❤の

 「み、みっちゃん、胸重くない? 大丈夫? ……持とうか?」

 

「くだらないこと言ってないで行くよ!!ほら、いつまでもアタシの腰にくっついてないで、さっさと準備する!」

 

 『ギャル仕様黒セーラー服』に身を包んだ光己は、籠手『ディープ・グライド・カスタム』の感触を確かめながら、控えめ女子を従えて不機嫌そうに事務所を出発した。

 やがて夜を迎え、二人はネオンが妖しく輝く繁華街へと足を踏み入れた。

 歓楽街に入った瞬間、光己は一瞬でスイッチを切り替え、ブリブリの営業用ギャル人格を駆動させた。衣服の繊維が悲鳴を上げるほどの爆乳爆尻体型を派手なセーラー服に包んで歩く光己の姿に、路上のキャッチや黒服たちが笑顔で手を振ってくる。

 

「あ、ミッキーちゃんお疲れー! 今日も相変わらずスタイル最高だね!」

 

 「おっつ〜☆ キャッチのお兄さんもお仕事がんばってねー♥ 悪いことしちゃダメだゾ★」

 

 「ミッキーちゃん今日も可愛いな! 応援してるよ!」

 

 「ありがとー♥ バイバーイ☆」

 

 抜群のプロポーションを揺らしながら、夜の街の住人たちと親しげに挨拶を交わす光己。完全に街のアイドルとして馴染み、平和で可愛いギャルヒーローとしての日常がそこにはあった。その光景を後ろから見ながら、機嫌が直りつつあることに控えめ女子は、少しだけ安心したように胸を撫で下ろしていた。

 

 賑やかな繁華街の巡回を終え、二人は家に帰っていない子がいないか、不審者がいないかを確認するため、少し静まり返った暗い通学路のエリアへと移動した。

 通学路の途中にある公園の敷地内へと足を踏み入れ、街灯の影にあるブランコに差し掛かった時のことだった。そこに座って首から高級そうな一眼レフカメラを下げた男を発見した。

 男は銀行員のようにバシッと隙なく着こなした高級スーツ姿で、いかにもエリートサラリーマンらしい、キチッとした洗練されたオーラを醸し出している。男は光己たちの姿を見るなり、爽やかで理知的な笑みを浮かべ、ブランコから立ち上がってスッと正面に立ち塞がった。

 

 「突然失礼いたします。私は現在、街頭にて素晴らしい女性を対象としたストリートスナップの撮影を行っている者です。お見受けしたところ、お二人の佇まいが誠に洗練されており、非常に強く心惹かれました。もしよろしければ、私に一枚、お写真を撮影させていただく許可をいただけないでしょうか?」

 

 「えー、マジでー!? まぁ? ウチらもプロのヒーローだし、これもファンとしてのファンサだし? 全然いーよー♥」

 

 ついさっきの街の連中との挨拶で完全に気分を良くしていた光己は、にこやかにピースサインを作ってノリノリでポーズを決めた。男のキチッとした身なりや完璧な敬語の物腰の良さに、光己はすっかり気を許し、レンズに向けてこれでもかとグラマラスな肉体美をアピールする。その横で、控えめ女子も男の誠実そうな雰囲気にすっかり感心して声をかけた。

 

 「へー、普段はちゃんとお仕事されていて、お写真が趣味なんですね。素敵です!」

 

 「ええ、まあ、そんなところです。……いやぁ、それにしても素晴らしい! 誠に驚くべき造形美だ! 特にそのコスチュームの胸元における立体的なボリューム感、そこから襟元にかけての完璧に計算されたシルエットの美しさは、衣服としての完成度が極めて高い!クビレをうつくしく見せるヒップラインとスカートの丈の長さと、そこから伸びる生脚のラインが構成する色彩のバランス……! 私は完全に、キミのファンになりました!」

 

 パシャパシャと軽快にシャッターを切りながら、重厚でキチッとした大真面目な敬語で、凄まじい熱量をまくしたてる男。光己は自分のファンサ精神に陶酔しきって超ご機嫌になっていた。

 

 (う、うわぁ……! ママ、完全にテンション上がっちゃってるよぉ……。っていうかあのサラリーマン、キチッとした見た目で、褒め方が言葉遣いだけ無駄にかっちりしてるけど乳と尻と脚とスカート丈の短さしかほめてないじゃん…)

 

 光己の背後で、控えめ女子は冷や汗を流しながら心の中で猛烈にツッコんでいた。しかし光己は絶賛されて超ご機嫌である。

 

 「ウケる! ありがとー! 襟元の谷間とかガチで計算尽くのおしゃれだしー、そこまで完璧に褒めてくれるとかマジ最高なんだけどー♥アタシのファン? マジで? 超嬉しいんだけどー♥」

 

 しかし、落差はまさにその絶頂の瞬間に訪れた。

 

 「あ、私、プロの変態のファンザ・和・直樹と申します。こちら、私の名刺になります」

 

 男は丁寧な手つきで高級スーツの胸ポケットから名刺を差し出してきた。――と同時に、男はキチッとした大真面目な銀行員の顔のまま、おおむろにスラックスのズボンのチャックを堂々と全開にした。展開するその指先は驚くほど淀みなく、光己のあまりにもハレンチなグラマラスボディに興奮しきって限界までおったてられたブツを、ズボンの外へと盛大に露出させ、正面から完全に突きつけてきたのである。

 

 あまりの落差と目の前の凄まじい露出光景に、控えめ女子は心底引きつった顔で光己の背中に隠れた。

 

 「――え? ……、……っ!? 嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!! なにそれ、何あれマジでキモすぎなんだけどぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 

 新卒プロである光己は、人生で初めて正面から公然と露出されたガチのそそり勃ったブツを前に、顔を真っ赤にして髪を振り乱しながら一通りギャーギャーと盛大に取り乱した。パニックになりながら自分の大きな胸を隠し、必死に距離を取る。そんな光己の後ろから、控えめ女子の鋭いツッコミが飛んだ。

 

 「ファンサとかはしゃいでたけど、みっちゃんがFANZAみたいなエロいカッコしてるからじゃん!!」

 

「私は悪くなくない!?」

 

 「もう何枚かよろしいでしょうか? 今度は、より際どい角度から撮影をさせていただきたいのですが……」

 

 下半身を完全に露出させた状態のまま、ファンザ・和・直樹はキチッとしたエリートサラリーマンの敬語のトーンを微塵も崩さず、大真面目な顔でカメラを構え直してさらなる破廉恥な要求を口にした。

 その不躾な一言に、光己の怒りと羞恥心が完全に沸点を超えた。

 光己の顔から営業用のギャル営業スマイルが完全に剥がれ落ち、凄まじい殺気とパニックが入り混じった、ブチ切れフェイスが炸裂する。光己は激しい怒りと脳の処理の追いつかなさに顔を真っ赤にして叫び散らした。

 

 「――際どい角度からって!! 何見せてんだよクソが!! ってか何で名刺まで渡して堂々と出してんだよ!! 意味分かんねえよ!! 乗せられて笑顔でポーズとかしちゃった純情どうしてくれんだよクソ野郎!! なんなのっ!? この街は変態しかいねえのかよォォォォォォォっっっ!!!!」

 

 あまりの怒号と理性を失った剣幕の恐ろしさに、下半身を露出させたままの男――ファンザ・和・直樹の顔が、一瞬で恐怖に引きつった。

 光己から放たれた、パニックと殺気が混ざり合って沸騰した尋常じゃない熱量に、それまで叫んでいた控えめ女子は一瞬で顔面を蒼白にさせ、本能的な恐怖にガタガタと震えだした。

 

 (う、うわぁ……ガチでキレて大混乱してる……! ママ、普段あんなにブリブリのギャルやっててさっきまで『おっつ〜☆』とか可愛くファンサしてたのに……)

 

 「あーもうマジでキモいキモいキモいキモすぎ!! ファンサを汚しやがってクソが!! 意味分かんねえよ死ねやァァァァァッッッ!!」

 

 極限の不快感と初めて目にするポケットモンスターで完全にパニックを起こした光己は、個性のグリセリン注入を考えることすら放棄し、パ勢いのまま正面から右足を一閃した。

 死角に回り込む手間すら惜しい。サポートアイテムも個性も完全無視の力任せの肉弾戦。ただ目の前のおったてられた元凶を消し去るためだけに、運動神経の良い女の子としての脚力のすべてを乗せた渾身の物理攻撃――金的キックが、最短距離で男の股間へと猛烈に蹴り上げられた。

 

 「べちゅんっ!!」

 

 夜の公園に、18歳の女の子の靴の先が、最も脆い肉の急所にジャストミートした最悪の打撃音が響き渡る。

 

 「――ッッッ!??!?!?!」

 

 直撃を受けたファンザ和直樹は、悲鳴を上げることすら許されなかった。あまりの激痛に一瞬で呼吸が完全に停止し、男の目は見たこともないほどの勢いで白目を剥いた。露出されていたブツは瞬時に深手を負い、男は股間を両手で押さえながらそのまま音もなく地面へと突っ伏して完全崩壊した。

 

 「ふぅ……。マジで最悪。ファンサを汚しやがってクソが」

 

 光己は、まだ怒りと困惑の収まらない般若のような顔のまま、乱れた黒セーラー服の襟元を直した。

 

 「うぇぇぇ…みっちゃん……。すっごく気持ち悪い音がしたよ……」

 

 「私は靴越しに感触もあったんだってば…早く警察呼んでよ」

 

 数分後、通報を受けて到着した男性警察官は無慈悲なミッキー❤の制裁に戦慄していた。

 

 「あ、の……ミッキーさん。この男なんですが……下半身を完全に露出しているのでなんとなく状況は分かりますが……さっきから何を話しかけても、これしか喋らなくて……」

 

 応援に駆けつけた警察官たちがドン引きする中、困惑した一人が男の顔を覗き込む。ファンザ・和・直樹はスーツ姿でよだれを垂らし、虚ろな目で警察官を見つめ、土下座の姿勢のまま微動だにせず、ただひたすらにブツブツと狂ったように同じ言葉を垂れ流し続けていた。

 

 「……倍返しだ。……倍返しだ……。……やられたら、やり返す。……倍返しだ……ッ!……私の、負け、です……頭取……出向、です……倍返しだ……!!」

 

 金的粉砕の絶望的なショックにより、脳のバブル入行組回路が完全に狂い、ただひたすらに虚空へ向かって呪詛のようにリピートし続けるだけの置物と化した男。警察官たちがドン引きしながら、壊れたロボットのように呟き続ける男をパトカーに詰め込んでいく。

 そして次の瞬間、正式に現場に到着した警察官たちが、一斉に光己の周りを取り囲んだ。

 

 「ちょっと待って、今回はミッキーの過剰防衛みたいだから、キミも署まで来てもらおうか」

 

 「はぁ!? ちょっと待ってよ、アタシはただの防犯活動なんですけどー! ガチ正当防衛だし!!」

 

 「とりあえず署で話聞くから。」

 

 光己がギャル口調で必死に抗議するのも虚しく、その両手首に冷たい本物の手錠が非情な音を立ててがっちりと嵌められた。

 

 「嘘でしょマジ最悪なんだけどー!!」

 

 パトカーの後部座席に押し込まれ、窓ガラスを叩いて

 

「社長に連絡してよー!!」

 

喚き散らす光己。赤色灯を激しく回しながら、パトカーは静かに公園を後にしていった。

 その去り際を完全に冷めきった目で見送っていた控えめ女子は、おもむろにポケットからスマートフォンを取り出すと、慣れた手つきで事務所の社長へとダイヤルを発信した。

 コールが鳴り響き、社長が電話に出た瞬間、控えめ女子はそれまでの幼児退行のような甘えたトーンを消し去り、大人の社会人として、真面目な敬語の口調で淡々と報告を始めた

。

 「あ、もしもし社長ですか。お疲れ様です。……ええ、今公園の現場なんですけれども、みっちゃんが露出狂の股間を粉砕しまして、警察から傷害罪および過剰防衛の容疑で任意同行されました。今パトカーで連行されていきましたので、社長、大至急身元引受人として警察署まで引き取りに行ってあげてください」

 

 電話の向こうで社長が

 

「はぁぁぁ!? またあいつ何やってんだよ!?」

 

と絶叫している声を、控えめ女子は表情一つ変えずに聞き流す。

 

 「状況説明の書類は私が明日事務所に提出しておきますので、あとの段取りはよろしくお願いいたします。――あ、私はもう時間も遅いので、このまま直帰しますんで」

 

 社長が何かを言いかける前に、控えめ女子は通話をブツ切りにした。

 そのままスマホをポケットにしまい、静まり返った夜の公園を見渡す。不審者の残骸もパトカーの群れも消え去り、そこにはただ、深夜の冷たい風だけが吹き抜けていた。

 控えめ女子は小さく息を吐き出すと、誰に聞かせるでもなくぽつりと呟いた。

 

 「さて……。帰るか亅

 

 控えめ女子はただ静かに、一人で夜の通学路を歩き、そのまま暗闇の向こうへと帰っていくのだった。




特許申請めんどくせえ…でもお金かけたくないよぉ…
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