午後だけTSする病【貞操観念逆転】   作:耳野笑

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【三行で分かる前回のあらすじ】

澪「バレンタインだからチョコ手作りした」

澪「私、心が男になってきてるのかな……」

吉乃「私はずっと、澪のこと男として見てるよ」


第12話 【ドッキリ】親友に嘘NTR報告してみた【神回】

「琴さん、今度の土曜日僕たちとラウワン行かない?」

 

「えっ」

 

 私に声を掛けてきたのは、陽キャ男子・板垣くんだった。*1

 

「えっと、誰が行くの?」

 

「男子は僕と奏斗と慎太郎で、女子はみなみんとざっきーだよ」

 

「吉乃も誘っていいなら行くよ」

 

「ふふっ、琴さんってほんと茨城さんのこと好きだよね」

 

 板垣くんはにやにやと笑っている。私は急に恥ずかしくなり、目を逸らした。

 

「じゃあラインのグループ誘うね~」

 

「あ、うん。ありがとう」

 

 招待されたグループに入ると、上部に「土曜日ラウワン(6)」というグループ名とメンバーのアイコンが表示された。

 

 うわ、陽キャたちの中に私のアイコンがあるの、めっちゃ浮いてる……。

 

 こうして、私は陽キャ男女混合グループに交ざって遊びに行くことになった。のだが――。

 

「あ、ごめん。その日用事あるわ」

 

「えっ、マジか」

 

 なんと、肝心の吉乃に外せない用事があり、行けないことが判明した。けど、じゃあ私も行かないとは言いづらい。

 

 仕方ない、ちょっと心細いけど行ってくるか。

 

 *

 

 土曜日。十二時半過ぎ。集合時間より早めに着いておいた。自分が一番乗りかと思いきや、先客がひとりいた。陽キャ女子の南さんだ。

 

 うわ、服装が陽キャだ。しかもイケメンだし。

 

「おはよう、琴さん」

 

「おはよう」

 

 南さんが話しかけてくる。彼女と話すのは、私がバレンタインにチョコを配った時以来だ。

 

「可愛いね、琴さん」

 

「あ、ありがと」

 

 なんだろう、私、吉乃に「可愛い」って言われる方が嬉しいな……。なんだかんだ喜んでたんだな私……。うわ、はず……。

 

「ねえ琴さん、澪って呼んでいい?」

 

「いいよ」

 

「ありがと、じゃあ私のこともみなみんでいいよ」

 

「ああ、そういえば皆にもそう呼ばれてたね。よろしく、みなみん」

 

 私たちは雑談しながら皆を待つ。すると――南さん(みなみん)がちらりと私の脚を見た。私はホットデニムとタイツを穿いている。吉乃だったら大喜びだろうが、残念ながら今日はいない。

 

「いま脚見たでしょ」

 

「う、ごめん」

 

「みなみんさいてー」

 

「ごめんってば澪」

 

 おお、いま私、陽キャをイジってる。だいぶすごい。これは名実ともに陽キャを名乗っていいのではないだろうか。

 

「そういえば、茨城さん来れなくて残念だね」

 

「そうだね」

 

「男子四人と女子二人じゃちょっとバランス悪いよね」

 

「しれっと私も男子の方に入れられてるし」

 

「あははっ、嫌だった?」

 

「嫌じゃないけど」

 

 すると、板垣くんたち四人もやってきた。同じバスに乗ってきたらしい。うわ男子の私服すごい可愛いな、吉乃も見れなくて可哀想に。

 

「おまたせ~! じゃあ入ろっか!」

 

 *

 

 テニス、バブルサッカー、アーチェリー、バスケ、キックターゲット、ローラースケート、卓球、ダーツ、筐体ゲームなどで遊び、最後にカラオケで歌う。

 

「あ、そうだ。澪、インスタ交換しない?」

 

「うん、いいよ」

 

 すると板垣くんたちも「あ、僕たちも澪と交換したい~!」「俺も~」と続く。*2

 

 こうして、私は陽キャたちとインスタを交換した。

 

 しれっと、男子とインスタを交換できてしまった。かつての私ならめちゃめちゃ嬉しかっただろう。しかし今は、それほど喜びを感じない。

 

 今の私には、男子と仲良くなりたいとか、彼氏が欲しいとか、そんな気持ちがないのだ。

 

 ――もう、心が男になりつつあるのだろう。

 

 そして、解散した。なんだかんだ楽しかったけど、ずっと「吉乃がいたらもっと楽しかったのになあ」と考えていた。

 

 私は帰宅後、今日撮った写真をインスタに載せた。すると――吉乃からラインが届いた。

 

「お前、私を捨てて陽キャグループに入るつもりじゃないだろうな」

 

「なんだよそれ。入んねえよ」

 

 さらに続けてメッセージが来る。

 

「南からワンチャン手出されてないよな?」

 

「ば~か」

 

 そう返信した後、私の中に悪い考えが浮かぶ。黒い好奇心が鎌首をもたげ、私の心を支配していく。

 

 嘘NTRドッキリ、しちゃおうかな。

 

 **3

 

 日曜日の午後。私はインスタの画面を睨み、煩悶していた。

 

 画面には、昨日澪が投稿した写真が映っている。

 

 澪と南のやつ、近くない? いやまあ、女同士としては普通の距離感なんだろうけど、澪は男の姿だから……。

 

 その時――ラインが届いた。澪からだ。

 

「またお菓子作ったんだけど食べにくる?」

 

「行く!!!!!!!!!!!」

 

 私は即答し、出かける準備を始める。

 

 *

 

 澪の家へ到着した。私が庭に入ると、インターホンを待たずして、内側から澪が扉を開けて現れた。

 

 美少年だ。

 

 クラスで一番可愛い美少年だ。

 

 艶のある黒髪。首の中ほどまでのセミロング。ウルフっぽく無造作に跳ねた髪質。

 

 切れ長の瞳。鋭く冷ややかな眼差しは、威圧感のある美しさを帯びている。

 

「おはよう、吉乃」

 

「おはよ、澪。今日も可愛いな」

 

「な、なんだよそれ」

 

 澪の家へ上がる。前回手作りチョコタルトを貰った時以来だ。

 

 今日もリビングへと案内される。テーブルには、大小さまざまなプレーンクッキー&チョコクッキーが大皿に乗せられていた。

 

「クッキーじゃん!!!!!」

 

「作りすぎちゃったから全部食べてもいいよ」

 

「了解、全てのクッキーを受け入れる」

 

「ウェブサイトで最初に表示されるやつみたいに言うな」

 

 私は澪とともにクッキーを食べ始める。

 

「うまっ」

 

「ありがと」

 

 私は手作りクッキーを味わいながら、なんとなく尋ねてみる。

 

「そういえば昨日、どうだった?」

 

「楽しかったよ。私だけ浮くかなって思ってたけど、みんな優しくて楽しかった」

 

「そ、そうか……」

 

「あとみなみんたちとインスタ交換したわ」

 

「みっ、みなみん!? みなみんって南のことだよな!?」

 

「あ、うん。そうだよ」

 

「なんでそんな仲良くなってんだよ!?」

 

「いいじゃん、別に。それに板垣くんのこともガッキーって呼んでるし」

 

「そっちは別にいいけど……」

 

 胸に嫌な気持ちが湧く。澪が他の女を親しげに呼ぶ姿が、不快だった。

 

 クッキーを食べ終わり、私たちは澪の部屋へ移動する。なんかすごいいい匂いがした。

 

 ベッド。ラグ。机と二脚のイス。テレビと本棚。シンプルな部屋だ。

 

 しかし、私の視線はすぐさま窓際に掛かったハンガーへ向いた。

 

「うおおおっ! タイツ吊るされてるっ! エロっ!」

 

「そんなとこ見んなっ!!!」

 

 澪に軽く体当たりされ、さらに肘でぐりぐりされる。正直うれしい。もっとやってほしい。

 

「なあ、澪」

 

「なに?」

 

「そういうボディタッチ、私だからいいけど、他の女にやったら勘違いされるからな」

 

「え」

 

「昨日の写真見たけどさ、あれ南との距離近すぎだろ。あいつ絶対澪のこと狙ってるから気を付けろよ」

 

「あ、あはは……」

 

 澪は苦笑いした。

 

 ……?

 

 なんか、変な反応だな……。

 

「あ、座ってよ」

 

「うん」

 

 話を逸らされた気がした。私は訝しみながらも座る。澪はスイッチ2を起動し、ホーム画面を表示して机上に置いた。

 

「飲み物持ってくるから、なんのゲームやりたいか考えといてよ」

 

「あ、うん」

 

 私は澪の背を見送ってから、窓の方を見た。タイツエロすぎだろ。

 

 他にもなんかないかな。

 

 私はベッドの下を覗く。なにもなかった。

 

 立ち上がり、澪の部屋をうろつく。すると――視界の端に妙なものが映り込んだ。

 

 ゴミ箱の中に、ピンク色の物体があった。

 

 ドクンと、心臓が大きく拍動する。

 

 近付いてよく見ると、コンドームだった。中身も入っている。

 

「え、これ……」

 

 鼓動がうるさい。耳に心臓が付いているかのように、爆音が聞こえる。

 

 うまく呼吸ができない。

 

 視界がぐにゃあと歪む。

 

「な、なんだよ、これっ……」

 

 私は立っていられず、どさりとイスに腰を落とした。

 

 し、使用済みゴム……?

 

 は……?

 

 な、なんで、そんなものが澪の部屋に? いや、澪が、使ったのか……?

 

 その時――澪が飲み物を持って現れた。コップを机に置き、隣のイスに座る。

 

「……吉乃? なんか顔真っ青だけど、だいじょうぶ?」

 

「み、澪、なんだよ、これ」

 

 私はゴミ箱の中を示しながら、澪に尋ねた。瞬間、澪は「しまった」という顔をして、表情を歪めた。

 

「うわ、最悪……処分し忘れた……」

 

「おい、澪、なんだよこれ」

 

「えっと、その、昨日さ……みなみんが『夜遅いし、送っていくよ』って言ってくれて。で、うち来てくれたから、せっかくだし上がっていったらってなって」

 

「は……?」

 

「この部屋に上がってしばらく話してたら、キスしたいって言われてさ」

 

「――」

 

 澪は気まずそうな顔で話す。

 

 でも、聞きたくない。その先を聞きたくない。

 

「最初は断ったんだけど、何回かお願いされてさ。そしたら抱き寄せられて……」

 

 嫌だ。

 

 やめろ。

 

 ふざけんな。

 

「みなみんイケメンだし、まあいっかなって思って……キスしちゃった」

 

 澪は恥ずかしそうに頬を紅潮させながら苦笑した。

 

 吐き気が込み上げる。

 

 震え、視界が歪む。

 

「っ、ざっけんなよッ……」

 

 怒りが沸騰する。頭に血が上って、脳の血管がブチギレそうになる。呼吸が荒く、苦しい。

 

 痛い。死にそうなくらい、脳が痛い。

 

 しかし、澪は、照れくさそうに笑いながら――。

 

「なんか、流れでシちゃった」

 

「――」

 

「そのまま、最後までヤっちゃった」

 

「……ざっけんなッ!!!!!」

 

 私は叫んだ。喉が壊れそうな程の大音声(だいおんじょう)で咆哮した。

 

「なんで私にはヤラせてくれなかったくせに、南とはセックスするんだよ!」

 

 怒りのまま、怒鳴りつける。

 

 澪は困ったように眉を寄せた。

 

「吉乃のことは親友として好きだけど、セックスとかは……ちょっと、ごめん」

 

「――」

 

 世界が崩壊していくような感覚に襲われる。

 

 自分が何をしているのか。どこにいるのか。そんなことすら分からないほど、思考が千々に乱れる。

 

 なに、これ。

 

 澪がイスから軽く腰を上げ、私に体を寄せる。ふんわりと、甘い匂いがした。

 

 そして、澪は私の耳元に唇を寄せ――吐息とともに声を吹き込んでくる。

 

「でも、みなみん、イケメンだしえっちも上手いし、流石陽キャって感じだったよ」

 

 やめろ。

 

 やめてくれ。

 

「膣でぎゅうぎゅう絞られて、すっごい気持ちよかったよ♡」

 

 想像してしまう。澪が南と繋がり、愛し合う姿を。

 

「シーツ掴んで体を震わすことしかできなくてさ♡ ほんとすごかった♡ 人生で一番気持ちよかった♡」

 

 考えたくないのに、脳内に浮かぶ。澪がベッドで、快楽に身悶えする姿を。

 

「吉乃も、いつか彼氏作ってセックスできるといいね?♡ まあ、ムリだろうけど(笑)♡」

 

 瞬間――私のなかで大事なものが切れた。

 

 私は澪の胸ぐらを掴んで、強引に立ち上がらせ、ベッドに突き倒した。

 

「わっ!? 吉乃っ!?」

 

 隙を与えず、彼へ覆い被さり、組み敷く。満身の力をもって、澪の両手首をきつく握り(おさ)える。

 

「い、いたッ……!」

 

「絶対許さないッ……! ブチ犯すッ……!」

 

「お前っ、これレイプだぞっ……! 警察沙汰だぞっ!」

 

「知るか。もう、これで終わってもいい」

 

「ゴンさんみたいに言うな!!!」

 

 私は澪の服を脱がせようとする。すると、彼は暴れるかと思いきや――。

 

「――なんちゃって♡」

 

「……は?」

 

 澪はにやにやと、余裕そうに笑みを浮かべている。

 

「ウソだよ。私、別にセックスなんてしてないよ。そもそもみなみんも家に来てないし」

 

「……」

 

「そのゴムは私がオナホで使っただけだよ。ベッドボードの収納に入ってるから見てみなよ」

 

「……今さらそんなんで騙されるわけねえだろ」

 

「えっ、ちょっ」

 

 私は澪のズボンを引きずり下ろし、パンツにも手を掛けた。すると、彼は慌てて私の手を掴んで止めてくる。

 

「待て待て待てっ! ほんとだからっ! ほんとに冗談だから!」

 

「セックスしたんだろ、お前。そんな嘘で誤魔化せるとでも思ってんのか?」

 

「ちょ、ちがっ……!」

 

「許さない。絶対にブチ犯す」

 

「あっやばっ、お前これマジのやつじゃねーか!」

 

 私は無理やり澪に顔を近づけ、唇を奪った。

 

「んんっ!?!?!?」

 

 口腔内へ舌を入れようとするが、歯をがっちりと閉じられて拒まれる。

 

 私は強引にキスを続ける。全体重を掛けて抑え込みながらキスし続ける。やがて、澪のまなじりに涙が浮かんできた。

 

「く、くるしっ……! んんっ……!?」

 

 澪の隙を突き、無理やり歯の壁を押しのけ、舌を捩じ込んだ。舌で舌を搦め取り、口腔内を侵すように撫ぜる。

 

「んっ、んんぅっ……! んっ……!♡」

 

 乱暴に、徹底的に澪の舌をいじめ、味わい尽くす。

 

「んっ、あっ……!♡ んうっ……!♡ んんっ……!♡」

 

 澪の苦しそうな喘ぎに、甘い声が混じり始めた。

 

 一度舌を離すと、唾液がお互いの舌を繋ぐように糸を引く。澪の瞳は潤み、どこか嫣然と輝いていて――私の興奮を昂らせる。

 

「絶対分からせてやるからな、澪」

 

「ちょっ、ごめんっ! あやまるからっ! うわああああああああああああああああっ!」

 

 **4

 

 快楽が体に残っていて、気持ちいい余韻に満たされている。

 

 乱暴にされた。めちゃくちゃ犯された。

 

 ……やばい。

 

 親友と、セックスしちゃった……。

 

 いや、その前に誤解解かないと。

 

「私のスマホ、取って……」

 

 吉乃は悲しそうな顔をした。何かを悟ったような、翳のある面持ちだ。

 

「警察に通報するの?」

 

「ちがうっ……インスタ、見てっ……」

 

「インスタ?」

 

 私はスマホを受け取り、南さん(みなみん)のインスタアカウントを表示した。それを見た瞬間、吉乃の顔が固まる。

 

「えっ」

 

 南さんと、その彼氏とのツーショット写真が大量に並んでいる。つい最近もディズニーデートに行ってきたようで、カチューシャを付けたふたりが仲良く密着して映っている。

 

「みなみん、普通に彼氏いるよ」

 

「えっ、えっ、えっ」

 

「中学から付き合ってるんだって。ラインのステメも『2y2m』*5だし」

 

「え? ……え、じゃあ南とセックスしてないの?」

 

「してないよ。そもそも家にも来てないし」

 

「な、なんでそんなウソついたんだよ?」

 

「吉乃の悔しがる顔が見たくて」

 

「お前性格悪すぎだろ!!!」

 

 吉乃は全力で怒声を上げた。もっともな反応だ。こればかりは私が悪い。

 

「マジでごめん」

 

「お前世界で一番悪いわ。悪い順に並べると澪>れな子>緒山>シャミ子くらいだわ」

 

「そんなに?????」

 

 すると――吉乃は急に黙り込む。表情がない。能面のような真顔だった。

 

「よ、吉乃?」

 

「ど、どうすんだよ。ヤっちゃったじゃん」

 

 吉乃の顔に焦燥が浮かぶ。親友と一線を越えてしまった、という事実を正しく理解したのだろう。

 

「うん……しちゃったね……」

 

「え、やばっ……」

 

「……」

 

「……」

 

「…………」

 

「…………」

 

 エグい沈黙が流れる。吉乃と一緒にいてこんなに無言の時間が続くのは、過去最長かもしれない。

 

 私は、長い溜め息を漏らした。

 

「付き合おう、吉乃」

 

「えっ」

 

「付き合おうよ、吉乃」

 

 吉乃は虚を突かれたように、少しの間固まった。

 

 大きな瞳が見開かれ、そのまま硬直して、私を見続けている。

 

「……いいの?」

 

「うん、好きだよ、吉乃。恋人になりたい」

 

「マジ……?」

 

「マジだよ」

 

「それも冗談だったらガチでキレるんだけど」

 

「冗談じゃない。私は、吉乃のことが好き」

 

 私は、精一杯想いを伝える。

 

 人生で初めての、告白だ。

 

「でも私、吉乃と親友でもいたいから、午前は親友として、午後は恋人として扱ってほしい。ど、どうかな……?」

 

 吉乃は私を見つめたまま、小さく息を吐いて笑った。

 

「うん、私もそれがいい。付き合おう、澪」

 

 そういった彼女の笑顔は、輝いて見えた。

 

「ありがとう、吉乃っ」

 

 私は吉乃に抱き着く。彼女も、強く抱きしめ返してくれた。

 

 吉乃の体温が伝わってきて、幸せだった。

 

 ああ、すごい。私、吉乃と恋人になったんだ……。

 

「でも澪、夏休みにTS病の手術受けるって決まってたよな? どうすんの?」

 

「あ、うん、手術はやめるよ。私、これからの人生は、午後だけ男として生きていく。家族にもそう伝える」

 

「……いいの? 結構重い決断だと思うけど」

 

「いいんだよ。吉乃の彼氏でいたいから」

 

 そう伝えると、吉乃の体が微かに震えた。直後、抱擁がより力強くなる。

 

「……嬉しすぎるんだけど」

 

「ふふっ、ならよかった」

 

 *

 

 月曜日の昼休み。私はいつも通り、吉乃と弁当を食べている。

 

「じゃ、投稿するよ」

 

「うん」

 

 私はインスタで「吉乃と恋人になりました!」という文言とともに、彼女とのツーショットを投稿した。

 

 すると――同じ教室内でスマホをいじりながら弁当を食べていた板垣くん(ガッキー)が「ぶはっ!?!?」と噴き出した。直後、私たちに駆け寄ってくる。

 

「マジ!?!?!?!?!?」

 

 突然大声を出したガッキーに驚き、クラスメイトたちが何事かとこっちを見る。

 

 吉乃は笑いながら頷き――。

 

「うん、マジ」

 

「おめでとう!!!!!」

 

 すると、なんの話か気になったのか、他の一軍陽キャ男女も寄ってくる。

 

「どうしたの?」

 

「これこれ!!!!!!」

 

 ガッキーが興奮した様子で、私の投稿を見せる。瞬間、それを見た全員がざわめいた。

 

「ええええええっ!? マジ!?」「すご~~~~!」「澪可愛いもんね! やっぱその方がいいよ!」「やるな~! 羨ましいぞ吉乃~!」「おめでと~~~!」

 

 クラスメイトたちはひとしきり驚いた後、口々に祝福の言葉を伝えてくれた。私たちは、ひとりひとりに「ありがとう」と答える。

 

 しかし、南さん(みなみん)に「おめでとう」と言われた時だけ、吉乃の顔が引き攣っていた。流石に、どっちにも悪いことをしてしまった。申し訳ない。

 

 *

 

 放課後の進路室。私と吉乃は、テーブルを挟んで向かい合う。

 

 月曜の放課後といえば――彼氏を作るための作戦会議、略して『彼氏会議』の時間だ。

 

 しかし、私たちが恋人になったことにより、自動的にこの会議は終了となる。

 

「彼氏会議も終わりか~」

 

 吉乃が感慨深そうに天井を見上げながらそういった。

 

「なあ、澪」

 

「なに?」

 

「ずーっと彼氏欲しくて会議してたけど、まさか私たちで付き合うことになるとは思わなかったな」

 

「私もビックリしてる」

 

 吉乃が私を見つめる。その眼差しは、妙に力強かった。

 

「最高の親友がいて、最高の彼氏もできた。私、いまめちゃくちゃ幸せ。ありがとう、澪」

 

「ど、どういたしまして……私も、その、吉乃と恋人になれて……し、し……」

 

 急に恥ずかしくなって、言葉が継げなくなる。

 

 やばい、顔熱い。絶対いま顔赤くなってる。

 

「私と恋人になれて、なに?」

 

「ぅ……えっと、そのっ……し、しあわせ、です……」

 

「お前可愛すぎるだろ」

 

「うっさい!!! ニヤニヤすんな!!!」

 

「ごめんごめん。マジで可愛くて」

 

 吉乃は上機嫌そうに立ち上がる。

 

「じゃ、今日うち来る?」

 

「行く」

 

 ――ということで、吉乃の家へ移動した。

 

「じゃあセックスしよう、澪」

 

「いきなりかよ」

 

「付き合ってる男女がおうちデートだぞ。しかも親もいない。これはセックスしかありえないだろ」

 

「まあ、そうなると思ったよ」

 

 *

 

「はあっ……はあっ……おまえっ、つよすぎだろ……」

 

 私は横になったまま、肩で息をしている。死ぬほど喘がされて、疲労困憊の状態だ。

 

「幸せすぎる……」

 

 吉乃は満足そうに息を吐く。

 

「澪、これから毎日しよう」

 

「し、しんじゃうからだめ……」

 

「うわお前声エロっ。というか吐息がエロすぎる」

 

 吉乃が私の上へ馬乗りになる。これから犯すという死刑宣告のように、腰を据えられる。

 

「澪ってサディストだけど、ベッドの上ではマゾだよな」

 

「だ、誰がマゾだ!!!!!!」

 

 そう抗議した次の瞬間――吉乃が私の乳首を摘まみ、(つね)り上げた。

 

「んあっ!!!!!!♡♡♡♡♡♡」

 

「いや、やっぱお前マゾじゃん」

 

「マゾじゃなっ……んあっ!♡ ばかっ……! ちくびやめろっ……! んうっ……!♡ ああっ……!♡」

 

 乳首を抓られる度、身体に快楽の電流が走り、海老反りなってしまう。私は為す術なく身悶えし、腰を跳ねさせることしかできない。

 

 一方の吉乃は、そんな私の姿を見て楽しそうに、獰猛で嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「教えてあげるよ、澪。私が上で、お前が下だって」

 

「あっ、待っ――」

 

「愛してるよ、澪」

 

 TSしたばかりの頃の私は、想像もできなかった。――オスはメスに、勝てないのだということを。

 

 

『午後だけTSする病【貞操観念逆転】』 完!

 

*1
第5話で一緒にコスメを買いに行った男子

*2
遊んでいる最中、全員から下の名前で呼ばれるようになった

*3
吉乃視点

*4
澪視点

*5
付き合って二年二ヶ月という意味




対戦ありがとうございました! 次の性癖バトルでお会いしましょう!


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